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芦川絵里

芦川 絵里(あしかわ えり、1949年8月 - )は、日本の女優[1][2][3][4][5][6][7][8][9][10][11][12][13][14]芦川 絵理と表記された作品もある[14]木俣堯喬プロダクション鷹に所属し、同社のほか若松孝二若松プロダクションの作品に多く出演した[3][4][6][9][10][12][13][14]。『(処女ゲバゲバ)(フランス語版)』(監督若松孝二、1969年)のキーヴィジュアルである、十字架にかけられた女を演じたことで知られる[15][16]

あしかわ えり
芦川 絵里
本名 不明
別名義 芦川 絵理
生年月日 1949年8月
出生地 日本 神奈川県
職業 女優
ジャンル 劇場用映画成人映画
活動期間 1968年 - 1971年
事務所 プロダクション鷹
主な作品
(処女ゲバゲバ)(フランス語版)』(1969年)
(女学生ゲリラ)(英語版)』(1969年)
『(裸体の街)』(1969年)
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人物・来歴

木俣堯喬と若松孝二

1949年(昭和24年)8月、神奈川県に生まれる[1][5]

1968年(昭和43年)3月、高等学校を卒業、絵画の勉強をしながら、ファッションモデルの仕事をしていた[1]。満19歳を迎えるこの年、正確な時期は不明であるが、木俣堯喬(1915年 - 2004年)が芦川をスカウトし、プロダクション鷹の専属女優になる[1]水城リカ(1943年 - )、あるいは珠瑠美(1949年 - )・谷身知子(1951年 - )姉妹らとともに木俣堯喬の門下生として育てられた[1][3]。同年、木俣が監督し水城リカが主演した成人映画『(送り狼)』に出演して、映画界にデビューする[1]。同作が、諸記録に残る最初の出演作品である[6][9][10][11][12][13][14]

当時の専門誌『(成人映画)』の編集長であった(川島のぶ子)は、「中性的な顔立ちとスリムなプロポーションで人気を集めた」と評す[1]。『日本映画発達史』の田中純一郎は、同書のなかで黎明期の成人映画界のおもな出演者として、扇町京子、(橘桂子)、城山路子(光岡早苗と同一人物)、内田高子香取環新高恵子松井康子西朱実、(朝日陽子)、火鳥こずえ、(華村明子)、森美沙、(湯川美沙)、光岡早苗、路加奈子、(有川二郎)、(里見孝二)、川部修詩佐伯秀男の名を挙げているが、芦川についての言及はない[17]。1966年(昭和41年)デビューの一星ケミ(1947年 - )や祝真理(1948年 - )、1967年(昭和42年)デビューの辰巳典子(1947年 - )や谷ナオミ(1948年 - )、青山リマ(1949年 - )、白川和子(1947年 - )、あるいは同じ1968年デビューのハニー・レーヌ(1952年 - )や谷身知子ら同様、戦後生まれの第二世代に属する。

翌1969年(昭和44年)1月に公開された『(人肉の市)』、翌2月公開の『(広域重要指定一〇八号拳銃魔 嬲りもの)』、同年4月公開の『(密室)』、同年5月公開の『(裸体の街)』といった木俣の監督作に次々に主演する[9][10][11][12][13][14]。『広域重要指定一〇八号拳銃魔 嬲りもの』は前年秋に起きた「広域重要指定一〇八号事件」、いわゆる「永山則夫連続射殺事件」に題材をとり、逮捕前に犯人像を創造したフィクション作品である[18]。また、とくに作家の田中小実昌がゲスト出演した『裸体の街』では、田中が演じるヒモを支える薄幸の女を演じて好評を得た[1]。当時、同社は若松プロダクションと提携しており、同年4月に公開された若松孝二の監督作『処女ゲバゲバ』では、富士山麓の荒野で磔刑に処される女「花子」を演じた[9][10][12][13][14][15][16]。同年5月26日に公開された若松プロダクション製作、足立正生監督の『(女学生ゲリラ)(英語版)』でも主演している[9][10][12][13][14]。『人肉の市』は1971年(昭和46年)8月18日に Les Esclaves du plaisir の題でフランスで公開されている[19]

同年7月に公開された若松孝二監督による主演作『(私は濡れている)』を最後に引退した[1]。満22歳であった。以降の消息は知られていない。引退後の1975年(昭和50年)4月、映画評論家の松田政男が『(現代の眼)』での連載『集団の発見 52』で、「映画スター」としての「芦川絵里という若い娘さんのことを思い出す」として1960年代末の芦川を回想し、「若松プロのピンク映画にひっきりなしに姿を見せていた」「今や主婦をやっているのかもしれず」と書く[4]。同じプロダクション鷹の谷身知子も翌1972年(昭和47年)に結婚引退、渡米した[20]。存命であれば2014年(平成26年)には満65歳である[1][5]

再評価

2005年(平成17年)12月22日に紀伊國屋書店が発売した『若松孝二 初期傑作選 DVD-BOX 2』に、芦川の主演作『処女ゲバゲバ』および『裸の銃弾』が収録された[6][13]。同2作は、フランスでも2010年(平成22年)11月16日に発売された Coffret: Koji Wakamatsu vol.3 にそれぞれ、La Vierge violente, Naked Bullet の題で収録された。

2008年(平成20年)3月15日 - 同年4月4日に(シネマヴェーラ渋谷)で行なわれた「若松孝二大レトロスペクティブ」の特集上映で、『処女ゲバゲバ』および『裸の銃弾』が上映された[21]

2011年(平成23年)9月18日 - 同19日に神戸映画資料館で行なわれた「第二の伝説 知られざる若松孝二」の特集上映で、主演作『真昼の暴行劇』が35mmフィルムの上映用プリントで上映された[22]。同年5月14日 - 同年7月15日にラピュタ阿佐ヶ谷で行なわれた「60年代まぼろしの官能女優たち PART II」特集上映で、主演作『広域重要指定犯108号 嬲りもの』が16mmフィルム版上映用プリントで上映された[18]。2012年(平成24年)9月30日 - 10月1日に神戸映画資料館で行われた「プロ鷹クロニクル PART-2」の特集上映で、主演作『広域重要指定犯108号 嬲りもの』および『裸体の街』の2作がそれぞれ16mmフィルム版上映用プリントで上映された[23]

2014年(平成26年)10月11日 - 同24日にポレポレ東中野で行われた「『道徳のゲリラ』若松孝二監督特集」の特集上映で、主演作『通り魔の告白 現代性犯罪暗黒篇』が『現代性犯罪暗黒編 ある通り魔の告白』題のデジタルHD素材で上映された[24]。同特集上映は同18日からシネマスコーレ[24]、同年12月13日からは第七藝術劇場[25] でもそれぞれ行われた。

フィルモグラフィ

クレジットはすべて「出演」である[1][3][4][6][7][9][10][11][12][13][14]東京国立近代美術館フィルムセンター(NFC)等の所蔵・現存状況についても記す[10][26]

  • 『(送り狼)』 : 企画・監督・脚本木俣堯喬、主演水城リカ、製作プロダクション鷹、1968年公開(成人映画・映倫番号 不明)
  • 『(人肉の市)』 : 企画・監督・脚本木俣堯喬、製作プロダクション鷹、1969年1月公開(成人映画・映倫番号 15626) - 主演、上映用プリントをNFCが所蔵[26]
  • 『(広域重要指定一〇八号拳銃魔 嬲りもの)』(『広域重要指定犯108号 嬲りもの』[18][23]『嬲りもの 広域重要指定拳銃魔』[14]『嬲りもの』[11]) : 企画・監督・脚本木俣堯喬、製作プロダクション鷹、1969年2月公開(成人映画・映倫番号 15692) - 主演、55分の16mmフィルム版上映用プリントが現存[18][23]
  • 『(密室)』(『密室 異常なる枕芸者』[1]) : 製作・企画・監督・脚本木俣堯喬、主演(渚マリ)、製作・配給プロダクション鷹、1969年4月公開(成人映画・映倫番号 15751) - 主演・「若い女」役
  • (処女ゲバゲバ)(フランス語版)』 : 企画・製作・監督若松孝二、脚本出口出、助監督小水一男秋山未知汚、共演(谷川俊之)・乱孝寿・林美樹、製作若松プロダクション、1969年4月公開(成人映画・映倫番号 不明) - 主演・「花子」役、62分の上映用プリントをNFCが所蔵[10]・66分の原版が現存・2007年紀伊國屋書店がDVDビデオグラムを発売[6][13]
  • 『(裸体の街)』 : 企画・監督・脚本木俣堯喬、共演田中小実昌、製作プロダクション鷹、1969年5月公開(成人映画・映倫番号 15836) - 主演、55分の16mmフィルム版上映用プリントが現存[23]
  • 『(愛欲の痴図 鎌倉情死考)』 : 企画・監督・脚本木俣堯喬、製作プロダクション鷹、1969年5月公開(成人映画・映倫番号 15898)
  • (女学生ゲリラ)(英語版)』 : 企画・製作若松孝二、監督足立正生、脚本出口出、助監督小水一男・秋山未知汚、共演(花村亜流芽)・福間健二平岡正明、製作若松プロダクション、1969年5月26日公開(成人映画・映倫番号 不明) - 主演[8]・「村山明子」役、73分の原版が現存・2002年アップリンクがDVDビデオグラムを発売[13]
  • 『(通り魔の告白 現代性犯罪暗黒篇)』(『現代性犯罪暗黒篇』[11]) : 企画・製作・監督若松孝二、脚本出口出、主演福間健二・花村亜流芽、製作若松プロダクション、配給(葵映画)、1969年7月18日審査・公開(成人映画・映倫番号 15942) - 主演[8]・「若林春代」役、フィルム原版およびデジタルHD素材が現存[24]
  • 『(血まみれの犯行)』 : 企画・監督・脚本木俣堯喬、製作プロダクション鷹、1969年6月30日審査・8月公開(成人映画・映倫番号 15959) - 主演[8]
  • 『(やわ肌無宿 男殺し女殺し)』(『男殺し女殺し』[11]) : 企画・製作・監督若松孝二、脚本出口出、共演林美樹、製作若松プロダクション、配給葵映画、1969年10月14日審査・公開(成人映画・映倫番号 15943)
  • 『(裸の銃弾)』 : 企画・製作・監督若松孝二、脚本出口出、主演(港雄一)・林美樹、製作若松プロダクション、1969年10月公開(成人映画・映倫番号 不明) - 出演、72分の原版が現存・2007年紀伊國屋書店がDVDビデオグラムを発売[6][13]
  • 『(真昼の暴行劇)』(『ヌードモデルの告白 真昼の暴行劇』) : 企画・製作・監督若松孝二、脚本出口出、助監督小水一男、共演一星ケミ、製作若松プロダクション、配給日本シネマ、1970年3月16日審査・公開(成人映画・映倫番号 16282) - 主演[8]・「マリ」役、67分の上映用プリントをNFCが所蔵[10]・70分の上映用プリントが現存[22]
  • 『(性教育書 愛のテクニック)』(カーマスートラ) : 企画・製作・監督若松孝二、脚本出口出、共演(矢島弘)、製作若松プロダクション、1970年3月16日審査・公開(成人映画・映倫番号 不明) - 主演
  • 『(私は濡れている)』 : 企画・製作・監督若松孝二、脚本出口出(足立正生・荒井晴彦)、製作若松プロダクション、1971年5月7日審査・7月公開(成人映画・映倫番号 16775) - 主演

ビブリオグラフィ

国立国会図書館蔵書等にみる書誌である[6]

  • グラビア : 『(成人映画)』第39号所収、(現代工房)、1969年4月1日発行
  • 「裸体の街」芦川絵理 : 『週刊影』5月26日増刊号・第2巻第10号通巻25号所収、辰巳出版、1969年5月26日発行
  • グラビア : 『映画情報』8月号所収、国際情報社、1969年8月発行
  • グラビア : 『キューティ画報』5月号所収、(文献資料刊行会)、1970年5月発行
  • グラビア : 『週刊プレイボーイ』4月7日号・第5巻第14号所収、1970年4月7日発行
  • 『緊縛フォト集IV』、『風俗奇譚』12月特別号所収、文献資料刊行会、1970年12月10日発行
  • 『緊縛フォト集V』、『風俗奇譚』3月特別号所収、文献資料刊行会、1971年3月10日発行
  • 「眠れぬ夜のドキドキ連続ショット集『私は濡れている』」芦川絵里 : 『映画エロチカ封切館 PINKY』8月号所収、東京三世社、1971年8月発行

脚注

[脚注の使い方]
  1. ^ a b c d e f g h i j k l キネ旬[1980], p.24.
  2. ^ 日外[2003], p.61.
  3. ^ a b c d キネ旬[1976], p.140.
  4. ^ a b c d (現代の眼)[1975], p.256-261.
  5. ^ a b c 芦川絵理jlogos.com, (エア)、2014年11月5日閲覧。
  6. ^ a b c d e f g h 国立国会図書館サーチ 検索結果、国立国会図書館、2014年10月30日閲覧。
  7. ^ a b 年鑑[1973], p.137-139, 153, 170.
  8. ^ a b c d e キネ旬[1973], p.43, 59, 76, 111.
  9. ^ a b c d e f g Eri Ashikawa, インターネット・ムービー・データベース (英語)、2014年11月5日閲覧。
  10. ^ a b c d e f g h i j 芦川絵里東京国立近代美術館フィルムセンター、2014年11月5日閲覧。
  11. ^ a b c d e f g 日本映画情報システム 検索結果、文化庁、2014年11月5日閲覧。
  12. ^ a b c d e f g 芦川絵里KINENOTE, 2014年11月5日閲覧。
  13. ^ a b c d e f g h i j k 芦川絵里allcinema, 2014年11月5日閲覧。
  14. ^ a b c d e f g h i 芦川絵理日本映画データベース、2014年11月5日閲覧。
  15. ^ a b キネ旬[1973], p.124.
  16. ^ a b 処女ゲバゲバポスター、若松プロダクション、2014年11月5日閲覧。
  17. ^ 田中[1976], p.85-86.
  18. ^ a b c d 60年代まぼろしの官能女優たち PART II、ラピュタ阿佐ヶ谷、2014年11月5日閲覧。
  19. ^ Les Esclaves du plaisir, Encyclociné, 2014年11月5日閲覧。
  20. ^ キネ旬[1980], p.434.
  21. ^ 若松孝二大レトロスペクティブ、(シネマヴェーラ渋谷)、2014年11月5日閲覧。
  22. ^ a b 上映プログラム、神戸映画資料館、2012年9月付、2014年11月5日閲覧。
  23. ^ a b c d 上映プログラム、神戸映画資料館、2012年9月付、2014年11月5日閲覧。
  24. ^ a b c 道徳のゲリラ 若松孝二監督特集、ポレポレ東中野、2014年11月5日閲覧。
  25. ^ 道徳のゲリラ 若松孝二監督特集、第七藝術劇場、2014年11月5日閲覧。
  26. ^ a b 平成16年度独立行政法人国立美術館事業実績統計表、独立行政法人国立美術館、2014年11月5日閲覧。

参考文献

  • 『映画年鑑1973』、時事映画通信社、1973年発行
  • 『日本映画作品全集』、『キネマ旬報』増刊第619号、キネマ旬報社、1973年11月20日発行
  • 『(現代の眼)』第16巻第4号、(現代評論社)、1975年4月発行
  • 日本映画発達史 V 映像時代の到来』、田中純一郎中公文庫中央公論社、1976年7月10日 (ISBN 4122003520)
  • 『日本映画監督全集』、『キネマ旬報』第698号、キネマ旬報社、1976年12月24日発行
  • 『日本映画俳優全集・女優編』、『キネマ旬報』第801号、キネマ旬報社、1980年12月31日発行
  • 『やくざ監督東京進出 50余年の沈黙を破り波瀾の人生を語る』、西原儀一・(円尾敏郎)、ワイズ出版、2002年8月 (ISBN 4898301312)
  • 『新訂増補 人物レファレンス事典 昭和(戦後)・平成編』、日外アソシエーツ、2003年6月 (ISBN 481691787X)

関連項目

外部リンク

画像外部リンク
  人肉の市
1969年1月日本公開
(プロダクション鷹)
  広域重要指定一〇八号拳銃魔 嬲りもの
1969年2月公開
(プロダクション鷹)
  処女ゲバゲバ
1969年4月公開
(若松プロダクション)
  通り魔の告白 現代性犯罪暗黒篇
1969年7月公開
(若松プロダクション)
  ヌードモデルの告白 真昼の暴行劇
1970年3月公開
(若松プロダクション)
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