この記事は英語版の対応するページを翻訳することにより充実させることができます。(2021年11月) 翻訳前に重要な指示を読むには右にある[表示]をクリックしてください。
|
分布
形態
最大種はホッキョクグマで[5]、体長200 - 250センチメートル、体重300 - 800キログラム[6]。次に大型のヒグマで体長100 - 280センチメートル、最大体重780キログラム[6]。最小種マレーグマで[5]、体長100 - 150センチメートル[6]。体重27 - 65キログラム[5][6]。
一般に、密に生えた毛皮と短い尾・太くて短い四肢と大きな体を持つ[6]。視覚や聴覚は特に優れてはいないが[注 2]、嗅覚は発達しており[5][6]すぐれたイヌの7倍もの嗅覚をもつ。
頭部は大型だが、眼や耳介は小型で耳介は丸みを帯びる[5][6]。顎が発達している。門歯は特殊化しておらず、犬歯は長く、上顎第4小臼歯および下顎第1大臼歯(裂肉歯)が発達せず、大臼歯は幅広く丸みを帯びた歯尖で物を噛み砕くことに適している[5]。歯式は門歯上顎6本(ナマケグマは4本)・下顎6本、犬歯上下2本ずつ・小臼歯上下4 - 8本ずつで個体変異があり、大臼歯上顎4本・下顎6本の計34 - 42本(通常は42本、ナマケグマ40本)[5][8]。
乳頭はクマ属は3対、ジャイアントパンダ・ナマケグマ・マレーグマ・メガネグマは2対[6][8]。
寿命は25年から40年の種が多い。
イヌ科やネコ科の動物がかかとを地につけず「つま先立ち」で歩く「趾行」を行うのに対し、ヒトと同じようにかかとを地につけて歩く「蹠行」動物である。これにより、速く走るのは苦手である一方、後肢のみによる二足直立は比較的得意であるとされる。 指趾は5本で[8][8]、それぞれに長く湾曲した出し入れできない鉤爪がある[5][6]。この爪は物を引き裂いたり掘り起こすのに適している[6]。木登りや穴掘りに優れた形状をしている。マレーグマ属以外は肉球を除いた足裏は体毛で被われ、ホッキョクグマでは顕著[5]。
分類
上位分類
イヌ型亜目クマ下目に分類され、クマ小目Ursidaまたはクマ上科Ursoideaとしてイタチ上科や鰭脚類から区別される[9][10]。化石分類群ではアンフィキオン科をクマ小目に含める説もあったが[3]、イヌ型亜目の基部系統とする見解もある[11]。
パンダ類の分類については諸説あり、パンダ科として独立させたり、レッサーパンダをアライグマ科に含めるなどされてきたが[12]、DNA分析による結果から、ジャイアントパンダはクマ科に含まれ、レッサーパンダは独立のレッサーパンダ科とする考え方が有力となっている[13]。
以下はFlynn (2005) [14]による食肉目内におけるクマ科の系統的位置。
食肉目 | |
Carnivora |
下位分類
3亜科の関係は、ジャイアントパンダ亜科が離れており、クマ亜科とメガネグマ亜科が近縁である。そのため、ジャイアントパンダ亜科を別科とする、あるいは、メガネグマ亜科をクマ亜科に含めることがある。一方で2005年のMSW3では亜科を認めていない[4]。
- (ジャイアントパンダ亜科) Ailuropodinae
- ジャイアントパンダ属 Ailuropoda
- Ailuropoda melanoleuca ジャイアントパンダ Giant panda
- Ailuropoda minor(絶滅)
- ジャイアントパンダ属 Ailuropoda
- メガネグマ亜科 Tremarctinae
- クマ亜科 Ursinae
現生種の系統関係は以下(Yu et al. (2007)[15]による)。
クマ科 | |
Ursidae |
化石分類群としてはヘミキオン亜科Hemicyoninae・アグリオテリウム亜科Agriotheriinae・Ursavinae亜科などが挙げられる[11][12]。ヘミキオン亜科やアグリオテリウム亜科を独立したHemicyonidae科とする説もある[3]。
生態
主に山岳地帯や森林に生息するが、ホッキョクグマは氷原に生息する。足裏を接地して移動する(蹠行性)[5][6][8]。寒い地方および冬季に食料が少ない地域の種類は秋期に豊富に栄養を摂って、冬季に冬ごもりを行う。冬眠中のクマは体温が下がり、呼吸数や心拍数が減るとともに、餌や水を口にしなくなるだけでなく、排泄や排尿も見られなくなる。
主に植物食傾向の強い雑食だが[6][8]、ホッキョクグマは肉食の傾向が強い[6]。両者の間では顔の骨格も異なり、前者はよく発達した頬骨弓・側面にみられる眼窩および小さな犬歯を収めた短くて円筒形の頭蓋骨・関節が高い位置にある弓型の下顎骨・側頭筋と咬筋の大きな付着部・長い臼歯を特徴に持っている。対称的に、後者は小さな頬骨弓・正面にみられる眼窩およびよく発達した犬歯を収めた長大な頭蓋骨と長い顎・歯列レベルまで低い顎関節・少ない臼歯を特徴に持っている[16]。
成獣の雌は7-8か月の妊娠期間を経て、約1-4子(平均で約2子)を出産する。冬ごもりを行う種は冬ごもり中に幼獣を産む[5][6]。
人間との関係
この節は(検証可能)な(参考文献や出典)が全く示されていないか、不十分です。(2019年1月) |
クマによる被害と回避
クマによる農作物被害、山林被害、畜産被害、人身被害などが深刻な問題となっている[17]。
- 農作物被害
- コメ、トウモロコシ類、ムギ、スイカ、ニンジン、モモ、リンゴ、ナシなどの農作物が被害にあうことがある[17]。
- 人身被害
- 生息地で出遭わないようにするには、鈴を鳴らす、時々手を叩く、時々掛け声をあげる、ラジカセなどで大きな音を出すなどしながら存在を早期にクマに知らせることである[18]。
- 2016年度(平成28年度)の日本におけるヒグマ/ツキノワグマによる被害者数は105人に上り、内4人が命を落としている。環境省は、クマ被害の増加を踏まえ、「クマ類の出没に係る適切な対応について(依頼)」[19][20]を発出し、「立入り制限や捕獲対策等の迅速な対応」「ヒトとクマのあつれき解消に向けた取組」などの対策を示しているものの、具体的解決策は見いだせていない。一方統計的な観点から見ると、熊による日本の年間死者は平成29年で1名、令和元年で1名。平成20年以降最も多い年が上記の4名である[21]。
食用
クマの手のひら(熊掌)が中国では高級食材として珍重されているが、日本ではツキノワグマが小型ゆえに熊掌の材料には不向きである。日本には安産のお守りとして、クマの手のひらを出産時の産湯に浸けておくという風習があった。
日本でもその肉が、流通量こそ多くないものの食用とされている(詳細は熊肉を参照)。味や匂いには個体差があり、生前に何を食べていたかによって変わるという説が多く、鯨肉のようなものから、硬くて脂濃い、動物臭いものまでと幅広い。
なお、重篤な症状を起こす旋毛虫が筋肉に寄生していることがあるため、生食は避けるべきである[22]。
薬用
漢方やアイヌの民間療法では、熊のあらゆる部分が薬用とされる。
なかでも、クマの胆嚢を原料とした「熊胆」(ゆうたん、熊の胆(くまのい)ともいう)が強壮剤・腹痛薬・解熱薬などとして珍重される。熊胆の主成分である胆汁酸の一種ウルソデオキシコール酸には実際に、胆液の流れを良くし、胆石を溶かすなどの薬効が認められており、医療現場で使われている。 アジア各国では熊農場があり、商業化されている。
神話・信仰
ギリシャ神話では、ニンフ(精霊)のカリストーが大神ゼウスによって強引に妊娠させられたうえ、ゼウスの妻ヘーラーの嫉妬によってクマに変身させられるという悲劇に見舞われた(おおぐま座を参照)。
後肢で立つことが出来るうえ、両手を器用に使うさまからしばしば擬人化され、絵本などの物語でも(人間に近い振る舞いをする)キャラクターとして登場することの多い生き物である。北方の少数民族や北米先住民をはじめ、広く世界的に、クマは人間と異なる神・あるいは知恵のある存在・豊かさの象徴として、信仰の対象とされてきた。ベルリンやベルンなど、地名に用いられることも多い。その力強さからベルセルクなど、獣人や狂戦士の伝説にも関連が深い。
アイヌはヒグマをキムンカムイ(山の神)と呼んで高位の神と位置付け、イオマンテ(熊送り)などの儀式を行った。ネアンデルタール人もクマを崇拝していたとも言われる。自分たちの祖先として、クマを信仰する場合もある。
古来、日本では年老いたクマは鬼熊という妖怪に変化を遂げると信じられており、昔話や絵本などにしばしば登場した。
キャラクター・マスコット
ロシアでは、クマは国を象徴する動物とされている。外国からもロシア帝国・ソ連は、その強大さや脅威性から北国の猛獣クマに例えられることが多かった(国際情勢に関する風刺漫画など)。1980年のモスクワオリンピックでは、仔熊の「ミーシャ」がマスコットキャラクターとなった。因みに、ロシア女帝エカチェリーナ2世は元はドイツのアスカーニエン家出身であるが、そのアスカーニエン家出身の初代ブランデンブルク辺境伯アルブレヒト1世は「熊公」という綽名を付けられた。アスカーニエン家はクマを紋章としている。スイスのベルン市は語源が「熊」(der Bär)であり、市の紋章はクマである。他にも、ドイツのベルリンやスペインのマドリードの市旗と紋章もクマである。
クマのぬいぐるみとして、テディベアが広く知られている。「テディ」とはセオドア・ルーズベルト(第26代アメリカ合衆国大統領)の愛称である。熊を狩りに出かけたルーズベルト大統領が、あてがわれたアメリカグマの仔熊を見逃したという話をもとに、「テディベア」というぬいぐるみが誕生した。テディベアなどクマのぬいぐるみが元となり、世界的に知られているキャラクター・クマのプーさんが生まれた。映画にはテッドが登場している。
日本に於いてはコンドウアキによってデザインされたキャラクター、リラックマの関連グッズが2003年より販売開始されており、ぬいぐるみを含め非常にポピュラーなマスコットとなっている。熊本県のくまモン、長野県のアルクマなど、クマをモチーフにしたマスコットキャラクター(ゆるキャラ)も人気を呼んでいる。熊本県には現在野生のクマの生息は確認されていないが、県名に「熊」が付くことから、クマをモチーフにした。一方、長野県には野生のクマが数多く生息しており、これと同県を代表する農産物のリンゴを組み合わせたマスコットが導入された。北海道夕張市のメロン熊も同様に、同市に数多く生息するヒグマと、市を代表する農産物の夕張メロンを組み合わせたマスコットである。
ベルン市の紋章
テディベア
くまモン
- (Category:架空のクマ)
- (Category:クマを主人公にした物語)
- (Category:クマを題材にした作品)
- (Category:クマをモチーフにしたマスコット)
言葉
ロシア語では熊を表す固有の単語がない。これは名前を呼ぶと熊を呼び寄せてしまうという一種の言霊信仰といえる迷信から、使われないまま忘れ去られてしまったからとされている。そのかわりに、「蜂蜜を食べるもの」(メドヴェーチ)と熊のことを呼んでいたため、この語が熊も指す言葉として定着した。
日本列島において、熊は(人を除き)食物連鎖の頂点に立つ生物であるため、日本語では、巨大な生物を熊に例えることがある。動植物の大型種の和名には、熊を名の一部に用いたり(クマゲラ・クマゼミ・クマバチ・クマイチゴ等)、クマに似ているとしてつけられる(アナグマ・アライグマ・クマムシ)こともある。クマザサも「熊笹」と表記されることが多く、これを用いた健康食品には、熊の絵を描いたり、「熊の出るような深山の笹」などと称しているものもあるが、正しくは「隈笹」である(クマザサの項目も参照)。
脚注
注釈
出典
- ^ Appendices I, II and III<http://www.cites.org/>(accessed Oct 21, 2015)
- ^ Richard H. Tedford, “Relationship of Pinnipeds to Other Carnivores (Mammalia),” Systematic Biology, Volume 25, Issue 4, Society of Systematic Zoology, 1976, Pages 363–374.
- ^ a b c Malcolm C. McKenna & Susan K. Bell, “Parvorder Ursida,” Classification of Mammals: Above the Species Level, Columbia University Press, 1997, Pages 247-260.
- ^ a b c W. Christopher Wozencraft, "Family Ursidae," Mammal Species of the World, (3rd ed.), Don E. Wilson & DeeAnn M. Reeder (ed.), Johns Hopkins University Press, 2005, p. 586-590.
- ^ a b c d e f g h i j k l m Fred Bunnell 「クマ科」渡辺弘之訳『動物大百科1 食肉類』今泉吉典監修 D.W.マクドナルド編、平凡社、1986年、98-99頁。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 川口幸男 「クマ科の分類」『世界の動物 分類と飼育2 (食肉目)』今泉吉典監修、東京動物園協会、1991年、70-77頁。
- ^ 『ナショナルジオグラフィック 最強の捕食者たちホッキョクグマ編』より。[要文献特定詳細情報]
- ^ a b c d e f 中里竜二 「パンダ科の分類」『世界の動物 分類と飼育2 (食肉目)』今泉吉典監修、東京動物園協会、1991年、67-68頁。
- ^ 遠藤秀紀・佐々木基樹「哺乳類分類における高次群の和名について」『日本野生動物医学会誌』第6巻 2号、日本野生動物医学会、2001年、45-53頁。
- ^ Connor J. Burgin, Jane Widness & Nathan S. Upham, “Introduction”, In: Connor J. Burgin, Don E. Wilson, Russell A. Mittermeier, Anthony B. Rylands, Thomas E. Lacher & Wes Sechrest (eds.), Illustrated Checklist of the Mammals of the World, Volume 1, Lynx Edicions, 2020, Pages 23-40.
- ^ a b 江木直子・荻野慎諧・高井正成「ミャンマー中部の新第三系イラワジ動物相:食肉目」『化石』第104巻、日本古生物学会、2018年、21-33頁。
- ^ a b 今泉吉典「食肉目総論」、今泉吉典 監修『世界の動物 分類と飼育 2 (食肉目)』東京動物園協会、1991年、10-21頁。
- ^ 佐藤淳・Mieczyslaw Wolsan「レッサーパンダ(Ailurus fulgens)の進化的由来」『哺乳類科学』52巻 1号、日本哺乳類学会、2012年、23-40頁。
- ^ Flynn, J. J.; Finarelli, J. A.; Zehr, S.; Hsu, J.; Nedbal, M. A. (2005). “Molecular phylogeny of the Carnivora (Mammalia): Assessing the impact of increased sampling on resolving enigmatic relationships”. Systematic Biology 54 (2): 317–37. doi:10.1080/10635150590923326. PMID (16012099).
- ^ Yu, Li; Li, Yi-Wei; Ryder, Oliver A.; Zhang, Ya-Ping (2007). “Analysis of complete mitochondrial genome sequences increases phylogenetic resolution of bears (Ursidae), a mammalian family that experienced rapid speciation”. BMC Evolutionary Biology 7 (198): 198. doi:10.1186/1471-2148-7-198. PMC 2151078. PMID (17956639) .
- ^ 坪田敏男・山崎晃司 編『日本のクマ ヒグマとツキノワグマの生物学』、東京大学出版会、2011年、9-10頁。
- ^ a b “” (PDF). 朝日町. 2021年6月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年2月8日閲覧。
- ^ ヒグマ生息地での注意. ShiretokoMuseum. (2009年2月28日)2019年1月20日閲覧。
- ^ 環自野発第1606141号、2016年(平成28年)6月14日付。
- ^ 農作業中におけるクマの出没及び人身被害防止等に対する指導等の徹底について 農林水産省、2016年6月14日公表、2019年9月23日閲覧
- ^ https://www.env.go.jp/nature/choju/effort/effort12/injury-qe.pdf
- ^ 片桐誠二; 富内侃; 世古佳文「西日本で発生した旋毛虫症について」『日本獣医師会雑誌』第37巻第11号、741-744頁、1984年。doi:10.12935/jvma1951.37.741 。
関連項目
外部リンク
- 第17回国際クマ会議
- 東京のクマ
- - ウェイバックマシン(2019年3月26日アーカイブ分)
- 『(クマ)』 - コトバンク
- 「くま(熊)に関する資料」(香川県立図書館) - レファレンス協同データベース