『六角精児の呑み鉄本線・日本旅』(ろっかくせいじののみてつほんせんにほんたび、通称:呑み鉄本線、呑み鉄)は、NHK BSプレミアムにて2015年春から放送されている日本のテレビ番組で、旅・鉄道・紀行番組。2022年春からはNHK BS4Kでの放送も始まっている。俳優でミュージシャンでもある六角精児の初の冠番組でもある。放送される曜日、時間などは決まっておらず、年に4〜5本のペースで放送されている。年末年始にはNHK総合などで集中的に再放送されることもある。
概要
鉄道ファンのジャンルとして「乗り鉄」、「撮り鉄」などの言葉は一般的であったが、「呑み鉄」という言葉の知名度を定着させた番組といえる。
呑み鉄とは、酒を飲みながら列車旅を楽しむ意だが、この番組ではそれをさらに広げ、車中で飲むだけでなく、鉄道の沿線にある地酒の酒蔵巡りや、訪れた地の居酒屋で酒を飲みながら地元の人と語らう。酒と鉄道、そして音楽を愛する旅人・六角精児が、日本各地のローカル線を1泊2日で一人旅をする[注釈 1]。 その土地土地で育まれた日本酒や焼酎、時にはワインやウイスキーの酒蔵や蒸留所を訪ね、地酒を(主に試飲で)味わい、列車の中では缶ビールを片手に風景を愛で[1]、時折廃線になった鉄道遺産を訪ねる。
民放バラエティー系の鉄道、旅番組にあるような「○千円以内で旅をしろ」や「タクシーはダメ」など、いわゆるTV的におもしろくするためのルールなどは一切なく、普通の旅人と同じような感覚で、六角精児が好きなところで列車に乗り、好きなところで降り、気の向くままに旅をする。なので鉄道の沿線に見たい物(主に廃線になった鉄道遺産など)があれば、タクシーやバスも積極的に使う。これは六角精児本人が自動車の免許を持っていないため[2]に、普段の鉄道旅でもそうしているからである。天気が良く、朗らかな気候で、バスもタクシーもないときにはひたすら歩くこともある[注釈 2]。
番組内で使用する音楽へのこだわりが強く[2]、列車走行シーンなどで使われる音楽はすべて六角精児がセレクトした曲である。カントリーやフォーク、ブルース系のギターサウンドの曲が多いのが特徴。特に番組の初期はライ・クーダーと下田逸郎、そして六角精児バンドが定番だった。列車走行シーンで使われる曲はBGM(バックグラウンドミュージック)というサブ的な扱いではなく、鉄道旅を盛り上げる主役として扱われる。そのため曲がかかっている時には列車の走行音が消されていることも多い。洋楽、邦楽、メジャー、インディーズを問わずそのシーンに合う曲をこだわって使っている[2]。
BGMにこだわりがあるため著作権の問題で長年映像ソフト化されていなかったが、2021年7月に第1弾から第21弾までをコンプリートした7枚組のDVDが発売された[3]。ただし、著作権をクリアできない楽曲(主に洋楽)に関しては別の曲に差し替えられている。
番組名は「呑み鉄本線」だが、旅する路線はJR線の「本線」の他に、「支線」や「私鉄」、「第三セクター」などの路線も多い。基本は、単線・非電化路線が多い。これは六角精児が電車よりも気動車(ディーゼルカー)のエンジン音や振動に、より鉄道旅の旅情を感じるからで、番組のテーマ曲として使われている六角精児バンドの曲も「ディーゼル」である。
ナレーションは、「好きな俳優は六角精児」と言う[4](女優)でタレントの壇蜜が担当し、比較的出演者の年齢層が高くなりがちな番組を華やかにしている。2023年5月放送の和歌山編だけは、壇蜜の体調不良による休養のため、NHKアナウンサーの星麻琴が代役でナレーションを務めた。
番組の放送時間は59分だが、2022年3月放送の「がんばれ東北・三陸鉄道を呑む!」と2022年7月放送の「サンライズ&四国の鉄道を呑む!」の回は89分で放送された。
1作目の放送から約8年間は、年4〜5回の不定期放送で、曜日も時間帯もバラバラで放送されていたので、初回放送を見逃す人が多かったが、2023年4月以降は、NHKBSプレミアムの鉄道番組枠が固定された為、初回放送は月曜日の夜9時になることが決まっている。過去回の再放送もその枠で放送されることが多い。2022年までは本放送の翌月に再放送されることが多かったが、2023年4月からは月曜日に本放送があったあとに、木曜日の午後に再放送、翌火曜日の夜に再々放送されるようになっている[注釈 3]。
出演者
- 六角精児[5]
- 1962年(昭和37年)生まれ。酒と鉄道と音楽をこよなく愛するこの番組の唯一の旅人である。劇団扉座の中心俳優として舞台やドラマで活躍する傍ら、ギャンブルに溺れ借金を作ってしまう20 - 30代を過ごす[6]。日本全国の競輪場を巡っていた頃の移動手段は鉄道であったが、当時は特に鉄道ファンと言う感じではなかったと言っていた[7]。「ギャンブル以外の趣味を持たなければ身を滅ぼす」と、子どもの頃から好きだった鉄道を改めて趣味にすることを誓い、それ以来、時間ができれば鉄道に乗り、旅をしていた[8]。鉄道の廃線跡にもロマンを感じ、旅した路線の沿線に廃線跡があれば訪れている。俳優業と並行して音楽活動も行っていて「六角精児バンド」を結成し、下北沢を中心に精力的にライブ活動を行っている。オリジナル楽曲の中には六角精児が作詞、作曲を手がけた曲もある。2014年に自主製作でアルバム「石ころ人生」を発表。番組のメインテーマとなっている曲「ディーゼル」は「石ころ人生」収録曲である。番組挿入曲として特に人気の高い曲「お父さんが嘘をついた」は六角精児が作詞、作曲を手がけた曲である[9]。2017年にはこの番組がきっかけで尊敬するシンガーソングライターの下田逸郎とコラボレーションしたアルバム「六角精児と下田逸郎 唄物語 緑の匂い」をリリースしている[10]。2019年12月18日には六角精児バンドのセカンドアルバム「そのまま生きる」を、2022年4月20日に六角精児のソロ・カバーアルバム「人は人を救えない」を発表[11]。
スタッフ
- プロデューサー:榎戸 剛、菅原健一
- 構成:北村のん、堀江志津
- ディレクター:中田一宏
- リサーチ:新井和明、清水達也 ほか
- カメラ:岸正浩、福田良弘 ほか
- 照明:三枝誠、花村浩 ほか
- 音声:ワサンタ・グナティラカ、奥村敬一、定別當公理 ほか
- 編集:安藤麻衣子、尾身雄紀
- 音響効果:岡重宏 ほか
- デザイン:谷脇もも
番組で使用した【六角精児オススメの】音楽
- 六角精児バンド:アルバム「石ころ人生」より 「ディーゼル」「お父さんが嘘をついた」「愛のさざなみ」「ほんとうの歌」「はやく抱いて」
- 六角精児バンド:アルバム「そのまま生きる」より 「(臨)ディーゼル」「私はオルガン」「人は何で酒を飲むのでしょう」「サヨナラなんて柄じゃない」「何万年」
- 六角精児:アルバム「人は人を救えない」より 「各駅停車」 「やつらの足音のバラード」「お前の町へ」
- 六角精児と下田逸郎:アルバム「唄物語 緑の匂い」より「漂々」「緑の匂い」「劇的列車」
- 六角精児と松井玲奈:「花は咲く」(走れ!サンテツバージョン) ※NHKの東北応援番組企画にて非売作品
- 下田逸郎:「漂々」「緑の匂い」「君のも愛」「揺蕩」「たおやかな沈黙」「弓矢のように」「美らフクギの林から」
- ライ・クーダー(Ry Cooder):「I Got Mine」「Always Lift Him Up」「Strike!」「How Can You Keep Moving」
- 内田勘太郎:「Keibin」
- 濱口祐自:「妙法の夕ぐれ」
- ニッティー・グリッティー・ダート・バンド(Nitty Gritty Dirt Band):「ミスター・ボージャングルス」
- シュガーパイ・アンド・ザ・キャンディマン(Sugarpie And The Candymen):「レディ・マドンナ」
- 高田恭子:「みんな夢の中」
- かまやつひろし:「どうにかなるさ」
- 植木等:「笑えピエロ」
- ベン・ソリー(Ben Sollee)
- ダニエル・マーティン・ムーア(Daniel Martin Moore)
- ギリアン・ウェルチ(Gillian Welch)
- マーク・ノップラー(Mark Knopfler)
- ヘロン(Heron)
「The Magpie’s Song」 「Si Bheag Si Mhor」
- マリア・マルダー(Maria Muldaur)
- ボブ・ディラン(Bob Dylan)
- ジョニー・キャッシュ(Johnny Cash)
- ザ・バンド(The Band)
放送回リスト(内容詳細)
回 | 初回放送 | サブタイトル | 六角精児が降りた駅(降りた順) | 旅した路線名 | 訪れた鉄道遺産など | 訪れた酒蔵(最寄り駅) |
---|---|---|---|---|---|---|
2015年 | ||||||
1 | 4月12日 | のと鉄道を呑む! |
|
| ||
2 | 8月23日 | 夏・山形鉄道を呑む![12] |
|
| ||
3 | 12月5日 | 秋・留萌本線を呑む![13] |
| |||
2016年 | ||||||
4 | 4月9日 | 春・小湊鉄道、いすみ鉄道を呑む! |
|
| ||
5 | 8月7日 | 夏・根室本線(花咲線)を呑む! |
| |||
6 | 11月30日 | 秋・指宿枕崎線を呑む! |
| |||
2017年 | ||||||
7 | 3月5日 | 冬・津軽鉄道、弘南鉄道を呑む! |
| |||
8 | 4月12日 | 春・島原鉄道を呑む! |
|
|
| |
9 | 8月23日 | 夏・石勝線(夕張支線)を呑む![14] |
|
| ||
10 | 11月29日 | 秋・三江線を呑む![15] |
|
| ||
2018年 | ||||||
11 | 2月18日 | 冬・野岩鉄道、会津鉄道を呑む![16] |
|
| ||
12 | 4月28日 | 春・予土線、土佐くろしお鉄道を呑む! |
|
| ||
13 | 8月18日 | 夏・釧網本線を呑む![17] | ||||
14 | 12月1日 | 秋・天竜浜名湖鉄道を呑む![18] |
|
| ||
2019年 | ||||||
15 | 2月23日 | 冬・肥薩線・くま川鉄道を呑む![19] |
| |||
16 | 5月18日 | 春・九頭竜線、長良川鉄道を呑む![20] |
| |||
17 | 8月24日 | 夏・石北本線を呑む![21] |
| |||
18 | 12月18日 | 秋・近江鉄道、信楽高原鐵道を呑む![22] |
|
| ||
2020年 | ||||||
19 | 2月12日 | 冬・日南線を呑む![23] |
|
| ||
20 | 4月24日 | 春・京都丹後鉄道を呑む! |
| |||
EX1 | 8月29日 | 総集編 | ||||
21 | 11月27日 | 秋、関東鉄道、真岡鐵道を吞む! |
| |||
2021年 | ||||||
EX2 | 3月6日 | 総集編パート2 | ||||
22 | 4月30日 | 春、秩父鉄道を吞む! |
|
| ||
EX3 | 8月27日 | 夏の特別編 | ||||
23 | 12月17日 | 秋、宗谷本線を呑む! |
|
| ||
2022年 | ||||||
24 | 3月12日 | がんばれ東北・三陸鉄道を呑む! (90分スペシャル) | ||||
25 | 4月30日 | 春・鳥取の鉄道を呑む! |
|
| ||
26 | 7月30日 | サンライズ&四国の鉄道を呑む! (90分スペシャル) |
| |||
27 | 9月17日(4K) 9月18日(BSP) | 夏・室蘭本線&日高本線を呑む! |
|
| ||
28 | 11月25日(BSP) 11月27日(4K) | 秋・久大本線を呑む! |
|
| ||
2023年 | ||||||
29 | 3月12日(BSP) 4月2日(4K) | 冬・長野の鉄道を呑む! |
|
| ||
30 | 5月1日(BSP) 5月1日(4K) | 春・きのくに線、紀州鉄道を呑む! |
|
|
脚注
注釈
出典
- ^ “六角精児 呑み鉄で絶対にしないマイルール明かす「ヤバい感じになるので」”. スポーツニッポン (2022年6月29日). 2022年10月13日閲覧。
- ^ a b c 六角精児「呑み鉄」の旅/六角精児著。
- ^ 六角精児の呑み鉄本線日本旅DVD全7枚。
- ^ 好きな俳優は六角精児/壇蜜(デイリースポーツ2013年1月)。
- ^ 六角精児 - NHK人物録
- ^ 三角でもなく四角でもなく六角精児/六角精児著。
- ^ “呑み鉄・六角精児が語る、日常から離れた場所で飲む"酒の魅力"”. 週プレNEWS. 集英社 (2016年9月13日). 2022年10月13日閲覧。
- ^ 少し金を貸してくれないか 続・三角でもなく四角でもなく六角精児/六角精児著。
- ^ お父さんが嘘をついたの歌詞
- ^ 六角精児と下田逸郎 唄物語「緑の匂い」
- ^ 六角精児カバーアルバム「人は人を救えない」
- ^ NHKドキュメンタリー 山形鉄道
- ^ NHKドキュメンタリー 留萌本線
- ^ NHKドキュメンタリー 石勝線(夕張支線)
- ^ NHKドキュメンタリー 三江線
- ^ NHKドキュメンタリー 野岩鉄道、会津鉄道
- ^ NHKドキュメンタリー 釧網本線
- ^ NHKドキュメンタリー 天竜浜名湖鉄道
- ^ NHKドキュメンタリー 肥薩線・くまかわ鉄道
- ^ NHKドキュメンタリー 九頭竜線・長良川鉄道
- ^ NHKドキュメンタリー 石北本線
- ^ NHKドキュメンタリー 近江鉄道・信楽高原鉄道
- ^ NHKドキュメンタリー 日南線
関連項目
外部リンク
- 公式ウェブサイト
- 六角精児の呑み鉄本線・日本旅 - (NHK放送史)