グリコは、主に屋外の階段で行われる、じゃんけんから派生した遊びのひとつ。日本の子供の遊びとして広く知られている。じゃんけんグリコ[1]、グリコじゃんけん、グリコゲーム、グリコ・チョコレート・パイナップル・ゲームとも。
歴史
発祥は定かではない。1933年2月16日の「大阪朝日新聞」のグリコの広告に「東京でハヤるジャンケンのよび方」として「グリコ」「チヨコレート」「パイナツプル」が掲載されている[2]。
なお遊び研究家の加古里子によると、当初はこのパイナツプルは果物そのものではなく、台湾の新高製菓の当時人気のあったドロップの、一番人気のパイナップル味で、よって三者は「子どもにとってお菓子の三種の神器の名であった」[3]。
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ルール
環境
- 階段
- ある程度の段数を有する階段が必要となる。階段の最上と最下で最低限の意思疎通ができる程度の段数が望ましい。
- 階段は屋内のものが多く利用されるが、利用に足る段数があれば屋外でも行える。
- また、階段でなくとも均等な歩幅を測れる指標(路面の規則的な模様など)があれば理論上は行える。
- 人数
- 2人以上。但し、じゃんけんを重ねて進行していくため、「(あいこ)」の発生しやすい多人数になればなるほどゲームの進行は遅くなる。
進行
じゃんけんを行い、勝った者が出した手に応じて進む。
- グーで勝った場合 :「グリコ」と言いながら3歩進む(一部地方では「グスベリ」[注釈 1]と言いながら4歩進む[1])。
- チョキで勝った場合:「チヨコレイト」(チョコレート)と言いながら6歩進む。
- パーで勝った場合 :「パイナツプル」(パイナップル)、(一部地方では「パラシユート」(パラシュート)[4])と言いながら6歩進む。
進む際には「グ・リ・コ」と一音節ずつ明確に発声、発声するごとに一歩ずつ進む。「チョコレート」の場合は拗音の「ョ」を一音と捉え、「チヨコレイト」または「チヨコレエト」と発音して6歩、「パイナップル」はそのままでも良いが、慣習的に「パイナツプル」と促音の「ッ」を「ツ」に置き換えて発音されることが多い[注釈 2]。
3歩の「グリコ」で勝つよりも、6歩の「チヨコレイト」「パイナツプル」で勝ち進むほうが進行の効率が良いため、できるならばそれらの手を出して勝つことが望ましい。しかし6歩の勝ち手であるチョキとパーの両者ではチョキが勝るため、そのチョキに対抗する意味でグーの勝負にも価値がある。勝ち手に優劣を持たせることによって、じゃんけんが本来持つ駆け引きの特性が強調されている。
勝利
階段の頂点などの規定のゴール地点に、最初に到達した者が勝者となる。
最初の到達者が出た時点で終了となる場合もあれば、全員が到達するまで勝負が終わらないルールも存在する。
最適戦略
この遊びをゲーム理論として考えると、ナッシュ均衡となる混合戦略は、グー:チョキ:パー=2:2:1で出す戦略となる。以下に証明を示す。
まず、ゲームの性質上、相手の手に関わらず自分だけに一方的に有利な戦略は存在しない。(相手も同じ戦略を使用した際に矛盾する。)
したがって、「相手がどんな手を出そうとも引き分ける」戦略が存在すれば、それがナッシュ均衡となる。
自分がグー・チョキ・パーをそれぞれx:y:zの割合で出す戦略を取ると、歩数を得点と考え、自分が進むことをプラスの、相手が進むことをマイナスの得点とすると
- 相手がグーを出せば得点の期待値は -3y+6z
- 相手がチョキを出せば得点の期待値は -6z+3x
- 相手がパーを出せば得点の期待値は -6x+6y
となる。
上記の値がすべて0となるようなx, y, zの解は、任意の実数aを用いてx=2a, y=2a, z=aと表せる。 (証明終)
よって、実際にこの遊びで勝ちたい場合は、まず上記のナッシュ均衡通りに手を出して相手の出す手の割合を観察し、 相手がナッシュ均衡に従っていない場合はそれに従って出す割合を変更すれば良い。
ローカルルール
この節に(雑多な内容が羅列されています)。 |
ゴールはぴったりでないと上がれない(折り返させる)とするルールも存在する。このルールには、進める歩数が3の倍数のものしかないため、段数が3の倍数でないと延々上がれないという欠点がある。
グーが勝ち手であるときの「グリコ」を、「グリコのオマケ」あるいは「グリコのオマケつき」として7歩または9歩進むルールを採用することもある。パーが勝ち手であるときの「パイナップル」を、「パイナップルー」として7歩進むルールを採用することもある。
チョキを「ピー」と発音する地方では、「チヨコレイト」が「ピーナツ」になる場合が多い。 また、階段やタイルなどがなくても、スタートとゴールを決めてすることもある。この場合、進む距離はプレイヤーの歩幅にも影響される。一部の地域(宮城県多賀城市・塩竈市・七ヶ浜町・松島町・利府町)ではグーで勝った場合には「グリコ」ではなく「グリコス」として4歩進む。また、愛知県名古屋市千種区今池界隈では、グーで勝った場合には「グリコ」ではなく「グリコル」として4歩進む。 また、宮城県松島町の一部の地域では、あいこになった場合に「アイスクリーム」として7歩進む。
また、(愛知県名古屋市千種区今池)では、あいこになった場合に「あいこさま」として5歩進む。
グーで勝った場合「グリコのパリパリチョコレート」、パーで勝った場合「パナップパリパリミルフィーユ」(この遊びをモチーフとしたパナップのCMで使用されたキャッチフレーズ)を使うルールもある。
備考
- この遊びはゲームボーイカラー用ソフト(シルバニアファミリー3)でも使用されている。
- 毎日放送 (MBS)の深夜バラエティ『ロケみつ ザ・ワールド』の旅ロケ企画のひとつとして、この遊びを応用した「さあ遥かなる塚本へ! 1駅1文字 日本海鉄道グリコブログ旅」が行われている。
- 江崎グリコは、CSRの一環としてこの遊び(「じゃんけんグリコ」と呼んでいる)を教育の場で集団で行うための指導ガイドを配布している[5][6]。ウェブサイトを設けているほか、自社のテレビCMでも用いたことがある[7]。
脚注
注釈
出典
- ^ a b c d e f 柴山ロミオ (2021年7月8日). “チョキは「チヨコレイト」。パーは「パイナツプル」。では、グーは「グスベリ」?”. tenki.jpサプリ. 日本気象協会. 2021年11月30日閲覧。
- ^ 、財団法人大阪観光コンベンション協会。(2020/02/27閲覧)
- ^ パネル討論会 1970年代の課題--あそび / 加古里子 ; 黒川紀章 ; 下河辺淳 ; 岸田純之助 - 「技術と経済」1969年12月号、科学技術と経済の会。(要:国立国会図書館 登録利用者ログイン)
- ^ 北九州市とその周辺地域。当初は他の地域と同じパイナツプルであったが、太平洋戦争時の蘭印作戦で使用されたパラシュートが小倉陸軍造兵廠で製造されたものであったこと、落下傘部隊を描いた軍歌や映画(「空の神兵」)のヒットによりパイナツプルに取って代わったとされる。
- ^ “楽しむ!学ぶ!Glicoの教育キット”. 江崎グリコ. 2021年11月30日閲覧。
- ^ “じゃんけんグリコをはじめよう!”. 江崎グリコ. 2021年11月30日閲覧。
- ^ “綾瀬はるか・妻夫木聡・深田恭子ら12人が企業CMで「じゃんけんグリコ」”. 宣伝会議 (2020年2月21日). 2021年11月30日閲覧。
関連文献
- 尾崎雄一郎「グリコ・チョコレート・パイナップル・ゲームの最適混合戦略」『名城論叢』第10巻第4号、2010年 。
- 後藤弘樹・愛木豊彦・柘植直樹「ミニマックス原理を題材とした高校生用の教材の開発と実践」『岐阜数学教育研究』第10号、2011年 。
- 遠藤圭晟・飯塚泰樹「グリコゲームの混合戦略の実験による検証」『第78回全国大会講演論文集』2016年 。
外部リンク
- JANKEN GLICO REMOTE - 江崎グリコ