『怒』(いかり)は、1986年にSNKがアーケードゲーム用として制作・稼働した縦スクロール型アクションシューティングゲーム。キャッチフレーズは「俺が生き残るためなら相棒でも倒す!(Surviving all perils even zapping your friend)」。採用されている音源チップはYM3526とY8950である。
ジャンル | アクションシューティング |
---|---|
対応機種 | アーケード (AC) 対応機種一覧
|
開発元 | SNK |
発売元 | SNK INT Tradewest |
デザイナー | 伊集桂子 |
シリーズ | 怒シリーズ |
人数 | 1 - 2人(同時プレイ) |
メディア | 業務用基板 (627.00キロバイト) |
稼働時期 | 1986年2月 INT 1986年3月 |
対象年齢 | CERO:B(12才以上対象) ESRB: |
コンテンツ アイコン | 暴力 |
デバイス | 8方向ループレバー 2ボタン |
CPU | Z80 (@ 4 MHz)×2 |
サウンド | Z80 (@ 4 MHz) YM3526 (@ 4 MHz)×2 |
ディスプレイ | ラスタースキャン 縦モニター 288×216ピクセル 60.00Hz パレット1024色 |
その他 | 型式:A5004 'IW' |
日本国外では、『IKARI WARRIORS』(イカリ・ウォリアーズ)のタイトルで稼働された。
後に日本国内ではファミリーコンピュータ版、MSX2版が発売された他、欧州ではAmstrad CPC、コモドール16、ZX Spectrum、PC Booter、Amiga、Atari ST、コモドール64版が発売され、北米ではNES、Atari 2600、Atari 7800版が発売された。
また、日本国内のみ携帯電話用アプリとして『怒 -IKARI- レオナ激闘編』(2006年)のタイトルでアレンジ移植版が配信された他、アーケード版はPlayStation Network用ソフト『SNK ARCADE CLASSICS 0』(2011年)に収録、さらにPlayStation 4、Nintendo Switch用ソフトとして2019年にアーケードアーカイブスにて配信された。
ゲーム内容
8方向の「ループレバー」と呼ばれるレバーと2つのボタンで操作する。
ループレバー(SNKの登録商標。一般名称はダイヤルスイッチ)はスティックの上部にダイヤルがついたもので、倒すことで自機を進行、回転で攻撃方向を調整する。ダイヤルは1周12方向となっていて、例えば180度反転させる場合でも操作は120度回転で済み、手首を無理に捻る必要が無いように考慮されている。
ボタンは主に、銃と手榴弾の使用に用いる。
色違いの敵兵を倒すとアイテムが出ることがある。このゲームでは銃弾、手榴弾ともに弾数制限があるので、アイテムは単に各種パワーアップのためだけではなく、残弾を補給するためにも拾わなければならない。
味方の空戦車の傍で手榴弾ボタンを押せば戦車に乗り込むことができる。これもガソリンメーターが無くなれば止まり爆発するので、アイテムを拾って補給しなければならない。戦車から降りる時も手榴弾ボタンを押す。
エリアの切れ目には全部で5つのゲートがあり、これは手榴弾か戦車砲でなければ破壊できない。
特殊なレバーを用いる操作や、敵弾だけでなく自分や味方の弾に当たってもミスとなるなど、従来のゲームに無かった仕様を持つ。
手榴弾を投げると移動して避ける、など、敵はこちらの攻撃を避けるといった動作を行う。
ストーリー
この節にあるあらすじは作品内容に比して不十分です。 |
国連に一通の極秘情報が届けられた。その内容は、秘密結社を名乗る悪の組織が、とある国に基地を造り、世界征服を企んでいる、というものだった。もし、それが事実なら、組織壊滅に乗り出さなければならないが、まだ確固たる証拠が無い。委員長は少数精鋭の特殊部隊を派遣し、事の解決にあたることを決意した。隊長のラルフ大佐以下、四名の特殊工作隊、そして、新顔のクラーク少尉が戦場に送り込まれるが、敵地に潜入するために墜落を偽装する予定だった飛行機が作戦開始直前に突如起きた爆発によって本当に墜落し、ラルフ以外の特殊部隊員はほぼ全滅してしまう。スパイの存在を疑うラルフの前に、無傷のクラークが現れる。果たして、彼は敵なのか?それとも味方なのか?考える間もなく、敵が襲来してくる。
登場キャラクター
他機種版
No. | タイトル | 発売日 | 対応機種 | 開発元 | 発売元 | メディア | 型式 | 売上本数 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 怒 | 1986年11月26日 1987年6月 | ファミリーコンピュータ | マイクロニクス | ケイ・アミューズメントリース | 1.25メガビットロムカセット[1] | KAC-IK | - | |
2 | Ikari Warriors | 1987年 | Amstrad CPC コモドール16 ZX Spectrum | Elite Systems | Elite Systems | フロッピーディスク | - | - | |
3 | Ikari Warriors | 1987年 | PC Booter | Quicksilver Software | データイーストUSA | フロッピーディスク | - | - | |
4 | 怒 | 1987年 | MSX2 | SNK | SNK | 2メガビットロムカセット | SFX-IK | - | |
5 | Ikari Warriors | 1988年 | Amiga Atari ST コモドール64 | Elite Systems | データイーストUSA | フロッピーディスク | - | - | |
6 | Ikari Warriors | 1989年 | Atari 2600 | アタリ | アタリ | ロムカセット | - | - | |
7 | Ikari Warriors | 1990年 | Atari 7800 | アタリ | アタリ | ロムカセット | - | - | |
8 | 怒 -IKARI- レオナ激闘編 | 2006年8月1日[2][3] | FOMA900iシリーズ以降 (iアプリ) | SNKプレイモア | SNKプレイモア | ダウンロード (SNK WORLD-i) | - | - | アーケード版のアレンジ移植 |
9 | SNK ARCADE CLASSICS 0 | 2011年4月21日 | PlayStation 3 PlayStation Portable (PlayStation Network) | SNKプレイモア | SNKプレイモア | ダウンロード | - | - | アーケード版の移植 |
10 | 怒 -IKARI- | 2019年3月7日 | PlayStation 4 Nintendo Switch | SNK | ハムスター | ダウンロード (アーケードアーカイブス) | - | - | アーケード版の移植 |
- ファミリーコンピュータ版
- マップが原作のおよそ三倍の長さがあり、アーケード版では使用できなかったヘリコプターへの搭乗が可能、など、ゲームそのものがかなり異なる内容となっている。1コインでオールクリアすることがそれほど難しくなかったアーケード版と比べ、裏技によって無限コンテニューを行っても相当の根気が必要になる難易度となっている。パッケージイラストは漫画家のたがみよしひさが担当した。
開発
この記事は(検証可能)な(参考文献や出典)が全く示されていないか、不十分です。(2018年7月) |
経緯
『T・A・N・K』(1985年)の開発を終えて一段落した頃、『T・A・N・K II』の開発の話が上層部から降りてきた。その際、『T・A・N・K』に『戦場の狼』(1985年)と『フロントライン』(1983年)の面白さ、つまり人間同士の戦いと戦車からの脱出という要素を追加したものを、という注文事項があった。これを元に開発がスタートした。
面白さの要素としては、
- 人間を大きくし、対人戦闘を可能にし、プレイヤーの感情移入をしやすくする。
- 戦車に乗り込むことによって変身する感覚を与え、脱出しなければならない状況を作り出すことによって緊張感を与える。
- 爆発を派手にすることによって爽快感を持たせ、攻撃という行為に対する結果を最大限に発揮させる。
- 敵同士の殺し合いや誘爆を存在させ、戦場の臨場感を表現する。
- 激しい攻撃の部分を作り、メリハリをつける。
- 敵の攻撃によるプレイヤーに対する心理的衝撃の連続を、プレイの方法によって変化させる。
といった点が挙げられた。 また、シーケンスの構成としては、「心理的衝撃の連続した形態は、慣れてしまうことによって衝撃ではなくなる」という『T・A・N・K』での反省から、心理的な慣れを引き起こすまでの時間の引き延ばしを主眼とした。
また、『T・A・N・K』の開発の際に考えられていた「ゲームとは、開発した人間の思想を表現している」という思考をさらに進めて、「開発した人間の思想を表現し、なおかつ、プレイヤーに対しての心理的な影響をあらかじめ計算し、操作することが可能である媒体としての役割を持つ」という思考に達したため、人工知能によるシーケンス制御の試作品のようなゲームとなった。そのため、ゲームのシーケンス自体としてはかなり不安定な部分が出来てしまった。これの反省を元に続編の『怒号層圏』(1986年)が開発されることになった。
クラウムズ
このゲームプログラムには「クラウムズ」と呼ばれる擬似人工知能が搭載されており、それによってゲームの基本的シーケンスが制御されている[4]。
「クラウムズ」は基本的に、プレイヤーがどれくらいの時間でどれだけの敵を排除したかを監視している。短時間で多くの敵を排除できるプレイヤーは上手、逆にいつまでたっても少しも敵を殺せないプレイヤーは下手だと判断。それに基いて、敵をどこでどれぐらい出すか、パワーアップアイテムの出す場所や数はどうするか、などのシーケンスの変更を行っている。
基本的な「クラウムズ」の思考パターンとしては、プレイヤーを意図的に惑わす方向性で設計されており、パワーアップアイテムをなかなか取らないでいると、徐々に出さないようにもする。
上記の人工知能は2011年4月21日に発売されたPSPソフト『SNKアーケードクラシックスゼロ』の移植版にも再現されている。
スタッフ
- アーケード版
- ゲーム・デザイン:伊集桂子
- ファミリーコンピュータ版
- カバーイラスト:たがみよしひさ
- MSX2版
- プロデューサー:Mr.OBA(小畑浩二)
- プログラム・デザイン:TOMOHIDE
- ビジュアル・デザイン:O-MENTAIKO、YOKOHIRO
- サウンド:田中敬一、リー・アラム
反響
本作はSNKの名を一躍有名にし、ゲームセンターにおいても人気を集めた[5]。その一方で、2019年に発行された『NEOGEOmini 攻略ガイド 完全版』によると、設置店が予備のループレバーの調達に苦労したことが触れられており、店側が自作のレバーを用意したケースや、レバーの故障に伴い筐体を撤去したケースもあった[5]。
評価
評価 | ||||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
|
- アーケード版
1998年にそれまで発売されていたアーケードゲーム全てを対象に行われたゲーメストムック『ザ・ベストゲーム2』では、『名作・秀作・天才的タイトル』と認定された「ザ・ベストゲーム」に選定され、「ループレバーゲームの集大成といった感じのゲームで、チャンネル式であった『T.A.N.K.』のレバーの形状を変更、さらに使い勝手のよいものとしてのループレバーを確立した」と紹介されている[14]。
- ファミリーコンピュータ版
ゲーム誌『ファミコン通信』の「クロスレビュー」では合計24点(満40点)[10]、『ファミリーコンピュータMagazine』の読者投票による「ゲーム通信簿」での評価は以下の通りとなっており、18.64点(満30点)となっている[1]。
項目 | キャラクタ | 音楽 | 操作性 | 熱中度 | お買得度 | オリジナリティ | 総合 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
得点 | 2.46 | 2.74 | 3.28 | 3.51 | 3.60 | 3.05 | 18.64 |
ゲームムック『死ぬ前にクリアしたい200の無理ゲー ファミコン&スーファミ』のレビューには「システムは『戦場の狼』を踏襲しているが、難易度が段違い。四方八方から敵が現れ、大量の弾をばらまいてくる。しかもアーケード版と比べて、移動速度が非常に遅く、敵の出現位置を覚えなければ回避できない。また攻撃方法も劣化している」とある[13]
その他
- 当初は映画『ランボー』(1982年)をモチーフにして開発されており、実際に版権元の映画会社と交渉してライセンスの許可を貰うところまで進んでいた。しかし、現地のアーケードマシン展示会で当作品を出展した際、予想以上の人気を得たため、版権作品として出す必要性が無くなったとのこと。
- 開発者は「1コインでオールクリアは無理」と語っていたが、実際には多数のプレイヤーが達成している。
- 最終面クリア時にはカワサキ将軍が登場して、そこでゲームが終了となる。登場のみで戦うことはない。カワサキ将軍の名前は当時のSNK社長だった川崎英吉に由来する。
- 続編である『怒号層圏』へ改造できるROMキットが後に発売されたと言われている。ただし、当作品の基板はJAMMA規格以前から使用されていたSNK専用のハーネスが、対して『怒号層圏』はJAMMA規格ハーネス使われており、基板構造自体は別の物である。
- 主人公のラルフ大佐とクラーク少尉は後年、対戦型格闘ゲームの『ザ・キング・オブ・ファイターズ』(1994年)シリーズや横スクロールアクションゲームの『メタルスラッグ』(1996年)シリーズにプレイヤーキャラクターとして登場する。また、SNKのファミコンゲーム『ゴッドスレイヤー はるか天空のソナタ』(1990年)では、ラルフとクラークがモチーフとなったキャラクターが登場している。他にもSNKが開発した『ネクストスペース』(パサデナインターナショナル販売)の自機を操縦するプレイヤーの名前もラルフとクラークだが、時代は遠い未来であり苗字も違っている。
- 対戦型格闘ゲーム『KOF MAXIMUM IMPACT』(2004年)では、ラルフの2P衣装が本作および本シリーズのものと同一となっている。
続編
脚注
- ^ a b c 「5月10日号特別付録 ファミコンロムカセット オールカタログ」『ファミリーコンピュータMagazine』第7巻第9号、徳間書店、1991年5月10日、219頁。
- ^ 石田賀津男 (2006年8月1日). “SNKプレイモア、「怒」に新キャラクタを追加して携帯アプリ化iモード「怒 -IKARI- レオナ激闘編」を配信” (日本語). GAME Watch. インプレス. 2019年1月13日閲覧。
- ^ “『怒 -IKARI-』がレオナをヒロインに据えてiモードで復活!” (日本語). ファミ通.com. KADOKAWA (2006年7月31日). 2019年1月13日閲覧。
- ^ 参考文献:エンターブレイン『月刊アルカディア』2011年6月号 68ページ
- ^ a b ゴールデンアックス (2019-03-10). “SNKヒストリー 「新日本企画」時代”. NEOGEOmini 攻略ガイド 完全版. スタンダーズ. p. 6 - Kindle Cloud Readerにて閲覧。
- ^ “Ikari Warriors for Atari 7800 (1990)” (英語). Moby Games. Blue Flame Labs. 2017年4月15日閲覧。
- ^ a b “Ikari Warriors for Amstrad CPC (1987)” (英語). Moby Games. Blue Flame Labs. 2017年4月15日閲覧。
- ^ a b “Ikari Warriors for Commodore 64 (1986)” (英語). Moby Games. Blue Flame Labs. 2017年4月15日閲覧。
- ^ a b c “Ikari Warriors for ZX Spectrum (1988)” (英語). Moby Games. Blue Flame Labs. 2017年4月15日閲覧。
- ^ a b “怒 IKARI まとめ [ファミコン]” (日本語). ファミ通.com. KADOKAWA CORPORATION. 2017年4月15日閲覧。
- ^ “Ikari Warriors for Commodore 16, Plus/4 (1987)” (英語). Moby Games. Blue Flame Labs. 2017年4月15日閲覧。
- ^ a b “Ikari Warriors for Atari ST (1988)” (英語). Moby Games. Blue Flame Labs. 2017年4月15日閲覧。
- ^ a b 『死ぬ前にクリアしたい200の無理ゲー ファミコン&スーファミ』、マイウェイ出版、2018年10月10日、24頁、ISBN (9784865119855)。
- ^ 「ザ・ベストゲーム」『GAMEST MOOK Vol.112 ザ・ベストゲーム2 アーケードビデオゲーム26年の歴史』第5巻第4号、新声社、1998年1月17日、98頁、ISBN (9784881994290)。
外部リンク
- ハムスターアーケードアーカイブス公式サイト 怒 -IKARI-(PS4版)
- ハムスターアーケードアーカイブス公式サイト 怒 -IKARI-(Nintendo Switch版)
- Ikari Warriors(英語) - MobyGames