DAFトラックスN.V.(ダフ・トラックス、DAF Trucks)は、オランダのアイントホーフェンに本拠地を置くヨーロッパの商用車メーカーである。パッカーグループの一員。数回の社名変更と会社再編を経て、現在はトラックのみを生産するダフ・トラックスとなっている。主要工場はオランダに構え、キャビンと車軸はベルギーの(ウェステルロー)で製造が行われている。いくつかのモデルはイギリスの貨物自動車メーカーであるレイランド・トラックで開発された車両であり、レイランドDAFブランドとしての販売が行われた。
概要
1928年、フーベルト・"フップ"・ファン・ドールネが自動車修理工場「Commanditaire Vennootschap Hub van Doorne's Machinefabriek(フップ・ファン・ドールネの機械工場合資会社)」として創業した。共同創業者で投資家のA. H. Huengesは醸造所の最高経営責任者だった。ファン・ドールネがHuengesの車を何度か修理したことがあり、ファン・ドールネの仕事に満足したHuengesは事業への資金提供を申し出た。フップは醸造所の敷地の小さな作業場で仕事を開始した。
1932年、それまでにフップと弟の(ヴィム・ファン・ドールネ)によって経営されていた会社は社名を「Van Doorne's Aanhangwagen Fabriek(ファン・ドールネのトレーラー工場)」、略称「DAF」へと変更した。Huengesは1936年に会社を離れ、DAF社は完全にファン・ドールネ兄弟が所有することになった。
DAFは4×2駆動のフォード製トラックをオフロード用(6×4)駆動に改造した(トラド)を開発した。DAFの数少ない装甲車両の1つである(M39パンサーワーゲン)はこのトラドのドライブトレインの発展形を使用している。M39の生産は第二次世界大戦には遅過ぎであり、オランダ侵攻(1940年)でわずか3台が戦場に出ただけに終わった。
第二次世界大戦後、高級車とトラックが非常に不足していた。これはDAGによって大きなチャンスを意味した。1949年、貨物自動車、トレーラー、バスの製造を始め、社名を「Van Doorne's Automobiel Fabriek(ファンドールネの自動車工場)」に変更した。初の貨物自動車モデルがDAF A30である。
1950年代を通して、DAFはオランダ軍の(非装甲車輛)の再装備の主要な供給業者だった(DAF YA-126およびDAF YA-328 'Dikke Daf' など)。これらはトラドから発展した全輪駆動(Hドライブ)を使用した。
1954年末、フップ・ファン・ドールネは工場にたくさんあるベルト駆動機械のように、道路車両を駆動するためにベルト駆動式無段変速機を使うことを思い付いた。1955年、DAFは自動車のベルト駆動システムの原案を作成した。その後数年をかけて、この設計を進化、洗練させていった。1958年2月、DAFはオランダの自動車ショー((AutoRAI))で小型ベルト駆動式4シーター車を展示した。
世間の反応は非常に良く、4千台の注文があった。1959年、DAFは無段変速機を搭載した世界初の自動車、小型4シーターのDAF・600の販売を開始した。その後、この革新的なヴァリオマチックトランスミッションシステムを使ったDAF・33、DAF・44、(DAF・55)、DAF・66が発売されていった。
1967年、DAFは(ボルン)に自動車生産のための新工場を開いた。DAF 44がここで生産された初めてのモデルである[2]。
1972年、シカゴの(インターナショナル・ハーベスター)がDAFの株式の33%を取得し(オランダ政府が25%、ファン・ドールネ家が残りの42%を保有)、共同事業を作った。この合意は1981年まで続いた。1975年、DAFは乗用車部門とボルンの工場(現在はネッドカーの工場)をスウェーデンのボルボ・カーズに売却し、成功していたトラック部門に注力することになった。
1987年、DAFはローバー・グループのレイランド・トラックス[注釈 1]と合併し、1989年6月にオランダとロンドンの証券取引所に(DAF NV)として上場した[3]。この新会社はイギリスではレイランドDAF、それ以外ではDAFとして事業を展開した。
1990年にDAFバスが分離して、(ユナイテッド・バス)[注釈 2]の一部となった[4]。分社化する等経営の合理化を図ったが、イギリス市場での苦境を受けて、DAF NVが1993年2月に行政管理下に置かれた後、マネジメント・バイアウトによって、英国内のトラック事業部はレイランド・トラック、バン事業部は(LDVリミテッド)となり、オランダ国内の事業部は新会社ダフ・トラックス(DAF Trucks NV)として再出発した。
1996年10月、アメリカ合衆国のパッカーがDAFトラックスを買収した[5]。パッカーがレイランドトラックスも買収したため、DAFトラックスとレイランド・トラックスは1998年6月に再合併した[6][7][8]。
2012年1月9日、パッカーはブラジル、パラナ州、(ポンタ・グロッサ)に新工場の隅石を設置した。
乗用車部門
1958年-1975年の主な車種
- 600 - DAF最初の乗用車。変速機に後輪1輪に対しひとつずつのベルト式無段階変速機(ヴァリオマチック)[9]を採用。現代のCVTの基礎ともなったこの変速システムは以後のDAF製乗用車へ活用される。その後33へラインチェンジ。
- 30/31/32/33 - 2気筒小型車。
- 44/46 - 30の上級版である2気筒小型車。
- (55)/66 - 4気筒小型車。WRC制定前からの世界ラリー[10][11]やレースで活躍。66はルノー製エンジンを奢られたスポーツモデル「1300マラソン」から2ドアセダン、クーペ、3ドアハッチバックや軍用車の派生版も存在し、ボルボ傘下となってもクーペ以外は生産を継続された。
30
46
66マラソンクーペ
66軍用車
製品
- DAF・LF
- DAF・XF
- DAF・XG
- DAF・CF
- DAF・ターボツイン
DAF CF
UNIFIL・オランダ部隊が使用するDAF YP-408
ファン・ドールネース・トランスミッシー
1965年にヴァリオマチックの発展は止まらなかった。1970年代以降、後継システムのトランスマチック(Transmatic)開発が進行していた。このシステムの心臓部はゴムベルトではなく、金属製プッシュ式ベルトであった。トランスマチックの開発はティルブルフに設立された別会社のファン・ドールネース・トランスミッシー(オランダ語: Van Doorne's Transmissie、略称VDT)で行われた。DAFの乗用車部門を買収した際に、ボルボはこのシステムの権利も得られると考えていた。しかし、DAFとファン・ドールネはこれを否定した。法廷で争われた結果、ファン・ドールネが勝利した。ボルボはボルンで生産する車ではCVTという名称の下でヴァリオマチックを使用し続けた。ヴァリオマチックを搭載した最後のモデル、(ボルボ・340)の最後の1台は1991年に生産ラインから離れた。VDT社は1995年にドイツのボッシュに買収された。それまでの間に、金属プッシュベルト式CVT(トランスマチック)は実用化され、フィアット・パンダ、フォード・フィエスタ、スバル・ジャスティ、スズキ・アルト、日産・マーチなどいくつかの小型乗用車に採用されていた。1993年には(ボルボ・440) 1.8iのCVT車が販売された。
2009年12月1日からはBosch Transmission Technologyに名称を変更した。
脚注
注釈
出典
- ^ “History”. DAF Trucks. 2020年9月18日閲覧。
- ^ Between Initiation and Innovation: Transfer and Hybridization of Productive Models in the International Automobile Industry. Oxford University Press. (1998). ISBN (0-19-829368-2)
- ^ "Daf shares offer". (Commercial Motor), 20 April 1989
- ^ "Stop press: Daf Bus/Bova merger". Commercial Motor, 23 November 1989
- ^ "Paccar set to take over Daf Trucks". Commercial Motor, 10 October 1996
- ^ "Paccar aims to cut queue". Commercial Motor, 7 May 1998
- ^ "Paccar acquires Leyland Trucks". Automotive News Europe, 11 May 1998
- ^ . Leyland Trucks, 27 June 2018.
- ^ “DAF Variomatics” (英語). 2013年4月24日閲覧。
- ^ “38ème Rallye Automobile de Monte-Carlo”. rallybase.nl. 2013年4月24日閲覧。
- ^ “42ème Rallye Automobile de Monte-Carlo”. rallybase.nl. 2013年4月24日閲覧。
関連項目
- GINAF - 1960年代始めにDAFのコンポーネントを使用してトラックを製造していた。
- VDL バス インターナショナル
- VDLネッドカー - かつての乗用車の製造拠点。
- DAFトラックス (サイクリングチーム)