『流浪の月』(るろうのつき、英: The Wandering Moon)は、凪良ゆうの小説[1]。東京創元社より単行本が2019年8月に出版された[1]。2022年2月には、創元文芸文庫の創刊ラインナップとして文庫版が刊行された[2]。
概要
装幀は鈴木久美が担当している[1]。BL作家として活動していた作者が出版した初の単行本作品であり[6]、第1章「少女のはなし」から終章「彼のはなし II」の全6章で構成されている[7]。作者は『ダ・ヴィンチ』2021年5月号のインタビューの中で、2013年に出版したBL小説『あいのはなし』をベースにした作品だと説明した[8]。
2020年5月、コロナ禍における書店を応援するために、凪良の発案で「書店応援ペーパー」の配布企画が実施された[9]。東京創元社・講談社・ポプラ社の合同企画で、本作か『神さまのビオトープ』(講談社タイガ)か『わたしの美しい庭』(ポプラ社)のいずれかを購入した人を対象に、凪良が書き下ろした3作品の番外編の掌編を掲載したペーパーが配布された[9]。本作の掌編「未来の月へ」は、その後加筆修正を行い、2022年に刊行された『紙魚の手帖 vol.04 APRIL 2022』に掲載された[10]。
凪良は登場人物ごとの曲として、佐伯文に対しては七尾旅人の「8月」を、家内更紗に対しては笹川美和の「紫陽花」を挙げている[11]。
2022年5月現在で、累計発行部数は80万部を突破している[12]。
あらすじ
主人公の家内更紗は、父を病で亡くし母に見捨てられ、母方の伯母の家に引き取られた。更紗は従兄(伯母の息子)の孝弘から虐待を受けており、学校が終わるといつも公園で過ごしていた。その公園には、小学生からロリコンと呼ばれる19歳の大学生・佐伯文がいた。ある日、公園では雨が降った。更紗がびしょ濡れになっているのを目にした文は、更紗に傘を差し出す。そして、引き取られている伯母の家に帰りたくないという更紗の気持ちを知り、自分のマンションに招き入れる。更紗は文のもとで2か月を過ごす。その間、更紗は行方不明の女児として、全国に実名報道されていた。そして、文と更紗が一緒に外出した先で通行人に見つかり、文は誘拐犯として逮捕されてしまう。警察官に抱えられ保護される更紗。更紗が「文と別れたくなくて」泣き叫ぶシーンは、居合わせた人の携帯電話で撮影・拡散されていった。その後更紗は「傷物にされた可哀想な女の子」、文は「ロリコンで凶悪な誘拐犯」というレッテルを貼られ続ける。二人の関係は、周囲の人たちが思うものとは全く違うものであったにも関らずに。そして事故から15年過ぎ、24歳になったある日、更紗は偶然文と再会する。
書誌情報
オーディオブック
映画
流浪の月 | |
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監督 | 李相日 |
脚本 | 李相日 |
原作 | 凪良ゆう |
製作 | 朴木浩美 |
製作総指揮 | 宇野康秀 依田巽 小竹里美 髙橋尚子 堀尾星矢 |
出演者 | 広瀬すず 松坂桃李 横浜流星 多部未華子 趣里 三浦貴大 白鳥玉季 増田光桜 内田也哉子 柄本明 |
音楽 | 原摩利彦 |
撮影 | ホン・ギョンピョ |
編集 | 今井剛 |
制作会社 | UNO-FILMS |
製作会社 | 「流浪の月」製作委員会 |
配給 | ギャガ |
公開 | 2022年5月13日 |
上映時間 | 150分 |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
興行収入 | 8億3000万円[17] |
2022年5月13日に公開[18]。監督は李相日、主演は広瀬すずと松坂桃李[5]。UNO-FILMS製作第1弾作品[5]。原作のプロローグとエピローグがほぼ省略されている一方で、原作にない「ポー詩集」からの長い引用が追加されている。文が逮捕される場面は動物園から公園の池に変更されている。
キャスト
- 家内更紗:広瀬すず(幼少期:白鳥玉季[19])
- 佐伯文:松坂桃李
- 中瀬亮:横浜流星[20]
- 谷あゆみ:多部未華子[21]
- 安西佳菜子:趣里[19]
- 湯村:三浦貴大[19]
- 安西梨花:増田光桜[19]
- 佐伯音葉:内田也哉子[19]
- 阿方:柄本明[19]
スタッフ
- 原作:凪良ゆう『流浪の月』(東京創元社刊)
- 監督・脚本:李相日
- 撮影監督:ホン・ギョンピョ[22]
- 音楽:原摩利彦
- 製作総指揮:宇野康秀
- 製作エグゼクティブ:依田巽
- 製作:森田篤
- プロデューサー:朴木浩美
- エグゼクティブプロデューサー:小竹里美、髙橋尚子、堀尾星矢
- ラインプロデューサー:山本礼二
- 美術:種田陽平[22]、北川深幸
- 照明:中村裕樹
- 音響:白取貢
- 音響効果:柴崎憲治
- 編集:今井剛
- 装飾:西尾共未、高畠一郎
- キャスティングディレクター:元川益暢
- 衣装デザイン:小川久美子
- ヘアメイク:豊川京子
- 制作担当:多賀典彬
- 助監督:竹田正明
- 韓国コーディネーター:
- 音楽プロデューサー:杉田寿宏
- 宣伝プロデューサー:依田苗子、新田晶子
- 共同製作・配給:ギャガ[5]
- 共同製作:UNITED PRODUCITONS[5]
- 企画・製作幹事・制作プロダクション:UNO-FILMS[5]
- 製作:「流浪の月」製作委員会(UNO-FILMS、ギャガ、UNITED PRODUCTIONS)
関連書籍
- 凪良ゆう(原作)・李相日(脚本)『流浪の月 シナリオブック』、東京創元社〈創元文芸文庫〉、2022年6月10日発行(2022年6月13日発売[23])、ISBN (978-4-488-80303-2)
受賞
- 第14回TAMA映画賞[24]
- 最優秀男優賞(松坂桃李)
- 最優秀女優賞(広瀬すず)
- 最優秀新進男優賞(横浜流星) - 『アキラとあきら』『嘘喰い』『あなたの番です 劇場版』『DIVOC-12』とあわせて。
- 第47回報知映画賞 助演男優賞(横浜流星)[25]
- ELLE CINEMA AWARDS 2022 エル べストアクトレス賞(広瀬すず)[26]
- 第35回日刊スポーツ映画大賞 監督賞(李相日)[27]
- 第46回日本アカデミー賞[28]
- 優秀作品賞
- 優秀主演男優賞(松坂桃李)
- 優秀主演女優賞(広瀬すず)
- 優秀助演男優賞(横浜流星)
- 優秀撮影賞(ホン・ギョンピョ)
- 優秀照明賞(中村裕樹)
脚注
- ^ a b c “凪良ゆう『流浪の月』 - 東京創元社 特設サイト”. 東京創元社. 2020年10月29日閲覧。
- ^ a b “東京創元社の新たな文庫レーベル 〈創元文芸文庫〉創刊!”. Web東京創元社マガジン. 東京創元社 (2022年2月22日). 2022年11月1日閲覧。
- ^ “「2020年本屋大賞」決定!! 大賞は凪良ゆう『流浪の月』 全ノミネート作の順位を発表!”. ダ・ヴィンチニュース (KADOKAWA). (2020年4月8日)2021年7月22日閲覧。
- ^ “これまでの本屋大賞”. 本屋大賞. 2020年10月29日閲覧。
- ^ a b c d e f "広瀬すず×松坂桃李W主演で『流浪の月』映画化 監督は『悪人』『怒り』の李相日". リアルサウンド映画部. 12 July 2021. 2021年7月12日閲覧。
- ^ “<凪良ゆうインタビュー>センシティブな筆致にファン急増中。「好きに書いていいよ」が生んだ名作『流浪の月』”. 本の話. 別冊文藝春秋. 文藝春秋 (2020年1月23日). 2020年10月29日閲覧。
- ^ Kanba (2020年11月18日). “流浪の月(本屋大賞受賞) 凪良ゆう(著) 新しい人間関係への旅立ちを描いた異色の小説”. DREAM-ARRIVE. 読書日和. 2021年7月12日閲覧。
- ^ “凪良ゆう「ブレることが、BL時代を含めた私の作風」『滅びの前のシャングリラ』発表までの苦悩とは?”. ダ・ヴィンチニュース (2021年4月10日). 2021年12月5日閲覧。
- ^ a b “【書店の皆様へ】東京創元社×講談社×ポプラ社三社合同購入者特典〈凪良ゆう 書店応援ペーパー〉配布企画のご案内”. 東京創元社. 2023年3月2日閲覧。
- ^ “凪良ゆう×広瀬すず×松坂桃李の特別鼎談、シナリオ版抄録や掌編掲載などで贈る、『流浪の月』映画化記念特集! 『紙魚の手帖 vol.04 APRIL 2022』”. Web東京創元社マガジン. 東京創元社 (2022年4月7日). 2023年3月2日閲覧。
- ^ “”. 山形純菜 プレシャスサンデー. TBSラジオ (2020年5月10日). 2020年5月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年7月12日閲覧。
- ^ “広瀬すず、松坂桃李主演映画も公開 本屋大賞作品『流浪の月』が80万部突破[文庫ベストセラー]”. Book Bang. (2022年5月14日)2023年3月2日閲覧。
- ^ “本屋大賞・凪良ゆう「流浪の月」 「常識」では表せない切実な絆”. 好書好日. 朝日新聞社 (2020年7月21日). 2020年10月29日閲覧。
- ^ “【2020年本屋大賞受賞】ふたりは再会してはいけなかった…? 世間が反対しても、そばにいたい。新たな“つながり”と”断絶”を描く『流浪の月』”. ダ・ヴィンチニュース. KADOKAWA (2020年4月7日). 2020年10月29日閲覧。
- ^ tokyosogenshaの2019年8月29日のツイート、2022年11月2日閲覧。
- ^ キクボン! [@kikubon_jp] (2020年11月20日). "【新着】『流浪の月(著:凪良ゆう 朗読:土師亜文)』を公開!2020年本屋大賞受賞作です!あなたと共にいることを、世界中の誰もが反対し、批判するはずだ。それでも文、わたしはあなたのそばにいたい―。凪良ゆう先生の傑作小説を土師亜文さんの朗読でお楽しみ下さい!" (ツイート). Twitterより2023年3月2日閲覧。
- ^ 『キネマ旬報』 2023年3月下旬特別号 p.39
- ^ "広瀬すず&松坂桃李W主演『流浪の月』の公開日が5月13日に決定! 美しくも不穏な特報映像が完成". MOVIE WALKER PRESS. 22 February 2022. 2022年3月16日閲覧。
- ^ a b c d e f “映画『流浪の月』広瀬すずの幼少期を演じるのは人気子役の白鳥玉季”. ORICON NEWS (oricon ME). (2021年12月13日)2021年12月13日閲覧。
- ^ "横浜流星が広瀬すず×松坂桃李W主演映画「流浪の月」に出演決定「僕の中にまだある殻を破ることができたら」". TV LIFE web. ワンパブリッシング. 17 August 2021. 2021年8月17日閲覧。
- ^ "多部未華子、広瀬すず×松坂桃李W主演映画『流浪の月』出演決定 「とても魅⼒的な脚本」". Real Sound. blueprint. 25 October 2021. 2021年10月25日閲覧。
- ^ a b “「流浪の月」撮影監督は「パラサイト」のホン・ギョンピョ、美術監督は種田陽平! コメント独占入手”. 映画.com. 2021年8月13日閲覧。
- ^ tokyosogenshaの2022年6月13日のツイート、2022年11月2日閲覧。
- ^ “「LOVE LIFE」「ハケンアニメ!」第14回TAMA映画賞の最優秀作品賞を受賞”. 映画ナタリー (ナターシャ). (2022年10月6日)2023年3月2日閲覧。
- ^ “報知映画賞で「ある男」が作品賞に、福山雅治・有村架純・横浜流星・尾野真千子も受賞”. 映画ナタリー (ナターシャ). (2022年11月30日)2023年3月2日閲覧。
- ^ “広瀬すず、窪田正孝、早川千絵、河合優実がELLE CINEMA AWARDS受賞”. 映画ナタリー (ナターシャ). (2022年12月20日)2023年3月2日閲覧。
- ^ “日刊スポーツ映画大賞 作品賞は「ハケンアニメ!」に 監督賞は「流浪の月」李相日”. 映画.com. (2022年12月28日)2023年3月2日閲覧。
- ^ “【第46回日本アカデミー賞】優秀賞発表 授賞式は3月10日”. シネマカフェ (イード). (2023年1月23日)2023年3月2日閲覧。