第92回天皇杯全日本サッカー選手権大会(だい92かい てんのうはいぜんにほんサッカーせんしゅけんたいかい)は、2012年9月1日から2013年1月1日に開催された天皇杯全日本サッカー選手権大会である。
概要
出場チームは前回大会と同じで88チーム。昨季に比べ日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)の加盟数が2クラブ増えたため、日本フットボールリーグ(JFL)のシードチームが2から1に減少し、総理大臣杯全日本大学サッカートーナメント優勝チームに与えられていた「大学シード枠」がなくなった。
Jリーグ所属全クラブのシード(2回戦からの出場)、出場全チームによるノックアウトトーナメントという基本的枠組みはこれまでと同様だが、JFLシードチームは1回戦からの出場となったほか、組み合わせ方法の決定に2つの新機軸が盛り込まれた。一つは、1回戦の組み合わせについて「同一地域内での対戦」を前提に対戦カードを組んでいたものを、全国を3つのエリア(北海道・東北・関東、北信越・東海・関西、中国・四国・九州)に分けて地域性を拡張し、対戦カードの幅を増やした点である[1]。もう一つは、レギュレーション発表の時点ですべての対戦カードが決定していたものを、3回戦終了後に再度抽選(オープンドロー)を行い、改めて対戦カードを決定する方式となった点である[1]。このため、4回戦(ベスト16)以降のカードは、大会前の概要発表時点では各ラウンドの日程のみが決定され、それ以外についてはすべて未定とされた。
なお、前年は東日本大震災の影響で本大会出場チームの決定に一部特殊なレギュレーションが導入されたが、今回は従前通りの方式となった。
今大会は、JFA公認マスコットの「(はにー&どぐー)」[注 1]が“応援マスコット(見習い)”として起用され、会場などで配布されるクリアファイルのデザインなどに採用されることが明らかになっている[2]。
優勝チームにはAFCチャンピオンズリーグ2013への出場権が与えられた。
日程
試合 | 開催日 | 備考 |
---|---|---|
1回戦 | 9月1日、2日 | 都道府県代表チーム、JFL上位チームの参加 |
2回戦 | 9月8日、9日 | J1、J2チームの参加 |
3回戦 | 10月10日 | |
4回戦 | 12月15日[* 1] | |
準々決勝 | 12月23日 | |
準決勝 | 12月29日 | |
決勝 | 1月1日 |
- ^ FIFAクラブワールドカップ2012に出場するチームの試合について、12月19日に振り替え開催する予定だったが、同大会には当大会2回戦で敗退したサンフレッチェ広島の出場が決まったため、振り替えは行われず全試合予定通りに開催された。
なお、4回戦以降の組み合わせ抽選については2012年11月8日に日本サッカー協会ビル(JFAハウス)にてオープンドロー(公開抽選)により実施された[3](詳細後述)。
出場チーム
Jリーグ加盟クラブが2チーム増加したことから、シード枠の配分が一部変更になっている。
なお、以下の「出場回数」についてはJFAの公式記録に基づくが、基本的には「前身となるチーム(クラブ化前の実業団チーム、など)からの通算回数」としている。ただし、一部に例外もある。
J1リーグ
2012年のJリーグ ディビジョン1参加の全18チーム。
J2リーグ
2012年のJリーグ ディビジョン2参加の全22チーム(前回大会から2チーム増)。
JFL
第14回日本フットボールリーグの第17節終了時点での上位1チーム(前回大会から1チーム減)。
都道府県代表
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- 出場回数に関する備考
- ^ 前身時代(日産自動車サッカー部および横浜マリノスの出場回数を含む。なお、横浜フリューゲルス(1999年に統合)の出場回数(13回)は含まない。
- ^ 鳥栖フューチャーズ(5回)の出場回数を含む(なお、鳥栖と鳥栖Fには組織としての連続性はない。当該項参照)。
- ^ 前身チーム(アローズ北陸(10回出場)とYKK APサッカー部(11回出場))の出場回数は含まない。
- ^ 前身の三菱化成黒崎サッカー部の出場回数(4回)を含まない。
- ^ 前身である国見FC(1回出場)の出場回数は含まない。
- ^ 前身である佐川急便東京SC(4回出場)と佐川急便大阪SC(1回出場)の出場回数はいずれも含まない。
- ^ 前身の教育研究社およびFC KYOKEN京都の出場回数(3回)を含まない。
- ^ 関大クラブ(7回出場)、全関大(4回出場)の出場回数は含まない。
- ^ 関学クラブ(10回出場)および全関学(4回出場)の出場回数は含まない。
試合結果
1回戦
2012年9月1日 No.4 | FC鈴鹿ランポーレ | 1 - 0 | 浜松大学 | 鈴鹿市 |
13:00 |
| 公式記録 | 競技場: 鈴鹿スポーツガーデンサッカー・ラグビー場 観客数: 419人 主審: 清水修平 |
2012年9月1日 No.6 | 大津高校 | 0 - 2 | V・ファーレン長崎 | 熊本市 |
13:00 | 公式記録 | 競技場: 熊本県民総合運動公園陸上競技場 観客数: 1,112人 主審: 塚田健太 |
2012年9月2日 No.7 | 高知大学 | 0 - 1 | ソニー仙台FC | 高知市 |
13:00 | 公式記録 |
| 競技場: 高知県立春野総合運動公園陸上競技場 観客数: 856人 主審: 武部陽介 |
2012年9月2日 No.8 | ブラウブリッツ秋田 | 1 - 0 | 平成国際大学 | 秋田市 |
13:00 |
| 公式記録 | 競技場: 秋田市八橋運動公園陸上競技場 観客数: 677人 主審: (長谷拓) |
2012年9月2日 No.10 | ヴァンラーレ八戸 | 0 - 2 | Y.S.C.C. | 十和田市 |
13:00 | 公式記録 | 競技場: 十和田市高森山総合運動公園球技場 観客数: 880人 主審: 清水崇之 |
2012年9月2日 No.11 | 奈良クラブ | 2 - 1 | アミティエSC | 橿原市 |
13:00 |
| 公式記録 |
| 競技場: 奈良県立橿原公苑陸上競技場 観客数: 1,121人 主審: (佐伯彰宣) |
2012年9月1日 No.12 | tonan前橋 | 5 - 0 | 日本大学山形高校 | 前橋市 |
13:00 |
| 公式記録 | 競技場: 群馬県立敷島公園サッカー・ラグビー場 観客数: 536人 主審: 日比野真 |
2012年9月2日 No.13 | ツエーゲン金沢 | 0 - 1 | FC刈谷 | 金沢市 |
13:00 | 公式記録 |
| 競技場: 石川県西部緑地公園陸上競技場 観客数: 743人 主審: 林可人 |
2012年9月2日 No.15 | 米子北高校 | 1 - 2 | ヴォルカ鹿児島 | 鳥取市 |
13:00 |
| 公式記録 |
| 競技場: とりぎんバードスタジアム 観客数: 604人 主審: 上村篤史 |
2012年9月2日 No.16 | 福山大学 | 1 - 2 ((延長)) | FC今治 | 呉市 |
13:00 |
| 公式記録 |
| 競技場: 呉市総合スポーツセンター陸上競技場・サッカー場 観客数: 347人 主審: 山村将弘 |
2012年9月2日 No.17 | アルテリーヴォ和歌山 | 2 - 1 ((延長)) | FC岐阜SECOND | 紀の川市 |
13:00 |
| 公式記録 |
| 競技場: 紀の川市桃源郷運動公園陸上競技場 観客数: 367人 主審: (見付和昭) |
2012年9月1日 No.18 | HOYO大分 | 3 - 0 | 長崎総合科学大学附属高校 | 佐伯市 |
13:00 | 公式記録 | 競技場: 佐伯市総合運動公園陸上競技場 観客数: 575人 主審: (藤本啓太) |
2012年9月1日 No.19 | 関西大学 | 3 - 2 | 富山新庄クラブ | 大阪市 |
13:00 |
| 公式記録 |
| 競技場: キンチョウスタジアム 観客数: 287人 主審: 亀川哲弘 |
2012年9月1日 No.20 | サウルコス福井 | 3 - 0 | 新潟経営大学 | 坂井市 |
13:00 |
| 公式記録 | 競技場: テクノポート福井スタジアム 観客数: 480人 主審: (小川直仁) |
2012年9月1日 No.22 | 筑波大学 | 3 - 1 ((延長)) | FC琉球 | ひたちなか市 |
13:00 | 公式記録 |
| 競技場: 笠松運動公園陸上競技場 観客数: 647人 主審: (眞鍋久大) |
2012年9月1日 No.23 | 松江シティFC | 0 - 3 | 徳山大学 | 出雲市 |
13:00 | 公式記録 |
| 競技場: 島根県立浜山公園陸上競技場 観客数: 1,732人 主審: (藤田和也) |
2回戦
2012年9月8日 No.26 | 湘南ベルマーレ | 1 - 0 | 愛媛FC | 平塚市 |
13:00 |
| 公式記録 | 競技場: Shonan BMW スタジアム平塚 観客数: 1,478人 主審: 上田益也 |
2012年9月8日 No.33 | ベガルタ仙台 | 1 - 0 | ソニー仙台FC | 仙台市 |
13:00 |
| 公式記録 | 競技場: ユアテックスタジアム仙台 観客数: 4,875人 主審: 井上知大 |
2012年9月9日 No.35 | 大宮アルディージャ | 2 - 0 | ブラウブリッツ秋田 | 熊谷市 |
13:00 | 公式記録 | 競技場: 熊谷スポーツ文化公園陸上競技場 観客数: 1,439人 主審: 村上伸次 |
2012年9月8日 No.38 | 栃木SC | 0 - 1 ((延長)) | 横浜FC | 宇都宮市 |
13:00 | 公式記録 |
| 競技場: 栃木県グリーンスタジアム 観客数: 1,731人 主審: 塚田健太 |
2012年9月9日 No.43 | サガン鳥栖 | 0 - 1 | カマタマーレ讃岐 | 鳥栖市 |
13:00 | 公式記録 |
| 競技場: ベストアメニティスタジアム 観客数: 3,091人 主審: 前田拓哉 |
2012年9月8日 No.48 | 東京ヴェルディ | 3 - 0 | HOYO大分 | 東京都北区 |
13:00 | 公式記録 | 競技場: 味の素フィールド西が丘 観客数: 1,093人 主審: (早川一行) |
3回戦
2012年10月10日 No.67 | FC今治 | 2 - 5 | FC町田ゼルビア | 広島市 |
19:00 |
| 公式記録 |
| 競技場: 広島広域公園第一球技場[※ 5] 観客数: 304人 主審: 廣瀬格 |
2012年10月10日 No.70 | アルビレックス新潟 | 0 - 1 | 福島ユナイテッドFC | 新潟市 |
19:00 | 公式記録 |
| 競技場: 東北電力ビッグスワンスタジアム 観客数: 3,460人 主審: 福島孝一郎 |
4回戦
4回戦以降の組み合わせの決定方法は以下の通り[9]。
- 4回戦進出の16チームを、4回戦の試合会場をホームスタジアムとして紐付けする8クラブ(Aグループ)とそれ以外の8クラブ(Bグループ)に分ける。この措置はこれまでの天皇杯において、試合会場がどちらのクラブとも関係ないスタジアムになることがクラブやファンにとって負担になっていたことに配慮したものである。
- 4回戦の会場については、3回戦の結果を踏まえて日立柏サッカー場、フクダ電子アリーナ、NACK5スタジアム大宮、大阪長居スタジアム、名古屋市瑞穂公園陸上競技場、熊谷スポーツ文化公園陸上競技場、万博記念競技場、県立カシマサッカースタジアムの8会場に決定し[3]、抽選時のグループ分けは以下の通りとなった(3回戦のマッチナンバーの若い順)[9]。
- Aグループ - 柏(日立台)・千葉(フクアリ)・大宮(NACK)・C大阪(長居)・名古屋(瑞穂陸)・浦和(熊谷[※ 6])・G大阪(万博)・鹿島(カシマ)
- Bグループ - 横河武蔵野・磐田・熊本・横浜FM・町田・清水・福島U・川崎
- 4回戦の会場については、3回戦の結果を踏まえて日立柏サッカー場、フクダ電子アリーナ、NACK5スタジアム大宮、大阪長居スタジアム、名古屋市瑞穂公園陸上競技場、熊谷スポーツ文化公園陸上競技場、万博記念競技場、県立カシマサッカースタジアムの8会場に決定し[3]、抽選時のグループ分けは以下の通りとなった(3回戦のマッチナンバーの若い順)[9]。
- Aグループのうち3回戦のマッチナンバーの若い順にトーナメントポジションの書かれたポットを選んで抽選する。
- 続いてBグループのうち3回戦のマッチナンバーの若い順にトーナメントポジションの書かれたポットを選んで抽選し、対戦カードと試合会場を決める。
- 準々決勝以降の会場については、トーナメント表決定後に候補地から近い会場をあてはめていく。
この抽選会はNHK BS1により生放送され、ドロワーとしてNHKサッカー解説者の木村和司、長谷川健太、名良橋晃、福西崇史の4名が参加した。立会人は日本サッカー協会会長の大仁邦彌、天皇杯実行委員会委員長の佐々木一樹、スルガ銀行代表取締役社長兼CEO(静岡県サッカー協会会長)の岡野光喜[10]。会場には、2回戦でFC東京を下して4回戦に進出した横河武蔵野FCの(依田博樹)監督と金守貴紀・岩田啓佑両選手が訪れていた[11]。
準々決勝
準決勝
決勝
決勝の組み合わせは、4年前の第88回大会と同じ顔合わせになった。どちらも、2012年シーズンに続くAFCチャンピオンズリーグ連続出場(G大阪は優勝した2008年大会以来6年連続[12]、柏は2年連続[13])がかかっており、これを意識した応援フラッグが多く掲げられていた。両チームの対戦は2012年シーズンでは5回目で、戦績は柏の3勝1分と柏が優勢であった。
序盤はG大阪が高い位置の守備から短いパスをつないで再三柏ゴールを脅かす[12] など圧倒的に優勢を保つが、なかなかフィニッシュが決まらない。この戦況を見た柏監督ネルシーニョが早くも動く。前半32分、FW澤昌克を1トップからトップ下に下げ、トップ下のMF水野晃樹に替えてFW田中順也を投入[13]。これが功を奏したのか、35分にMFレアンドロ・ドミンゲスのパスと澤のミドルシュートから得た柏の最初のコーナーキックで、MFジョルジ・ワグネルのキックを負傷欠場の近藤直也に替わって先発出場したDF渡部博文が頭であわせて柏が先制する[13]。しかし前半を通じてはG大阪MF遠藤保仁が「セットプレーでやられた場面以外は、ほぼパーフェクトだった」と語るとおり[12]、前半はG大阪が優位に試合を進めていた。
後半も立ち上がりこそG大阪が優勢だったが、ハーフタイムに守備の修正を行った柏にパスを封じられる場面が目立つようになり、途中投入されたMF家長昭博、MF佐々木勇人も状況の打開をさせるには至らず[12]、そのままタイムアップ。柏が4年前の雪辱を果たした。