『シェーン』(Shane)は、1953年のアメリカ合衆国の西部劇映画。パラマウント映画製作・配給。監督はジョージ・スティーヴンス、主演はアラン・ラッド。カラー、118分。
シェーン | |
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Shane | |
ポスター(1953) | |
監督 | ジョージ・スティーヴンス |
脚本 | (A・B・ガスリー・Jr.) |
原作 | ジャック・シェーファー |
製作 | ジョージ・スティーヴンス |
出演者 | アラン・ラッド ヴァン・ヘフリン ジーン・アーサー |
音楽 | ヴィクター・ヤング |
撮影 | ロイヤル・グリッグス |
編集 | ウィリアム・ホームベック トム・マクアドゥー |
製作会社 | パラマウント映画 |
配給 | パラマウント映画 |
公開 | 1953年4月23日 1953年10月20日 |
上映時間 | 118分 |
製作国 | アメリカ合衆国 |
言語 | 英語 |
配給収入 | 1億8175万円[1] |
ジャック・シェーファーの小説の映画版。映画批評家のアンドレ・バザンは「sur-Western(新たな西部劇)」と位置づけ[2]、興行的にも成功した。第26回アカデミー賞で撮影賞(カラー部門)を受賞。1993年にアメリカ国立フィルム登録簿に登録された。
作品の格闘描写は、当時では画期的な、暴力的で激しいものであり、発表当時は、その描写が話題となった[3]。
あらすじ
南北戦争後のワイオミング州の西部に広がる高原、グランドティートン山が前にそびえ立っているジョンソン郡の開拓地では、牧畜業者と農民との間でいがみ合いが続いていた。[注 1]
この土地では従来からの権利を主張する牧畜業者のライカー(エミール・メイヤー)一家と開拓者たちが対立していた。開拓者が来る前に、先住民と戦い、この土地を今日の様にしたのは自分達だとライカーは主張していたのだ。ある日、この土地にやってきた流れ者のシェーン(アラン・ラッド)は、ある開拓者の住まいに辿り着き、飲み水をわけてもらう。開拓者の主のジョー・スターレット(ヴァン・ヘフリン)から「ライカーの仲間か」と聞かれるが、そこへライカー一家がやってきて従来の主張を繰り返す。シェーンはジョーに加勢しライカー一家を追い返す。ジョーはシェーンを夕食へ招待し、夕食をご馳走になったシェーンは、作業を手伝いこの家に留まる決心をする。
やがて息子のジョーイ(ブランドン・デ・ワイルド)と仲良くなり、そしてジョーやその息子ジョーイと友情を結ぶシェーンだった。ジョーの妻マリアン(ジーン・アーサー)は彼に惹かれ、またシェーンも彼女に惹かれてゆく。そして農民たちとも親しくなっていった。
シェーンはジョーの遣いで針金を街に受け取りに行き、自身の作業服も買おうとするが、酒場でライカーの手下クリス・キャロウェイ(ベン・ジョンソン)に侮辱を受ける。ジョーからいざこざに巻き込まれないように言われていたシェーンは甘んじて侮辱を受け流す。
しかし、シェーンは腰抜けだという噂が流れたため、シェーンは次に開拓者達と街に行った際に、クリスを叩きのめしてしまう。ライカーは掌を返しシェーンを雇おうとするがシェーンは拒否し、多勢に無勢で窮地に陥る。そこへジョーが飛び込み大乱闘になり、ライカーとその一家をも叩きのめしてしまう。
ここで、シェーンとジョーとの殴り合いに敗れたライカーとその一家はシャイアンに遣いを送り、殺し屋のウィルスン(ジャック・パランス)を雇う。力ずくで農民たちを追い出す魂胆であった。殺し屋ウィルスンは開拓農民の一人トーレーを挑発し、トーレーが銃に手をかけたとたんに早撃ちの一発で殺害する。その暴虐に農民達は恐れ、立ち去ろうとする者がいる一方で、ジョー・スターレットは立ち向かうことを主張した。そして、話し合おうというライカーの呼びかけに、ジョーは単独で会いに行こうとするのだったが、シェーンは罠だと諌めて力ずくで止め、一人でライカーとその一家に立ち向かう。
シェーンは酒場でライカーやウィルスンを「0.5秒[注 2]」の早撃ちで倒した。そして、2階から彼を狙い撃とうとしたライカーの弟は、ジョーイのとっさの掛け声で、シェーンに返り討ちにされる。しかし、シェーンもまた脇腹を撃たれていた。彼が家に来てから彼を慕い、憧れていたジョーイは犬とともに酒場まで追いかけてきたのだった。傷ついた身体を心配して一緒に家に帰ろうと呼びかけるジョーイに、シェーンは「人を殺してしまえば、もう元には戻れない」と言って、馬に跨りワイオミングの山へと去っていった。必死に呼びかけるジョーイの声はやがて「シェーン!! カムバック!!」と山にこだまするのであった。そしてそのあと、別れを受け入れた少年の「グッバイ、シェーン!」が聞こえてくるのだった。
キャスト
役名 | 俳優 | 日本語吹替 | ||||||
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日本テレビ旧版 | 日本テレビ新版 | テレビ朝日版 | テレビ東京版 | スター・チャンネル版 | PDDVD版 | N.E.M.版[4] | ||
シェーン | アラン・ラッド | 石田太郎 | 中田浩二 | 佐々木功 | 山寺宏一 | 大塚智則 | 津田健次郎 | |
マリアン・スターレット | ジーン・アーサー | 中西妙子 | 池田昌子 | 日髙のり子 | 並木のり子 | 北川里奈 | ||
ジョー・スターレット | ヴァン・ヘフリン | 下川辰平 | 小林昭二 | 田中信夫 | 高木渉 | 矢嶋俊作 | 森久保祥太郎 | |
ジョーイ・スターレット | (ブランドン・デ・ワイルド) | 伊東永昌 | 松田辰也 | 大友大輔 | 二宮慶多 | 渡辺つばさ | 飯沼南実 | |
ルーフ・ライカー | (エミール・メイヤー) | 小松方正 | 大塚周夫 | 土師孝也 | 柴田秀勝 | 石井康嗣 | ||
ジャック・ウィルスン | ジャック・パランス | 小林清志 | 小林清志 | 麦人 | 谷田歩 | 木村裕二 | 露崎亘 | |
クリス・キャロウェイ | ベン・ジョンソン | 小林勝彦 | 若本規夫 | 花輪英司 | 合田慎二郎 | 清水裕亮 | ||
フレッド・ルイス | (エドガー・ブキャナン) | 相模太郎 | 藤本譲 | 秋元羊介 | 平林正 | 渡部俊樹 | ||
フランク・“ストーンウォール”・トーリー | エリシャ・クック・Jr | 園田裕久 | 千田光男 | 荻野晴朗 | 西孝貴 | 大泊貴揮 | ||
アクセル・“スウェード”・シップステッド | (ダグラス・スペンサー) | 保科三良 | 納谷六朗 | 東和良 | 小倉直寛 | 奥田寛章 | ||
モーガン・ライカー | (ジョン・ディークス) | 北山年夫 | 中庸助 | 関貴昭 | 真田雅隆 | 谷内健 | ||
サム・グラフトン | ポール・マクヴィ | 上田敏也 | 村松康雄 | 宝亀克寿 | 安芸此葉 | |||
リズ・トーリー | (エレン・コービー) | 織部ゆかり | ||||||
不明 その他 | N/A | 安部徹 田村錦人 森川公也 保科三良 吉沢久嘉 嶋俊介 雨森雅司 笹岡文雄 田中康郎 八奈見乗児 内田稔 国坂伸 | 山本廉 小野丈夫 加藤正之 高村章子 山田礼子 丸山詠二 柳沢紀男 巴菁子 屋良有作 田中美由紀 | 小島敏彦 稲葉実 塚田正昭 伊井篤史 沢木郁也 辻親八 滝沢ロコ 巴菁子 片岡富枝 遠藤勝代 | 堀越富三郎 瀬田ひろ美 和優希 長谷川敦央 土屋直人 平修 佐治和也 伊沢磨紀 佐伯美由紀 | 福里達典 当間奈津子 瀬水暁 南武真太郎 平田知子 秋山広子 TSM[注 3] | 柳原かなこ 細川祥央 阿部彬名 広瀬淳 星野佑典 | |
日本語版スタッフ | ||||||||
演出 | 小林守夫 | 伊達康将 | 清水洋史 | 椿淳 | 岩田敦彦 | |||
翻訳 | 木原たけし | 岸田恵子 | 東條加奈子 | |||||
効果 | 赤塚不二夫 | |||||||
調整 | 山田太平 | |||||||
制作 | 東北新社 | 高砂商事 | 合同会社C&Tサルミックス | |||||
解説 | 淀川長治 | |||||||
初回放送 | 1974年4月3日 『水曜ロードショー』 21:00-22:55[注 4] | 1976年10月6日 『水曜ロードショー』 21:00-23:24 | 1979年1月14日 『日曜洋画劇場』 21:00-22:54 | 1990年10月11日 『木曜洋画劇場』 21:03-23:24 | 2016年8月11日 21:00-23:00[5] | 2019年 |
スタッフ
- 監督: ジョージ・スティーヴンス
- 脚本: (A・B・ガスリー・Jr.)
- 原作: ジャック・シェーファー
- 製作: ジョージ・スティーヴンス
- 音楽: ヴィクター・ヤング
- 撮影: ロイヤル・グリッグス
- 編集: ウィリアム・ホームベック、トム・マクアドゥー
- 製作会社: パラマウント映画
- 主題曲『遙かなる山の呼び声』(The Call for Far-away Hills、作曲:ヴィクター・ヤング、歌:ドロレス・グレイ)
受賞・ランキング
受賞・ノミネート
ランキング
- AFIアメリカ映画100年シリーズ
- 1998年:「アメリカ映画ベスト100」第69位
- 2003年:「アメリカ映画100年のヒーローと悪役ベスト100・ヒーロー部門」第16位
- 2005年:「アメリカ映画の名セリフベスト100」第47位(「Shane. Shane. Come back!(シェーン、シェーン、カムバック!)」)
- 2006年:「感動の映画ベスト100」第53位
- 2007年:「アメリカ映画ベスト100(10周年エディション)」第45位
- 2008年:「10ジャンルのトップ10・西部劇部門」第3位
- 1988年:「大アンケートによる洋画ベスト150」(文藝春秋発表)第45位
- 2009年:「オールタイム・ベスト映画遺産200 外国映画篇」(キネマ旬報発表)第59位[6]
著作権
日本では東北新社が配給権を持つことから、東北新社が正規盤DVD-Videoを発売すべきところ、パラマウント社が頒布権に異議を唱えたことから、どちらがDVDを出すかが決まらないために、日本では長らく正規盤DVDが発売されてこなかった[注 5]。
2013年9月にパラマウント・ジャパンからBlu-ray Discの発売が予定されており(品番:PBH-137042)、各種通販サイトでも予約が行われたが、諸事情により直前になって発売が中止された[7]。
現在も東北新社が配給権を保持しており、2016年にリマスター版が日本で公開された際も東北新社が配給をした。
2018年9月に株式会社ディスク・ロードの復刻シネマライブラリーから正規盤DVDとBlu-ray Discが発売[8][9]。
日本においては、1953年(昭和28年)公開の団体名義の映画作品は『2003年(平成15年)12月31日に著作権の保護期間が終了したもの』と考えられたことから、幾つかの会社から『格安DVD』としてリリースされた。しかし、東北新社とパラマウント社は著作権存続を主張した。2007年(平成19年)12月18日に、最高裁判所で「著作権法による著作権の保護期間が終了した」と確定判決を下したことで「シェーンの著作権は消滅した」ということが、裁判を通じて公に認められた。
脚注
注釈
- ^ 南北戦争後に政府は西部開拓を積極的に進めるために、入植した農民が5年間耕作すると無償で一定の土地が得られる法律(1862年成立の「ホームステッド法」)を制定。
- ^ 公開時のうたい文句だが、その後にフィルムの分析では0.3秒と判明。
- ^ 阿部奨、阿部愛美、加瀬今日子、河村奈津美、斎藤麻美、清水圭子、棚橋唯、錦織彩花、林裕之、山際久美、増本琴音、菊池慶博
- ^ 放送枠が21:30 - 22:55から21:00 - 22:55に拡大された初回。なお、この回は解説として出演していた水野晴郎が「いやぁ、映画って本当にいいもんですね!」というフレーズを初めて用いた回でもある。
- ^ VHSはCIC・ビクタービデオ(法人としては現在のパラマウント・ジャパン)から発売されたことがある)。
出典
- ^ 『キネマ旬報ベスト・テン85回全史 1924→2011』、キネマ旬報社、2012年5月23日、p.105
- ^ シェーン、日本大百科全書、コトバンク、2015年12月13日閲覧
- ^ 紀田順一郎『昭和キネマ館』、小学館を参照
- ^ N.E.M.officialさんのツイート(2019年12月18日) - Twitter
- ^ “シェーン[新録・完全吹替版]”. スター・チャンネル. 2016年6月19日閲覧。
- ^ 、キネマ旬報映画データベース、2015年5月31日閲覧 インターネットアーカイブ
- ^ “セルブルーレイ商品『シェーン』発売中止のご案内”. パラマウント映画. 2018年8月16日閲覧。
- ^ “シェーン HDリマスター [Blu-ray]”. Amazon.com. 2018年8月16日閲覧。
- ^ “シェーン HDリマスター [DVD]”. Amazon.com. 2018年8月16日閲覧。