コンパートメント席(コンパートメントせき)とは、鉄道車両などにおける、数席ごとに仕切板などで区切った形式の座席をいう。日本では数少ないが、ヨーロッパなどの鉄道車両では比較的多く見られるもので、すべての客席がコンパートメントとなっているタイプの客車をコンパートメント車と呼ぶ。これに対して大きな空間に連続して座席が配置されている形式を開放座席車などと称する。
日本でいうコンパートメント席は、単に「個室」(こしつ)ともいい、特にその区画を一つの単位として発売されるものを指すことが多い。JR北海道がかつて運用した(キサロハ182形550番台)の1階部分に設置されたものは「コンパートメント個室」といい、またこの個室を利用する際に発行される料金券をコンパートメント券という。
以下では、2013年現在の日本における車両・列車のコンパートメント席について解説する。ヨーロッパなどの「個室」として扱われず、区画単位で発売するのが一般的でない区分室をもつ客車については、コンパートメント車を参照されたい。
過去には戦前の一等車や戦後の国鉄151系のパーラーカー(クロ151形)、新幹線100系電車などにもコンパートメント席が存在した。また、個室寝台車については寝台車の項目を参照。
コンパートメント席を持つ車両・列車
JR
- JR東日本E261系電車(定員4・6名)
- 「(サフィール踊り子)」で運用される。2号車、3号車に4人用、6人用が2室ずつ設けられており、プレミアムグリーン車扱い。
- JR九州787系電車(定員4名)
787系の4人個室
私鉄
- 東武100系電車「スペーシア」(定員4名)
- 「けごん」「きぬ」「スペーシアきぬがわ」で運用され、6号車に6室設定されている。定員は4名であるが、小児のみで乗車する場合には6名まで利用可能となっている。「スペーシアきぬがわ」として運行する時はJR線内でグリーン車扱いを受けるため、JR直通対応車両にはグリーン車マークが車体側面に貼付されている。
- 近鉄30000系電車「ビスタEX」(定員5名)
- 2階建車両の階下に「グループ専用席」が1編成に4箇所あり、3人 - 5人が同一区間で利用できる。特急料金は乗車人数分となる。
- 近鉄50000系電車「しまかぜ」(定員4名)
- 長野電鉄2100系電車(定員4名)
- JR東日本253系電車の譲受車。JR時代のグリーン個室を改造した4人個室「Spa猿〜ん」が1号車に1室設置されている。利用には特急券の他に「個室指定券」が必要。
東武100系電車「スペーシア」の4人個室
近鉄30000系電車「ビスタEX」のグループ専用席
近鉄50000系電車「しまかぜ」の和風個室
近鉄50000系電車「しまかぜ」の洋風個室
営業運転を終了した車両
- JR東日本251系電車
- 「(スーパービュー踊り子)」での運用時に定員4名のグリーン個室を設定していたが、2020年3月14日のダイヤ改正に際して営業運転を終了した。
- JR北海道キハ183系5100番台「」
- 3号車に4人用グリーン個室を4席設置していた。2020年に運行を終了。
- JR北海道(キハ183系550番台)
- 富士急行2000形電車
- 2号車に6人用区画が1室設けられていた。使用する際は特急料金の他に個室料金が必要だった。
セミコンパートメント席を持つ車両・列車
4人向かい合わせの席を、他の席と離れた場所に設けたり、他者の視線をさえぎるよう仕切りを高くするなどして、個室のような雰囲気を持たせた席がある。これは、「セミコンパートメント」と呼ばれる。
JR
- JR東日本HB-E300系気動車
- 「リゾートしらかみ」青池編成・ブナ編成および「海里」の2号車に4人用のセミ個室が9区画(「海里」は8区画)設置されている。ブナ編成と海里では一部の座席をフルフラットにすることもできる。
- (JR東海313系電車・8000番台)
- セントラルライナーで使用されていた専用車両。車端部にテーブルを設置した4人掛けの固定クロスシートが存在する。
- JR西日本117系電車「WEST EXPRESS 銀河」
- 3号車にコンパートメントシート「ファミリーキャビン」を2区画設置している。定員は昼行時は4人だが、夜行時は2人となる。
- JR九州キハ71系気動車
- リニューアル時に伴い1号車の車端部にセミコンパートメントが2区画設置された。
- JR九州キハ72系気動車
- 3号車の中間部に、上記の787系電車と同様にガラスパーティションで仕切られた4人用簡易コンパートメント席が4区画設けられている。
HB-E300系
700系「ひかりレールスター」
373系
787系
キハ71系
キハ72系
私鉄・第3セクター鉄道
- 小田急50000形電車「VSE」
- 3号車に「サルーン」と称した4人用区画を3室設けている。定期運行されていた当時、利用するには特急券の代わりに定員である4人分の特急券と同額の「サルーン特急券」を購入する必要があった。
- 富士山麓電気鉄道(8000系電車)「(フジサン特急)」
- 1号車車端部にセミコンパートメントを設置している。
- 近鉄50000系電車「しまかぜ」
- 6人用サロン席を3つ設置。4人 - 6人が同一行程で利用でき、乗車人数分の特急券・しまかぜ特別車両券が必要。
小田急50000形電車「VSE」の「サルーン」
近鉄50000系電車「しまかぜ」の「サロン席」
営業運転を終了した車両
- 新幹線200系電車
- JR北海道キハ183系5100番台「」
- 2階建車両2階部分4人用普通席区画をセミコンパートメントとして案内していた[7]。2020年に引退。
- JR九州キハ183系気動車
- 「(オランダ村特急)」・「ゆふいんの森」・「(シーボルト)」時代に中間車にセミコンパートメントを設置していた。「ゆふDX」転用時に乗車定員に含まれないロビー室に変更された。
- 小田急20000形電車「RSE」
- 名鉄8800系電車「パノラマDX」
- 智頭急行HOT7000系気動車
- 貫通型先頭車(HOT7020形)にセミコンパートメントが設置されていたが、後に「多目的室」扱いとなり座席として利用することができなくなった[8]。
- 新幹線961形電車
- 非営業車(試験車)ではあるが、寝台兼用個室座席や多人数用の個室が設けられていた。
脚注
- ^ 近鉄、新型特急投入へ 客1万人に調査、意見反映[] - 中日新聞 2010年1月21日
- ^ 新型観光特急平成25年春デビュー! (PDF) - 近畿日本鉄道 2011年7月1日
- ^ 交通新聞社「鉄道ダイヤ情報」2012年11月号に掲載
- ^ 編集部「JR各社の車両配置表 平成26年4月1日現在」『鉄道ファン』第54巻第7号 (No.639) 特別付録、2014年7月、p2。
- ^ “えちごトキめきリゾート 雪月花”. イチバンセン (2016年10月24日). 2016年11月22日閲覧。
- ^ “東北新幹線でマッサージを”. 日本経済新聞 (日本経済新聞社): p. 39. (2000年12月2日)
- ^ 交通新聞社『列車編成席番表』による。
- ^ お客様の声と対応について 智頭急行