真山 仁(まやま じん、1962年7月4日 - )は、日本の小説家。経済小説 『ハゲタカ』シリーズの著者として知られる。
来歴・人物
大阪府堺市出身[2]。新金岡で育ち、現在(堺市長と対談時の2016年)なお「堺で過ごした幼少期の頃の体験が強く影響」としている。
児童会の役員を務めていた小学6年生のとき、小学校の「夏休み中は午前11時まで外出するな」というルールがおかしい、と感じて担任教諭に直訴する[3]。「既存のルールを変えたかった」のだが、級友からは「政治家になれ」と言われ、自身の「表からも裏からもニュートラルな立場でモノを見る強み」に気付く[2]。「世の中を変えるため」政治家へ進む道を考えるが、世の中を変えるまでの影響力を持つためには派閥を作り国会の過半数を取る必要があるため弁護士の道も考えたが、法廷で勝っても社会は変えにくい。そこで「たった一人の人間が社会に向けて『世の中がおかしい』と物申せる職業は何か」と考えた結果、小6で選んだ道が小説家だった[3]。
小説家になるため、「3日に1冊のペースで小説を読みあさ」り、桃山学院高等学校[4]2年の夏休みに原稿用紙550枚の作品を江戸川乱歩賞に応募。大学受験を控えた高3も小説を書いてばかりいたが「社会に対する違和感を訴えるツールとして小説がある」信念を貫き[5]、「ジャッカルの日のフレデリック・フォーサイスのような、日本にはなかったポリティカル・フィクションという具体的な目標もできた」[6]。
同志社大学法学部政治学科に進み、卒業後の1987年(昭和62年)に中部読売新聞(現在の読売新聞中部支社)へ入社。岐阜支局記者として勤務し、1990年(平成2年)に退職してフリーライターとなった。
1995年1月17日の阪神淡路大震災で被災。震源に近い神戸市垂水区の7階建てマンションの1階に住んでおり、震災の早朝は徹夜で執筆を終え就寝の直後で、圧死を覚悟した。この時の気持ちを真山は「諦観がよぎるとともに、天井を冷静に凝視し、とても腹が立った」。「(小説家を目指して)必死で生きてきたのに、こんな災害で殺すのか、と」と述べている。この体験がライフワークとして震災を書く原点となり、東日本大震災後の被災地を舞台にした『雨に泣いてる』執筆につながった[7]。
2003年(平成15年)、生命保険会社の破綻危機を描いた『連鎖破綻 ダブルギアリング』で作家デビューした。当時のペンネーム「香住 究」(かずみ きわむ)は、大手生命保険会社で商品開発室課長を務めた人物との(共同筆名)で、後に刊行された文庫版では「真山仁・香住究の共著」という表記に変更された[8]。翌年、単著としてハゲタカファンドを扱った小説、『ハゲタカ』を、「真山 仁」名義で出版し、経済小説の新鋭として注目される。
2012年(平成24年)、『コラプティオ』で第2回山田風太郎賞候補、第146回直木賞候補。2014年、『グリード』で第35回吉川英治文学新人賞候補。
作品リスト
小説
「ハゲタカ」シリーズ
- 『ハゲタカ』 上、ダイヤモンド社、2004年12月。ISBN (4-478-93048-1)。
- 『ハゲタカ』 下、ダイヤモンド社、2004年12月。ISBN (4-478-93061-9)。
- 『バイアウト』 上、講談社〈講談社biz〉、2006年4月20日。ISBN (4-06-282008-0)。
- 『バイアウト』 下、講談社〈講談社biz〉、2006年4月20日。ISBN (4-06-282009-9)。
- 『ハゲタカII』 上、講談社〈講談社文庫〉、2007年3月15日。ISBN (978-4-06-275687-7)。 - 『バイアウト』(2006年刊)の改題。
- 『ハゲタカII』 下、講談社〈講談社文庫〉、2007年3月15日。ISBN (978-4-06-275689-1)。 - 『バイアウト』(2006年刊)の改題。
- 『ハゲタカII』 上(新装版)、講談社〈講談社文庫 ま54-10〉、2013年10月16日。ISBN (978-4-06-277671-4)。
- 『ハゲタカII』 下(新装版)、講談社〈講談社文庫 ま54-11〉、2013年10月16日。ISBN (978-4-06-277672-1)。 - 文献あり。
- 『レッドゾーン』 上、講談社、2009年4月23日。ISBN (978-4-06-215433-8)。 - 初出:『小説現代』連載。
- 『レッドゾーン』 下、講談社、2009年4月23日。ISBN (978-4-06-215434-5)。 - 文献あり。
- 『グリード』 上、講談社、2013年10月29日。ISBN (978-4-06-218464-9)。 - 初出:『週刊ダイヤモンド』連載。
- 『グリード』 下、講談社、2013年10月29日。ISBN (978-4-06-218651-3)。 - 文献あり。
- 『ハゲタカ外伝 スパイラル』ダイヤモンド社、2015年7月3日。ISBN (978-4-478-02937-4)。
- 【改題】『ハゲタカ4.5 スパイラル』講談社〈講談社文庫〉、2018年9月14日、(ISBN 978-4-06-512971-5)
- 『ハゲタカ2.5 ハーディ』 上、講談社〈講談社文庫〉、2017年11月15日。ISBN (978-4062938075)。
- 『ハゲタカ2.5 ハーディ』 下、講談社〈講談社文庫〉、2017年11月15日。ISBN (978-4062938044)。
- 『シンドローム』 上、講談社、2018年8月3日。ISBN (978-4-06-512706-3)。 - 初出:『週刊ダイヤモンド』連載。
- 『シンドローム』 下、講談社、2018年8月3日。ISBN (978-4-06-512705-6)。 - 文献あり。
冨永検事シリーズ
- 『売国』文藝春秋、2014年10月30日。ISBN (978-4-16-390142-8)。 - 文献あり。
- 『売国』 文春文庫〈ま33-2〉、2016年9月2日、(ISBN 978-4-16-790694-8)
- 『標的』 文藝春秋、2017年6月29日、(ISBN 978-4-16-390667-6)- 文献あり。
- 『標的』 文春文庫、2019年12月10日、(ISBN 978-4-16-791396-0)
- 『墜落』文藝春秋、2022年6月30日、(ISBN 978-4-16-391554-8)
震災三部作
- 『そして、星の輝く夜がくる』講談社、2014年3月6日。ISBN (978-4-06-218812-8)。 - 文献あり。
- 『そして、星の輝く夜がくる』講談社文庫 2015年12月15日、ISBN (978-4062930444)
- 『海は見えるか』幻冬舎、2016年2月25日、ISBN (978-4344028944)
- 『海は見えるか』幻冬舎文庫、2018年4月10日、(ISBN 978-4344427297)
- 『それでも、陽は昇る』祥伝社、2021年2月9日、(ISBN 978-4396636043)
- 『それでも、陽は昇る』祥伝社文庫、2023年1月13日、(ISBN 978-4396348601)
当確師シリーズ
- 『当確師』 中央公論新社、2015年12月19日、(ISBN 978-4120047954)- 文献あり。
- 『当確師』中公文庫、2018年12月21日、(ISBN 978-4122066632)
- 『当確師 十二歳の革命』 中央公論新社、2020年12月21日、(ISBN 978-4120053658)
- 『当確師 十二歳の革命』 光文社文庫、2022年5月11日、(ISBN 978-4334793661)
シリーズ以外
- 香住究『ダブルギアリング 連鎖破綻』ダイヤモンド社、2003年8月。ISBN (4-478-93042-2)。 - 「香住究」名義。
- 『虚像の砦』角川書店、2005年6月30日。ISBN (4-04-873625-6)。
- 『虚像の砦』講談社〈講談社文庫〉、2007年12月14日。ISBN (978-4-06-275925-0)。
- 『マグマ 小説国際エネルギー戦争』朝日新聞社、2006年2月7日。ISBN (4-02-250161-8)。
- 『ベイジン』 上、東洋経済新報社、2008年7月18日。ISBN (978-4-492-06147-3)。
- 『ベイジン』 下、東洋経済新報社、2008年7月18日。ISBN (978-4-492-06148-0)。
- 『ベイジン』 上、幻冬舎〈幻冬舎文庫 ま-18-1〉、2010年4月6日。ISBN (978-4-344-41468-6)。 - 真山 (2008b)の修正。
- 『ベイジン』 下、幻冬舎〈幻冬舎文庫 ま-18-2〉、2010年4月6日。ISBN (978-4-344-41469-3)。 - 真山 (2008c)の修正。
- 『プライド』新潮社、2010年3月。ISBN (978-4-10-323321-3)。 - 文献あり。
- 『プライド』新潮社〈新潮文庫 ま-39-1〉、2012年9月1日。ISBN (978-4-10-139051-2)。 - 真山 (2010a)に「歴史的瞬間」を併録。
- 『コラプティオ』文藝春秋、2011年7月30日。ISBN (978-4-16-380690-7)。 - 文献あり。
- 『コラプティオ』文藝春秋〈文春文庫 ま33-1〉、2014年1月10日。ISBN (978-4-16-790002-1)。 - 文献あり。
- 『黙示』新潮社、2013年2月22日。ISBN (978-4-10-323322-0)。 - 文献あり。
- 『雨に泣いてる』幻冬舎、2015年1月29日。ISBN (978-4-344-02703-9)。 - 文献あり。
- 『海は見えるか』 幻冬舎、2016年2月25日、(ISBN 978-4344028944)- 文献あり。
- 『バラ色の未来』光文社、2017年2月17日。ISBN (978-4-334-91145-4)。
- 『オペレーションZ』新潮社、2017年10月20日。ISBN (978-4-103-23323-7)。
- 『トリガー』角川書店、2019年8月30日。ISBN (978-4-041-05496-3)。
- 『神域』上、毎日新聞出版 2020年2月29日、(ISBN 978-4620108476)
- 『神域』下、毎日新聞出版 2020年2月29日、(ISBN 978-4620108483)
- 『神域』文藝春秋社〈文春文庫〉、2022年10月5日、(ISBN 978-4167919412) 合本
- 『トリガー』上、角川書店、2019年8月30日。(ISBN 978-4-041-05496-3)
- 『トリガー』下、角川書店、2019年8月30日、(ISBN 978-4041054994)
- 『トリガー』上、角川文庫、2021年3月24日、(ISBN 978-4041094259)
- 『トリガー』下、角川文庫、2021年3月24日、(ISBN 978-4041094266)
- 『プリンス』PHP研究所、2021年5月29日、(ISBN 978-4569849386)
- 『レインメーカー』幻冬舎、2021年10月27日、(ISBN 978-4344038660)
- 『タングル』小学館、2022年11月18日、(ISBN 978-4093866606)
ノンフィクション
- 横溝正史、真山仁『真山仁が語る横溝正史(せいし) 私のこだわり人物伝』角川書店(出版) 角川グループパブリッシング(発売)〈角川文庫 16369〉、2010年7月24日。ISBN (978-4-04-394369-2)。 - タイトル:真山仁が語る横溝正史。
- 『地熱が日本を救う』角川学芸出版(出版) 角川グループパブリッシング(発売)〈角川oneテーマ21 C-242〉、2013年3月。ISBN (978-4-04-653419-4)。 - 文献あり。
- 『ロッキード』文藝春秋 2021年1月10日。(ISBN 978-4-16-391303-2)
- 『プレス 素晴らしきニッポンの肖像』角川文庫、2021年12月21日、ISBN (978-4041120552)
原案
映像化作品
テレビドラマ
- ハゲタカ(2007年2月17日 - 3月24日、全6話、NHK「土曜ドラマ」で放送、主演:大森南朋)
- ハゲタカ(2018年7月19日 - 9月6日、全8話、テレビ朝日「木曜ドラマ」で放送、主演:綾野剛)[9]
- マグマ(2012年6月10日 - 7月8日、全5話、WOWOW「連続ドラマW」で放送、主演:尾野真千子)
- (巨悪は眠らせない 特捜検事の逆襲)(2016年10月5日、テレビ東京スペシャルドラマ、主演:玉木宏、原作『売国』)[10][11]
- (巨悪は眠らせない 特捜検事の標的)(2017年10月4日、テレビ東京スペシャルドラマ、主演:玉木宏、原作『標的』)[12]
- (スパイラル〜町工場の奇跡〜)(2019年4月15日 - 6月3日、テレビ東京 「ドラマBiz」で放送、主演:玉木宏、原作『ハゲタカ4.5 スパイラル』)[13]
- (オペレーションZ〜日本破滅、待ったなし〜)(2020年3月15日 - 4月19日、WOWOW「連続ドラマW」で放送、主演:草刈正雄、原作『オペレーションZ』)[14]
- (当確師)(2020年12月27日、テレビ朝日ドラマスペシャル、主演:香川照之、原作:当確師)
映画
出演
テレビドラマ
その他
- ルソンの壺(2017年4月 - 2020年3月、NHK大阪放送局) - コメンテーター
- 英雄たちの選択(2016年10月13日 - 、NHK BSプレミアム) - コメンテーター
脚注
- ^ facebook基本データを参照。
- ^ a b 気鋭の小説家 真山仁さんを迎えて - 堺市2016年12月1日
- ^ a b 産経新聞2018年(平成30年)8月21日朝刊【話の肖像画】小説家 真山仁(2)新聞記者になった理由は
- ^ 真山 仁(フェイスブック)
- ^ 産経新聞2018年8月21日朝刊【話の肖像画】小説家 真山仁(56)2 新聞記者になった理由は
- ^ 夕刊フジ2018年12月19日【ぴいぷる】小説家 真山仁「アバヨ」「ハゲタカ」シリーズ著者が初の社会派エッセーを上梓 「すぐ人のせいにする」日本からは優秀な若者が逃げてしまう
- ^ 産経新聞2018年8月23日朝刊【話の肖像画】小説家 真山仁(56)4 震災を描くのは宿命
- ^ 角川文庫版『ダブルギアリング』著者略歴では、香住究はその人物の単独筆名という扱いになっている。これはAmazonの著者略歴欄でも閲覧できる。 https://www.amazon.co.jp/dp/4041017645
- ^ “綾野剛、テレ朝連ドラ初主演 伝説の企業買収者“ハゲタカ”降臨”. ORICON NEWS (oricon ME). (2018年5月16日)2019年12月26日閲覧。
- ^ “玉木宏、『あさが来た』後の初民放ドラマで特捜検事「非常にチャレンジングな作品」”. ORICON NEWS. (2016年7月20日) 2016年7月20日閲覧。
- ^ a b “「ハゲタカ」シリーズの作家・真山仁氏、裁判長役でテレビドラマ初出演”. ORICON STYLE. (2016年9月9日)2016年9月9日閲覧。
- ^ “玉木宏、スペシャルドラマが復活〈巨悪は眠らせない〉”. モデルプレス (2017年8月1日). 2017年8月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年8月16日閲覧。
- ^ “玉木宏、町工場再生のヒーローに 『ハゲタカ』シリーズスピンオフドラマ化”. ORICON NEWS. (2019年3月1日)2019年3月5日閲覧。
- ^ “草刈正雄が初の総理大臣役、真山仁の小説「オペレーションZ」WOWOWでドラマ化”. 映画ナタリー (ナターシャ). (2019年12月26日)2019年12月26日閲覧。