狼雅 外喜義(ろうが ときよし、1999年3月2日 - )は、ロシア連邦トゥヴァ共和国クズル出身で(国籍はモンゴル)、二子山部屋所属の現役大相撲力士。本名はアマルトゥブシン・アマルサナー。身長185.0cm、体重153.0kg、血液型はAB型[要出典]。最高位は東十両4枚目(2023年5月場所)。
来歴
ロシア連邦構成国のひとつであるトゥヴァ共和国の首都クズルで生まれ、14歳まで同地で過ごした[2]。ロシアに住んでいた頃は複数のスポーツを経験したが、レスリングや柔道の大会では優勝を経験しており、当時の夢はレスリングでオリンピックに出場することと、ロシアで警察官になることだったという[2]。
14歳の時に父親の住むモンゴルへ移住[3]。移住に際し、父親の希望で自身の国籍をモンゴルに変更している[4]。モンゴル移住後もレスリングの練習を続けていたが、ウランバートルの街中に掲げられていた少年相撲大会・白鵬杯の看板を見た父親から同大会への出場を勧められ[2]、団体戦大将として出場した2014年2月の第4回白鵬杯では団体2位に入賞した[5]。翌2015年2月の第5回白鵬杯も出場し、中学生の部で個人8位に入賞している[5]。この白鵬杯での好成績が日本の鳥取城北高等学校関係者の目に留まって勧誘を受けたため、日本語の習得や日本文化の勉強も兼ねて2015年4月から鳥取城北高校へ相撲留学[2]。入学当初の体重は約80kgだったが1年で30kg以上増量し[2]、3年次の高校総体では個人戦決勝で日体大柏高校3年(当時)のスガラクチャー・ビャンバスレン(現・豊昇龍)に勝利して外国人で初めて高校横綱のタイトルを獲得した[3]。
高校卒業後の進路については、入学当初はロシアかモンゴルの大学へ進学する意向を持っていたが、高校相撲で実績を残したことでプロの世界へ気持ちが移ったため、大相撲の二子山部屋へ入門した[2]。入門先は鳥取城北高校長兼相撲部総監督の石浦外喜義が選んだ[5]。2018年4月から二子山部屋で研修を受けて[4]同年9月の新弟子検査に合格し[5]、興行ビザの取得を待って翌11月場所で初土俵を踏んだ。四股名の由来はモンゴルの象徴である「狼」と師匠の四股名の「雅」から来ている[6]。
番付に初めて名前が載った2019年1月場所は7戦全勝で序ノ口優勝[7]。翌3月場所は序二段へ上がって、大関経験者(のち第73代横綱)で鳥取城北高校の先輩でもある照ノ富士との優勝決定戦を制して序二段優勝[8]。続く5月場所では三段目に昇進して1番目の相撲でプロ初黒星を喫したが5勝2敗とし、7月場所で幕下に昇進。2020年3月場所では東幕下8枚目まで番付を上げたが、この場所は2勝5敗と入門以来初めての負け越しに終わった。翌7月場所でも2勝5敗に終わったが、続く9月場所を西幕下30枚目で6勝1敗として11月場所で西幕下12枚目まで番付を戻すと、この場所も6勝1敗の好成績を残して2021年1月場所では十両目前の西幕下2枚目まで番付を上げており、これ以降は幕下15枚目以内の番付を維持していた。2022年1月場所で3勝4敗と負け越したが、続く同年3月場所では6勝1敗の好成績、その後5月場所から3場所連続4勝3敗と勝ち越し、9月28日に開催された番付編成会議にて、11月場所で新十両に昇進することが発表された[9]。二子山部屋からは現二子山親方が創設してから初。ロシア出身力士としては史上5人目。トゥヴァ共和国からは初となる。新十両昇進会見では「何度も決めるチャンスはあったが自分が弱かった。決まってうれしいです」と喜び、幕下で足踏みしていたことに関しては「少し時間もかかったですね」としみじみと言った。「メンタルとか強い方ではない」と自身も認める中で、師匠の二子山の指導の下で稽古に打ち込み、メンタル面の強化を図ろうと「いろんな悩みを吹き飛ばす本」などを読み込んだという。二子山は「幕下上位できつい土俵が続いた中で、ようやく上がった」と感慨深い様子を見せ「ホッとした思いが一番。高校横綱タイトルを持って入ってきた。すぐ上がるだろうという見方をされていたが、逆にプレッシャーになって彼らしさが出なかった」と思いやり、狼雅本人には「すんなり上がるよりは基礎からやってきた分、十両では爆発してほしい」と期待を寄せた[10]。
西十両13枚目で迎えた新十両の11月場所は、初日に同じく新十両の對馬洋に敗れたものの、2日目に豪ノ山に勝利し十両初白星を挙げるとそこから4連勝、6日目から4連敗し一旦黒星が先行するが、10日目から2度目の4連勝で13日目に勝ち越しを決め、千秋楽は優勝争いをしていた剣翔に勝利し9勝6敗で終えた。
人物
- 父親がブリヤート人で母親はロシア人[2]。狼雅自身はモンゴル在住時に国籍をモンゴルに変えているが[3]、大相撲入門当初にモンゴル・ウランバートル出身として扱われた際には「ボクはロシア人なんです。だから急にモンゴル人と言われるとちょっと…」[7]と困惑する様子を見せていた[7]。その後、2020年1月場所から出身地をロシアに変更している[11]。
- 母親が教員で祖母が中学校の校長という教員一家の生まれで、しかも母親は中学生時代のクラス担任であったことから、幼少期は勉学に関して特に厳しく教育を受けていたという[2]。
- 協会公式プロフィールによると、好きなYouTuberは優里、あめんぼぷらす。趣味は手芸、釣り。好きなアーティストは10-FEET、川崎鷹也[12]。
主な成績
2023年5月場所終了現在
通算成績
- 通算成績:132勝82敗(27場所)
各段優勝
- 序二段優勝:1回(2019年3月場所)
- 序ノ口優勝:1回(2019年1月場所)
場所別成績
一月場所 初場所(東京) | 三月場所 春場所(大阪) | 五月場所 夏場所(東京) | 七月場所 名古屋場所(愛知) | 九月場所 秋場所(東京) | 十一月場所 九州場所(福岡) | |
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2018年 (平成30年) | x | x | x | x | x | (前相撲) |
2019年 (平成31年 /令和元年) | 東序ノ口23枚目 優勝 7–0 | 西序二段15枚目 優勝 7–0[注釈 1] | 西三段目22枚目 5–2 | 西幕下57枚目 5–2 | 西幕下43枚目 5–2 | 東幕下28枚目 5–2 |
2020年 (令和2年) | 東幕下17枚目 5–2 | 東幕下8枚目 2–5 [注釈 2] | 感染症拡大 により中止 | 西幕下16枚目 2–5[注釈 3] | 西幕下30枚目 6–1 | 西幕下12枚目 6–1[注釈 3] |
2021年 (令和3年) | 西幕下2枚目 3–4 | 東幕下6枚目 4–3[注釈 3] | 東幕下3枚目 2–5[注釈 4] | 西幕下10枚目 4–3 | 西幕下6枚目 3–4 | 東幕下13枚目 5–2 |
2022年 (令和4年) | 東幕下7枚目 3–4 | 東幕下12枚目 6–1 | 東幕下4枚目 4–3 | 東幕下2枚目 4–3 | 西幕下筆頭 4–3 | 西十両13枚目 9–6 |
2023年 (令和5年) | 東十両9枚目 9–6 | 東十両5枚目 8–7 | 東十両4枚目 9–6 | x | x | x |
各欄の数字は、「勝ち-負け-休場」を示す。 優勝 引退 休場 十両 幕下 三賞:敢=敢闘賞、殊=殊勲賞、技=技能賞 その他:★=金星 番付階級:幕内 - 十両 - 幕下 - 三段目 - 序二段 - 序ノ口 幕内序列:横綱 - 大関 - 関脇 - 小結 - 前頭(「#数字」は各位内の序列) |
改名歴
- 狼雅 力(ろうが ちから)2021年3月場所 - 2022年1月場所
- 狼雅 外喜義(- ときよし)2022年3月場所 -
脚注
注釈
出典
- ^ 「十両以下各段優勝力士喜び詳報」『相撲』2019年4月号、ベースボール・マガジン社、69頁。
- ^ a b c d e f g h 「大銀杏が待っている」『相撲』2020年2月号、ベースボール・マガジン社、83頁。
- ^ a b c 「外国出身初の高校横綱・アマルトゥブシン・アマルサナーら5人全員が新弟子検査体格基準パス」『スポーツニッポン』、2018年9月4日。2022年7月21日閲覧。
- ^ a b 「十両以下各段優勝力士喜び詳報」『相撲』2019年2月号、ベースボール・マガジン社、69頁。
- ^ a b c d 「全新弟子名鑑」『相撲』2018年10月号、ベースボール・マガジン社、96頁。
- ^ 「花の新十両データバンク」『相撲』2022年11月号、ベースボール・マガジン社、28頁。
- ^ a b c 「序ノ口優勝の狼雅が告白「ボク、ロシア人なんです」」『スポーツ報知』、2019年1月25日。2022年7月21日閲覧。
- ^ 「狼雅 高校の先輩・照ノ富士を下して序二段優勝「凄い緊張しました」」『スポーツニッポン』、2019年3月24日。2022年7月21日閲覧。
- ^ “狼雅と對馬洋が新十両昇進決定 藤伊吹ら13人が引退発表 九州場所番付編成会議”. スポニチ. (2022年9月28日)2022年9月28日閲覧。
- ^ 新十両の狼雅「何度も決めるチャンスはあったが自分が弱かった。決まってうれしい」と意欲 日刊スポーツ 2022年9月28日12時49分 (2022年9月28日閲覧)
- ^ 「出身地変更」『相撲』2020年1月号、ベースボール・マガジン社、78頁。
- ^ 狼雅 外喜義 - 力士プロフィール 日本相撲協会 (2022年11月11日閲覧)
関連項目
外部リンク
- 狼雅 外喜義 - 日本相撲協会