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料理本

料理本(りょうりぼん、英語:Cookbook)とは、調理法レシピについて記述した書籍である。料理書とも呼ばれる[1]

歴史

紀元前1750年頃、メソポタミアアッカド語によって書かれた3枚の粘土板に25種のシチューを作る素材表が記載されている[2]。現存する料理粘土板は4枚で[3]、最も新しいものは紀元前1000年ごろのものである[4]。料理粘土板のうち3枚は(イエール大学のバビロニア・コレクション)(英語版)に含まれており[5]アッシリア学の第一人者(ジャン・ボテロ)(英語版)によって発見・翻訳され、日本語訳も刊行されている[6][7]

料理法まで記載した物は、紀元前500年ごろサンスクリット語で書かれた(インド料理本)(英語版)『Vasavarajeyam』である[8][9]。サンスクリット語では、このような料理本を「パーカシャーストラ」(Pākaśāstra、料理論典)という[10][11]

古代地中海世界では、帝政ローマ末期・4世紀末ごろにローマ料理の料理法をまとめた『アピキウスの書』が書かれた[12]。同書が現存最古の料理本とされることもあるが、それより古い大カトーウァロ農書や、アテナイオス食卓の賢人たち』などにも料理の詳細な記述がある[12]

ヨーロッパでは、14世紀に中世料理本の写本が多く書かれた。その例として、フランスのギヨーム・ティレル(Viandier)(フランス語版)』や著者不明『(Liber de Coquina)(英語版)』、ドイツ最古の『(Das Buch von guter Speise)(ドイツ語版)』(1350年ごろ)、イギリス最古の『(The Forme of Cury)(英語版)』(14世紀末)[13][14]がある。

15世紀から16世紀のルネサンス期イタリアでは、美食家人文主義者(プラティナ)(英語版)が『(真の喜びと健康について)(英語版)』を、料理人の(スカッピ)(英語版)が『オペラ』を書き、ルネサンス期イタリア料理を体系化した[15][16]。17世紀から19世紀には、イギリスで(ハナ・ウリー)(英語版)女性による料理本執筆の草分けとなり[17]フランカテリ労働者階級向けイギリス料理の草分け的な料理本を書いた。一方フランスでは、(ラ・ヴァレンヌ)(フランス語版)カレームエスコフィエらがフランス料理の料理本を書いた。(ムノン)(フランス語版)は宮廷料理でないブルジョワ向け料理の草分け的な料理本『ブルジョワの女料理人』を書いた[18]

現存最古のアラビア語料理本は、10世紀ごろに(イブン・サッヤール・アル=ワッラク)(英語版)が編纂した『料理と食養生の書』である[19]。中世イスラームの都市では、親戚・知人・客人の接待や、ラマダーン明けのイードにおける食事は重要とされた。(中世アラブ医学)(英語版)には医食同源の思想があり、正しい食事(al-sahih min al-tabikh)は宮廷を中心とする人々の関心事だった。料理の種類、ハラール、食養生、もてなしについての文章はアラビア語の医学書、詩、文学書、旅行記にも多く記されている[20]。10世紀バグダートの書籍商だったイブン・ナディームによる図書目録フィフリスト』には、「アラブ料理書」という分類があり、10世紀には書物のカテゴリーとして料理書が確立していたことが分かる[注釈 1][22]

8世紀から11世紀にかけてはバグダード、10世紀後半から15世紀にはエジプトやシリア、13世紀にはマグリブアンダルスを中心としてアラブ料理書が作られており、各時代の経済と文化の中心地で盛んだったことが分かる。著者や編者は、9世紀から11世紀にかけては宮廷に仕える学者、音楽家、官僚、カリフの侍医たちだった。13世紀以降になると都市の知識人であるウラマーカーディー、詩人などが手がけるようになった。その理由は、料理書の内容が宮廷料理から各地域の都市の料理に変わった点にあると推測される[23]

中国料理については、7世紀・代の図書目録『隋書経籍志』などに、題名に『食経』と付く料理本が多く記録されているが、ほとんどが逸書となっており現存していない[24][25]。現存最古級の料理の記述は、6世紀・北魏農書斉民要術』や、前3世紀以前・先秦代のの儀礼書『礼記』における天子に捧げられる食べ物、『呂氏春秋』本味編などに見られる。10世紀・代以降は印刷技術の発展により、『中饋録』『山家清供』『随園食単』など多くの料理本が現存する。モンゴルが中国を治めた代には、皇帝に飲食を提供した飲膳(太医)(中国語版)(忽思慧)(中国語版)が食養本『(飲膳正要)(中国語版)』を1330年ごろに執筆している。『飲膳正要』には、モンゴル料理ペルシア料理と推定される料理も含まれている[26]

韓国料理については、1670年頃に貞夫人安東張氏が『(飲食知味方)(英語版)』として料理法を記している。

日本料理については、江戸時代に至るまで料理に関する本はあるものの、詳しい内容は秘事口伝の形で料理人の師弟間でのみ伝えられた(四条流庖丁道など)。江戸時代になると、印刷技術の発展により料理本が民衆も読めるものとなった[27]。江戸時代の料理本に『料理物語[27]豆腐百珍[28]本朝食鑑』などがある。

医学

医食同源という言葉があるように、料理本は古代の医療と関連していた[29][30][31]。インドの料理本の多くや[32]、上記アラビアの『料理と食養生の書』もその一例である。

中国の歴代の料理本は、「医」を重視する本草書的な料理本と、「食」を重視する料理本の二系統に分けられる[24]。例えば上記の『(飲膳正要)(中国語版)』は前者、『斉民要術』は後者に属する[24]

日本でも、陰陽五行説に基づく材料の選択や薬学の知識が考慮された[1]

薬の処方箋をレシピというように、古代ギリシアでは医師が食事のレシピも書いていた((古代ギリシア・ローマの食養と医療)(英語版))。

計量

19世紀になるまで計量については記されていない。料理本は、料理人の記憶を補う備忘録として使われ、味付けは経験からくる匙加減で作っていたため分量を計量する記述が省かれていた[33]

日本では、女子栄養大学創設者の香川綾が、1948年(昭和23年)にメートル法尺貫法が混在していた計量スプーン計量カップに統一した規格を持ち込み、NHK料理番組などで普及に努めた[34]

文化

大会
博物館・コレクション
  • (ドイツ料理本博物館)(ドイツ語版)
  • (リーズ大学料理本コレクション)(英語版)
関係者

脚注

[脚注の使い方]

注釈

  1. ^ 『フィフリスト』には13種類の料理書が掲載されており、1冊を除いて現存する写本はない[21]

出典

  1. ^ a b 『(料理書)』 - コトバンク
  2. ^ “料理本の起源を探る。世界最古の料理本は紀元前1750年頃、古代メソポタミアにあった”. カラパイア. 2022年10月9日閲覧。
  3. ^ Connolly, Bess (2018年6月14日). “What did ancient Babylonians eat? A Yale-Harvard team tested their recipes” (英語). YaleNews. 2022年10月10日閲覧。
  4. ^ Winchester, Ashley. “The world’s oldest-known recipes decoded” (英語). www.bbc.com. 2022年10月10日閲覧。
  5. ^ イェール大学所蔵の粘土板はYale University’s Babylonian Collectionの検索ページでculinaryと入れて検索をかければ確認できる。
  6. ^ ジャン・ボテロ著、松島英子訳『最古の料理』法政大学出版局、2003年。(ISBN 9784588022180)
  7. ^ 遠藤 2017, p. 19.
  8. ^ 注:解釈に自信がない。そもそもVasavarajeyamについての情報がドイツ語版とチェコの論文のみで詳しく確認できず
  9. ^ Zábrodská, Kristina (2014年10月20日). “Životní styl za První republiky na příkladu gastronomie v českém dobovém tisku” (チェコ語). 2022年10月9日閲覧。
  10. ^ 加納 2019, p. 183.
  11. ^ “A Genre of its Own: A History of Pākaśāstra and Other Culinary Writing of Early India”. icas.asia. 2022年10月10日閲覧。
  12. ^ a b リコッティ 2011, p. 344f.
  13. ^ 小柳 2009, p. 22.
  14. ^ 遠藤 2017, p. 76.
  15. ^ 遠藤 2017, p. 94f.
  16. ^ 西村 2013, 第2章.
  17. ^ 小柳 2009, p. 21.
  18. ^ 遠藤 2017, p. 136.
  19. ^ 鈴木 1994, p. 92.
  20. ^ 鈴木 1996, p. 89.
  21. ^ 鈴木 1994, pp. 90–91.
  22. ^ 鈴木 1996, p. 23.
  23. ^ 鈴木 1994, p. 94.
  24. ^ a b c 中村 1995, p. 3-5.
  25. ^ 篠田 & 田中 1972, 篠田統「食経考」.
  26. ^ 篠田 & 田中 1972, 篠田統「飲膳正要について」.
  27. ^ a b 剛史, 遠藤 (2020年). “日本料理の普及に関する諸研究”. マーケティングジャーナル. pp. 80–88. doi:10.7222/marketing.2020.009. 2022年10月10日閲覧。
  28. ^ “江戸の料理書・料理本 - 催し物 | 国文学研究資料館”. 江戸の料理書・料理本 - 催し物 | 国文学研究資料館. 2022年11月26日閲覧。
  29. ^ Ria Jansen-Sieben: Van voedseltherapie tot kookboeck. In: Ria Jansen-Sieben, Frank Daelemans (Hrsg.): Voeding en geneeskunde – Alimentation et médecine. Acten van het colloquium Brussel 12. 10. 1990. Brüssel 1993 (= Archief- en bibliotheekwezen in België. extranummer 41), S. 49–74.
  30. ^ J. M. van Winter: Kookboeken, medisch of culinair? In: Ria Jansen-Sieben, Frank Daelemans (Hrsg.): Voeding en geneeskunde – Alimentation et médecine. Acten van het colloquium Brussel 12. 10. 1990. 1993, S. 153–165.
  31. ^ Ria Jansen-Sieben: Mittelniederländische Kochbücher: medizinisch oder kulinarisch? In: Würzburger medizinhistorische Mitteilungen. Band 16, 1997, S. 191–202, hier: S. 198–200.
  32. ^ 加納 2019, p. 182.
  33. ^ Wilson, B. (2012). Consider the fork: A history of invention in the kitchen. London: United Agents.(真田由美子(訳)(2014).『キッチンの歴史』pp. 147–187,河出書房新社)
  34. ^ “asahi.com(朝日新聞社):日本最初の計量カップ・スプーン 女子栄養大 - お宝発見 - 大学 - 教育”. www.asahi.com. 2022年10月10日閲覧。

参考文献

  • エウジェニア・サルツァ・プリーナ・リコッティ『古代ローマの饗宴』武谷なおみ 訳、講談社講談社学術文庫〉、2011年。ISBN (978-4062920513)。 
  • 遠藤雅司『歴メシ!世界の歴史料理をおいしく食べる』柏書房、2017年。ISBN (9784760148783)。 (決定版: 晶文社、2022年。(ISBN 978-4794973429))
  • 加納和雄 著「コラム1 中世のサンスクリット料理書」、井坂理穂・山根聡 編『食から描くインド 近現代の社会変容とアイデンティティ』春風社、2019年。ISBN (978-4861106330)https://researchmap.jp/kanokazuo/published_papers/31786248 
  • 小柳康子「イギリスの料理書の歴史(1)-Hannah WoolleyのThe Gentlewomans Companion (1673)」『實踐英文學』第61号、実践女子大学、2009年、21-33頁、2022年11月26日閲覧 
  • 篠田統; 田中静一『中国食経叢書 中国古今食物料理資料集成』書籍文物流通会、1972年。 NCID BN0270516X。 
  • 鈴木貴久子「中世アラブ料理書の系統と特徴について」『オリエント』第37巻第2号、日本オリエント学会、1994年、88-107頁、2022年10月8日閲覧 
  • 鈴木貴久子「マムルーク朝時代の料理書『日常食物誌』を中心とするアラブ・イスラーム世界の食生活研究」、東京外国語大学 大学院総合国際学研究科、1996年3月、2022年10月8日閲覧 
  • 中村喬『中国の食譜』平凡社平凡社東洋文庫〉、1995年。ISBN (978-4582805949)。 
  • 西村暢夫『イタリア食文化こぼれ話』文流、2013年。ISBN (9784990294434)。 

関連項目

外部リンク

  • 江戸の料理書・料理本 - 国文学研究資料館
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