白山総合車両所(はくさんそうごうしゃりょうしょ)は、石川県白山市宮保町にある西日本旅客鉄道(JR西日本)の車両基地および車両工場である。
概要
地平を走る北陸本線(松任駅 - 加賀笠間駅間)に並行する形で北陸新幹線の本線が高架で建設され、その2線の東側に平行展開する形で、回送線・車両基地などが建設された。車両基地関係が21ha、保守基地関係が5haである。北陸新幹線が長野駅 - 金沢駅間の営業運転にとどまっている間は金沢駅 - 車両基地間の約10キロメートルが回送線としてのみ機能することになり、金沢駅以西への延伸開業の際にはこの区間も営業線に組み込まれる予定となっている。本車両基地は整備新幹線である北陸新幹線の施設として建設されたため、JR西日本が鉄道建設・運輸施設整備支援機構から賃借している[3]。
土台部分の施工は鹿島建設を代表とする共同企業体である[6]。
白山総合車両所の留置線建屋(2014年3月17日)
白山総合車両所遠景(2014年3月17日)
隣接する、本線架線への変電設備(2014年3月9日)
構内試運転中のW7系W1編成(2014年5月2日)
名称
松任市と周辺町村の合併による白山市誕生以前は、仮称として「松任車両基地」、あるいは金沢市に近いことから「金沢車両基地」と呼称されていた。整備新幹線の平成16年政府与党申し合わせでも「金沢車両基地」という語が用いられていた。
沿革
設備・組織
北側に着発収容線(有効長396m、9線)と転削庫(1線)を備える[15]。着発収容線は、降雪対策として屋根が設置されている[16]。
南側には検修設備・工場設備を設け、検修庫(有効長387mの交番検査線2線<1・2番線>、仕業検査線1線<3番線>、融雪線1線<4番線>、全検整備線1線<5番線>と有効長320mの台車振替線1線<6番線>)[17]、台車検修場、台車部品検修場、車体解艤装場、部品検修場、車体検修場、車体塗装場を備える[15]。交番検査は1・2番線、仕業検査は1 - 3番線を用いて行われ、仕業検査に関してはW7系だけでなくE7系も当車両所で行う[18]。4番線の融雪線には温水噴射機、高圧洗浄機といった融雪設備を備え、床下の雪塊を取り除くことができる[17][19]。5番線では全般検査・台車検査時の編成分割・連結作業(12両編成→6両+6両)が行われる。6番線には、車両を連結したまま最大8両まで持ち上げることのできるジャッキを備える[20]。1 - 3番線の検修庫出口付近には薬液噴射装置、着発収容線の手前には車両洗浄装置が設けられ、車両洗浄に用いられている[18]。
組織としては、総務科、車両科、品質管理センター、車両検修センター、運用検修センターのほかに関連会社であるJR西日本金沢メンテックとJR西日本新幹線テクノスがあり[16]、仕業検査は運用検修センター[17]、交番検査は品質管理センターと車両検修センター[18]、台車・全般検査は品質管理センターと車両検修センターに加えて新幹線テクノスが対応する[20][21][22]。車内外洗浄業務は金沢メンテックが行う[18]。なお、台車・全般検査を終えた編成は金沢駅 - 富山駅間で試運転を行ったうえで営業に復帰する[20][22]。
配置車両
配置車両の車体に記される略号は「金ハク」で、金沢支社の略号である「金」と、白山の電報略号である「ハク」から構成される。
2022年4月1日時点の配置車両は以下のとおり[23]。
一般公開
2015年から年1回実施している同所の一般公開[26]のほかに、2016年から一般団体向けに白山総合車両所の見学ツアーを実施している[27]。同年4月から白山市内の団体を対象に試験的に導入し[27]、8月から全国からの団体を受け入れている[28]。毎週火曜日と金曜日の午前と午後の1回見学ツアーを実施している[2][27]。なお、2020年以降新型コロナウイルスの感染防止に伴い、一般公開・見学ツアーのいずれも取り止めている。
白山市は観光資源の活用として車両所公開の拡大をJR西日本に要望しているものの[4]、JR西日本は現状の週2日が限界だとの方針を示している[29]。また、2017年に自由民主党が新幹線総合車両所を新たな観光資源として、白山総合車両所を第1号として恒常的に公開する検討を開始した[26]。
白山市は2023年度末(令和5年度末、予定)、白山総合車両所隣接地の白山市宮保町に見学施設「ビジターセンター」を開業する方針を示している[30]。自民党整備新幹線等鉄道調査会のプロジェクトチームは、2021年9月10日に「ビジターセンター」の整備概要をまとめた[14]。それによると、約1.3ヘクタールの敷地に延べ床面積約2900平方メートルで4階建て、流線形をイメージし、北陸新幹線と同じ青色と銅色のラインを施すという[14]。北陸新幹線敦賀駅延伸開業と同じ2024年春の開業を目指し、事業費は31億円である[14]。
白山駅設置構想
脚注
- ^ 『9月22日(木曜日・祝日)、白山総合車両所(白山市)の一般公開について』(プレスリリース)西日本旅客鉄道、2016年8月3日2019年7月27日閲覧。 。
- ^ a b “北陸新幹線を支える整備士たち”. 石川さん情報Live リフレッシュ (2018年7月26日). 2019年7月27日閲覧。
- ^ a b 西日本旅客鉄道『第34期有価証券報告書』46頁 (PDF)
- ^ a b “”. 産経WEST (2018年1月18日). 2019年7月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年6月20日閲覧。
- ^ “JR西日本、北陸新幹線の車両基地を一般公開…9月27日”. Response.. (2015年9月19日) 2019年7月27日閲覧。
- ^ 実績紹介:北陸新幹線 白山総合車両所 - 鹿島
- ^ 『白山市合併10周年記念誌』白山市、2015年2月1日、26頁。
- ^ 『白山市合併10周年記念誌』白山市、2015年2月1日、51頁。
- ^ “”. 北國新聞 (2014年4月12日). 2014年11月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年2月23日閲覧。
- ^ “”. 北國新聞 (2014年10月25日). 2014年10月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年2月23日閲覧。
- ^ a b “”. 朝日新聞デジタル (2014年11月16日). 2019年7月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年9月25日閲覧。
- ^ . 四国新聞. (2014年11月15日). オリジナルの2014年11月19日時点におけるアーカイブ。 2020年9月25日閲覧。
- ^ 「石川・白山市、新幹線の車両所横に観光施設 鉄道PR」日本経済新聞ニュースサイト(2021年11月5日)2021年11月18日閲覧
- ^ a b c d 「流線形の見学施設に 白山総合車両所 ビジターセンター 24年春開業へ概要決定」『北國新聞』朝刊2021年9月11日付1面(同日閲覧)
- ^ a b 『鉄道ジャーナル』通巻587号、81頁
- ^ a b 『鉄道ジャーナル』通巻587号、82頁
- ^ a b c 『鉄道ジャーナル』通巻587号、83頁
- ^ a b c d 『鉄道ジャーナル』通巻587号、84頁
- ^ 高圧洗浄機は、糸魚川駅上り線にも設置されている。
- ^ a b c 『鉄道ジャーナル』通巻587号、85頁
- ^ 『鉄道ジャーナル』通巻587号、86頁
- ^ a b 『鉄道ジャーナル』通巻587号、87頁
- ^ ジェー・アール・アール編『JR電車編成表』2022夏(交通新聞社、2022年、(ISBN 9784330028224))p.132
- ^ たにがわでの運用は東京発高崎行き最終の477号と高崎発東京行き始発の470号の1往復のみ。
- ^ “浸水した北陸新幹線の10編成、JR東が廃車を発表”. 日本経済新聞. (2019年11月6日)2021年2月23日閲覧。
- ^ a b “新幹線車両所の観光化推進 自民検討、第1号は白山総合車両所”. SankeiBiz. (2017年8月17日) 2019年7月27日閲覧。
- ^ a b c “”. 中日新聞 (2016年9月7日). 2019年7月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年9月25日閲覧。
- ^ “JR西日本、W7系新幹線の車体昇降見学ができる白山総合車両所一般公開を9月22日実施”. トラベルWatch. (2016年8月3日)2019年7月27日閲覧。
- ^ “JR西社長、白山車両所の見学拡充に前向き”. 日本経済新聞. (2018年4月18日)2019年7月27日閲覧。
- ^ “白山車両所の見学施設 4市町の地酒PRへ 将来的に車両展示も”. 中日新聞Web. (2020年9月10日)2021年2月23日閲覧。
参考文献
- 北條敦「北陸新幹線西の基地 白山総合車両所」『鉄道ジャーナル』第587号、(鉄道ジャーナル社)、2015年9月、80 - 87頁。
関連項目
外部リンク
- イベント情報(車両所見学情報など) - 西日本旅客鉄道
- ほっと石川旅ねっと JR西日本白山総合車両所 - 石川県観光連盟
- 新幹線車両所等の活用による観光プラン - 白山市