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与那国語

与那国語(よなぐにご)または与那国方言(よなぐにほうげん)は、沖縄県与那国島で話されている言語方言)である。地元ではドゥナンムヌイと呼ばれる。琉球諸語(琉球語、琉球方言)の一つ。国立国語研究所の推計によれば、話者は2010年の時点で393人。当地の住民でも60代半ばを境に話せる者は稀になり、年少者は話せず理解することもできない。2009年2月にユネスコにより消滅危機言語の「重大な危険」(severely endangered)と分類された[2][3][注 1]

与那国語
与那国方言
与那国物言/ドゥナンムヌイ
話される国 日本
地域 与那国島
話者数 393人 (2010年)
言語系統
言語コード
ISO 639-3 yoi
Glottolog yona1241[1]
消滅危険度評価
Severely endangered (Moseley 2010)
 
(テンプレートを表示)

音韻

音韻体系

  • 母音音素/i, a, u/
  • 半母音音素/j, w/
  • 子音音素/h, kʔ, k, g, ŋ, tʔ, t, d, n, c, s, z, r, p, b, m/
  • 拍音素/N/

与那国語はa、i、uの3母音体系で、日琉諸語の中で最も母音数が少ない。そのためそれぞれの具体的音声にはかなりのゆれがある。母音/i/は、[i]~[e]の広がりを持った音であり、[ji]、[ʔi]の異音を持つ。また強調するときには[sagei](酒だよ!)のように[ei]とも発音される[4][5]。母音/u/も、[u]~[o]のゆれがあり、[ʔu]、[wu]の異音を持つ。助詞[duː](よ)などでは[dɔu]のように広く[ɔu]と発音される[5][4]

母音の長短は弁別的でないとされるが、助詞などが付かない1モーラの語は基本的に長母音化する。[6]従って、[naː](名)、[kiː](木)のようになる。

半母音音素のうち、/j/は語頭に立つことができないが、全ての子音と結びつくことができる[5]。/w/は、/ŋ, m, c, r/以外の全ての子音と結びつくことができる[5]

子音では軟口蓋破裂音歯茎破裂音に、有気音(k, t)と無気喉頭化音(kʔ, tʔ)との区別があるのが大きな特徴である。北琉球諸語でも区別があるが、宮古語・八重山語では認められない。またこの区別は、与那国語では語頭のみに認められ、語中ではほとんど無気喉頭化音として実現する(よって本項以下の記述では語中のʔは省略して表記する)[7]。/c/および/p/も音声的には無気喉頭化音だが、対応する有気音は欠けており弁別的特徴ではない[5]

有声の軟口蓋音は、鼻音の/ŋ/が破裂音/g/と対立している。ŋは琉球諸語のなかでは与那国語と奄美の喜界島にしか認められない。また/z/は語例が極めて少なく、語頭において/za/、/zja/として現れるのみで語中・語尾では現れない[5]

拍音素には/N/(撥音)があり、/Q/(促音)は与那国語に認められない。/N/の音声は、後続の子音に応じて[m, n, ŋ]として現れる。(例)[mmi](爪)、[nta](土)、[ŋkadi](百足)[8]

以下は与那国語に現れるの一覧。//に囲まれた部分は音素表記、[]に囲まれた部分は具体的音声である。

与那国語の拍体系[9]
/i/ /a/ /u/ /ja/ /ju/ /wa/
/Ø/ /i/
[ʔi]
[ji]
/a/
[ʔa]
/u/
[ʔu]
[wu]
/ja/
[ja]
/ju/
[ju]
/wa/
[wa]
/h/ /hi/
[çi]
/ha/
[ha]
/hu/
[ɸu]
/hja/
[ça]
/hju/
[çu]
/hwa/
[ɸa]
/kʔ/ /kʔi/
[kʔi]
/kʔa/
[kʔa]
/kʔu/
[kʔu]
/kʔja/
[kʔja]
  /kʔwa/
[kʔwa]
/k/ /ki/
[ki]
/ka/
[ka]
/ku/
[ku]
/kja/
[kja]
/kju/
[kju]
/kwa/
[kwa]
/g/ /gi/
[gi]
/ga/
[ga]
/gu/
[gu]
/gja/
[gja]
  /gwa/
[gwa]
/ŋ/ /ŋi/
[ŋi]
/ŋa/
[ŋa]
/ŋu/
[ŋu]
/ŋja/
[ŋja]
   
/tʔ/ /tʔi/
[tʔi]
/tʔa/
[tʔa]
/tʔu/
[tʔu]
/tʔja/
[tʔja]
/tʔju/
[tʔju]
/tʔwa/
/tʔwa/
/t/ /ti/
[ti]
/ta/
[ta]
/tu/
[tu]
/tja/
[tja]
/tju/
[tju]
/twa/
[twa]
/d/ /di/
[di]
/da/
[da]
/du/
[du]
/dja/
[dja]
  /dwa/
[dwa]
/c/ /ci/
ʔi]
/ca/
[tsʔa]
/cu/
[tsʔu]
/cja/
ʔa]
   
/s/ /si/
[ʃi]
/sa/
[sa]
/su/
[su]
/sja/
[ʃa]
/sju/
[ʃu]
/swa/
[swa]
/z/   /za/
[dza]
  /zja/
[dʒa]
   
/r/ /ri/
[ɾi]
/ra/
[ɾa]
/ru/
[ɾu]
/rja/
[ɾja]
   
/n/ /ni/
[ni]
/na/
[na]
/nu/
[nu]
/nja/
[ɲa]
  /nwa/
[nwa]
/p/ /pi/
[pʔi]
/pa/
[pʔa]
/pu/
[pʔu]
/pja/
[pʔja]
  /pwa/
[pʔwa]
/b/ /bi/
[bi]
/ba/
[ba]
/bu/
[bu]
/bja/
[bja]
/bju/
[bju]
/bwa/
[bwa]
/m/ /mi/
[mi]
/ma/
[ma]
/mu/
[mu]
/mja/
[mja]
   
拍音素 /N/
[n, m, ŋ, ɴ]

日本語との対応

与那国語では、日本語(本土方言)のeがiに、oがuになっている。ただしス、ツ、ズに対しては、与那国語では/i/が対応する。

母音の対応関係
日本語
与那国語 /a/ /i/ /u/ /i/ /u/
子音の対応関係
日本語 与那国語
k(語中) g
g(語中) ŋ
j(語頭) d
w b
z d

与那国語では、語中のカ行子音が濁音化し/g/となる。ただしキは/ti/が対応する。(例)[agiruɴ](開ける)、[iti](息)。一方、本来のガ行子音は鼻音/ŋ/となる。(例)[aŋaruɴ](上がる)。ただしギは/gi/または/di/となる[5][10]。またヤ行子音は与那国語では主に語頭で/d/が対応している。語中ではjのものもある。(例)[damuɴ](病む)、[uja](親)。南琉球諸語に共通する特徴として、ワ行子音は/b/が対応する。(例)[bagaɴ](若い)、[buɴ](居る/をる)。サ行では、日本語のサ・セ・ソは/sa/、/si/、/su/となるが、シ・スは/ci/となる[11]。ザ行子音は/d/となる[5]。(例)[adi](味)、[kidi](傷)。タ行では、日本語のタ・テ・トは/ta/、/ti/、/tu/だがチ・ツは/ci/となる[11]。ハ行子音は/h/となっており、pをとどめている宮古・八重山語とは異なっている。ただしヒは/ci/となっている。以上のように与那国語では、日本語のイ段音は子音を変化させている例が多い。ナ行およびマ行では、ナ:/na/、ニ・ネ:/ni/、ヌ・ノ:/nu/、マ:/ma/、ミ・メ:/mi/、ム・モ:/mu/と対応している[11]。ラ行子音は/r/となるが、リの場合はrが脱落しiとなる[11]。また日本語のロ/ro/に/du/が対応することもある[12]

与那国語の無気喉頭化音/kʔ/は、語頭のkik・cuk・huk・hok・hikなどの音声環境において、第1拍が無声化の末に脱落し、その代償として第2拍のkに無気喉頭化という特徴が加わったものである。/tʔ/も同様に、sit・hit・hut・kuc、あるいはkiki・cuki・cuti・cikiという音声環境で現れる[5][13]。(例)[kʔuɴ](聞く)、[kʔuruɴ](作る)、[kʔuriruɴ](ふくれる)、[kʔuɴ](埃)、[kʔuɴ](弾く)、[tʔaː](舌)、[tʔuː](人)、[tʔiː](聞き)、[tʔiː](月)。また、kir・kus・sir・hirを含む語では、rがsに音韻変化を起こした後、第1拍の脱落によって第2拍のsがcに変化している[14][5]。(例)[tsʔuɴ](着る)、[tsʔaː](草)、[tsʔudaːri](白い)、[tsʔuːma](昼間)。似た変化は、宮古語で[ffu](黒)[15]、八重山語で[kisuɴ](着る)[16]のように現れる。

与那国語の/N/は、日本語の語頭のム・ヒ・ツ・ク・フ・シ・イ・ウなどに対応して現れる。(例)[ŋkaʧi](昔)、[ŋgi](髭)、[nni](舟)。

音調(アクセント)

与那国語には3パターンの音調型が存在し、研究によってA型・B型・C型[17]/高型・低型・下降型[18]などと呼ばれる。A型/高型は一音節語の場合は高く、二音節以上の語の場合は最初の音節のみ低く、それ以降は高く発音される。B型/低型の場合、音節数に関わらず全体が低く発音される。C型/下降型は少々変わり種であり、語の最後の音節が軽音節ならばA型/高型と同じになるが、最後の音節が重音節(長母音・二重母音・撥音で終わる語)ならばその音節が下降して発音される。軽音節の語でA型/高型とC型/下降型を見分けるには、例えば=n「も」を付け、重音節を形成すればよい。[19]例えば下表のように「橋」「箸」は単語単独の場合どちらも低高で発音されるが、=nを後ろにつけると「箸」の方にのみ隠れていた下降調が現れる。

隠れた下降調の出現
音調型 接尾辞なし =n「も」付き
A型 /haci/ 低高「橋」

[haʧʔi]

/haci=n/ 低高「橋も」

[haʧʔiŋ]

C型 /haci/ 低高「箸」

[haʧʔi]

/haci=n/ 低「箸も」

[haʧʔiŋ]

ただし与那国語の音程の幅は小さく、語がどの音調型に属するのか判断しにくい。[20]またC型/下降型の語では末音節が軽音節でも半下降が実現する場合があるという研究もある。[21]さらに上野(2010)では、上記の3種類の音調型に収まらないものがあるとしている。[22][注 2]

文法

動詞形態論

規則活用動詞

与那国語の動詞の基本的な構造は、次の表で表される[23]。このうち0と5の要素のみが必須であり、極性時制により間に1 - 4が挿入される[23]。5の命令・禁止・勧告・中止の接辞は、3・4に接続することはない[23]

与那国語の動詞の構造[23]
0 1 2 3 4 5
語根 使役
-(a)mir-
受身
-arir-
否定
-anu-
完了
-(j)a-/-(j)u-
現在
∅/-u-
過去
-(i)ta-
直接
-N
連体
-∅/-ru
過去
-(i)ta-
状況
-uba/-iba
条件
-ja
命令
-i
禁止
-(u)Nna
勧告
-(i)NdaNgi
中止
-i

与那国語の動詞の語形変化は、日琉語族の中でおそらく最も複雑なシステムを持っている[23]。動詞語根と接辞の両方に、複数の異形態があり、その組み合わせパターンから動詞は15種のクラスに分けられる。

ある動詞の命令形と完了形の二つを見れば、音韻環境によって動詞クラスを機械的に特定できる。[24]与那国語の動詞はグループ>小グループ>クラスの三段階に分けられ、[注 3]命令形を見ることで小グループまで特定できる(ただし命令形語根が母音語根の場合を除く)。次いで完了形を見ればクラスが特定でき、これで他の活用形も正しく導き出すことができる。なお命令形の接辞は-iであり、ただ一通りしかない。従って、例えば命令形がkagiとあれば必ずkag-iと分解できる。

与那国語の動詞クラス
  1. Cグループ:命令形語根がr以外の子音で終わるもの。
    1. K小グループ:命令形語根がk,g,ŋで終わるもの。
      1. K/YAクラス:命令形語根がk,gで終わり、完了形にjaを取るもの。
      2. ŋ/YAクラス:命令形語根がŋで終わり、完了形にjaを取るもの。
      3. K/Uクラス:完了形がuを取るもの。
    2. C小グループ:それ以外。
      1. C/YAクラス:この小グループは全てこのクラスになる。完了形はjaのみである。
  2. Rグループ:命令形語根がrで終わるもの。
    1. VR小グループ:命令形語根がarまたはurで終わるもの。
      1. AR/Aクラス:命令形語根がarで終わるもの。完了形はaのみである。
      2. UR/Uクラス:命令形語根がurで終わり、完了形にuを取るもの。
      3. UR/WAクラス:命令形語根がurで終わり、完了形にaを取るもの。
    2. IR小グループ:命令形語根がirで終わるもの。
      1. IR/Uクラス:完了形にuを取るもの。
      2. IR/YAクラス:完了形にjaを取るもの。
      3. IR/YUクラス:完了形にjuを取るもの。
      4. UIR/WAクラス:命令形語根がuirで終わり、完了形にaを取るもの。
  3. Vグループ:命令形語根が母音で終わるもの。*このグループのみ、小グループの特定に完了形または中止形の情報が必要。
    1. VS小グループ:完了形および中止形の語根がsで終わる。この小グループの完了形は常にjaになる。
      1. AS/YAクラス:命令形語根がaで終わり、完了形にjaを取るもの。
      2. US/YAクラス:命令形語根がuで終わり、完了形にjaを取るもの。
    2. V小グループ:それ以外。
      1. A/Aクラス:命令形語根がaで終わり、完了形にaを取るもの。
      2. U/WAクラス:命令形語根がuで終わり、完了形にaを取るもの。

それぞれの小グループに入る動詞には、例えば以下のものがある[25][26]

  • 1.1.K小グループ:sunk-u-N(引く)、sag-u-N(裂く)、haŋ-u-N(配る)。
  • 1.2.C小グループ:tat-u-N(立つ)、niNd-u-N(眠る)、kaNd-u-N(被る)、Nd-u-N(言う)、Nn-u-N(見る)、tub-u-N(飛ぶ)、dum-u-N(読む)、c-u-N(着る)、c-u-N(切る)。
  • 2.1.VR小グループ:Ngar-u-N(濡れる)、hudur-u-N(成長する)、kʔur-u-N(作る)。
  • 2.2.IR小グループ:bacir-u-N(忘れる)、kir-u-N(する)、hir-u-N(行く)、ubuir-u-N(覚える)、ugir-u-N(起きる)、aŋir-u-N(上げる)、tir-u-N(照る)、utir-u-N(落ちる)、nadir-u-N(撫でる)、Nnir-u-N(死ぬ)、abir-u-N(呼ぶ)、irir-u-N(入れる)。
  • 3.1.VS小グループ:maga-N(炊く)、karaga-N(乾かす)、kja-N(消す)、Nna-N(死なす)、ugu-N(起こす)、hu-N(干す)、Nbu-N(蒸す)、kuru-N(殺す)
  • 3.2.V小グループ・Aクラス:hu-N(食べる)、ku-N(買う)、kʔu-N(使う)、baːru-N(笑う)
  • 3.2.V小グループ・Uクラス:dugu-N(休む)、u-N(追う)、umu-N(思う)

このうちいくつかのクラスについて、主な接辞が接続した場合の語形を示したものが以下である[25]

クラス 語例 使役 否定 条件 現在・直接
(終止)
命令 状況 禁止 過去 完了
C/YA 立つ tatamiruN tatanuN tatja tatuN tati tatuba tatuNna tatitaN tatjaN
K/U 咲く sagamiruN saganuN sagja saguN sagi saguba saguNna satitaN satuN
AR/A 濡れる NgaramiruN NgaranuN Ngarja NgaruN Ngari Ngaruba NgaNna NgataN NgaN
IR/U 忘れる bacimiruN baciranuN bacirja baciruN baciri baciruba baciNna bacitaN bacuN
AS/YA 炊く magamiruN maganuN   magaN magai magaiba magaNna magataN magasjaN
US/YA 干す hwamiruN hwanuN   huN hui huiba huNna hutaN husjaN
A/A 食べる hamiruN hanuN   huN hai haiba huNna hataN haN
U/WA 休む dugamiruN duganuN   duguN dugui duguiba duguNna dugutaN dugwaN

Cクラスの「立つ」の場合は、1種類の語根tat-が抽出できるが、Kクラス「咲く」の場合は語根がsag-とsat-の2種類ある。ARクラスの「濡れる」ではNgarとNgaの2種類ある。このように与那国語の動詞語根には複数の異形態がある。

与那国語で異形態を持つ動詞接尾辞には、使役-(a)mir-、非過去-u-/-∅-、過去-(i)ta-、状況(-すれば)-uba/-iba、禁止-(u)Nna、連体-ru/-∅、完了-(j)a-/-(j)u-がある。[27]このうち連体形は一部の変格活用をする動詞、形容詞、及び完了形と過去形にのみ-ruを使い、それ以外の場合は終止形から-Nを取った形を使う。[28]完了形で-a-系を使うか-u-系を使うかはほとんどの場合で意味によって決まり、主語が動作主の場合はa系を、そうでない場合はu系を使う。[29][注 4]。それ以外の接辞をどのように選択するかは活用クラスによって決まっている。

以下に、クラスごとの語根と接辞の組み合わせを表にする。ただし完了形だけが異なるクラスについては同じ行にし、完了形の列のみ/で分けて示した。語根末の列にある「C」は任意の子音を表す。なお、与那国語では以下の音素配列規則があるため、表中の※印箇所ではこの規則が適用される。例えばAクラスのhu-N(食べる)の完了形//ha-a-N//は、音素配列規則3により実際には/haN/となる。UIRクラスのubuir-u-N(覚える)の使役形//ubui-amir-u-N//は、規則1によりubuamiruNとなったものにさらに規則2が適用されて/ubwamiruN/となる。

音素配列規則[25]
  1. 母音またはjの前のiが削除される。(ij→j、ii→i、ia→a、iu→u)
  2. aの前のuがwに置換される。(ua→wa)
  3. 同じ母音が連続するときは一方が削除される。(aa→a、ii→i、uu→u)
与那国語の活用体系(動詞語根と接辞の組み合わせ)[25][26]
グループ
クラス
語根末 接辞
志向 使役 否定 受身 条件 命令3 終止 連体 命令 状況 命令2 禁止 過去 中止 終止2 完了
C C C -C- -uː -amir- -anu- -arir- -ja -jaː -u-N -u -i -uba   -uNna -ita- -i -i -ja-
K K -k/kʔ/g- -uː -amir- -anu- -arir- -ja -jaː -u-N -u -i -uba   -uNna        
-t-                         -ita- -i -i -ja-/-u-
ŋ -ŋ- -uː -amir- -anu- -arir- -ja -jaː -u-N -u -i -uba   -uNna        
-d-                         -ita- -i -i -ja-
R VR AR -ar- -uː -amir- -anu- -arir- -ja -jaː -u-N -u -i -uba            
-a-                       -Nna -ta- -i -i -a- ※3
UR -ur- -uː -amir- -anu- -arir- -ja -jaː -u-N -u -i -uba            
-u-                       -Nna -ta- -i -i -a- ※2/-u- ※3
IR IR -ir- -uː   -anu- -arir- -ja -jaː -u-N -u -i -uba            
-i   -mir-                   -Nna -ta- -i ※3 -i ※3 -ja- ※1/-u- ※1/-ju- ※1
UIR -uir- 不明   -anu- -arir- -ja 不明 -u-N -u -i -uba         不明  
-ui- -amir-
※1、2
                -Nna -ta- -i ※3 -a- ※1、2
V VS AS -Ca- -amir-
※3
-anu-
※3
-arir-
※3
    -∅-N -∅ -i -iba -iba -Nna -ta-      
-Cas-                           -i -i -ja-
-C-[注 5]         -jaː         -uba            
US -u- -amir-
※2
-anu-
※2
-arir-
※2
    -∅-N -∅ -i -iba -iba -Nna -ta-      
-us-                           -i -i -ja-
V A -a-   -amir-
※3
-anu-
※3
-arir-
※3
        -i -iba -iba   -ta- -i -i -a- ※3
-u-           -∅-N -∅       -Nna        
U -C- -uː -amir- -anu- -arir-                        
-Cu-             -∅-N -∅ -i -iba -iba -Nna -ta- -i -i -a- ※2
グループ
クラス
語根末 志向 使役 否定 受身 条件 命令3 終止 連体 命令 状況 命令2 禁止 過去 中止 終止2 完了
接辞

※1 - 3については上記「音素配列規則」を参照。

現在形(終止形から-Nを除いた形)に付く接辞には、-na(Yes/No疑問)、-Nga(疑問詞疑問)、-Ndi(引用)、-Nsu(名詞化)等がある[25][23]。連体形に付く接辞には、-ka(間接疑問)、-hadi(推測)等がある[25][23]。中止形に付く接辞に、-ti(継起)、-bi(理由)、-datana(同時)、-busa-N(願望)、-war-u-N(尊敬)、-bu-N(非完結相)等がある[25][23]

変格活用動詞

以上のルールに当てはまらない変則活用の動詞がある。/aN/(「ある」もしくはコピュラ)、/buN/「いる」、/cuN/「知る」、/iruN/「やる」、/kuN/「来る」、/hajuN/「入る」がそうである。このうち連体形接辞に-ruを取るのは/aN/,/buN/,/cuN/の三つで、それぞれ/aru/,/buru/,/curu/となる。

形容詞

与那国語の形容詞は、古い語根に「さあり」の付いた形に由来し、後に「さ」が脱落したものである。例えば終止形は、「高さありむ」が八重山語の石垣方言のようなtakasanとなり、「さ」が抜けてtaganとなった。[30]tagasanという形も存在するようだが、taganとの違いは今のところ不明である。[31]

祖納方言の「高い」の活用を示す。

  連用形1 条件形1 条件形2 連用形2 終止形 連体形 接続形
高い tagagu tagaru tagarjaː taga tagan tagaru taga
主な接辞 narun(なる) ba(ば) minun(ない)
ŋisan(そうだ)
bi(て)
biti(て)

動詞が複雑な仕組みを持つのに対して、形容詞は全て補助動詞anの接尾によって作られるため、1種類の活用パターンしかない単純な仕組みになっている。形容詞の語根は必ずaで終わり、上述のtagan(終止形)ならばtaga-nと分析され、原則的に語根はtaga-の一通りしかない。[32]また語根に-guを付けると副詞を作れる(taga-n⇒taga-gu:高い⇒高く)。[33]

敬語

与那国語の敬語のルールは日本語標準語と異なっており、社会的関係や心理的距離、フォーマルさなどに関係なく、純粋に年齢差のみによって敬語を使うかどうかが決まる。文の種類によって2種類の敬語がある。一つ目の敬語では補助動詞としてwarunが、普通語形の補充形としてujan(召し上がる)、warun(いらっしゃる)、mairun/maisun/kan-narun(亡くなる)がある。二つ目の敬語では補助動詞としてwaranが、普通語形の補充形としてcarirun(申し上げる)、ujan(差し上げる)、動詞中止形+ujan(して差し上げる:turan「くれる/あげる」に対応)がある。なお参考として尊敬語と謙譲語の訳を載せているが、以下に記すように一つ目の敬語は必ずしも尊敬語ではなく、二つ目の敬語は必ずしも謙譲語ではない。[34]

一つ目の敬語は、文が与格項を持たないか、もしくは与格項が人間でない場合に適用されうる。そのような文で、文の主格項が発話者よりも年長である場合、敬語が使われる。

  • asa=ja ma i ujasj-a-n. : おじいさん=は もう ご飯(を) 召し上がった

二つ目の敬語は、文が人間の与格項を持ち、かつ与格項が主格項より年長の場合に用いられる。

  • aŋa asa=nki unu ca=nu na cari-ta-n. : 私が おじいさん=に その 草=の 名前(を) 申し上げた

なお上記の2例文では、一つ目の敬語は尊敬語、二つ目の敬語は謙譲語であるように見えるが、実際はそうではない。

例えば次の文は、「発話者<よしみさん<おばさん」という年齢順の下で語られるものである。おばさんが主格項であるが、この文にはよしみさんという人間の与格項があるため、一つ目の敬語は適用されず、年長者に対する尊敬語と同値ではないことがわかる。さらに与格項は主格項より年少のため、二つ目の敬語の適用もない。結果、敬語を一切使わない文になっている。

  • obasan=ŋa josimisan=nki nnani c-ami-ta-n. : おばさん=が よしみさん=に 着物(を) 着せた

また次の文は発話者自身が与格項であり、主格項のケイタが自分より年少という場合である。この場合、年齢のルールに従って二つ目の敬語が使われるため、これが謙譲語と同値でないことがわかる。

  • Keita=ŋa anu=nki nnani c-am-i wara-ta-n. : ケイタ=が 私=に 着物(を) 着せた

主な単語

(祖納の方言)

代名詞

語の後ろの記号は音調。=はA型、_はB型、]はC型を表す。音調が不明の部分は記していない。[注 6]

代名詞の一覧
単数 複数
一人称 anu] banu] banunta] 私たち(除外形)
banta] 私たち(包括形)
二人称 nda= あなた ndi= ndinta= あなたたち
近称 ku= これ kuntati これら
中称 u= それ untati_ それら
遠称 kari= あれ、彼/彼女 kantati_ あれら、彼ら
再帰1 sa= 自分 si 自分たち
再帰2 du] 自分
dunudu
場所近称 kuma] ここ kumanta ここら、ここらへん
場所中称 uma] そこ umanta そこら、そこらへん
場所遠称 kama= あそこ kamanta あそこら、あそこらへん
疑問有性 ta= tanta 誰ら
疑問無性 nu]
場所疑問 nma] どこ
時間疑問 ici] いつ
数量疑問 iguci= いくつ
igurati= いくら

一部の代名詞は格によって不規則な語形を取る。一人称代名詞に対して主格=ŋa(が)、属格=nu(の)が付く場合と、場所代名詞に所格=ni(に)が付く場合、以下のように変則的な語形になる。場所代名詞に関しては、語末のaがiに交代することで所格の表現になる。

代名詞の不規則語形
基本形 特殊語形
一人称単数 anu] 主格・属格 a=ŋa 私が、私の
一人称複数

(除外形)

banu] 主格・属格 ba=ŋa

ba/banta]

我々が

我々の

banunta]
同(包括形) banta]
場所近称 kuma] 所格 kumi] ここに
場所中称 uma] umi] そこに
場所遠称 kama= kami= あそこに
場所疑問 nma] umi] どこに

格助詞

与那国語の付属語[35]
例文 例文訳
=ja ~は kari=ja ku-n 彼は来る
=du ~ぞ u=ŋa=du これぞ(まさに)
=ŋa ~が kari=ŋa ku-n 彼が来る
=nu ~の kari=nu suŋuti 彼の本
=nki ~へ

~に

isu=nki hir-u-n

kari=nki tura-n

磯へ行く

彼にあげる

=ni (場所)で、に

(時間)に

isu=ni amb-u-n

isu=ni bu-n

unu basu=ni

磯で遊ぶ

磯にいる

その時に

=gara ~から isu=gara su-ta-n 磯から来た
=tu ~と kari=tu ku-n 彼と来る
=si ~で katana=si cu-n 刀で切る
  • =n
  • =bagin
~も
  • kari=n ku-n
  • kari=bagin ku-n
彼も来る
=ka ~より ku=ka maci これよりよい
=nta ~たち、~とか agami=nta 子供たち
=ndi ~と ku-n=di n-ta-n 来ると言った
=su ~の(準体助詞) n-ta-n=su=ja 言ったのは
=nni ~のよう u=nni=nu このような

「~の」に当たる助詞が=nuと=suに、「~と」に当たる助詞が=tuと=ndiに分かれていることに注意。=niと=nkiはどちらも受動文の動作主を表すのに使える。

与那国語では目的格を表す「を」は存在せず、目的語は常に無標になる。一方で主格を表す助詞は=ŋa、主題を表す場合は=jaを取る。主格の=ŋaは他動詞文ならば必ず使われるが、自動詞文の場合は揺れがある。また、他の琉球諸語では主格に「の」相当の属格助詞(与那国語=nu)を使う用法が見られるが、与那国語には存在しない。[36][注 7]

数詞・類別詞

数詞[37]
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
与那国語の数詞 tʔu tʔa mi du ici mu nana da kugunu tu
類別詞[37]
数える対象 人間 動物 無生物 平らな物 樹木 日にち 回数 歩数 握り
与那国語の類別詞 -taintu -gara -ci -ira -mutu -ka/-ga -muruci -mata -ka

例えば「一つ、二つ、三つ、四つ」であれば"tʔuci, tʔaci, mici, duci"('とぅち、'たち、みち、どぅち)のようになる。

  • ウンティ(サツマイモ
  • ダマ(
  • ドゥル(
  • ドゥー(
  • ミンブル(
  • カイグゥ(
  • ミンブルブッタ(馬鹿・阿呆)

脚注

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注釈

  1. ^ 2009年2月19日発表。アイヌ語(15人)より話者数が多い
  2. ^ 例えば/aragu/「非常に、すごく」は平山・中本(1964)ではA型/高型とされているが、上野 2010の調査では/a[raː!gu/となっている([は上昇、!は半下降)。また/itʔin/「一番、最も、非常に」は前者の研究ではA型/高型だが後者の調査では/itʔin]/(C型/下降型)と併せて/[it!tʔin/という音調も報告している。
  3. ^ グループ・小グループ・クラスによる三段階の分析は、山田 2016, pp. 270–271。
  4. ^ ただし/ŋarun/(濡れる)は非意志的な動詞だが完了接辞に-a-を取り/ŋan/となり、/hirun/(行く)は意志的な動詞だが完了接辞に-ju-を取って/hjun/となる。
  5. ^ この行の活用形は、内間(1984)でのみ報告されている。
  6. ^ 以下の代名詞は山田, ペラール & 下地 2013, p. 297。
  7. ^ 当該論文では、自動詞文主語の動作主性が高いほど=ŋaを取りやすいという可能性が高いとしている。

出典

  1. ^ Hammarström, Harald; Forkel, Robert; Haspelmath, Martin et al., eds (2016). “Yonaguni”. Glottolog 2.7. Jena: Max Planck Institute for the Science of Human History. http://glottolog.org/resource/languoid/id/yona1241 
  2. ^ 消滅の危機にある方言・言語,文化庁 2015年4月26日, at the Wayback Machine.
  3. ^ “八丈語? 世界2500言語、消滅危機 日本は8語対象、方言も独立言語 ユネスコ”. 朝日新聞 (2009年2月20日). 2014年3月29日閲覧。
  4. ^ a b 中本 1976, p. 189.
  5. ^ a b c d e f g h i j 加治工 1984, pp. 332–355.
  6. ^ 山田, ペラール & 下地 2013, p. 291.
  7. ^ 中本 1976, p. 197.
  8. ^ 加治工 1984, p. 346.
  9. ^ 中本 1976, pp. 188–189.
  10. ^ 中本 1976, pp. 199.
  11. ^ a b c d 中本 1976, pp. 207–209.
  12. ^ 中本 1976, p. 201.
  13. ^ 中本 1976, pp. 196–200.
  14. ^ 中本 1976, pp. 202–203.
  15. ^ 加治工 1984, p. 262.
  16. ^ 加治工 1984, p. 310。鳩間島の例。
  17. ^ 上野 2010.
  18. ^ 山田, ペラール & 下地 2013, pp. 293–294.
  19. ^ 山田, ペラール & 下地 2013, p. 294.
  20. ^ 山田, ペラール & 下地 2013, p. 293.
  21. ^ 中澤 2018, p. 133.
  22. ^ 上野 2010, p. 3.
  23. ^ a b c d e f g h 山田, ペラール & 下地 2013.
  24. ^ 山田 2016, p. 271.
  25. ^ a b c d e f g 山田 2018.
  26. ^ a b 内間 1984, pp. 526–537.
  27. ^ 山田 2016, p. 266.
  28. ^ 山田, ペラール & 下地 2013, p. 302.
  29. ^ 山田 2016, pp. 285–286.
  30. ^ 内間 1984, 「形容詞活用の通時的考察」.
  31. ^ 山田, ペラール & 下地 2013, p. 303.
  32. ^ 山田, ペラール & 下地 2013, pp. 303–304.
  33. ^ 山田, ペラール & 下地 2013, p. 295.
  34. ^ 山田 2016b, pp. 148–156.
  35. ^ 狩俣 2015, p. 242.
  36. ^ 山田 2016, p. 174.
  37. ^ a b 山田, ペラール & 下地 2013, p. 296.

参考文献

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  • 上野善道「与那国方言動詞活用形のアクセント資料」『琉球の方言』第35号、法政大学沖縄文化研究所、105-121頁、2011年 (2011a)。 NAID 120005698443。 
  • 上野善道「与那国方言動詞活用形のアクセント資料(2)」『国立国語研究所論集』第2号、国立国語研究所、135-164頁、2011年 (2011b)。 NAID 110009576086。 
  • 上野善道「与那国方言動詞活用形のアクセント資料(3)」『琉球の方言』第36号、法政大学沖縄文化研究所、57-91頁、2012年。 NAID 120005698438。 
  • 上野善道「琉球与那国方言体言のアクセント資料(2)」『琉球の方言』第37号、法政大学沖縄文化研究所、109-142頁、2013年。 NAID 120005698433。 
  • 上野善道「琉球与那国方言体言のアクセント資料(4)」『琉球の方言』第39号、法政大学沖縄文化研究所、165-193頁、2015年。 
  • 上野善道「琉球与那国方言体言のアクセント資料(5)」『琉球の方言』第40号、法政大学沖縄文化研究所、71-105頁、2016年。 NAID 120005983405。 
  • 内間直仁『琉球方言文法の研究』笠間書院、1984年。ISBN (978-4305400475)。 
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  • 中本正智『琉球方言音韻の研究』法政大学出版局、1976年。ISBN (978-4588445019)。 
  • 加治工真市「八重山方言概説」『講座方言学 10 沖縄・奄美の方言』飯豊毅一・日野資純・佐藤亮一編、国書刊行会、1984年。 NCID BN00148415。 
  • 下地理則「南琉球与那国語の格配列について」『琉球諸語と古代日本語 日琉祖語の再建にむけて』田窪行則、ジョン・ホイットマン、平子達也 (編)、くろしお出版、2016年。ISBN (978-4874246924)。 
  • 山田真寛; ペラールトマ; 下地理則「ドゥナン(与那国)語の簡易文法と自然談話資料」『琉球列島の言語と文化 その記録と継承』田窪行則 (編)、くろしお出版、2013年。ISBN (978-4874245965)。 
  • 山田真寛「『ラジオ体操第一 ドゥナンむぬい』で覚えるドゥナンむぬい(与那国語)」『琉球諸語 記述文法Ⅰ』狩俣繁久 (編)、琉球大学、2015年。 NCID BB21768049。 
  • 山田真寛「与那国語の敬語体系」『琉球諸語 記述文法Ⅲ』狩俣繁久(編)、琉球大学、2016年。 NCID BB21768049。 
  • 山田真寛「ドゥナン(与那国)語の動詞形態論」『琉球諸語と古代日本語 日琉祖語の再建にむけて』田窪行則、ジョン・ホイットマン、平子達也 (編)、くろしお出版、2016年。ISBN (978-4874246924)。 
  • 山田真寛「与那国語の動詞・形容詞の活用パラダイムと調査・習得の方法」『「日本の消滅危機言語・方言の記録と ドキュメンテーションの作成」研究発表会より』国立国語研究所、2018年。 

関連項目

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