大泉 潤（おおいずみ じゅん、1966年3月20日 - ）は、日本の政治家。第10代函館市長、元函館市役所職員（地方公務員）。俳優・タレントの大泉洋は実弟。
経歴
北海道江別市出身。江別市立大麻東小学校、江別市立大麻東中学校、北海道札幌北高等学校、早稲田大学法学部卒業[1]。弁護士を志して司法試験を受験しながら、東京でアルバイト生活を送った[2][3]。
1995年、函館市役所入庁。その後2011年総務部秘書課課長、2015年保健福祉部次長、2017年観光部部長、北海道観光振興機構理事、2019年保健福祉部部長を歴任。同職在任中は新型コロナウイルス感染症対策を担当した[4]。
2023年函館市長選挙
2022年（令和4年）7月12日、現職の工藤壽樹の任期満了により行われる函館市長選挙への出馬を見据え、辞表を提出した[5]。このとき工藤は大泉から直接退職願を受け取っており、上司としての立場から工藤は「頑張りなさい」との言葉を残し、これに対して大泉は「ゼロからこつこつ歩きながら始める選挙戦になると思います」と返答した[6]。その後同年7月31日に正式に退職した[5]。
同年10月12日、市長選に無所属で立候補することを正式に表明した[7]。立候補を決めた理由として、北海道新聞のインタビュー内において次のように述べている[8]。
今、多くの大人が函館を諦めてしまっています。『どうせこの街にいても』という声が多く聞こえてきます。失望感が広がっているのを感じます。市民が誇りを取り戻し、未来の扉をひらけるようにしたい[8]。
現職の工藤と大泉は大学は学部を含め同窓で、上司と部下の関係であったことから「師弟関係のようなもの」との声も挙がったが、工藤は大泉の出馬に対し「市長候補になんて全く考えていなかった、私の後継としてはね、それはまったくない。実際の選挙戦を前にして、今は本人の資質や政策に関係なく話題を呼んでいるというのが実態で、それ以上なんとも言いようがない」と述べた[6]。一方大泉は「工藤市長は、辞める時が来ても誰かに譲ることはしないで新しい人同士が競えばいいと話していたし、僕は後継者だと感じたことはありません」と述べた[6]。
この函館市長選挙は俳優・タレントの大泉洋の兄が出馬することから「全国で最も注目の選挙」とも呼ばれた[9]。これに対し現職の工藤は「マスコミがタレントの兄だと過剰に取り上げて話題を呼ぶ。それは大泉陣営にとって有利な取り上げられ方で、話題性だけが先行する」「マスコミなんて来なくていい、そっと戦わせてくれないのか」と述べた。一方で大泉は「選挙に応援だとかいう話をしたことはないし、弟と自分の政治活動は言葉どおり本当に、別なものです」とした[6]。
第20回統一地方選挙の後半戦となった2023年（令和5年）4月16日に告示された市長選では、立憲民主党の支持のもと立候補し、ほか現職の工藤が立候補した[10]。選挙期間中、弟の大泉洋が応援演説に入ることはなかったものの、記念撮影を求める有権者が列を作る光景も見られた[11]。同年4月23日に投開票が行われ、現職の工藤を大きく超え98,174票を獲得、初当選した[12]。当選確実の報を受け大泉は事務所前にて「函館を諦めない皆さんが支援してくれて勝利がある。全ての人の権利が守られ、温かく寄り添う行政ができるように尽くしていきたい」と語った[11]。
選挙結果
※当日有権者数：210,568人 最終投票率：58.15%（前回比：8.83pts）
政策・主張
- 函館市長選挙への立候補を正式表明した際の記者会見内において、現職の工藤に対し対抗ありきではないとしながらも、高校生以下の医療費無償化・就学支援などの政策的予算を打ち出したことについては、「ばらまきにしか見えず、政治不信を招く」と批判した。同会見内では「函館市の人口減少率が中核市の中で最悪」と述べ、子供への投資とインクルージョン力で未来を変えることを訴えた[7]。
- 選挙戦では、3期12年に渡る工藤市政からの転換を掲げ、子育て支援や教育環境の充実に加え、函館駅への北海道新幹線乗り入れに向けた調査や、ふるさと納税の寄付額を年間100億円に増加させる取り組みを進めると訴えた[13]。
- 市を原告として現職の工藤が主導した大間原子力発電所の建設差し止め訴訟については継続の方針を示し、「原発の建設は函館市民の声を聞かないままに始まった」と主張している[7][14]。
- 北海道新幹線の函館駅乗り入れの実現を主張。現在、新函館北斗駅（北斗市）まで開通している北海道新幹線は、函館駅に乗り入れる計画はないが、大泉は乗り入れのための調査実施を公約に掲げており、「函館が覚悟を決めれば動き出す」と意欲を示した[15]。
人物
- 実弟・洋は俳優・タレントである。
父・恒彦は北海道高等盲学校や北海道七飯養護学校などの校長を歴任した元教員であり、2012年に瑞宝双光章を受章している[16][17]。母は旭川市出身で中学校教師[18]を務めた。
弟・大泉洋との関係
- 兄弟仲は良く、大学生時代には当時高校生だった洋を東京ディズニーランドに連れて行き、遊び方をレクチャーしたことがある[19][20]。
- 函館市長選挙に出馬したことについて大泉潤は、選挙運動と大泉洋の芸能活動は別であり、選挙応援の話題は出たことがないと述べている[14]。一方で「彼は面白いだけでなく家族思い。選挙について話すことはないが、彼の性格からすれば応援してくれているはず」とも発言した[11]。
- 函館市長選挙の当選確実の報を受けた際には「弟の知名度がなければ勝利はなかった」と語っている[11]。
- 市役所職員時代に放送された『ハナタレナックス』にて洋は潤を「函館の影の支配者」と評しており、同番組内でGLAYのTAKUROは、「函館でのGLAYの野外ライブを成功させたのは兄のおかげである」と語っている[21][22][23]。
脚注
- ^ "俳優 大泉洋氏の兄" 大泉潤氏が函館市長に！ 早々と現職破り当選確実 観光部長など歴任のエリート行政マン 弟との秘話も UHB北海道文化放送 2023年4月23日
- ^ “＜候補走る 函館市長選２０２３＞下 大泉潤氏（５７）＝無所属・新人 立憲民主道連支持 函館をよみがえらせる：北海道新聞デジタル”. 北海道新聞デジタル. 2023年4月24日閲覧。
- ^ 株式会社財界さっぽろ. “【今月号特選記事】市長選？それとも国政？弟はあの大泉洋、“モテモテ”函館市幹部・大泉潤の気がかり | 財界さっぽろ”. 財界さっぽろ ONLINE. 2023年4月24日閲覧。
- ^ INC, SANKEI DIGITAL (2022年7月13日). “大泉洋の兄・潤氏が函館市長選出馬へ 市保健福祉部長退職願提出し意向表明”. サンスポ. 2023年4月24日閲覧。
- ^ a b 「俳優大泉洋さんの兄、函館市長選に出馬表明 弟と「話はしている」」『朝日新聞』、2022年7月12日。2023年4月24日閲覧。
- ^ a b c d 「現職の実績 工藤vsタレント兄 大泉 上司と部下が対決 函館市長選挙」『NHK』、2023年3月1日。2023年4月23日閲覧。
- ^ a b c 「大泉潤氏、函館市長選に出馬表明 元市部長で俳優大泉洋さんの兄」『朝日新聞』、2022年10月13日。2023年4月23日閲覧。
- ^ a b c 「＜デジタル発＞来春の注目選挙・函館市長選インタビュー㊦ 元函館市保健福祉部長の新人・大泉潤氏が語った本音」『北海道新聞』、2022年12月28日。2023年4月23日閲覧。
- ^ 「大泉氏か工藤氏か、函館市長選の最新情勢は 本紙ベテラン記者が報告」『北海道新聞』、2023年3月14日。2023年4月24日閲覧。
- ^ 「【速報】函館市長選に２氏が立候補」『函館新聞』、2023年4月23日。2023年4月24日閲覧。
- ^ a b c d 「大泉潤氏「弟の知名度なければ勝利なかった」 函館市長選で初当選」『毎日新聞』、2023年4月23日。2023年4月24日閲覧。
- ^ 「函館市長選 統一地方選挙2023」『NHK』、2023年4月24日。2023年4月24日閲覧。
- ^ 「函館市長選挙 市の元部長の大泉潤氏が現職破り初当選」『NHK』、2023年4月23日。2023年4月24日閲覧。
- ^ a b 「大泉洋さんの兄だけではない…今春の函館市長選が原発問題でも注目されるわけとは」『東京新聞』、2023年2月2日。2023年4月23日閲覧。
- ^ 「新幹線の函館駅乗り入れ「実現したい」 次期市長の大泉氏 札幌直通にも意欲」【北海道新聞】2023年4月26日付
- ^ “”. web.archive.org (2012年11月10日). 2021年7月3日閲覧。
- ^ “筑波技術大学保健科学部鍼灸学専攻主催オンライン・シンポジウム「希望をつなごう」”. procomu.jp. 2023年5月2日閲覧。
- ^ 大泉洋『大泉エッセイ』247 - 249ページ
- ^ 大泉洋『大泉エッセイ 僕が綴った16年』KADOKAWA〈角川文庫〉、2015年4月25日、105、106頁
- ^ “函館市長選立候補「大泉洋の兄」 二浪、貧乏学生、ディズニーマニア…その素顔”. MSN. 2023年4月26日閲覧。
- ^ “函館市 初の女性副市長 / 北海道”. 毎日新聞. (2019年5月24日) 2020年3月31日閲覧。
- ^ “大泉洋の兄は函館の“支配者”、面識のあるGLAYのTAKUROも人物像を証言。”. Narinari.com (2015年2月16日). 2020年7月22日閲覧。
- ^ 「財界さっぽろ」編集部 (2019年11月25日). “大泉洋の実兄は市役所幹部 「函館市長選出馬説」について直撃した”. 文春オンライン. 2020年5月22日閲覧。