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家父長制

家父長制(かふちょうせい、ドイツ語: Patriarchat英語: patriarchy)は、家長権(家族と家族員に対する統率権)が、女性である家母長にではなく 男性たる家父長に集中している家族の形態[1]

家父長制はパターナリズム (paternalismの一種ともいわれる。父と子の関係にしばしば見られるような、他者の利益を名目に他者の行動に強制的に干渉できるとする考え方のこと[2]。「父権制」と訳されることもある[3]。古代ローマに典型を見出すことができる[3]

分類

家父長制の共通点

家父長制の根源は男性優位の視点にあり、男性による女性や子供を支配しようという倫理観から、家や家族をなす前の男女の倫理的関係を一般化して表すのに、比喩的に用いられもする[要出典]

父親が小さな子供のために、よかれと思って子供の意向をあまり聞かずに意思決定することから来ている[4]。父子関係以外にも、医師などが、患者の健康を理由に患者の治療方針を一方的に決めるような場合も家父長制の例に挙げられる[5]

西洋の家父長制

フランス民法典原始規定に、夫を家長として権利を集中する近代家父長制の典型がみられた[6]

革命政府の草案では夫特権の全廃があったが、フランス人が家族の解体までを望まず、革命時に極端個人主義に立ち奇矯奔放の振る舞いに及んだ一部女性活動家が社会の反感を買ったことを背景に、ナポレオンの主張が決定打となった[7]

徐々に女権拡張の方向で改正され、1985年の改正で妻の財産に対する夫の管理権(旧1428条)が改正され消滅[8]

家父長制とキリスト教の関係について、イエス・キリストの言ではないが、新約聖書の中には妻の夫に対する服従を説くものがある(コリントの信徒への手紙一11章9節、エフェソの信徒への手紙5章22節)[9]。婚姻関係を中核とするキリスト教的家父長制の基礎はカトリック教会系の神学者である聖アウグスティヌスによって体系化され、女性の地位は神学的に引き下げられた[10]

もっとも歴史人口学者のエマニュエル・トッドの考察によると、プロテスタントは非常に「家父長制」的なところがあり、それに比べるとカトリックは曖昧である[11]。実際に、プロテスタントのイギリスは同時代(江戸)の日本をはるかに凌駕する極端な男尊女卑の家父長制だったといわれる(中村敏子[12]。しかし、そのような法制度はイギリスのウィリアム・グラッドストンによって1870年に改められ、妻の訴訟能力や特有財産を認めて欧州諸国を驚かせた[13]

なおフランス革命の理論的指導者の一人ルソーはカトリックやプロテスタントをも凌駕する極端な男尊女卑思想の持ち主であり家父長制擁護論者だったため、仏民法典が編纂過程で保守化するのを阻止するのに全くの無力であった[14]

妻はその夫に服従する義務がある[15]。戸籍吏のために、妻による服従および貞節の約束が含まれている書式が、必要だろう。妻には、家族の保護監督のもとから彼女はその夫の保護監督下に入るのだということが教えられなければならない。(中略)天使はそれをアダムとエヴァに説いた。かつては結婚式が行われる際、ラテン語でそれは唱えられていたが、妻はそれを理解しなかった。その言葉は、とりわけこのパリには向いている、パリでは女たちは望みのままに何でもやれる権利があると思っている。私はあらゆる女性に対してそれが効果をうむだろうと言っているわけではない。が、いくらかの女性たちには効果をうむだろう[16] — ナポレオン・ボナパルト、1801年3月21日、民法典編纂会議

1794年のプロイセン法典は後続の仏民法典に比べると既に若干女性尊重の傾向を見せており、さらに1900年のドイツ民法典では不徹底ながら女権拡張の方向に舵を取っている[17]

日本の家父長制

日本の明治民法でも家長権は戸主権として法的に保証されていた[1]が、古代ローマと異なり、女性も例外的にではあるが家長たりうる(女戸主)、包括性・絶対性はなく、個々の権利義務の集まりでしかないなどの違いがあった[18]。絶対性が無いことは起草者[19]及び初期の判例が明言しており(明治34年6月20日大審院判決)[20]、戸主の同意の無い婚姻・縁組も強行可能である(改正前民法776条但書・849条2項)[21]

近代西洋法との構造的違いは、ローマ法と同様、祖父が家長(戸主)の場合は孫にまで権力が及ぶこと[22]、ローマ法とも異なり、家父権に一本化されず、戸主権(日本固有法)が夫権・親権(西洋法系)というそれぞれ性質の異なるものと併存し、矛盾・抵触が起きること(多くの場合、戸主権が劣後するのが判例・通説であった)[23]、および相続においても戸主死亡時の家督相続(日本固有法)と、戸主以外の家族員の死亡時の遺産相続(西洋法系)という性質の異なるものが併存し、前者のみ単独相続になることである[24]。また本家・分家の関係を認める点にも特徴があり、本家の戸主といえども分家の戸主をコントロールするほどの権限は無いが、分家の戸主は本家の継続に努めるべきという法思想を反映した規定があり、結果的に皇室を宗家とする家族国家観の根拠になったといわれている[25]。始めからそれを意識して制度が構想されたか、結果論に過ぎないかは意見が分かれる[26]

儒教との関係については、孝道を説くのはギリシャ哲学やキリスト教も変わらないため、戦前の法学者は固有の影響は極めて僅かと説明し、例として813条8号の姻族尊重、957条の尊属(年下を含む)尊重を挙げている[27]。一方戦後の歴史学者・教育者の多くは日本の家父長制と儒教のそれとの間の関連を当然視するが根拠の無いステレオタイプだとの批判も強く、儒教思想が近世の社会一般に浸透した事実は無く(津田左右吉青山道夫[28]柴桂子[29])、また男尊女卑の思想は日本で夫婦和合の思想に変質し、文字通りに尊卑の意味では受け止められていないと主張されている(渡辺浩、中村敏子[30]、柴[31])。

家父長制に関する議論

J・J・バッハオーフェンに始まる一連の文化人類学的議論からは、自ら産んだ子は必ず実子という女性の生物学的優位性と、それに対抗して男性が自己の父性を確保しようとする高等哺乳類本能が、古今東西を問わず男女不均衡(男性優遇)の社会を導いたとの指摘が挙がっている[32]

戦後の日本ではフランスを先進的な近代社会の典型とし、対して日本を遅れたものとする見方が支配的だったが、実態を無視していることから支持を失っている。特に1970年代以降、フランスの家族についての社会史・歴史人類学的研究が二宮宏之によって紹介され、南フランス山岳地帯においては、家産の一括承継を基本とする日本の家制度類似(同じではない)の社会実態が民法典施行後も存続したことが明らかにされている[33]

ナポレオン民法典が男尊女卑の家父長制度を基本としていたことは多くの学者によって指摘[34]されている一方、フランス革命の後にできたものだから当然男女平等の法典だったとする理解[35]も根強く主張されており、そのほかにも妻の権利制限は女性保護の理念によるもので男尊女卑ではないとの主張や[36]、「家父長制」はフェミニズムの知見を反映して再定義されるべきとして、仏民法典の中に家父長権を江守五夫が確認しつつ家父長制的資本制のもとでの「女性の公的労働への復帰」で家父長制が揺るがされたとするのを批判して、それでは女性の抑圧を生むことがあっても、家父長制を揺るがすことになどならない[37]、などの主張もある。

家父長制、父権制あるいはそれに準じる意識がDVの原因となっているとの主張がある[38][39][40][41]

経営学者の(平野光俊)は、パターナリズムの一例として結婚・出産後の家事・育児への専念が女性の幸せだという固定観念と、出産後復職した女性は大変そうだから責任のある仕事はさせないという男性側の「優しさの勘違い」を挙げている[42]

フェミニストのケイト・ミレットは父権制(patriarchy)について、あらゆる権力を男性が独占しているため、年長の男が年若い男を支配するのみならず、人口の半ばを占める女が残り半分の男に支配されていると主張している[43]

脚注

[脚注の使い方]
  1. ^ a b 『縮刷版 社会学事典』弘文堂、1994年、156頁。 
  2. ^ 池松辰男 (2017年3月). “時事用語事典 パターナリズム [paternalism]”. 時事オピニオン. 集英社. 2019年2月20日閲覧。
  3. ^ a b 長谷川公一「政治社会とジェンダー」『ジェンダーの社会学』新曜社、1989年、91-92頁。 
  4. ^ “用語集 パターナリズム”. 健康を決める力. 中山和弘(聖路加国際大学). 2019年2月20日閲覧。
  5. ^ 池松辰男 (2017年3月). “時事用語事典 パターナリズム [paternalism]”. 時事オピニオン. 集英社. 2019年2月20日閲覧。
  6. ^ 星野英一『民法のすすめ』岩波書店、1998年、147-150頁
  7. ^ (宮崎孝治郎)編著『新比較婚姻法III ヨーロッパ(2)・アメリカ大陸(2)』勁草書房、1962年、76頁
  8. ^ 中村(2021), p. 118.
  9. ^ 栗生(1928)32頁
  10. ^ 中村(2021), p. 21-29.
  11. ^ “エマニュエル・トッド「今のフェミニズムは男女の間に戦争を起こそうとする、現実離れしたイデオロギー」 | 英米流フェミニズムに見られる「激しい怨嗟」の理由”. クーリエ・ジャポン (2022年2月19日). 2022年2月20日閲覧。
  12. ^ 中村(2021), p. 113.
  13. ^ 栗生(1928)40頁
  14. ^ 松本暉男『近代日本における家族法の展開』弘文堂、1975年、176頁
  15. ^ 1975年改正前仏民法第213条
  16. ^ アンドレ・マルロー編著、(小宮正弘)訳『ナポレオン自伝』朝日新聞社、2004年、138頁
  17. ^ 栗生(1928)37-38、42頁
  18. ^ 青山(1978), p. 249,277.
  19. ^ 梅謙次郎『民法要義 巻之四親族法』和仏法律学校、1902年、35-36頁
  20. ^ 平野義太郎『日本資本主義の機構と法律』明善書房、1948年、107頁
  21. ^ 梅謙次郎『民法要義 巻之四親族法』和佛法律学校、1902年、50、111頁、川出孝雄編『家族制度全集史論篇 第一巻 婚姻』河出書房、1937年、104頁(青山)
  22. ^ 原田慶吉『ローマ法』改訂版、有斐閣、1955年、281頁
  23. ^ 穂積重遠『親族法』岩波書店、1933年、322頁
  24. ^ 道垣内弘人『リーガルベイシス民法入門』2版、日本経済新聞出版社、2017年、588頁
  25. ^ 我妻榮『民法研究VII-2 親族・相続』、1969年、38頁
  26. ^ 道垣内弘人『リーガルベイシス民法入門』2版、日本経済新聞出版社、2017年、589頁
  27. ^ (山口弘一)『親族法及國際親族法の研究』巖松堂書店、1943年、7-9頁
  28. ^ 青山(1978), p. 40,46.
  29. ^ 柴(1969)212頁
  30. ^ 中村(2012)94-101頁
  31. ^ 柴(1969)222頁
  32. ^ 中川善之助・青山道夫・玉城肇・福島正夫・兼子一・川島武宜編『家族 家族問題と家族法I』、酒井書店、1957年、17-43頁(青山)
  33. ^ (伊丹一浩)『民法典相続法と農民の戦略 19世紀フランスを対象に』御茶の水書房、2003年、154-156頁
  34. ^ 安達正勝『ナポレオンを創った女たち』集英社、2001年、72頁、北村一郎編『フランス民法典の200年』有斐閣、2006年、9、147、161頁、栗生(1928)34頁、谷口知平『仏蘭西民法I 人事法』有斐閣、1939年、2、13、38、235頁、松本暉男『近代日本における家族法の展開』弘文堂、1975年、179頁、
    ゴベール,ミシェル[著]/滝沢,聿代(訳)「<翻訳>「フランス民法における女性」 (<小特集>女性の地位 続)」『成城法学』第18巻、1984年11月、89-104頁、CRID 1050001337473563648。 
    福島正夫著、利谷信義編『福島正夫著作集 第2巻』1996年、勁草書房、280頁、坂本慶一『民法編纂と明治維新』悠々社、2004年、70-72頁、重松優「自由主義者たちと民法典論争」『ソシオサイエンス』11巻、早稲田大学大学院社会科学研究所、2005年,ISSN 1345-8116180頁、(中村(2021), p. 117-119)
  35. ^ 吉田豊『民法総則講義』中央大学出版部、2000年、18頁、近江幸治『民法講義I 民法総則』5版、成文堂、2005年、6頁
  36. ^ 川島武宜編『婚姻 家族問題と家族法II』酒井書店、1957年、242頁((星野通))
  37. ^ 上野千鶴子『近代家族の成立と終焉』岩波書店、1994年、100-103頁
  38. ^ R.E. Dobash and R.P. Dobash, "Violence and Social Change, Routledge & Kegan Paul, 1992.
  39. ^ K. Yllo and M. Bograd, "Feminist Perspectives on Wife Abuse, Sage", 1988.
  40. ^ 「ドメスティック・バイオレンス(DV)の加害者に関する研究」、研究部報告24、法務総合研究所研究部。
  41. ^ 松島京、「親密な関係性における暴力性とジェンダー」、立命館産業社会論集、36(4)、2001年。
  42. ^ 麓幸子. “女性管理職を増やすには”. 日経メディアマーケティング株式会社ホームページ. 日経メディアマーケティング株式会社. 2019年2月20日閲覧。
  43. ^ ケイト・ミレット『性の政治学』(ドメス出版、第4刷、1993年)、71-72頁

参考文献

  • 青山道夫『日本家族制度論』九州大学出版会、1978年。doi:10.11501/12014851。 NCID BN00925471。(全国書誌番号):(81043944)https://dl.ndl.go.jp/pid/12014851/1/1 
  • 柴桂子『江戸時代の女たち』評論新社、1969年
  • 中村敏子『女性差別はどう作られてきたか』集英社〈集英社新書〉、2021年。ISBN (9784087211528)。 NCID BC04938751。(全国書誌番号):(23483693)https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I031186279-00 
  • 栗生武夫『婚姻立法における二主義の抗争』弘文堂書房、1928年

関連項目

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