朝日杯将棋オープン戦(あさひはいしょうぎオープンせん)は朝日新聞社・日本将棋連盟主催の将棋の棋戦。2006年度で終了した朝日オープン将棋選手権の後継棋戦として2007年に創設され、回次も第1回と改められた。優勝賞金は750万円[注釈 1]。
朝日杯将棋オープン戦 | |
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棋戦の分類 | 一般棋戦 |
旧イベント名 | 朝日オープン将棋選手権(前身) |
開催概要 | |
開催時期 | 2月(決勝) |
初回開催 | 2007年度(第1回) |
持ち時間 | 40分 |
番勝負 | 一番勝負 |
優勝賞金 | 1000万円(第10回まで) 750万円(第11回から) |
主催 | 朝日新聞社 日本将棋連盟 |
公式サイト | 朝日杯将棋オープン戦:日本将棋連盟 |
記録 | |
現朝日杯 | 藤井聡太 |
最多優勝 | 羽生善治(5回) |
最長連覇 | 羽生善治(3連覇) |
方式
一次予選、二次予選、本戦を行って優勝者を決定する。全棋士(全棋士参加棋戦に該当する)とアマチュア選手10人(前期の朝日アマ名人、挑戦者を含む朝日アマ名人戦のベスト8、学生名人)、女流棋士3人(主催者の推薦による)[注釈 2]が参加する。
持ち時間は各40分(対局時計使用)で、テレビ棋戦とは異なり、持ち時間を使い切った後は1手1分未満で指す。
本戦シードは8人、二次予選シードは16人で、シード順位は以下のように定められている。第1回(2007年度)の「前回ベスト4」「前回本戦出場者」には、2006年度の朝日オープン将棋選手権の成績が適用された。
- 前回ベスト4 (4名)
- タイトル保持者 (最大8名)
- 全棋士参加棋戦[注釈 3]優勝者 (最大2名)
- 前回の本戦出場者(二次予選通過者)[注釈 4] (最大4名)
- 永世称号者(襲位者および有資格者、第16回より)[1][注釈 5]
- 前回の本戦出場者(二次予選通過者、[4]の該当者以外)
- 順位戦上位者
前身の朝日オープン将棋選手権ではタイトル戦と同じく挑戦手合制の五番勝負、さらに前身の全日本プロ将棋トーナメントでは決勝五番勝負(初期は三番勝負)が採用されたが、本棋戦は決勝戦も含めてすべて一番勝負でのトーナメント棋戦である。持ち時間は短く、1人が1日に2局対局することが多い[注釈 6]。本戦は基本的にすべて1日2局であり、準決勝と決勝でさえ同じ日に行われる。
2021年2月より、本戦トーナメントベスト4まで勝ち進んだ女流棋士およびアマチュアに、棋士編入試験の受験資格が与えられることとなった[2]。
一次予選
16ブロックに分かれ、トーナメント方式で二次予選への進出者16名を決定する。アマチュア選手と女流棋士は一次予選の各ブロックに1人ずつ割り振られ、1回戦から出場する。
朝日オープンの一斉対局を引き継ぎ、アマチュア選手の対局は10局とも同日に開催。関東では朝日新聞東京本社、関西では大阪本社もしくは関西将棋会館で午前と午後に分けて5局ずつ、公開対局で行われる[注釈 7][注釈 8]。
なお2022年度現在で、アマチュア枠・女流枠から一次予選を突破したのは、アマチュアは第3回(2009年度)の(清水上徹)(二次予選1回戦で敗退)と第9回(2015年度)の(森下裕也)(同)、第16回(2022年度)の小山怜央(二次予選決勝で敗退)の3人である。女流で突破した者はいない。
アマチュア枠に対するプロの対局者は、新人即ち棋士番号の大きい方から10人(シード者は除く)[注釈 9]が選ばれる。1年に誕生する新四段(新人プロ棋士)は通常4人であるため、プロ入り1年目の新人は、必ずアマチュア選手と対局することになる。
畠山鎮は、プロから見たプロアマ一斉対局について、「棋士としてのスタートの時期に〔負けられない闘い〕です。負けた新四段の姿は痛々しいものです」と述べている[3]。
第14回(2020年度)は新型コロナウイルスの影響で、朝日アマ名人戦の開催が延期された。このため、アマチュア出場枠は前期朝日アマ名人、学生名人の2人のみとなった[4]。
二次予選
一次予選からの勝ち抜き者(16名)と二次予選からのシード者(16名)が8ブロックに分かれ、トーナメントで本戦出場者8名を決定する。トーナメント表は二次予選進出者とシード者が1回戦で対戦するように組まれる。
本戦
二次予選の勝ち抜き者(8名)と本戦シード者(8名)がトーナメント方式で優勝を争う。本戦進出者とシード者は1回戦で対戦する。準決勝・決勝は2月23日(2019年度と2020年度は2月11日、2017年度と2018年度は第3土曜日、2016年度までは第2土曜日)に東京・有楽町朝日ホールにて対局される。(原則公開だが2020・21年度は一般非公開)
2016年度からは本戦1回戦・2回戦の半分(1回戦4局、2回戦2局)も公開対局で開催している。開催日時と会場は以下の通り。
歴代結果
結果
ベスト4以上の結果は以下の通り。称号、段位は対局当時のもの。
回 | 年度 | 決勝対局日 | 優勝 | 準優勝 | ベスト4 | 注釈 | |
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(1) | 2007 | 2008年2月 | 9日行方尚史 八段 | 丸山忠久 九段 | 阿久津主税 六段 | 羽生善治 二冠 | |
(2) | 2008 | 2009年2月14日 | 阿久津主税 六段 | 久保利明 八段 | 佐藤和俊 五段 | 渡辺明 竜王 | [注釈 10] |
(3) | 2009 | 2010年2月13日 | 羽生善治 名人 | 久保利明 棋王 | 谷川浩司 九段 | 佐藤和俊 五段 | |
(4) | 2010 | 2011年2月12日 | 木村一基 八段 | 羽生善治 名人 | 渡辺明 竜王 | 郷田真隆 九段 | |
(5) | 2011 | 2012年2月11日 | 羽生善治 二冠 | 広瀬章人 七段 | 菅井竜也 五段 | 郷田真隆 九段 | |
(6) | 2012 | 2013年2月 | 9日渡辺明 竜王 | 菅井竜也 五段 | 羽生善治 三冠 | 谷川浩司 九段 | |
(7) | 2013 | 2014年2月 | 8日羽生善治 三冠 | 渡辺明 二冠 | 豊島将之 七段 | 森内俊之 竜王・名人 | |
(8) | 2014 | 2015年2月14日 | 羽生善治 名人 | 渡辺明 二冠 | 伊藤真吾 五段 | 豊島将之 七段 | |
(9) | 2015 | 2016年2月13日 | 羽生善治 名人 | 森内俊之 九段 | 村山慈明 七段 | 戸辺誠 六段 | |
(10) | 2016 | 2017年2月11日 | 八代弥 五段 | 村山慈明 七段 | 広瀬章人 八段 | 澤田真吾 六段 | [注釈 11] [注釈 12] |
(11) | 2017 | 2018年2月17日 | 藤井聡太 五段 | 広瀬章人 八段 | 羽生善治 竜王 | 久保利明 王将 | [注釈 13] |
(12) | 2018 | 2019年2月16日 | 藤井聡太 七段 | 渡辺明 棋王 | 行方尚史 八段 | 千田翔太 六段 | |
(13) | 2019 | 2020年2月11日 | 千田翔太 七段 | 永瀬拓矢 二冠 | 藤井聡太 七段 | 阿久津主税 八段 | |
(14) | 2020 | 2021年2月11日 | 藤井聡太 王位・棋聖 | 三浦弘行 九段 | 渡辺明 名人 | 西田拓也 四段 | |
15 | 2021 | 2022年2月23日 | 菅井竜也 八段 | 稲葉陽 八段 | 永瀬拓矢 王座 | 佐藤天彦 九段 | [注釈 14] |
16 | 2022 | 2023年2月23日 | 藤井聡太 竜王 | 渡辺明 名人 | 豊島将之 九段 | 糸谷哲郎 八段 | [注釈 15] |
棋士別成績
棋士 | 優勝 | 準優 | 優勝年度 | 準優勝年度 |
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羽生善治 | 5 | 1 | 2009,2011,2013,2014,2015 | 2010 |
藤井聡太 | 4 | - | 2017,2018,2020,2022 | |
渡辺明 | 1 | 4 | 2012 | 2013,2014,2018,2022 |
菅井竜也 | 1 | 1 | 2021 | 2012 |
行方尚史 | 1 | - | 2007 | |
阿久津主税 | 1 | - | 2008 | |
木村一基 | 1 | - | 2010 | |
八代弥 | 1 | - | 2016 | |
千田翔太 | 1 | - | 2019 | |
久保利明 | - | 2 | 2008,2009 | |
広瀬章人 | - | 2 | 2011,2017 | |
丸山忠久 | - | 1 | 2007 | |
森内俊之 | - | 1 | 2015 | |
村山慈明 | - | 1 | 2016 | |
永瀬拓矢 | - | 1 | 2019 | |
三浦弘行 | - | 1 | 2020 | |
稲葉陽 | - | 1 | 2021 |
プロアマ一斉対局
回 | 年度 | 対局日 | 結果 | ||
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1 | 2007 | 2007年7月7日 | プロ7勝 | アマ3勝 | |
2 | 2008 | 2008年7月12日 | プロ7勝 | アマ3勝 | |
3 | 2009 | 2009年7月4日 | プロ7勝 | アマ3勝 | |
4 | 2010 | 2010年7月3日 | プロ10勝 | アマ0勝 | |
5 | 2011 | 2011年7月2日 | プロ9勝 | アマ1勝 | |
6 | 2012 | 2012年7月7日[注釈 16] | プロ5勝 | アマ4勝 | |
7 | 2013 | 2013年7月6日 | プロ9勝 | アマ1勝 | |
8 | 2014 | 2014年7月5日 | プロ8勝 | アマ2勝 | |
9 | 2015 | 2015年7月4日 | プロ6勝 | アマ4勝 | |
10 | 2016 | 2016年6月18日 | プロ6勝 | アマ4勝 | |
11 | 2017 | 2017年6月17日 | プロ9勝 | アマ1勝 | |
12 | 2018 | 2018年7月29日 | プロ9勝 | アマ1勝 | |
13 | 2019 | 2019年6月29日 | プロ5勝 | アマ5勝 | |
14 | 2020 | 2020年7月25日,30日[注釈 17] | プロ1勝 | アマ1勝 | |
15 | 2021 | 2021年7月10日[注釈 18] | プロ7勝 | アマ3勝 | |
16 | 2022 | 2022年7月9日[注釈 19] | プロ6勝 | アマ3勝 |
- (前身棋戦である朝日オープン将棋選手権の(プロ対アマの対戦成績) も参照。)
放送・配信
以下は2018年現在。
生中継
- テレビ中継は、(CS放送)の(テレ朝チャンネル2 ニュース・情報・スポーツ)にて準決勝・決勝が放送されている[8]。当日生中継を行うほか、過去の大会の再放送を行う場合もある。
- インターネットではABEMA・将棋チャンネル[9]、ニコニコ生放送、朝日新聞デジタルにて一部対局のライブ配信を行っていた。なお第12回(2018年度)からはABEMAの独占配信となるとされ、一部の対局[10]が同局の本拠地である渋谷・Chateau Amebaにて行われた[11](実際には本戦は朝日新聞デジタルでも配信されている)。第13回では将棋情報Live(解説なし生放送)及び将棋Liveチャンネル(臨時チャンネル)を活用し前回から放送数を大きく増やしている。なお放送は基本的に木曜日及び金曜日であり東京対局の場合はChateau Amebaを使用する事が多い。
テレビ特別番組
脚注
注釈
- ^ 2017年の第11回より。それ以前は1000万円
- ^ 2016年の第10回まではタイトル保持者・棋戦優勝者・タイトル戦出場者の順に6人。
- ^ 朝日杯以外のNHK杯と銀河戦が該当する。
- ^ 前回の予選通過者のうち本戦1-2回戦での敗退者が該当。前回の本戦シード者が2回戦までに敗退した場合、次回は一次予選から原則参加することになる(他のシード要件該当者を除く)
- ^ 以前は「永世称号者」でタイトル保持者の次だったが第1回の段階で存在しない為実質第16回から有効となりその時「永世資格者」もシード対象になった。序列に関しては例として第16回の場合糸谷哲郎八段が本戦シードとなっていて谷川浩司十七世名人及び森内俊之九段(十八世名人資格者)が二次予選シードとなっている。糸谷八段は前回予選から本戦出場者の中で順位戦の最上位のため前回本戦出場者の方が上位のシードとなる。
- ^ 本棋戦のほかに1日に2局以上の対局が組まれるものとしては、NHK杯予選や銀河戦、棋聖戦一次予選(第81期以降)、叡王戦(段位別予選及び第3期~第5期の七番勝負の一部)、マイナビ女子オープン予選などがある。
- ^ プロアマ一斉対局と本戦準決勝・決勝は、将棋の公式戦では珍しく椅子に着席する形で行われる。本棋戦以外での椅子対局は、マイナビ女子オープン予選など一部のみである。
- ^ ただし、第11回(2017年度)のプロアマ一斉対局(2017年6月17日)は、当初関西将棋会館開催の大阪会場の対局は公開対局を予定していたが、対局当時デビュー戦から26連勝を飾っていた藤井聡太がプロ側のひとりとして出場。藤井の過熱する人気による混乱を避けるため、一転して非公開となった。
- ^ 2018年度(第12回)の場合、本来棋士番号314の池永天志から順番に10人が選ばれるが、棋士番号307番の藤井聡太は前回の優勝者のため本戦からの出場となるので代わりに棋士番号304の都成竜馬が選ばれた。
- ^ 優勝した阿久津は本優勝により、「類まれなる成績」を収めたとして理事会で審議となり、結果昇段が認められ、2009年4月1日付けで七段に昇段した。
- ^ 優勝した八代は本優勝により、七段以下の昇段条件のひとつ「全棋士参加棋戦優勝」を満たし、同日付で六段に昇段した。
- ^ 将棋ソフト不正使用疑惑により、三浦九段は出場停止になり、第10回朝日杯に参加できなかった。
- ^ 優勝した藤井聡太五段は、朝日杯初出場初優勝、史上最年少での朝日杯および全棋士参加棋戦優勝。また、この優勝で七段以下の昇段条件のひとつ「全棋士参加棋戦優勝」を満たし、同日付で六段に昇段した。同2月1日に五段昇段したばかりの藤井は五段昇段から16日後の六段昇段となった。
- ^ 決勝戦は井上慶太門下による、同門兄弟弟子対決となった。前身の朝日オープン将棋選手権、全日本プロ将棋トーナメントの決勝戦を含めて、本棋戦初の決勝戦同門兄弟弟子対決となった。
- ^ 本棋戦初となる「竜王位」対「名人位」の決勝戦となった。また、タイトル数では「五冠」対「二冠」の対局となった。
- ^ 1局が同年8月8日に延期となったため、全9局での一斉対局となった。なお、残り1局はアマの勝ちで通算5勝5敗。
- ^ 一斉対局は行われず。プロアマ戦に相当する対局日
- ^ 7月10日に関西将棋会館で半数の5局が一斉対局(プロ5勝)。その他の5局は8月8日までかけて順次行われた。表示はプロアマ戦相当分の合計。
- ^ 1局のみ同年7月13日開催となったため、全9局での一斉対局となった。なお、残り1局はプロの勝ちで通算7勝3敗。
出典
- ^ (日本語) 朝日杯将棋オープン戦、抽選結果発表~1次予選から見どころ満載~【第16回朝日杯将棋オープン戦】2022年6月19日閲覧。
- ^ “女流棋士・奨励会員・アマチュアにおける 棋戦優秀者への対応について|将棋ニュース|日本将棋連盟”. www.shogi.or.jp. 2021年2月7日閲覧。
- ^ 朝日杯アマプロ戦の見所は沢山ありますが、一つは新四段が棋士になり、挨拶廻りや祝賀会、支えてくれた皆様へのお礼が終わり、棋士としてのスタートの時期に〔負けられない闘い〕です。負けた新四段の姿は痛々しいものです。畠山鎮 - Twitter 将棋 棋士会 畠山鎮
- ^ Company, The Asahi Shimbun. “2人だけのアマ、気合十分 第14回朝日杯将棋、1次予選開幕 コロナの影響、例年は10人|朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル. 2020年7月11日閲覧。
- ^ “第10回朝日杯将棋オープン戦 熊本地震復興祈念対局「棋士とのつどい」「公開対局」「大盤解説会」概要・募集要項”. 日本将棋連盟. 2018年1月26日閲覧。
- ^ “朝日杯将棋オープン戦、名古屋で開幕 公開対局、満席に”. 朝日新聞デジタル (2018年1月13日). 2018年1月26日閲覧。
- ^ Company, The Asahi Shimbun. “第12回 朝日杯将棋オープン戦 名古屋対局|朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル. 2018年12月26日閲覧。
- ^ 羽生竜王と藤井四段、公式戦初対戦が早くも実現 マイナビニュース、2018年1月27日
- ^ 羽生善治竜王と藤井聡太四段が公式戦で初対決!AbemaTVで2・17生中継 TV LIFE、2018年1月27日
- ^ 一次予選・二次予選の一部及び本戦1回戦・2回戦の半分(1回戦4局、2回戦2局)
- ^ 「AbemaTV」将棋チャンネルにて『第12回朝日杯将棋オープン戦』を独占生中継! - 日本将棋連盟・2018年6月28日
- ^ プレーバック2.17 羽生善治VS.藤井聡太 最強の極意 NHKオンライン
関連項目
外部リンク
- 朝日杯将棋オープン戦中継サイト
- asahi.com:朝日杯将棋オープン戦観戦記記事一覧
- 朝日杯将棋オープン戦:日本将棋連盟