多目的室(たもくてきしつ)とは、様々な用途で利用できる部屋のことである。
新幹線の多目的室
新幹線の多目的室は、身体の不自由な人や歩行が困難な人が、優先的に利用できる個室である。原則として全車両に設置されており、大人1人が横になれる程度の簡易ベッドを兼ねた座席が備え付けられている[1]。通常は施錠されており、車両によっては介護者用の椅子も備え付けられている[2]。
学校の多目的室
学校の多目的室は、普通教室や特別教室では行うことが困難な学習を実施するための教室である[3]。例えば、天井が開いたり、(暗幕)を閉じることでDVDを見たりすることができる学校もある[4]。
多目的トイレ
多目的トイレとは、バリアフリーとユニバーサルデザインの考え方に従い、多機能化して多くの設備が設置されているトイレのこと。おむつ換えシートや(ベビーチェア)、オストメイト対応設備、高齢者や妊婦のためのベンチやベッド等が設置されている[5]。
一般的には、車椅子利用者などの障害者や、ベビーカー利用者など乳幼児連れの保護者などが使用するものと認知されているため、トランスジェンダーなどセクシャルマイノリティの利用に配慮した「オールジェンダートイレ」とは別物であることが推奨されている[6]。
1994年の高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律(ハートビル法)制定により公共施設や大規模商業施設などの公共的な建築物で設置が広がり、2000年の高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律(交通バリアフリー法)制定でJRや大手私鉄の鉄道駅でも設置が進んだ。駅の多目的トイレは鉄道事業者により名称が異なり、JR東日本では「多機能トイレ」と呼称していた。私鉄の一例として京王電鉄では「だれでもトイレ」の名称を採用した[7]。建築物と公共交通機関で分かれていたバリアフリーに関する法律は、2006年に制定された高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー新法)で統合された。
2021年2月、国土交通省は「建築物のバリアフリー設計方針」を改定し、施設管理者に対して「多目的トイレ」の名称を「バリアフリートイレ」に改め、「多目的」「誰でも」などといった、バリアフリー設備を必要としない者の利用を促す名称を避けるよう通達を行った[8]。新型コロナウイルス感染拡大などの情勢も鑑み「多目的トイレ」の用途についての社会的な議論が喚起され、必要に迫られて施設の利用を必要としていた人々が、目的外の使用によって利用機会が制限されていた状況を改善していくこととした[9][10]。
多目的ホール
多目的室を題材とした楽曲
脚注
- ^ “小さなお子様連れのお客様へのサービス”. JRおでかけネット. JR西日本. 2021年2月6日閲覧。
- ^ “家族に嬉しい!個室に代わる新幹線の便利な設備を詳しく解説”. Tripa. 日本旅行 (2019年5月10日). 2021年2月6日閲覧。
- ^ “中学校内の施設・設備/その他”. スタディピア. 東建コーポレーション. 2021年2月6日閲覧。
- ^ “多目的室”. 東京大学教育学部附属中等教育学校. 2021年2月6日閲覧。
- ^ “多目的トイレのマナーを知ってね!”. ユニバーサルデザイン・バリアフリーぷらざ〈ゆびぷら〉. 静岡市役所 福祉総務課. 2021年2月6日閲覧。
- ^ “トランスジェンダーの7割強がオールジェンダートイレの利用を希望、TOTOが調査”. アウト・ジャパン (2019年1月17日). 2021年8月23日閲覧。
- ^ 駅改良工事・バリアフリー化の取り組み 京王電鉄
- ^ “建築物におけるバリアフリーについて”. 国土交通省. 2021年8月23日閲覧。
- ^ “「多目的トイレ」やめて 国交省が指針改定、小規模店基準も”. SANSPO.COM (サンケイスポーツ). (2021年2月4日)2021年8月23日閲覧。
- ^ “多目的トイレと呼ばないで 不適切利用頻発、指針改正へ”. 朝日新聞デジタル (朝日新聞社). (2021年2月9日)2021年8月23日閲覧。