プロメタジン(英: promethazine)は、フェノチアジン系化合物で、抗パーキンソン作用や抗ヒスタミン作用を示す有機化合物の一種。通常、抗ヒスタミン薬として分類され抗アレルギー作用などがあるが、古い第一世代抗ヒスタミン薬である。そのため鎮静の副作用が強く、後に改良された第二世代抗ヒスタミン薬が登場した。白色または淡黄白色の粉末。エタノール、酢酸に溶けやすい。
歴史
フランスの製薬会社ローヌ・プーラン(Rhône-Poulenc、現サノフィ・アベンティス)により開発された(整理番号は3277RP)。
プロメタジンは抗ヒスタミン薬のうち最初期の薬剤であり、持続が短く、鎮静などの副作用が多かったため、後に第二世代抗ヒスタミン薬と呼ばれるこれらの点を改良した薬剤が開発されてきた[2]。
薬理
薬理作用として、抗コリン性抗パーキンソン作用、抗ヒスタミン作用(H1受容体を遮断)、抗アナフィラキシー作用、そして中枢神経抑制作用を有する。これにより、鎮静作用、嘔吐抑制作用、抗ムスカリン作用を期待した薬物療法がなされる。例えば、乗り物酔いによる悪心や嘔吐を抑制する作用を有し、この効果は抗ムスカリン作用に由来する。一般にH1受容体拮抗薬は抗ヒスタミン薬と呼ばれ、プロメタジンも通常抗ヒスタミン薬として分類される。
用途
抗ヒスタミン薬のほか、使用例としてはかつて販売されていた鎮静催眠薬であるベゲタミンの成分の一つ。他、PL配合顆粒(医療用総合感冒薬)にも含まれており、抗ヒスタミン作用と鎮静作用を担う。
また、依存性や乱用の可能性が低い点から、イギリスではOTC睡眠薬ソミネックスとして販売されている。
しかし、一部の抗ヒスタミン薬と同様に、ドパミン取り込み阻害作用を有するとされ、モルヒネ・メタンフェタミンなどのドパミンを遊離させる依存性薬物の効果を高める可能性もある。
ガイドライン
高齢者での、アレルギー反応の治療には第一世代抗ヒスタミン薬であるプロメタジンではなく、第二世代抗ヒスタミン薬が推奨される[3]。不眠症、特に慢性の場合に第一世代抗ヒスタミン薬は推奨されない[1]。
適応
日本においては、ピレチア(Pyrethia、高田)、ヒベルナ(Hiberna、田辺三菱)という商品名で発売されている。ピレチアは錠剤と細粒剤で、ヒベルナには注射剤も存在する。
適応は多岐にわたるが、主に下記の通りである。
用法・用量
通常、成人にはプロメタジンとして、5〜25mgを1日1〜3回分割経口投与する。振戦麻痺、パーキンソニズムには、プロメタジンとして1日、25〜200mg適宜分割経口投与する。
禁忌
副作用など
重大な副作用としては、悪性症候群が知られている。
また、制吐作用を有するため、他の薬剤による中毒、頭蓋内占拠性病変による嘔吐症を不顕在化することもある。
脚注
- ^ a b 厚生労働科学研究班および日本睡眠学会ワーキンググループ編; 気分障害のガイドライン作成委員会 (2013年6月25日初版) (pdf). 睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドラインー出口を見据えた不眠医療マニュアル (Report) (2013年10月22日改訂版(医療従事者向けの記述が削除された版) ed.). 日本うつ病学会、気分障害のガイドライン作成委員会2014年3月20日閲覧。.
- ^ 鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会『鼻アレルギー診療ガイドライン2013年版―通年性鼻炎と花粉症』(改訂第7版)ライフサイエンス、2013年1月、41-42頁。ISBN (978-4898014363)。
- ^ 今井博久(編集)、福島紀子(編集)『これだけは気をつけたい高齢者への薬剤処方』医学書院、2014年4月、220-223頁。ISBN (978-4-260-01202-7)。
関連項目
参考文献
- 伊藤勝昭ほか編集 『新獣医薬理学 第二版』 近代出版 2004年 (ISBN 4-87402-101-8)
- 山口登 et al. 『こころの治療薬ハンドブック』 星和書店 2014年 (ISBN 978-4-7911-0864-0)
- Adam K et al. The hypnotic effects of an antihistamine; Promethazin. Br J Clin Pharmc 22: 715-717, 1986