『プラトーン』(英語: Platoon、英語発音: [pləˈtuːn] プラトゥーン)は、1986年公開のアメリカ映画。製作会社はオライオン・ピクチャーズで、監督・脚本はオリバー・ストーン。出演はチャーリー・シーン、トム・ベレンジャー、ウィレム・デフォー。
プラトーン | |
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Platoon | |
監督 | オリバー・ストーン |
脚本 | オリバー・ストーン |
製作 | アーノルド・コペルソン |
製作総指揮 | ジョン・デイリー (デレク・ギブソン) |
出演者 | チャーリー・シーン ウィレム・デフォー トム・ベレンジャー フォレスト・ウィテカー ケヴィン・ディロン ジョン・C・マッギンリー フランチェスコ・クイン デイル・ダイ ジョニー・デップ キース・デイヴィッド |
音楽 | ジョルジュ・ドルリュー |
撮影 | ロバート・リチャードソン |
編集 | クレア・シンプソン |
配給 | オライオン・ピクチャーズ ワーナー・ブラザース |
公開 | 1986年12月19日 1987年4月29日 |
上映時間 | 120分 |
製作国 | アメリカ合衆国 |
言語 | 英語 |
製作費 | $6,000,000[1] |
興行収入 | $138,530,565 |
配給収入 | 17億8000万円[2] |
第59回アカデミー賞 作品賞など4部門、第44回ゴールデングローブ賞 ドラマ部門作品賞受賞作品。
タイトルの「プラトーン」は、軍隊の編成単位の一つで、30名から60名程度で構成される小隊の意味である(本来の発音に近い表記はプラトゥーンである)。
概要
1970年代の『ディア・ハンター』や『地獄の黙示録』に次いで、1980年代にベトナム戦争を描いたオリバー・ストーンの代表作である。
ベトナム帰還兵であるオリバー・ストーンが、アメリカ陸軍の偵察隊員であった頃の実体験に基づき、アメリカ軍による無抵抗のベトナム民間人に対する虐待・放火、虐殺や強姦、米兵たちの間で広がる麻薬汚染、仲間内での殺人、誤爆、同士討ち、敵兵に対する死体損壊など、現実のベトナム戦争を描く。
アメリカ国内だけで予算の20倍を超える1億3800万ドルの興行収入を記録した。
ストーリー
1967年。アメリカ合衆国の白人の大学生・クリス・テイラーは、黒人やその他の少数民族、地方の田舎町で生まれ育った貧困層など、比較的低い社会階層の自分と同年代の若者が世間で不当な扱いを受け、職業と現金を求めてアメリカ軍に入隊し、次々とベトナム戦争に出兵していく現実に憤りを覚え、両親の反対を押し切って大学を中退してアメリカ陸軍に志願し、ベトナム共和国(南ベトナム)のカンボジア国境付近に駐屯するアメリカ陸軍第25歩兵師団のある小隊に配属される。
小隊は若い小隊長・ウォルフ中尉を差し置き、戦鬼と化した分隊長・バーンズ軍曹と、まだ人間らしさを残したもうひとりの分隊長・エリアス軍曹が取り仕切る小社会だった。鬱蒼としたジャングルで敵味方が混在する戦場の過酷さはクリスの想像を遥かに超えるものであり、彼は配属当日に自身の正義漢ぶった決断を後悔する。クリスは配属直後の戦闘で負傷し、しばらく小隊を離れる。復帰後のクリスはさまざまな出自の若い兵士たちと大麻をたしなみながら徐々に小隊に打ち解け、兵隊生活になじみ、そして過酷さを増していく戦争にも慣れていく。
小隊は、敵である北ベトナム軍や南ベトナム解放民族戦線(ベトコン)のゲリラ戦に悩まされるだけでなく、士気が落ちて疑心暗鬼となった味方の同士討ちにもさいなまれ、兵士たちは次々と倒れる。狂気に陥った隊員たちの中には非武装の民間人に手を出す者まで現れる。
戦地における民間人の処遇を巡り、強硬に全滅を主張するバーンズと、それに反対するエリアスの対立は決定的となる。バーンズを軍法会議に告発しようと考えていたエリアスは、それに気づいたバーンズにジャングルで撃たれて瀕死の重傷を負う。北ベトナム軍の追撃を受け、小隊はエリアスを見捨ててヘリコプターで離脱する。取り残されたエリアスはベトコンに追われたのち、味方のヘリコプターの機銃掃射のために絶命する。クリスは、バーンズの態度から彼がエリアスを撃ったことを察知し、仲間たちに報復を呼びかけるが、それを立ち聞きしていたバーンズはエリアスの追放を正当化し、「殺せるものなら殺してみろ」と隊員たちを挑発する。
翌日の夜更け、北ベトナム軍の大部隊がクリスたちの小隊に夜襲を仕掛け、彼らを包囲する。北ベトナム軍はクリスたちの防衛線を突破して後方地帯にも浸透し、師団の(大隊)本部は自爆攻撃によって大隊長ごと壊滅する。直下の(中隊長)のひとりが恐慌をきたし、自分たちのいる陣地ごと空爆するように要請を出したことで、クリスたちは味方の空爆に巻き込まれてしまう。ほとんどの兵士が倒れ、クリスも負傷する。混乱に乗じて、バーンズがクリスに襲いかかるが、すぐ近くで投下弾が爆発し、2人は気を失う。
夜明け。意識を回復したクリスは、重傷を負ったバーンズを見つけ、拾った敵の銃(56式自動歩槍)で射殺する。ジャングルをさまようクリスは味方の部隊に救出され、2回戦傷を負ったら後方支援に回るという軍規に基づき戦場をあとにする。
キャスト
役名 | 俳優 | 日本語吹替 | ||
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ソフト版 | テレビ朝日版 | テレビ東京版 | ||
クリス・テイラー | チャーリー・シーン | 宮本充 | 池田秀一 | 堀内賢雄 |
ボブ・バーンズ2等軍曹 | トム・ベレンジャー | 谷口節 | 佐々木功 | 山路和弘 |
ゴードン・エリアス3等軍曹 | ウィレム・デフォー | 大塚芳忠 | 苅谷俊介 | 森田順平 |
バニー | ケヴィン・ディロン | 落合弘治 | 古田信幸 | 藤原啓治 |
ビッグ・ハロルド | フォレスト・ウィテカー | 相沢正輝 | 屋良有作 | 中博史 |
レッド・オニール | ジョン・C・マッギンリー | 田原アルノ | 千田光男 | 内田直哉 |
ラー | フランチェスコ・クイン | 古澤徹 | 麦人 | 廣田行生 |
ハリス大尉 | デイル・ダイ | 水野龍司 | 池田勝 | 仲野裕 |
ガーター・ラーナー | ジョニー・デップ | 岩松廉 | 星野充昭 | 川島得愛[3] |
キング | キース・デイヴィッド | 中博史 | 谷口節 | 楠見尚己 |
フランシス | コーリー・グローヴァー | 吉田孝 | 田中亮一 | 成田剣 |
ウォルフ中尉 | マーク・モーゼス | 清水明彦 | 安原義人 | 平田広明 |
ウォーレン | トニー・トッド | 手塚秀彰 | 大山高男 | 水内清光 |
ジュニア | レジー・ジョンソン | 檀臣幸 | 江原正士 | 咲野俊介 |
ガードナー | ボブ・オーウィグ | 後藤史彦 | 牛山茂 | 大川透 |
テックス | デヴィッド・ニードルフ | 古澤徹 | 幹本雄之 | 平野俊隆 |
ドク | ポール・サンチェス | 青山穣 | 田原アルノ | 中多和宏 |
クロフォード | (クリス・ペダーセン) | 堀川仁 | 二又一成 | 浜田賢二 |
ロドリゲス | クリス・カスティリェホ | 柳沢栄治 | ||
サンダーソン(サンディ) | J・アダム・グローヴァー | 鳥畑洋人 | 曽我部和恭 | |
マニー・ワシントン | コーキー・フォード | 青山穣 | ||
トニー | イワン・ケイン | 柳沢栄治 | 水野龍司 | |
エース | テリー・マキルヴェイン | 永井誠 | 古澤徹 | |
タブス | アンドリュー・B・クラーク | 吉田孝 | 宮島史年 | |
モアハウス | ケヴィン・エシェルマン | 青山穣 | 阪口周平 | |
パーカー | ピーター・ヒックス | 永井誠 | ||
ホフマイスター | ロバート・ガロッティ | 手塚秀彰 | ||
サル | リチャード・エドソン | 後藤史彦 | ||
エベンホック | マーク・エベンホック | 吉田孝 | ||
老女 | クラリサ・オルタチオ | 原語流用 | 定岡小百合 | |
掩蔽壕に居る第一中隊少佐 | オリバー・ストーン | 手塚秀彰 | 大川透 | |
不明 その他 | N/A | N/A | 広瀬正士 津田英三 小野健一 小室正幸 荒川太郎 菅原淳一 小形満 | N/A |
- ソフト版:初回盤発売1998年6月25日
- テレビ朝日版:初回放送1989年10月8日『日曜洋画劇場』
- 当時『日曜洋画劇場』で解説をしていた淀川長治は本作及びオリバー・ストーンの作品に否定的なことで知られていたが、本作は当吹き替えを鑑賞後に一転し「結構いいね。オリバー・ストーンやるね。」と称賛、解説でも好意的な感想を述べていた[4]。
- テレビ東京版:初回放送2003年9月25日『木曜洋画劇場』
スタッフ
- 監督/脚本:オリバー・ストーン
- 製作総指揮:ジョン・デイリー、(デレク・ギブソン)
- 製作:アーノルド・コペルソン
- 撮影:ロバート・リチャードソン
- 音楽:ジョルジュ・ドルリュー
- 特殊メイク:(ゴードン・J・スミス)
- 美術:(ローデル・クルツ)
日本語版
- 日本語字幕翻訳:岡枝慎二
作品解説
出演した俳優は当時まだ無名に近いものが多く、予算は600万ドルと多くはなかったが、実体験に基づいたリアリティのある戦闘シーンなどハリウッド的スペクタクル映画の要素も備えており映画は大ヒットした。
『プラトーン』の成功でオリバー・ストーンはベトナム戦争を題材にした映画の先駆者として評価されるようになり、一人のベトナム帰還兵の生涯を描いた『7月4日に生まれて』を監督。同作品でもアカデミー監督賞を受賞した。
ナレーションは主役を演じたチャーリー・シーンにより行われた。
配役
主人公のクリス・テイラー役には当初カイル・マクラクランやキアヌ・リーブスが候補に挙がっていたが、共に出演を断られた。また、チャーリー・シーンの実兄であるエミリオ・エステヴェスにも出演を依頼したがギャランティー関連の交渉が成立せず、「テイラーを演じるには若すぎる」として出演を断っていた弟のチャーリー・シーンが演じることとなった。また監督はジョニー・デップにもテイラー役をオファーしている。デップは自分が若すぎることと自らに知名度がないことを理由に断ったが、ストーンは「彼は将来一大映画スターになるであろう」と予測し、(端役ではあったが)ガーター・ラーナー役での出演を直訴した。
冷酷無比な人物として登場するバーンズ軍曹[7]の役は当初ケビン・コスナーに出演を依頼していた。
撮影・演出
撮影当時は、アメリカ合衆国とベトナム社会主義共和国との国交がなかったため、フィリピン共和国のルソン島で行われている。映画に参加する全ての俳優は、撮影開始2週間前からフィリピンに滞在し、当時の生活を実践した。髪型と食料は、軍人仕様と同一のもの(GIカットにレーション)とさせられ、シャワーを浴びることさえ許可されなかった。また、ジャングルで夜を明かす際も、ローテーションで監視まで行う徹底ぶりであった。指導には、元アメリカ合衆国海兵隊大尉であり、本作でハリス大尉役を演じているデイル・ダイが係わっている[8]。
映画で使用された煙草は、オリバー・ストーンがリアリティに拘った結果、当時製造されていた桜色のパッケージを施したマールボロを再現した。
映画に参加した俳優の中には、着用しているM1ヘルメットのカバーに自らメッセージを書き加えたものもいる[9]。
焼き討ちした村を離れ、大勢の兵士が銃を携行して移動するシーンには、日本のMGC製モデルガンM16自動小銃が小道具として使われていた。
受賞・ノミネート
- 第59回アカデミー賞
- 受賞:作品賞、監督賞、編集賞、録音賞
- ノミネート:脚本賞、助演男優賞(ベレンジャー/デフォー)、撮影賞
- 第44回 ゴールデングローブ賞
- 受賞:ドラマ部門作品賞/監督賞/助演男優賞(ベレンジャー)
- ノミネート:脚本賞
- 第41回 英国アカデミー賞
- 受賞:監督賞、編集賞
- ノミネート:撮影賞
- 第2回 インディペンデント・スピリット賞
- 受賞:作品賞、監督賞、脚本賞、撮影賞
- ノミネート:主演男優賞(デフォー)
- 第37回ベルリン国際映画祭 銀熊賞(監督賞)
- 第22回 カンザスシティ映画批評家協会賞 監督賞
- 第7回 ボストン映画批評家協会賞 監督賞
- 第61回 キネマ旬報ベスト・テン 委員選出外国語映画第2位
- 第11回 日本アカデミー賞 最優秀外国語作品賞
脚注
- ^ “Platoon (1986)” (英語). Box Office Mojo. 2011年4月3日閲覧。
- ^ 『キネマ旬報ベスト・テン85回全史 1924-2011』(キネマ旬報社、2012年)460頁
- ^ 終盤の通信のシーンでは阪口周平になっている。
- ^ “第1回 淀川長治氏の作品評価をひっくり返した日本語吹き替え版の偉業”. ふきカエル大作戦 日本語吹替え専門. アンソニーの吹替え事件ファイル (2022年7月1日). 2022年9月5日閲覧。
- ^ “水曜日は映画の日!”. ふきカエル大作戦 日本語吹替え専門. ダークボのふきカエ偏愛録 (2017年10月1日). 2023年2月25日閲覧。
- ^ darkboのツイート(896727840128778240)
- ^ バーンズ軍曹のモデルとなった人物は、過去、顔のキズを治すため沖縄基地へ赴任したことがあり日本人女性と結婚している(原作より)。
- ^ ダイは本作のノベライズも執筆している。
- ^ 通訳兵ラーナーを演じたジョニー・デップは、シンプルに当時交際していた女優のシェリリン・フェンの名前を書いた。また彼は撮影当時22歳であったが、アメリカ国外へ出たのは『プラトーン』の撮影が初めてであった。彼の将来性を見抜いていたストーンは、ジョニー・デップを初めてハリウッドに紹介した人物であるとされている。