井上 幸治（いのうえ こうじ、1910年7月10日 - 1989年9月9日）は、日本の歴史学者。専攻は西洋史（近代フランス史）で、フランス史書・哲学などの翻訳・監修も多い。
略歴
埼玉県秩父郡大宮町（現・秩父市）出身。旧制浦和高等学校の文科丙類（フランス語）[1]での友人に、同級生のジャーナリスト柳沢恭雄、二年後輩で警視総監になった原文兵衛がいる。1930年3月に卒業[2]し、1933年（昭和8年）に東京帝国大学文学部西洋史科卒業[3]。平凡社勤務などを経て、1953年（昭和28年）から神戸大学、立教大学、津田塾大学の教授を歴任した。
「戦後の西洋史研究のひとつの基礎をきずいた」[4]とされ、教科書・概説書の編集にも参与した。専門の近代ヨーロッパ史は経済や社会・国際関係など幅広い視野で研究を行い、晩年はアナール学派紹介を多く行った。
同時に明治日本を対象として、史料に基づき高度な歴史学的総合研究・調査に着手し、特に郷里の埼玉西北部の秩父郡地域でおきた秩父事件研究では、史料集成の大著を編纂し（没後刊も含んだ）総合科学として構想した研究で、事件を「自由民権運動の最後にして最高の形態」[5]だったと規定している。
著書
- 『ルネサンスと宗教改革』 三省堂, 1949年
- 『ミラボーとフランス革命』 木水社, 1949年
- 『ナポレオン』 岩波新書, 1957年 (ISBN 4-00-413028-X)
- 『ロベスピエール ルソーの血ぬられた手』「歴史の人間像」誠文堂新光社, 1962年
- 『ロベスピエールとフランス革命』 誠文堂新光社, 1981年
- 『秩父事件 - 自由民権期の農民蜂起』 中公新書, 1968年 (ISBN 4121001613)
- 『近代史像の模索 フランス革命と秩父事件』 柏書房, 1976年
- 『歴史とは何か』 藤原書店, 1991年。遺著、桑田礼彰・浜田道夫編
- 『完本 秩父事件』 藤原書店, 1994年 (ISBN 4938661985)
共著
編著
- 『近代ヨーロッパの誕生 社会科歴史文庫7』 三省堂, 1956年
- 『フランス史 世界各国史 2』 山川出版社, 1956年、のち新版 (ISBN 4634410206)
- 『南欧史 世界各国史 5』 山川出版社, 1957年、のち新版
- 『西洋史入門』 有斐閣, 1980年、新版1994年 (ISBN 4641111278)
- 『ヨーロッパ近代工業の成立』 東洋経済新報社, 1961年
- 『世界の歴史12 ブルジョワの世紀』 中央公論社, 1962年、新版・中公バックス, 1983年／中公文庫, 1975年, (ISBN 4122002095)
- 『ヨーロッパ文明の原型 民族の世界史 8』 山川出版社, 1985年
- 『秩父事件 史料集成』 二玄社（全6巻）, 1984-89年
- 『図説 日本の歴史』 集英社（全18巻）, 1974年、編者の一人
- 『日本経済史学入門』 広文社, 1967年 入交好脩との編著
- 『世界歴史 年表』 小石川書房, 1949年
- 『西洋史研究入門』 林健太郎共編、東京大学出版会, 1954年、のち新版
- 『総合世界歴史事典』 時事通信社, 1954年。野原四郎・川崎庸之と
- 『世界史読本』 東洋経済新報社, 1959年。野原四郎と
訳書
- モンテスキュー 『ローマ盛衰原因論』 中公クラシックス, 2008年 (ISBN 4121601041)
- 元版は「世界の名著28 モンテスキュー」中央公論社, 1972年、のち中公バックス
- ルソー『人間不平等起源論・社会契約論』 中公クラシックス, 2005年 (ISBN 4121600797)
- イヴ・マリー・ベルセ 『祭りと叛乱 16～18世紀の民衆意識』新評論，1980年（監訳）
- アルベール・ソブール 『フランス革命と民衆 共和暦2年（1793 - 94年）のパリのサン=キュロット』, 新評論, 1983年（監訳、小井高志・武本竹生との共訳）
- 『フェルナン・ブローデル 1902-1985』 新評論, 1989年 (ISBN 978-4794800244)（編・監修）
- エマニュエル・ル・ロワ・ラデュリ 『モンタイユー ピレネーの村』 刀水書房：刀水歴史全書（上下）, 1991年（渡辺昌美・木居純一との共訳）
- ガストン・マルタン 『二月革命』 白水社・文庫クセジュ, 1954年
- アンリ・カルヴェ 『ナポレオン』 白水社・文庫クセジュ, 改訳1966年、(ISBN 4560050791)
- マルク・ブロック 『奇妙な敗北—フランス抵抗史家の日記』 東京大学出版会, 1955年、新版・UP選書, 1970年
- A・アル・サダット 『ナイルの叛乱—エジプト革命の記録』 岩波新書, 1958年
- ポール・マントゥ 『産業革命』 東洋経済新報社, 1964年（徳増栄太郎・遠藤輝明との共訳）
- ジョルジュ・デュプー 『フランス社会史 1789-1960』 東洋経済新報社, 1968年（武本竹生・本池立・井上堯裕との共訳）