『バカの壁』(バカのかべ)は、東京大学名誉教授・養老孟司の著書。新潮新書編集部の口述筆記による著作である。2003年(平成15年)4月10日、新潮新書(新潮社)より刊行された。400万部を超えるベストセラーとなり、同年の新語・流行語大賞、毎日出版文化賞特別賞を受賞。同年4月に創刊されたばかりの新潮新書は、同書のヒットによりブランドイメージを定着させた。
バカの壁 | ||
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著者 | 養老孟司 | |
発行日 | 2003年4月10日 | |
発行元 | 新潮社 | |
(ジャンル) | 随筆 | |
(国) | 日本 | |
言語 | 日本語 | |
形態 | 新書 | |
ページ数 | 204ページ | |
次作 | 『超バカの壁』 | |
公式サイト | 養老孟司『バカの壁』新潮社 | |
コード | ISBN (978-4-10-610003-1) NCID BA61830253 (ASIN) 4106100037 | |
(ウィキポータル 文学) | ||
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現代人の思考の不自由さを軸とし、戦争や犯罪、教育、経済などの諸現象の本質を解明する。
内容
本書の帯紙には「『話せば分かる』なんて大ウソ!」、書店向けPOP広告には「バカの壁は誰にでもある」という著者の言葉が記された。自宅での著者へのインタビューより、「バカの壁」とは「人は知りたくないことに耳を貸さず情報を遮断すること」を意味する[1]。
発行部数
2006年8月時点での発行部数は419万部。出版科学研究所調べで黒柳徹子の『窓ぎわのトットちゃん』、J・K・ローリング(松岡佑子訳)の『ハリー・ポッターと賢者の石』、乙武洋匡の『五体不満足』に次ぎ、戦後日本の歴代ベストセラー4位である[2]。教養系新書でこれまでの日本のベストセラーだった永六輔の『大往生』(1994年刊行、岩波新書)を超えたばかりか[3]、新書全体でもこれまでの日本のベストセラーだった塩月弥栄子の『冠婚葬祭入門』(1970年刊行、光文社カッパホームズ)の308万部をも上回った[4]。
日本出版販売の週間ベストセラーランキング新書ノンフィクション部門で1年間首位を続けた。ちなみに、連続1位記録を阻止したのは養老孟司の続編『死の壁』である。
日本出版販売調べの年間ベストセラーランキングで2003年度の1位、2004年度の3位を獲得した[5]。
発行部数の推移
- 初版発行部数 3万部
- 2003年11月19日時点 191万部
- 2003年12月9日時点 232万部
- 2004年2月19日時点 311万部(49刷)
- 2005年8月8日時点 398万部
- 2005年9月1日時点 400万部
- 2006年5月11日時点 415万部
- 2006年8月時点 419万部
- 2010年7月時点 432万部(100刷)
- 2014年10月時点436万部(110刷)
備考
- タイトルの「バカの壁」とは、元々は養老孟司が自著『形を読む』で使用していた言葉である[5]。
- 2020年に『朝日新聞 be on Saturday』が調査した「今だから読みたい2000年以後のベストセラー」[6]で221票を獲得し1位となった[5]。
なお1984年生まれで、若者を批判する言説を批判しつづけている後藤和智は、『バカの壁』での青少年問題に関する養老の発言に根拠が示されていないことなどを挙げ、「単に自分が「理解できない」存在に対してわかったような「説明」をしているだけである。(中略)『バカの壁』は養老自身の「バカの壁」(=科学的な検証に基づかずに勝手に「線引き」を行うこと)の見本市として読むことができる。」等と述べた[7]。
比喩
- 2004年3月5日、民主党の衆議院議員・達増拓也は衆議院予算委員会において「説明しても無駄というような問答無用の態度を繰り返す小泉内閣は『バカの壁内閣』だ。『バカの壁予算』に賛成することはできない」と述べた。
- 九段下駅の都営地下鉄新宿線新宿方面ホームと東京地下鉄(東京メトロ)半蔵門線押上方面ホームは、物理的に同じ高さで一連のホームであったが、「事業者が違う事により運賃が複雑になる」などという理由で、利用者への配慮を欠いた不必要な壁を、多額の費用で建設してホームを仕切り、利用者が階段を昇り降りする負担をかける事態を作り出してしまった。当時の東京都副知事であった猪瀬直樹がこの壁を「バカの壁」と表現し、撤去を提起。2013年2月15日、約12億円(東京都負担約5億円)をかけてホーム約200メートルのうち約90メートル分の壁が撤去された[8]。
書籍情報
- 養老孟司『バカの壁』新潮社(2003年4月10日、ISBN (4-10-610003-7))
- (ASIN) 4106100037
脚注
- ^ 2021年10月29日放送、TBS「news23」内、養老孟司氏への自宅でのインタビューにて。インタビュアーは小川彩佳、「10月31日は(第49回)衆議院選挙の投開票日。ベストセラー「バカの壁」の著者・養老孟司さんは、政治家の「ある言葉」が気になると言います。選挙のこと、コロナのこと、いろいろ聞きました。」
- ^ 戦後のベストセラーとメガヒット現象、出版科学研究所、2006年8月25日。
- ^ 「バカの壁」232万部 「大往生」を抜く、朝日新聞、2003年12月9日。
- ^ 過去のニュースフラッシュ 2004年2月、新文化
- ^ a b c d e 「今こそ!読みたい 2000年以降のベストセラー 新書ブーム起こした『バカの壁』」『朝日新聞 be on Saturday』2020年12月12日号
- ^ 2000年〜19年の年間ベストセラートップ3(日本出版販売調べ)に登場した50冊の中から5冊を選ぶ方式。1338人が回答。
- ^ 後藤和智『お前が若者を語るな!』 角川書店、角川書店Oneテーマ21 ,2008年, 60頁。 (ISBN 978-4-04-710153-1)
- ^ “サービス一体化で「バカの壁」撤去”. PROJECT DESIGN - 月刊「事業構想」オンライン (2013年3月27日). 2021年11月16日閲覧。
外部リンク
- 養老孟司 『バカの壁』 | 新潮社