『文藝』(ぶんげい)は、日本の文芸雑誌。1933年に改造社により創刊された[1]が、その後1944年から河出書房が引き継ぐ形で刊行を開始、1957年に河出書房新社となった際に休刊したが、1962年に復刊して現在に至っている。当初は月刊誌だったが、1980年代半ばからは季刊誌となった。
復刊以降から公募の文藝賞を主宰し、若手の書き手を発掘している。田中康夫『なんとなく、クリスタル』、堀田あけみ『1980アイコ十六歳』、山田詠美『ベッドタイムアイズ』、星野智幸『(最後の吐息)』、綿矢りさ『インストール』、羽田圭介『(黒冷水)』、三並夏『(平成マシンガンズ)』、磯崎憲一郎『(肝心の子供)』、金子薫『(アルタッドに捧ぐ)』、町屋良平『(青が破れる)』、若竹千佐子『おらおらでひとりいぐも』、宇佐見りん『かか』、遠野遥『改良』などが受賞作である。
この『文藝』と、『新潮』(新潮社発行)、『文學界』(文藝春秋発行)、『群像』(講談社発行)、『すばる』(集英社発行)は「五大文芸誌」と呼ばれ、これらに掲載された短編・中編小説が芥川賞の候補になることが多い。『文藝』に掲載されて芥川賞を受賞した作品は、宮原昭夫「誰かが触った」(第67回)、三田誠広「僕って何」(第77回)、高橋三千綱「九月の空」、高橋揆一郎「伸予」(ともに第79回)、唐十郎「佐川君からの手紙」(第88回)、藤沢周「ブエノスアイレス午前零時」(第119回)、綿矢りさ「蹴りたい背中」(第130回)、青山七恵「ひとり日和」(第136回)、鹿島田真希「冥土めぐり」(第147回)、若竹千佐子「おらおらでひとりいぐも」(第158回)、遠野遥「破局」(第163回)、宇佐見りん「推し、燃ゆ」(第164回)の12作品である。
編集長経験者には上林暁、野田宇太郎、杉森久英、巖谷大四、坂本一亀、寺田博、佐佐木幸綱がいる。
1999年から、ムック本として『文藝別冊』「総特集」シリーズが、KAWADE夢ムックで刊行されている。
2019年に編集長に就任した坂上陽子は、表紙をカラフルにして、「韓国・フェミニズム・日本」など海外文学の積極的な推奨や「コロナと五輪」など社会問題を特集テーマに選ぶなど改革を実施し増刷を度重ね、部数や文学賞「文藝賞」への応募が増えた[2]。
特集号
- 長野まゆみ - 2001年夏季号/岡崎京子 - 2001年秋季号/中原昌也 - 2001年冬号
- リリー・フランキー - 2002年春季号/島田雅彦 - 2002年夏季号/D[diː] - 2002年秋季号
- 鷺沢萠 - 2003年春季号/保坂和志 - 2003年夏季号/川上弘美 - 2003年秋季号/藤沢周 - 2003年冬季号
- 行定勲 - 2004年春季号/阿部和重 - 2004年夏季号/Cocco - 2004年秋季号/俵万智 - 2004年冬季号
- 角田光代 - 2005年春季号/しりあがり寿 - 2005年夏季号/山田詠美 - 2005年秋季号/吉田修一 - 2005年冬季号
- 星野智幸 - 2006年春季号/高橋源一郎 - 2006年夏季号/いしいしんじ - 2006年秋季号/伊藤たかみ - 2006年冬季号
- 恩田陸 - 2007年春季号/柳美里 - 2007年夏季号/古川日出男 - 2007年秋季号/笙野頼子 - 2007年冬季号
- 桐野夏生 - 2008年春季号/長野まゆみ - 2008年秋季号/柴崎友香 - 2008年冬季号
- 柴田元幸 - 2009年春季号/穂村弘 - 2009年夏季号/小川洋子 - 2009年秋季号
- 島本理生 - 2010年春季号/荒木経惟 - 2010年夏季号/江國香織 - 2010年秋季号
- 池澤夏樹 - 2011年春季号/森見登美彦 - 2011年夏季号/綿矢りさ - 2011年秋季号
- 古井由吉 - 2012年夏季号/赤坂真理 - 2012年秋季号/鹿島田真希 - 2012年冬季号
- いとうせいこう - 2013年春季号/舞城王太郎 - 2013年夏季号
歴代編集長
- (山本三生) 1934-42年(改造社)
- 高杉一郎 1942-43年
- 木村徳三 1943-44年
- 野田宇太郎 1944-45年(河出書房)
- 今野一雄 1946年
- 飯山正文 1947年
- (荒川竹志) 1947年
- 杉森久英 1947-50年
- 巖谷大四 1950-56年
- 柳沢茂八 1956-57年
- (休刊)
- 坂本一亀 1962-63年
- 竹田博 1964-65年
- 寺田博 1965-66年
- 杉山正樹 1966‐67年
- 佐佐木幸綱 1967-68年
- 寺田 1968-77年
- 金田太郎 1977-81年
- 福島紀幸 1981-84年
- 高木有 1984-92年
- 長田洋一 1992-97年
- 阿部晴政 1997-2001年
- 吉田久恭 2001-2010年
- 高木れい子 2010-2014年
- 尾形龍太郎 2014-2018年
- 坂上陽子 2019年[2]-
脚注
関連項目
- ユリイカ 詩と批評
- KAWADE夢ムック(文藝別冊)
外部リンク
- 文藝