石部トンネル(せきべトンネル)は、静岡県静岡市駿河区と焼津市にまたがる東海旅客鉄道(JR東海)東海道本線の鉄道トンネルである。用宗 - 焼津駅間にある。
概要
総延長は上り線2,205m、下り線2,185m(改修前の旧石部トンネルは910m)。単線並列のトンネル。東海道本線開通時のこの区間は石部トンネル(910m)と磯浜トンネル(970m)の2本のトンネルが存在した。現在の石部トンネルは東京側坑口が開業時の石部トンネルのもので、神戸側坑口は1962年(昭和37年)に竣工した改良工事によって石部トンネルと結合された、旧磯浜トンネルのものである。この2つの旧トンネルに挟まれた区間は、大崩海岸の中央部に位置しアルカリ玄武岩を主とする脆い地質による土砂崩壊が頻発する地形、曲線半径が400-600mで速度制限を必要とすること、さらにトンネル自体も断面が狭小で大貨物の通過に支障をきたす、といった理由から輸送力確保を目的とした改良工事が計画された。
そのころ着工した弾丸列車計画に際して、日本坂トンネルを完成させた上で東海道線用として一時的に使用し、在来線を改良する計画が立てられた。第二次世界大戦の激化により弾丸列車計画が頓挫した後も日本坂トンネルの建設は続き、1944年(昭和19年)12月に線路の移設・使用開始となった。のちに終戦を迎え、石部・磯浜トンネルの改良工事は行われずそのままとなっていた。以後東海道新幹線建設に伴い1961年(昭和36年)から翌年にかけて改良工事が着手されるまでは、道路用トンネルとして利用されていた。路線バスが旧石部トンネルと磯浜トンネル間の明かり区間を走る写真が焼津市市制50周年記念写真集「やきつべ」に掲載[1]されている。旧磯浜トンネルの東京側はゴミ処理場となっており、現在ではその姿を見ることはできない。
沿革
- 1889年(明治22年) - 焼津側の磯浜トンネルとともに開通。
- 1909年(明治42年) - 用宗駅開業。
- 1911年(明治44年) - 複線化。
- 1944年(昭和19年) - 東海道本線を日本坂トンネル(現在の東海道新幹線日本坂トンネル。昭和16年着工)に移設。12月の竣工と同時に切替。
- 1946年(昭和21年) - 静岡鉄道が石部トンネルを使用して焼津延長線(静岡清水線運動場前駅 – 東海道線石部トンネル – 駿遠線相川 間 )の施設免許申請。
- 1948年(昭和23年) - アイオン台風により石部トンネルの一部が崩落。
- 1961年(昭和36年) - 東海道新幹線建設に伴い、静岡鉄道焼津延長線計画の廃止。
- 1961年(昭和36年) - 東海道新幹線建設に伴い、旧石部・磯浜トンネルを結合・断面等の改築を行い在来線用として再転用する工事を開始。5月着工。
- 1962年(昭和37年) - 磯浜トンネルと結合する改修の後、東海道本線を日本坂トンネルより移設。9月25日に下り線、28日に上り線を使用開始。
参考文献
- 宮脇俊三 『鉄道廃線跡を歩くIII』 JTBキャンブックス、1997年、p176 - p179、(ISBN 4-533-02743-1)
関連項目
座標: 北緯34度54分0.7秒 東経138度20分40.6秒 / 北緯34.900194度 東経138.344611度