『HOLD YOUR LAST CHANCE』(ホールド・ユアー・ラスト・チャンス)は、日本のミュージシャンである長渕剛の7枚目のオリジナルアルバム、およびアルバムの9曲目に収録されている楽曲である。
『HOLD YOUR LAST CHANCE』 | |
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長渕剛 の スタジオ・アルバム | |
リリース | |
録音 | エピキュラススタジオ(東京) サウンドインスタジオ(東京) CBSソニー六本木スタジオ(東京) チェロキーレコードワン (LA) ケンダンレコード (LA) |
ジャンル | ポピュラー |
時間 | |
レーベル | 東芝EMI/エキスプレス |
プロデュース | 長渕剛 |
チャート最高順位 | |
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長渕剛 アルバム 年表 | |
EANコード | |
『HOLD YOUR LAST CHANCE』収録のシングル | |
1984年8月18日に東芝EMIのエキスプレスレーベルからリリースされた。前作『HEAVY GAUGE』(1983年)よりおよそ1年2ヶ月ぶりとなる作品であり、作詞は長渕および秋元康、作曲およびプロデュースは長渕が担当している。
本作のレコーディングは5thアルバム『時代は僕らに雨を降らしてる』(1982年)以来となる日本国外レコーディングが一部行われており、また同作と同様にミキサーとして(グレッグ・ラダニー)が参加している。本作より声質や歌唱法が変化しており、前作より増してロックサウンドを意識した作風となっている。
TBS系テレビドラマ『家族ゲームII』(1984年)の主題歌として使用された先行シングル「孤独なハート」を収録している。
オリコンチャートでは最高位3位となった。
背景
前作『FROM T.N.』(1983年)を11月28日にリリース後、8月25日より始まっていたライブツアー「LIVE'83 - '84 JUST HEAVY GAUGE」を継続して開催しており、翌1984年1月1日には2回目となる日本武道館での公演を実現した。
その後、ファンクラブである「TSUYOSHI CLUB」結成記念イベントとして、3年ぶりとなる弾き語りのみのライブツアーを3月15日より4月9日までの全10公演を開催[1]、さらに3月21日には先行シングル「孤独なハート」(1984年)をリリースした。このシングルおよび本アルバム収録曲から声質が変化しており、また歌唱法も変化している。この事に関して長渕は、「自分の声が、嫌で嫌でしょうがなかった」と語っており、声を潰すためにルゴールの原液や奄美の50度もある焼酎をとりよせては毎日うがいなどを行っていた[2][3]。声は一度は枯れるが、また元に戻ってしまう事を繰り返し、結局は年間120ヶ所におよぶライブで歌う事によって、喉にポリープが発生し声質に変化をもたらす事となった[2][3]。
音楽活動以外では、テレビドラマ『家族ゲーム』(1983年)が高視聴率を獲得したことから、続編となる『家族ゲームII』が制作され、4月20日から7月13日までに全11回で放送、主題歌として「孤独なハート」、挿入歌として「スローダウン」、「太陽へ続くハイウェイ」が使用された[4]。本来であれば同ドラマは2クール放送される予定であったが、視聴率が低迷したため打ち切りとなり、急遽『うちの子にかぎって…』(1984年 - 1985年)が企画、放送される事になった[4]。
録音
アルバム『時代は僕らに雨を降らしてる』(1982年)以来2年ぶりに、ミキサーに(グレッグ・ラダニー)を迎え、ロサンゼルスでの楽曲レコーディングも一部行われている。
音楽性
文芸雑誌『別冊カドカワ 総力特集 長渕剛』では、「過去の歌唱法を真っ向から否定するボーカルが飛び出す。当時は、あの「順子」の、あの「乾杯」の長渕剛とすぐには結び付かなかったリスナーも多かったのではないか」と表記されている[5]。
リリース
アルバムは1984年8月18日に東芝EMI/エキスプレスよりレコード、カセットテープ、CDの3形態でリリースされた。
その後、CDのみ1988年5月25日に再リリースされ、2006年2月8日に24ビット・デジタルリマスター、紙ジャケット仕様で再リリースされた[6]。
アートワーク
ジャケット写真の血糊は『家族ゲームII』で特殊メイクを担当したスタッフによるもの。
文芸雑誌『別冊カドカワ 総力特集 長渕剛』では、「デビューからしばらくは、ミュージシャン好みのファッションだった。しかし、ドラマ出演をきっかけに、自己の外見もキャンバスであると開眼したのではないか。音楽のみならず、ファッションやアートワークにおいても、表現者であろうと。その第一弾が『HOLD YOUR LAST CHANCE』のジャケットだ」と表記されている[5]。
ツアー
本作を受けてのコンサートツアーは「LIVE'84 - '85 HOLD YOUR LAST CHANCE」と題し、1984年8月28日の宮崎市民会館を皮切りに35都市全41公演を行っている[1]。1985年1月8日、1月9日には日本武道館2日間連続公演を実現している。
批評
- 音楽情報サイト『CDジャーナル』では、「ハードなギター・サウンドをバックに、男っぽいメッセージを歌う長渕剛がいる。私生活でのトラブルを想起させる『カム・バック・トゥ・マイ・ハート」などは、シンガー・ソング・ライター長渕剛ならではの説得力かもしれない」と肯定的な評価を下している[7]。
チャート成績
オリコンチャートでは最高位3位となり、売り上げは約9万枚となった[8]。また、2006年の再発版では最高位237位となった[9]。
収録曲
一覧
全作曲: 長渕剛。
# | タイトル | 作詞 | 編曲 | 時間 |
---|---|---|---|---|
1. | 「SHA-LA-LA」 | 長渕剛 | 瀬尾一三 | |
2. | 「言わんこっちゃないさ」(I TOLD YOU SO) | 長渕剛 | 瀬尾一三 | |
3. | 「TIME GOES AROUND」 | 長渕剛 | 長渕剛 | |
4. | 「WAKE-UP! IT'S MORNING」 | 長渕剛、秋元康 | 瀬尾一三 | |
5. | 「COME BACK TO MY HEART」 | 長渕剛 | 長渕剛 | |
合計時間: |
# | タイトル | 作詞 | 編曲 | 時間 |
---|---|---|---|---|
6. | 「孤独なハート」(LONELY HEART) | 秋元康 | 瀬尾一三 | |
7. | 「スローダウン」(SLOW DOWN) | 長渕剛 | 長渕剛、山里剛 | |
8. | 「ファイティングポーズ」(FIGHTING PAUSE) | 長渕剛 | 瀬尾一三 | |
9. | 「HOLD YOUR LAST CHANCE」 | 長渕剛 | 瀬尾一三 | |
合計時間: |
CD
全作詞・作曲: 長渕剛(#4のみ作詞: 秋元康)、全編曲: 瀬尾一三、長渕剛、山里剛。 | ||
# | タイトル | 時間 |
---|---|---|
1. | 「SHA-LA-LA」 | |
2. | 「言わんこっちゃないさ」(I TOLD YOU SO) | |
3. | 「TIME GOES AROUND」 | |
4. | 「WAKE-UP! IT'S MORNING」 | |
5. | 「COME BACK TO MY HEART」 | |
6. | 「孤独なハート」(LONELY HEART) | |
7. | 「スローダウン」(SLOW DOWN) | |
8. | 「ファイティングポーズ」(FIGHTING PAUSE) | |
9. | 「HOLD YOUR LAST CHANCE」 | |
合計時間: |
曲解説
A面
- SHA-LA-LA
- バラエティ番組『ウッチャン・ナンチャン with SHA.LA.LA.』(1990 - 1992年、日本テレビ)の後期オープニングテーマに使用された。
- 言わんこっちゃないさ - I TOLD YOU SO
- TIME GOES AROUND
- エレキギターをフォークソングの手法で演奏している。桑田佳祐は発表当時自身のラジオ『桑田佳祐のオールナイトニッポン』(1984年 - 1985年)でこの曲を絶賛していた。
- WAKE-UP! IT'S MORNING
- COME BACK TO MY HEART
- 葛城ユキに提供した楽曲のセルフカバー。
B面
スタッフ・クレジット
参加ミュージシャン
東京
- 田中清司 - ドラムス
- 滝本季延 - ドラムス(6曲目)
- 岡沢茂 - ベース
- 美久月千晴 - ベース(6曲目)
- 面谷誠二 - ギター
- 青山徹 - ギター(6曲目)
- 長渕剛 - ギター、アコースティックギター、マウスハープ、コーラス
- 山里剛 - アコースティックギター
- 村上律 - スティールギター
- 香川喜章 - キーボード、コーラス
- 瀬尾一三 - キーボード
- 矢島マキ - キーボード
- 西本明 - キーボード(6曲目)
- ペッカー - パーカッション
- ジェイク・コンセプション - サクソフォーン
- 浜田良美 - コーラス
ロサンゼルス
- (マーク・ゴールデンバーグ) - ギター
- スコット・チェンバーズ - ベース
- (フィル・ケンジー) - サクソフォーン
- グレッグ・アダムス - トランペット
- ビル・ラム - トロンボーン
- ダグ・ヘイウッド - コーラス
- デビー・パール - コーラス
- タンパ・ラン - コーラス
- ジュリア・ウォーターズ - コーラス
- マクシーン・ウォーターズ - コーラス
- カーメン・トゥイリー - コーラス
スタッフ
- 長渕剛 - プロデューサー
- (グレッグ・ラダニー) - ミックス・エンジニア
- 陣山俊一(ユイ音楽工房) - ディレクター
- 山里剛(ヤマハ音楽振興会) - ディレクター
- 木村嘉男(ファンハウス) - ディレクター
- 石塚良一 - レコーディング・エンジニア
- (ニコ・ボラス) - アシスタント・ミキサー
- リチャード・ボスワース - アシスタント・ミキサー
- 糟谷銑司 - マネージメント
- ひらたしょういち - マネージメント
- 大川奘一郎 - 写真撮影
- なかだまりこ - メーク・アップ
- 川上源一 - エグゼクティブ・プロデューサー
- 後藤由多加 - エグゼクティブ・プロデューサー
リリース履歴
脚注
- ^ a b “長渕剛 TSUYOSHI NAGABUCHI|OFFICIAL WEBSITE”. 長渕剛 TSUYOSHI NAGABUCHI|OFFICIAL WEBSITE. 2018年11月22日閲覧。
- ^ a b 高山文彦 「ライナーノーツ」 『いつかの少年』、東芝EMI、1994年。
- ^ a b 杉田俊介 2016, pp. 67–68- 「第二章 日本人にとって男らしさとは何か」より
- ^ a b “家族ゲームII - ドラマ詳細データ”. テレビドラマデータベース. キューズ・クリエイティブ. 2018年12月13日閲覧。
- ^ a b c d 別冊カドカワ 2010, p. 249- 藤井徹貫「長渕剛オール・ヒストリー&アルバム・コレクターズ解説」より
- ^ “長渕剛、リマスター&紙ジャケ復刻決定!”. CDジャーナル. 音楽出版 (2005年12月19日). 2018年11月22日閲覧。
- ^ a b “長渕剛 / HOLD YOUR LAST CHANCE [再発] [廃盤]”. CDジャーナル. 音楽出版. 2018年9月22日閲覧。
- ^ 矢吹光 1995, p. 88- 「第2章 対決! 両雄黄金の経歴」より
- ^ “HOLD YOUR LAST CHANCE|長渕剛”. オリコンニュース. オリコン. 2018年11月22日閲覧。
参考文献
外部リンク
- - ウェイバックマシン(2011年9月18日アーカイブ分)
- 公式サイトディスコグラフィー「HOLD YOUR LAST CHANCE」
- Tsuyoshi Nagabuchi – ホールド・ユアー・ラスト・チャンス - Discogs