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富家宏泰(とみいえ ひろやす、1919年7月1日 - 2007年12月21日)は、戦後日本を代表する建築家。香川県生まれ[1]。
来歴・人物
京都大学工学部建築学科卒業、京都大学大学院修了後、京都大学講師を経て、1952年に富家建築事務所を設立。京都府と京都市の公共建築をはじめ、大学、図書館、美術館、オフィスビルなど、戦後京都における建築物のほとんどを手掛け、やがて三重県、石川県、千葉県を中心に全国の美術館やスタジアムなどをデザインした。その数2000点以上に及ぶ[1]。1958年、紺授勲章を受章。
京都府内における主な作品
- 能楽堂 京都観世会館 1958年
- 比叡山国際観光ホテル(共同設計:圓堂政嘉)1958年
- 彌榮自動車(株) 本社社屋 1959年
- 日本赤十字社京都府支部 京都第二赤十字病院東病棟 1959年
- (株)京都新聞社 本社 1959年
- 京都府立総合資料館 1961年(閉館)
- 学校法人同志社(同志社大学) 同志社大学新町キャンパス 1962年
- 学校法人同志社 記念会館(学館ホール)1962年(現存せず)
- 京都府歯科医師会館 1962年(現在は京都市北区総合庁舎西庁舎)
- 京都商工会議所ビル 1963年(現存せず)
- 京都市体育館 1963年
- 学校法人立命館(立命館大学)以学館 1965年
- (株)ワコール 旧本社ビル 1967年(現存せず)
- カトリック河原町教会(基本設計指導:Karl Freuler司祭) 1967年
- 京都府立文化芸術会館 1969年
- 学校法人同志社(同志社大学) 図書館(共同設計:大阪市立大学栗原研究室)1973年
- 京都府警察本部別館 1974年
- 北村美術館 1976年
- 京都市立芸術大学 1978年
- 裏千家センター 1978年
- からすま京都ホテル 1980年
- 京都市中京総合庁舎 1981年
- 京都市歴史資料館 1982年
石川県内における主な作品
石川県ではかつて知事であった中西陽一が同じ京都大学出身である縁で、30施設を設計した[1]。
など
立命館大学・衣笠キャンパスと富家建築
- 立命館大学史資料センターによれば、同大学・衣笠キャンパス(京都市北区)において1955年から1988年までに建設された学舎のほとんど(合計64棟[2])の設計が、富家宏泰の手によるものである[3]。富家は衣笠キャンパス内の学舎の外壁に京焼の製陶所が製造した「伝統的な焼きもの」(「75×75角窯変泰山タイル」)を採用した。「泰山タイル」には大量生産品では決して出せない風合いがあり、また、釉薬が醸し出す美しい色彩が特徴的で、衣笠キャンパス全体に統一感を作り出すのに役立っている。
- 富家は1988年まで衣笠キャンパスの学舎の設計に従事したが、それ以降に設計・建設された学舎の多く(例:創思館(2001年竣工)、充光館(2007年竣工)、育友館(2008年竣工)など)でも、外壁に「泰山タイル」(または「泰山タイル」風の外壁材)が採用され、富家建築のデザインは踏襲されている。そのため、衣笠キャンパスは富家宏泰の昭和モダン建築の見本市と言っても過言ではない。
- 「学生会館」(1978年竣工)の竣工パンフレットにおいて、富家は「泰山タイル」を用いたデザインについて以下のように述べている。なお、文中の「末川先生」とは、立命館名誉総長だった末川博のことである:
「今やこの衣笠キャンパスの基本的な色調となった布目の薄紫のタイルは、伝統的な京都の焼物なのです。はじめて衣笠キャンパスにこのタイルを張り上げた時、私は末川先生から大変おほめの言葉を戴いたことをおぼえています。このたび竣工した学生会館にも、コンクリート打放しの柱型と、この布目のタイルを基調として採用しました。これから先もこのキャンパスに限り、このパターンで進められることを望んでいます。」(出典:「立命館大学学生会館新築竣工記念」学校法人立命館 1978年 p.2)
回顧展
参考文献
- 富家建築事務所 作品集 1964、1970、1973、1979、1982、1987各版
- 建設画報 1969.1 富家建築事務所作品集 光元社
- 建築画報 103 1976.3 特集-富家建築事務所 建築画報社
脚注
- ^ a b c d e f 『「県美を設計した男」富家宏泰氏を紹介 県立図書館や中署など30施設』(2021年9月3日付北國新聞朝刊29面)2021年9月3日閲覧
- ^ 富家が設計し、外壁に「泰山タイル」が使われた学舎:以学館(1965年竣工)、啓明館(1966年竣工)、修学館(1966年竣工)、旧図書館(1967年竣工;2016年取り壊し)、学而館(1970年竣工)、志学館(1974年竣工)、諒友館(1976年)、学生会館(1978年竣工)など
- ^ 立命館史資料センター「立命館あの日あの時」;<学園史資料から>『衣笠キャンパス校舎の泰山タイル』(2022年1月27日更新)
- ^ 「戦後京都を設計 あの建築家・富家宏泰の回顧展」(産経新聞2019年9月19日記事)
- ^ 『石川県美を設計した男』〜富家宏泰 没後15年記念回顧展パンフレット