『ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃』(ゴジラ ミニラ ガバラ オールかいじゅうだいしんげき)は1969年(昭和44年)12月20日に第1回「東宝チャンピオンまつり」の一編として東宝が製作・公開した日本映画で[12][21]、「ゴジラシリーズ」第10作[出典 5]。カラー、シネマスコープ[出典 6]。同時上映は『コント55号 宇宙大冒険』『巨人の星 ゆけゆけ飛雄馬』[出典 7]。
概要
ゴジラ作品で唯一、現実と同様に怪獣がフィクションの産物である日常社会を舞台としており、劇中に登場するゴジラをはじめとした怪獣たちは少年の夢の中の存在として描写されている[出典 8]。当時社会的な話題を呼んでいた「公害問題」や「鍵っ子」「児童誘拐」をテーマに据えているが[出典 9]、公害問題については一部の台詞で言及される程度であり、次回作『ゴジラ対ヘドラ』で本格的に取り上げられた[25]。怪獣映画としては異質な作品であるが、児童映画として評価が高い[出典 10]。
1969年11月30日には、晴海国際スケートリンクに佐原健二、中真千子、ゴジラ、ミニラ、ガバラが映画のPRに登場した。着ぐるみは本編に使われたもので、スーツアクターも同一である。
アメリカでは『GODZILLA'S REVENGE』のタイトルで公開され、オープニングに独自の楽曲が使用された[6]。1990年のアメリカ映画『48時間PART2/帰って来たふたり』などで知られる脚本家の(ジョン・ファサーノ)は、いじめられっ子だった幼少時に本作品を見たことがきっかけで、いじめっ子に立ち向かうようになったという[28]。
ストーリー
神奈川県川崎市に住む、いじめられっ子で引っ込み思案の小学生・三木一郎は、両親が共働きの鍵っ子だ。一郎のもっぱらの楽しみは、同じアパートに住む「発明おじさん」こと南信平が作った玩具で遊ぶことである。信平を真似てガラクタで作った手製のコンピューターで夢の世界へ向かった一郎は、怪獣島に住むゴジラの息子ミニラと出逢う。そこで一郎は、自分をいじめているガキ大将と同名のいじめっ子怪獣ガバラにミニラがいじめられていることを知り、自分によく似た境遇にいるミニラを激励する。
一郎がそんな夢に浸っている最中、逃亡中の2人組の銀行強盗犯がひょんなことから一郎を人質に取ろうと企てる。
登場人物
三木 健吉 ()[29]- 一郎の父で、貨物列車の運転手[29][30]。
三木 タミ子 ()[29]- 一郎の母で、料亭に勤めている[29]。
三木 一郎 ()[29]- 小学2年生[5][29]。怪獣と機械いじりが好きだが、カギっ子で気が弱く友達も少ない[29]。
南 信平 ()[出典 11][注釈 2]- 三木一家と同じアパートに住む自称おもちゃコンサルタント[34][30]。両親が不在の間、一郎の面倒を見ている[34]。
千林 ()[35]- 5000万円[注釈 3]強盗犯[出典 12]。スーツを着てサングラスをかけている[35][30]。最後は一郎にやり込められ逮捕された。
奥田 ()[36]- 千林の子分。落とした運転免許証を拾った一郎を監禁する[36]が、千林共々やり込められ逮捕された。
- ガバラ[37][30]
- 一郎をいじめている小学校のガキ大将[37][30]。
サチ子 ()[38]- 一郎のガールフレンド[38][30]。
登場怪獣
- ゴジラ
- 詳細は「(ゴジラ (2代目)#『ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃』)」を参照
- ミニラ
- 詳細は「(ミニラ#『ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃』)」を参照
- ガバラ
- 詳細は「(ガバラ#『ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃』のガバラ)」を参照
- カマキラス[注釈 4]
- 詳細は「(カマキラス#『ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃』)」を参照
上記の怪獣以外は、過去の映像の流用[注釈 5]でクモンガ、アンギラス、ゴロザウルス、マンダ、エビラ、大ワシ[注釈 6][出典 14]。これらは一郎の夢の中における想像の産物として登場する。劇場ポスターはイラストで怪獣たちを描いたものだが、このなかにはアンギラス、マンダ、大ワシが含まれていない。
検討用台本第一稿での登場怪獣はタイトルの3怪獣とクモンガ、ラドン、大ダコであったが、監督の本多猪四郎が所持していた台本にはラドンと大ダコの出番をカットしてエビラに変更する旨が書かれており、決定版となった第二稿ではラドンの役割がカマキラス、大ダコがエビラになっている[44]。ラドンは本編に名前のみが登場した。
設定
- 怪獣島
- 南国の草木が生い茂り、多数の地球怪獣が生息する孤島。一郎の夢の産物であるため、具体的な位置は不明。
- パンアメリカン航空による「怪獣第1号」便が出ているほか、島を赤イ竹の戦闘機が襲うことがある[注釈 10]。
- 怪獣島の設定は、「チャンピオンまつり」興行の中、『地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン』(福田純監督、1972年〈昭和47年〉)以降、主役怪獣ゴジラの住処として劇中設定に組み込まれることとなった。
キャスト
- 三木健吉[出典 15]:佐原健二
- 三木タミ子[出典 15]:中真千子
- 三木一郎[出典 15]:矢崎知紀
- 南信平[出典 15][注釈 2]:天本英世
- 千林[出典 15]:堺左千夫
- 奥田[出典 15]:鈴木和夫
- 屋台の親父[出典 15]:沢村いき雄
- アパート管理人[出典 15]:石田茂樹
- 連結手・平さん[出典 15]:佐田豊
- B刑事[出典 16][注釈 11]:当銀長太郎
- ペンキ屋[出典 15]:中山豊
- A刑事[出典 16][注釈 12]:田島義文
- ガバラ(ガキ大将・三公)[出典 15]:(伊東潤一)
- 取巻きの少年[8][注釈 13]:(森徹)、(黒川俊哉)、(宮岡裕之)、(高橋信人)
- サチ子[出典 15]:(伊東ひでみ)
- サチ子の母[出典 17]:毛利幸子
- 旅館のおかみさん[出典 17]:宮田芳子
- ミニラ[出典 15]:小人のマーチャン
- ガバラ[出典 15]:(覚幸泰彦)
- ゴジラ[出典 15]:中島春雄
- ミニラの声[出典 18]:(内山みどり)
スタッフ
主題歌
製作
邦画の斜陽化による東宝本社の深刻な営業不振は、翌1970年(昭和45年)に制作部門の縮小・解体、リストラを招いた。怪獣路線は1968年8月の『怪獣総進撃』を集大成として中止されるはずであったが、『怪獣総進撃』が前作の『怪獣島の決戦 ゴジラの息子』の観客動員数を10万人上回る成績を上げたことや[注釈 18]、『緯度0大作戦』をはじめとする1969年8月の興行収入が前年を大幅に下回ったこともあり、
シリーズでは唯一、手間のかかるプール撮影が行われていない。特撮シーンの約半分は『ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘』や『怪獣島の決戦 ゴジラの息子』などの作品の映像から流用されているが[出典 20]、これは企画書の段階で決定されていたものであり、この予算的な都合に加えて当時の円谷英二をはじめ有川貞昌ら円谷組が大阪万博の映像製作にかかりきりであったため、従来のように本編班と特撮班に分けず、特撮演出も本編の本多猪四郎が兼任して一班体制で制作されている[出典 21][注釈 20]。
その後、円谷は体調不良により本作品の制作に関与していない[出典 22][注釈 21]が、「監修」とクレジットされている[33][22]。円谷が本作品公開の約1か月後にあたる1970年1月25日に死去した後、東宝は同年3月1日をもって「特殊技術課」を廃止し、特殊技術スタッフは新設された「映像事業部」に吸収され、映画特撮以外の映像制作に当たるようになった[1][53]。そして、「東宝チャンピオンまつり」の第1回冬興行作品である本作品以後、東宝は年1作の新作ゴジラ映画と過去の特撮作品のリバイバルをメインに掲げ、テレビアニメなどを組み合わせた番組を春・夏・冬休みの子供向け興行として続けていくこととなる[33][26]。
音楽を担当した宮内國郎は、本作品が唯一手掛けたゴジラ映画の劇伴であった[56]。宮内は、本作品へのオファーはウルトラシリーズを担当していた関係によるものと推測しており、多忙な合間をぬって制作していたと述懐している[56]。後年、映画音楽評論家の小林淳は、本作品の音楽について宮内が手掛けるウルトラシリーズにも通ずる楽曲ではあったが、主題歌「怪獣マーチ」の影に隠れてしまった印象であると評している[57]。
中野は、子供好きの円谷が本当にやりたかったのは本作品ではないかと思うようになったことを、後年のインタビューで語っている[32]。
映像ソフト化
- ビデオ
- レーザーディスク
- DVD
- Blu-ray Disc
- 2014年7月16日に他のBD未発売だったゴジラシリーズ作品と共に発売。
脚注
注釈
- ^ 東宝公式サイト映画資料室では「69分」[8]、書籍『ゴジラ 99の真実』では「73分」[13]と記述している。
- ^ a b 書籍『ゴジラ大辞典』では、南伸平と表記している[34]。
- ^ 書籍によっては、三千万円と記述している[15]。
- ^ 穴に落ちた一郎を下から見下ろした後に立ち去るシーンは、新規撮影である[出典 13]。
- ^ クモンガは『怪獣島の決戦 ゴジラの息子』、アンギラス、マンダは『怪獣総進撃』、ゴロザウルスは『キングコングの逆襲』、エビラは『ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘』からの流用である。
- ^ 劇中の呼称より[41]。『ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘』(福田純監督、1966年〈昭和41年〉)に登場する大コンドルの映像の流用である。
- ^ 資料によっては、「人間大」と記述している[46]。
- ^ 資料によっては、「怪獣島」と記述している[42]。
- ^ 資料によっては、植物怪物[42]、幻想生物 植物怪獣[46]、植物人間[41]と記述している。
- ^ 赤イ竹の戦闘機のシーンは、『ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘』からの流用である。
- ^ 東宝公式サイト映画資料室では、若い刑事と記述している[8]。
- ^ 東宝公式サイト映画資料室では、中年の刑事と記述している[8]。
- ^ 書籍『超最新ゴジラ大図鑑』では子分[1]、書籍『東宝特撮映画大全集』ではガバラの仲間たち[33]、書籍『ゴジラ東宝チャンピオンまつりパーフェクション』では子供と記述している[11]。
- ^ a b c d 本編・特撮とも。
- ^ a b c d ノンクレジット。
- ^ 撮影には一切関わっていない。
- ^ アメリカ公開版では、アメリカ原盤の別曲に差し替えられている。
- ^ 『怪獣総進撃』のDVDのオーディオコメンタリーに出演した谷清次は、同作が最終作である説を否定している。
- ^ 監督助手の中野昭慶は、1950年代に大作の併映作品として作られていた「ダイヤモンドシリーズ」のような扱いとする意図があったことを証言している[41][53]。
- ^ 実際には、監督助手の中野が、本多から「特撮はわからないのでやってくれ」と言われ、特撮のほとんどを担当していたという[32][41]。本多は、特撮では子供と怪獣が絡む場面のみ手掛けた[55]。
- ^ 中野は、円谷は万博のために鳴門の渦潮を撮影しに行った際に倒れ、本作品撮影時は入院していたと証言している[55]。
出典
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外部リンク
- ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃 - 東宝WEB SITE
- ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃 - 日本映画データベース
- ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃 - allcinema
- ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃 - KINENOTE
- ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃 - 文化庁日本映画情報システム
- ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃 - MOVIE WALKER PRESS
- ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃 - 映画.com
- All Monsters Attack - オールムービー(英語)
- All Monsters Attack - IMDb(英語)