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音楽プロデューサー(おんがくプロデューサー、英語: record producer, music producer)は、音楽のプロデューサーで、レコードやCD・LD などの音源制作や、コンサートや映画などの企画で音楽制作面全般を指揮する役割の職名である[1]。電子音楽のジャンルではトラックメイカー・ビートメイカーを指す。
定義
広義では単なる制作責任者や予算管理者、原盤管理者を含め音楽制作にかかわるすべての人が音楽プロデューサーである[2]。とりわけ日本ではアーティストの発掘・契約・育成を担当するや、企画・制作・宣伝などのマーケティング担当者まで音楽プロデューサーと呼称されている場合がある。
狭義での音楽プロデューサーは、録音物の制作の現場で音楽の"サウンド"に対する制作責任者のことを指し、現代ではこちらの意味で使われる国が多い[1]。もともと米国でも音楽プロデューサーはを指す言葉だったが、時代を経てサウンドの責任者を指す言葉に変化した[3]。この狭義の意味では、バンドなどの生演奏であればアレンジメントやレコーディングでどのような音を作るのかを最終的に決める者がプロデューサーである。また・ヒップホップ・ポップス、ダンス・ミュージックなどのDAWを用いたデスクトップミュージックでは実際に曲を制作しているビートメイカーがプロデューサーと呼ばれる[4]。いずれもサウンド面での最高責任者がプロデューサーであり、大抵はミュージシャンかレコーディング・エンジニアがプロデューサーとクレジットされる。
ジャンルやスタイルによって要求されるものがそれぞれ大きく異なるため、一般的にはプロデューサー毎に専門の分野や手法でプロデュース業を行っている。音楽によっては1人ではなく、2人、3人とチームを組んでプロデュースを行っていたり、1つのアルバムでも曲ごとにプロデューサーを変えて制作している場合もある。アルバムの中心的な役割を果たすプロデューサーは、特にエグゼクティブ・プロデューサー(executive producer)と呼ばれる。
日本
1960年代の日本では、製作資金の提供者または調整者のみがプロデューサーとして記載されることもあった[注釈 1]。その場合は、レコード会社のディレクターが、現在のプロデューサーに相当する仕事も担当していた。
プロデューサー自身が歌手またはミュージシャンである必要はなく、日本ではレコード会社(CD レーベル)や音楽出版社(楽曲管理会社)、芸能プロダクションなどの原盤管理会社の人間がプロデューサーであるのが一般的である。また、音楽制作の場合には作品のミュージシャン自身がプロデューサーを兼ねる場合もあり、その際には共同プロデューサーとしてコ・プロデューサーとクレジットされる場合もある。
総合プロデューサーの場合、アーティストのイメージをA&Rと組みながら構築してサウンドを当て込んだり、逆にサウンドが先に出来て後からアーティストのイメージを構築したりするなど様々な手法がある。アーティストのイメージを優先して行く場合には、アーティストの音楽面とパブリック・イメージ全体を司る総合プロデューサーは一般的にエグゼクティブ・プロデューサーと呼称される。冒頭に書かれた制作予算の管理運営を含めての総制作責任者のプロデューサーを指す場合にもエグゼクティブ・プロデューサーと呼称される場合がある。音楽制作進行全体を総合的にプロデュースする場合はトータル・プロデューサーと呼称され、音楽制作におけるアレンジメントなどサウンド面を中心に担う場合はサウンド・プロデューサーと呼称される。マーケットとメディアの連動を見据えて創作プロデュースする場合には、アーティスト・プロデュースとサウンド・プロデュースを兼ねてプロデュース・○○○と表記する場合もあるが、これも基本的にはトータル・プロデューサーとして全体的な制作進行が出来るプロデューサーのことを言う。
小室哲哉やつんく♂など、自身のバンドの音楽活動と並行して作詞作曲およびアレンジメントを含めたプロデュース業を行うミュージシャン系プロデューサーの台頭以後、日本歌謡界における音楽プロデューサーの影響力は急激に増した。しかし、それは高名なプロデューサーを宣伝材料として利用したプロモーションの一環にする現象の側面と、特定の音楽プロデューサーの目に止まらなければまずヒットは望めないと言うことを前提としたメーカー側の販売戦略だったため、「チャートに同じようなアーティストと同じような曲調ばかりが並んでいてほとんど区別がつかない」という意見や批判が年配層等から起こった要因の一つになったとも言われている。
音楽制作者の集合組織には音楽制作者連盟(音制連)などがあり、啓蒙活動を含め音楽制作全般をバックアップしている[5]。
セイコーインスツルの業務用ストップウオッチ「サウンドプロデューサー」は、こうした制作活動の現場(録音スタジオなど)で関係者達に活用されることを狙った同名製品。単なるストップウオッチではなく、カウントダウンタイマーや60進法の計算が出来る電卓が組み込まれている。
業務内容
サウンドだけでなく総合的にプロデュースする際、プロデュース対象であるアーティスト、ミュージシャン、タレントに対して、以下の項目にある部分などを主に担当する。
- 総合的にどのようなイメージを世間に与え、アーティストの知名度を上げていくかの戦略と展開(A&Rと連携)。
- 音楽的にどのような傾向の作品を歌唱または演奏するか、それに伴い、作詞家および作曲家を外注する場合の選定。
- 制作に際して、現場へ起用する編曲家やスタジオ・ミュージシャンらを誰にするかの選定とスケジュール調整。
- レコーディング時の作業工程および制作スケジュール、スタジオの選定。
- CDやレコード発売に関連するプロモーション用ミュージック・ビデオやポスター等の展開(メーカーの宣伝部およびA&Rと連携)。
- 音楽関連雑誌などのメディアやテレビ/ラジオなどでのプロモーション戦略と展開(メーカーの宣伝部およびA&Rと連携)。
- コンサート活動、イベント開催、各種イベント出演などの展開(メーカーの宣伝部およびA&Rと連携)。
- 出演する音楽番組などの選定と出演交渉など(メーカーの宣伝部およびA&Rと連携)。
- 日本でサウンド・プロデューサーと分類呼称される場合には、上記のうち主として項目の#2と#3におけるサウンド・プロデュースで関わる場合が多く、自身が編曲家を兼ねることも多い。
- 上記項目の#5〜#8をアーティストが所属するレコード会社やプロダクションのA&R、ディレクター、マネージャー等が担当し、こちらがプロデューサーとしてクレジットされる場合もある。
- エグゼクティブ・プロデューサーの場合には、上記の制作項目全体を含めアーティスト像全体に対するプロデュース、メディアやマーケットの連動を兼ねた総合的な業務になるため、人脈や展開能力を含めた幅広い財産と知識を必要とする。
脚注
注釈
- ^ URCの秦政明などもその一人であったといわれる
出典
- ^ a b Moorefield, Virgil (2010-02-26) (英語). The Producer as Composer: Shaping the Sounds of Popular Music. MIT Press. ISBN (978-0-262-26101-2)
- ^ “A&R Pioneers” (英語). Vanderbilt University. 2020年11月24日閲覧。
- ^ “A&R Pioneers” (英語). Vanderbilt University. 2020年11月23日閲覧。
- ^ Kot, Greg. “What does a record producer do?” (英語). www.bbc.com. 2020年11月24日閲覧。
- ^ “FMPJ 一般社団法人 日本音楽制作者連盟 - 音制連とは”. FMPJ 一般社団法人 日本音楽制作者連盟. 2020年11月24日閲覧。