「イメージの詩」(イメージのうた)は、よしだたくろうのデビューシングル。1970年6月1日にエレックレコードから発売された。
概要
シングル『青春の詩』などと共に「広島フォーク村」時代に制作した楽曲[1]。ボブ・ディランの「Desolation Row(廃墟の街)」にインスパイアされて作ったとされ[2]、吉田拓郎と広島フォーク村は、この一曲によって世に知られるようになったとも言われる[2]。本楽曲は吉田も参加した「広島フォーク村」名義のオムニバスアルバム『古い船をいま動かせるのは古い水夫じゃないだろう』に収録。アルバムは当初、インディーズで発売されていたが、後にエレックでも発売された。これを機にシングルカットされたが、吉田の許可を得ていなかったうえ、アルバムと同一バージョンを雑に編集したお粗末な物だったため再録音された。現在は、この再録音バージョンが正式なデビューシングル「イメージの詩」として認知されている。再録音盤の演奏は沢田駿吾カルテットが担当した。
THE ALFEEの坂崎幸之助は、高校入学前に本楽曲に出会い「何なんだ、この字余りな歌は」と驚き、吉田にどっぷりはまったという[3]。高校は落ちこぼれていったが、吉田の歌で助けられたと話している[3]。坂崎は無許可発売シングル盤と再録音シングル盤を個人所有しており、2009年8月20日放送された「わが青春の吉田拓郎!坂崎幸之助のオールナイトニッポンGOLD」にて両シングルのイントロからの一部を流して聴き比べた。坂崎は当番組の数年前にフリーマーケットでシングル盤を買った時は既に所有していた無許可盤とレコード品番が同じEB-1004であった為、シングルジャケットの色が褪せてるだけだと思い敢えて聴かずレコード棚に仕舞ったが、後に再録音盤である事が判明したという。ラジオで無許可盤と再録音盤の聴き比べをした時、無許可盤の編集があまりに雑であった事に対し素人が曲の編集をしたのではないかという旨の批評をした。
最初の無許可で発売されたシングル盤は、回収されているのとあまり売れていなかった為にレアである。その後、アルバム『青春の詩』にも収録され、このバージョンはシングル盤よりも長く、バックの演奏も異なっている。『青春の詩』収録のシングルバージョンの「イメージの詩」はタイムスリップグリコのおまけとしてCD化。後に「イメージの詩」「マークII」とも限定シングルボックス『HAVE A NICE DAY』でCD化。また、ベスト・アルバム『拓郎ヒストリー』や『エレックシングルボックス』にも収録されている。
解説
音楽雑誌『YOUNG GUITAR』は1970年7月号で、本楽曲について「実に素朴なメロディラインに単純なギター伴奏をつけて、心に浮かぶ社会や人間のイメージをまさに心のままに歌い上げていく。42番まで続くこの歌は、そのまま42個のイメージの詩であると同時に42曲の楽曲である。相互に何の関連もないと思われるようなイメージが次々にメロディの中に織り込まれ、聴いている者はその間、ただ迫力ある歌と一つ一つの詩に引き込まれる。歌が終わって振り返ってみると、全く関係のなかった詩が全体のイメージを通して、一つのドラマを形成していることに気づくだろう。しかもそのドラマは解釈の仕方で全く違うドラマ、言いかえるなら3千人の人が聴いたら3千のドラマが『イメージの詩』を通して設定されているようである」などと解説している[4]。
吉田拓郎はデビュー曲であるこの曲で、それまでの若者が聞いたことがなかったような普段着の言葉と飾らないメロディを引っさげて音楽シーンに登場した[5]。スージー鈴木は「60年代に人気を博したクラシカルでエレガントなグループサウンズとは異なる、心の奥底をさらけ出すような言葉遣いは拓郎が持ち込んだと言っても過言ではない」と論じている[5]。
拓郎自身は、明確な政治的イデオロギーを持っていなかったとされるが[6]、「イメージの詩」には(70年安保)敗北後の時代の空気が色濃く滲む[6]。
歌詞は冒頭から「信じれるものが」と「(ら抜き言葉)」が出るが、ら抜き言葉なのか広島弁なのかは分かっていない[7]。
明石家さんまが最愛の曲と話し[8]、「人生の教科書」と述べている[8]。ヒコロヒーは「拓郎さんは何手も先に時代をみていたのかな」などと評した[9]。特に歌詞の一節"古い船をいま動かせるのは古い水夫じゃないだろう"は、収録アルバムのタイトルに使われた他、世代交代などを現す表現として引用されることも多い[10]。
エピソード
拓郎自らレコードの梱包作業を行い、トラックに積み込んでレコード店を回り、パイオニア(現・)のステレオ新商品の全国キャンペーンに帯同し店頭で歌うこともあった。これに関して拓郎は「外タレの前座はよく聞くが、機械の前座をやったのは俺くらいじゃないか」と述べている。当時の音楽状況はメッセージフォークやカレッジフォークも下火となった時期で、テレビ・ラジオ局、雑誌関係者から「今さらフォーク?」と揶揄された。レコードは売れなかったが、友人4~5人で葉書や電リクをせっせと送り『オールナイトニッポン』で1週だけリクエスト1位になったという[12]。
B面『マークII』のタイトルは、「広島の喫茶店で女の子と待合せをして、女の子が来て立とうと思ったら、逆の方向から格好良い男の子が来て、その女の子が男の子と腕組んで自分の目の前を通り過ぎてしまった。その時、目の前を(トヨタの)(コロナ)マークIIが通り過ぎた」それだけで付けたと話している[1]。
収録曲
- 全作詞・作曲:吉田拓郎
イメージの詩 (浜田省吾のシングル)
「イメージの詩」 | |
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浜田省吾 の シングル | |
B面 | 生まれたところを遠く離れて |
リリース | |
規格 | 8cmCD マキシシングル(リサイズ版) |
ジャンル | J-POP |
時間 | |
レーベル | クリアウォーター |
作詞・作曲 | 吉田拓郎 |
プロデュース | 浜田省吾 |
チャート最高順位 | |
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浜田省吾 シングル 年表 | |
1997年10月22日に発売された、浜田省吾の28枚目のシングル。
概要
吉田拓郎のデビュー曲をカバーしたシングル。限定でEP盤も同時発売された。浜田にとって恩人である吉田の50歳の誕生日を祝って制作された。
吉田のバックバンドとして来日していたラス・カンケル、リー・スカラー、ワディ・ワクテル、(クレイグ・ダーギー)がレコーディングに参加し、浜田がハーモニカ、吉田がリズムギターでレコーディングがおこなわれた。かつて浜田のバックバンド「THE FUSE」メンバーだった板倉雅一もオルガン演奏でレコーディングに参加している。ミュージック・ビデオに浜田と吉田が揃って出演、レコーディング風景を撮影した映像が使われている。
カップリングの「生まれたところを遠く離れて」は、1976年発売された、デビューアルバムの表題曲のリメイク。
2004年、桜井和寿がBank Bandとして「イメージの詩」をカバーしているが、浜田のカバーヴァージョンを聴いて楽曲の存在を知り、この曲に興味を持ったという。
浜田にとっては最後の8cmCDシングルだが、2005年3月24日に、マキシシングルとして復刻されている。
記録
オリコンチャートでは最高位12位にランクインし、累計11.8万枚を売り上げるヒットとなった。
収録曲
- イメージの詩
- 作詞・作曲:吉田拓郎・編曲:星勝
- 生まれたところを遠く離れて
- 作詞・作曲:浜田省吾・編曲:星勝
他アーティストによるカバー
脚注
- ^ a b パックインミュージック(TBSラジオ)1972年5月31日放送での拓郎の言及。
- ^ a b イメージの詩〜吉田拓郎の運命を切り拓いた一曲
- ^ a b 坂崎幸之助『坂崎幸之助のJ—POPスクール』岩波書店、2003年、p62-63
- ^ シンコーミュージック 1992, p. 6.
- ^ a b 上田千春 (2022年8月28日). “吉田拓郎、井上陽水、小田和正…1940年代生まれの3人が70年代に果たした功績”. NEWSポストセブン. 小学館. 2022年9月5日閲覧。
- ^ a b 桑原聡 (2022年9月3日). . サンケイスポーツ (産業経済新聞社). オリジナルの2022年9月3日時点におけるアーカイブ。 2022年9月5日閲覧。
- ^ “”. ザ・カセットテープ・ミュージック. BS12 トゥエルビ (2021年1月10日). 2021年1月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年4月27日閲覧。
- ^ a b . Sponichi Aneex. ニッポン放送. (2021年5月12日). オリジナルの2021年5月12日時点におけるアーカイブ。2022年6月25日閲覧。
- ^ “”. 北國新聞. 北國新聞社 (2022年8月18日). 2022年8月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年8月26日閲覧。
- ^ . Sponichi Aneex. スポーツニッポン新聞社. (2022年6月13日). オリジナルの2022年6月13日時点におけるアーカイブ。2022年6月25日閲覧。ながさき若者会議 - 長崎市、所長だより049 「定年」 | 鳴門教育大学、創立57周年記念式典 | 東邦電子株式会社、リーダーに贈る言葉91
- ^ “”. NEWSポストセブン. 小学館 (2022年7月9日). 2022年7月10日時点のDETAIL オリジナルよりアーカイブ。2022年7月25日閲覧。
- ^ 井上陽水 孤独の世界、1975年、塩沢茂、講談社、p145
参考文献
- シンコーミュージック 編『フォーク黄金時代(1969~1978) (CUT-UP-FROM YOUNG GUITAR)』シンコーミュージック、1992年。
関連項目
外部リンク
- イメージの詩 SHOGO HAMADA OFFICIAL WEB SITE