上野懸垂線(うえのけんすいせん)は、東京都台東区上野にある恩賜上野動物園内の上野動物園東園駅と上野動物園西園駅を結ぶ東京都が経営するモノレール(東京都懸垂電車)路線である。上野動物園モノレールや上野モノレールとも呼ばれる。2019年11月1日より休止路線となっている[1]。後継の乗り物として小型モノレールが2026年度供用開予定で検討されている[3][4]。
上野懸垂線 | |
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上野懸垂線 40形車両 | |
基本情報 | |
国 | 日本 |
所在地 | 東京都 |
種類 | 懸垂式モノレール(上野式) |
起点 | (上野動物園東園駅) |
終点 | (上野動物園西園駅) |
駅数 | 2駅 |
開業 | 1957年12月17日 |
休止 | 2019年11月1日[1] |
所有者 | 東京都交通局 |
運営者 | 東京都交通局 |
使用車両 | 40形車両 |
路線諸元 | |
路線距離 | 0.3 km (332.42 m) |
線路数 | 単線 |
電化方式 | 直流600 V |
(最大勾配) | 40 ‰[2] |
(最小曲線半径) | 40 m[2] |
保安装置 | 打子式ATS[2] |
最高速度 | 20 km/h |
路線図 | |||||||||||||||
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(凡例) | |||||||||||||||
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概要
常設のものとしては日本初のモノレール(懸垂式鉄道)である。営業距離は300メートルと、日本最短のモノレール路線[5]であり、鉄道全体でも日本で二番目に短い[6]。東京都懸垂電車条例(1964年3月31日東京都条例第107号)[7]という路面電車(東京都電車条例)や地下鉄(東京都地下高速電車条例)とは別個の条例に拠る、東京都懸垂電車唯一の路線である。同条例で路線名は公営企業管理者の一種である東京都鉄道事業管理者が定めるとしている。
本路線は、有料の施設である上野動物園の園内にある2駅間を結んでいる。アトラクション気分で利用する親子連れらも多い[5]が、園内を横切る公道を路線が跨ぐため路線全てが園内に収まっておらず、遊戯施設ではなく、鉄道事業法に基づく交通機関となっている[8]。なお、西園と東園の間については、モノレールと並行する遊歩道(いそっぷ橋)を経由しても行き来可能である。
東京都建設局・交通局は、2019年1月23日に運行車両(2001年に登場した4代目車両の40形)の老朽化などを理由として、路線を休止すると発表し[1]、同年10月31日限りで運行を休止した[9]。今後、東京都は都民の意見をうかがいながら路線を維持するかを検討するとしている[1]。なお、同年11月1日からの休止期間中は、東園と西園の間にCNGバス[10]、2020年7月23日からは小型電気バス(BYD・J6)による連絡バスを無料運行する[11]。
運行休止期間中の2020年9月8日に(上野動物園西園駅)周辺に新たに「パンダのもり」が開設されたため、東京都ではジャイアントパンダの飼育に影響が出ないよう路線のルート変更を検討している。また、併せて従来の(懸垂式)から(跨座式)への転換も検討されている。なお、東京都建設局ではルート変更や転換に伴う建設工事および運行再開後の路線運営を公費のみで賄うのは困難としており、2023年度に本路線の共同運営を行う民間事業者の公募を行う考えを示している[3]。
歴史
地方鉄道法(鉄道事業法の前身法)に基づく交通機関「懸垂式鉄道」として1957年に開業した。東山公園モノレール(1964年 - 1974年)などと同様に「新しい都市交通機関の試行」という要素も持っていた。
東京都交通局は、道路上を通る路面電車や路線バスは渋滞の影響を受けやすいとして、それに代わる都市内交通手段を摸索していた。メインは地下鉄を採用することとし、それほど需要を見込めない地域や短い区間を結ぶ鉄道にはモノレールが有効であるという結論になった(都市モノレール構想)。当時モノレールは研究途上であり、東京都交通局は日本車輌と共同で独自に研究を開始した。
ドイツのヴッパータール空中鉄道として1901年から運行されていた(ランゲン式)を参考にし、車輪をゴムタイヤに代える改良を加えた。そのため、「東京都交通局式」とも呼ばれる。その後、東京都交通局はモノレール路線を開業しておらず、上野懸垂線の方式も他では採用されていない。2008年に開業した日暮里・舎人ライナーはモノレールではなく、案内軌条式のAGTを採用している。
その後、都の財政難と施設の老朽化により、1980年11月26日に策定された交通局の財政再建計画でモノレール事業の廃止が計画されたものの、存続の要望が強かったため、1983年に安全性についての調査を行った上で、同年10月31日に存続が決定した[12]。
年表
- 1957年(昭和32年)12月17日 - 全線開業。初代車両(H形)運行開始。
- 1966年(昭和41年)11月30日 - 車両・設備更新のため運転休止。
- 1967年(昭和42年)1月1日 - 運行再開。2代目車両(M形)運行開始。
- 1984年(昭和59年)9月1日 - 車両・設備更新のため運転休止。
- 1985年(昭和60年)4月2日 - 運行再開[13]。3代目車両(30形)運行開始、冷房付車両となる[13]。
- 1999年(平成11年)12月19日 - 車両・設備更新のため運転休止[14]。
- 2001年(平成13年)
- 2002年(平成14年)3月12日 - パンタグラフを改良し運行再開[16]。
- 2011年(平成23年)
- 2019年(平成31年・令和元年)
- 2022年(令和4年)11月 - 東京都が「恩賜上野動物園新たな乗り物の整備 基本方針」で2026年度中にコンパクトな乗り物の供用を開始する予定であると発表[4]。
運行形態
2両編成1本の車両が西園駅と東園駅の間を往復する形態で、所要時分1分30秒、7分間隔で運行されていた。上野動物園内にあるため、休園日は全面運休。運行時間も開園時間に合わせて9時40分始発・16時30分最終[19]となっている。
PASMO、SuicaといったIC乗車カードは利用できない。また、東京都交通局の路線が対象の特別企画乗車券である「東京フリーきっぷ」や「(都営まるごときっぷ)」などでも当路線は利用できない。
地下鉄の免許(動力車操縦者甲種電気車運転免許)で運転できるため、都営地下鉄の運転経験者が研修を経て運行を担っている[5]。
利用状況
輸送実績
2008年度は年間300日営業し、利用者数は83万9千人、1日当たりの利用者数は2796人[20]。
2016年度は約102万人で、来園者の4分の1が利用した。乗客数は上野動物園全体の人気に左右され、最高記録はジャイアントパンダの「カンカン」「ランラン」が中国から渡来し公開された翌年の1973年度の約153万人であった[5]。
営業成績
企画乗車券の発売
40形が運行を開始してから、何度か企画乗車券が発売されている。2007年12月には、開業50周年を記念して上野動物園の入園券とモノレールの乗車券がセットになった「Go!Zooきっぷ」を発売している。
イベントの実施
40形が運行を開始してから、何度かイベントが実施されている。2007年12月の開業50周年記念イベントにはシナモンが一日駅長を務めた。
2018年9月30日に(カッパバッジ)を提示した子児のみ、無料で優待乗車券を配布する企画を行った[22]。これは企画開催年の2018年、江戸から東京に改称し、東京府開設から150年となる事から都が記念として開催した「Old meets New 東京150周年」の一環であった。
車両
駅一覧
通常は「東園駅」「西園駅」と案内される。かつては、東園駅を「本園駅」、西園駅を「分園駅」と称していた。
脚注・出典
- ^ a b c d e (PDF)(プレスリリース)建設局/交通局、2019年1月23日。 オリジナルの2019年1月23日時点におけるアーカイブ2020年5月2日閲覧。 。
- ^ a b c 交友社『鉄道ファン』2001年8月号新車ガイド「東京都交通局 上野懸垂線40形」pp.139 - 143。
- ^ a b 加藤健太「東京都、上野動物園に新たなモノレール検討 2019年から運転休止 ルートはパンダに配慮」『東京新聞 TOKYO Web』中日新聞東京本社、2022年2月24日。2022年2月24日閲覧。
- ^ a b “恩賜上野動物園新たな乗り物の整備 基本方針”. 東京都 (2022年11月7日). 2023年3月8日閲覧。
- ^ a b c d 「還暦モノレール 人気健在/上野動物園 年間100万人が利用/シャンシャン公開追い風」『日本経済新聞』夕刊2018年4月3日(社会面)
- ^ 最短は鞍馬山鋼索鉄道。
- ^ 東京都懸垂電車条例
- ^ 鉄道トリビア89 マイナビニュース、2011年9月4日閲覧
- ^ a b 上野動物園モノレールが運行休止 62年の歴史にひとまず幕 都民から意見聞き今後を検討 - 乗りものニュース、2019年11月1日
- ^ (プレスリリース)東京都建設局、2019年9月25日。 オリジナルの2021年2月8日時点におけるアーカイブ2021年2月8日閲覧。 。
- ^ (プレスリリース)東京都建設局、2020年7月17日。 オリジナルの2021年2月8日時点におけるアーカイブ2021年2月8日閲覧。 。
- ^ 『東京都交通局100年史』(東京都交通局、2012年)p.257
- ^ a b 交友社『鉄道ファン』1985年7月号「上野のモノレールがリフレッシュ」p.101。
- ^ a b (東京都交通局トピックス・インターネットアーカイブ・2001年時点の版)。
- ^ (東京都交通局トピックス・インターネットアーカイブ・2003年時点の版)。
- ^ (東京都交通局トピックス・インターネットアーカイブ・2003年時点の版)。
- ^ a b 上野動物園モノレール、15日に運転再開 約2か月ぶりに復活するも、11月から運行休止へ - 乗りものニュース、2019年3月12日
- ^ 上野動物園モノレール 3月15日(金)から運行再開見込について(3/12 14:30更新) - 東京都交通局
- ^ 上野動物園モノレール・時刻表 - 東京都交通局(2020年7月21日閲覧)
- ^ 東京都交通局 平成20年度 運輸成績総表
- ^ 東京都交通局 平成20年度 決算総括表
- ^ カッパバッジが復活!都内21施設で入場無料、抽選で上野動物園貸切チケットや東京2020大会会場の建設現場を巡るツアーも - 東京散歩ぽ、2018年6月25日
関連項目
- 日本の鉄道路線一覧
- ゆりかもめ東京臨海新交通臨海線 - 東京都出資の中量輸送機関
外部リンク
- 東京都交通局・上野動物園モノレール