『カラフル』は、森絵都の小説。(YA小説)の代表格とされる[1]。また、それをもとにした日本映画、ラジオドラマ。
小説は理論社から1998年7月に出版された((ISBN 4652071639))。第46回産経児童出版文化賞受賞。Audibleにより羽飼まりの朗読で2020年にオーディオブック版がデータ配信されている。英語翻訳版はCOUNTERPOINT PRESSから2021年7月に出版された((ISBN 9781640094420))。
2010年9月時点で単行本は69刷・25万部、文春文庫版(2007年刊行)は17刷・44万部、フォア文庫版(2010年3月刊行)は8刷・8万部を発行している[1]。
ストーリー
一度死んだ「ぼく」は、天使に「抽選にあたりました!」と言われ、「前世の過ちを償う」ために下界で誰かの体に乗り移って過ごす「ホームステイの修行」をおこなうこととなる。「ぼく」の魂は「小林真」という中学3年生の少年に乗り移り、「修行」が始まった。小林真は自殺を試みて死亡宣告を受けた直後で、蘇ったことに家族は驚喜する。しかし、お目付役の天使から、両親の行状(会社の上司が逮捕されて喜ぶ父親、不倫をしている母親)や真の学校での評判を知らされた「ぼく」は「修行」に消極的になる。天使からの叱咤と脅し(リタイアは不可)により真としての生活を続けるものの、「ぼく」は真の両親に反抗的な態度を取る。真の母親に不倫のことをほのめかして家を出た「ぼく」は、お気に入りの高価なスニーカーを不良に襲われて取られてしまう。不良のために重傷を負い自宅で療養していた真をクラスメイトの女子生徒が見舞いに来るが、「ぼく」はわざと露悪的な態度を見せて追い返した。回復後、「ぼく」は学校で心を開ける友人を見つけ、休日に真の父から釣りに誘われて会話を交わしたことで、家族の別の姿や真に対して抱いていた愛情を知る。高校への進学を巡り、母親は真に向いた学校を探して薦めるが、「ぼく」は親友と同じ学校に行きたいという理由で別の学校を志望することを宣言し、家族もそれを受け入れた。真の家族との関係は改善したものの、「ぼく」はその愛情が真に向けられたものであることに葛藤を覚える。天使に「真の魂を真の体に返してやりたい」と相談した「ぼく」に、天使は「24時間以内に前世の過ちを思い出すこと」を条件に可能だと答える。翌日、やってきた天使に「ぼく」は、自分の犯した過ちは人を殺したことでその殺した相手は自分であり、小林真なのだと告げる。天使は「ぼく」すなわち真が再挑戦に成功したと答える。小林真としての人生を再び始めることを不安に思う真に天使は「少し長めのホームステイがまた始まると思えばいい」とアドバイスし、最後に「しぶとく生きろ」と話すのだった。
登場人物
- 小林真
- 主人公である「ぼく」の魂が修行のために乗り移った少年。中学3年生。絵が得意で美術部に所属しているが、学業成績や交友関係はぱっとしない。中学1年生と自認してしまうほどに背が低いことにコンプレックスを持っている。口が達者で花札が唯一の娯楽。
- 佐野唱子
- 真のクラスメイト。真が自殺前と変わったことに気づく。自殺前の真は意識もしない少女だった。不良に襲われた真を自宅まで見舞いに来るが、「ぼく」から露悪的な対応を受ける。
- 桑原ひろか
- 真の後輩で、初恋の相手。真にただ一人気軽に話しかける相手でもあった。
- 小林満
- 真の兄で高校3年生。真に対してはきつい言葉を投げかける。
- 真の父親
- 食品企業に勤めるサラリーマンで失業・転職歴あり。利己的な人間。会社の不祥事で上層部の人間がいなくなったため、部長に昇格する。
- 真の母親
- 専業主婦。自分が平凡であることに負い目があり、色々な習い事に手を出しては挫折している。以前、フラメンコ教室の教師と不倫していた。
- プラプラ
- 天使で、下界での「ぼく」のサポート役。美形で瞳が瑠璃色の「優男」と表現されている。天界では白い布をまとい背中に羽根が生えた姿をしているが、下界ではスーツ姿。また言動も天界では丁寧な口調だが、下界ではぞんざいな口調で話す。
- 早乙女
- 真のクラスメイト。元卓球部で成績は真といい勝負。安くスニーカーを買える店を真に教え、それをきっかけに親しくなる。
- 沢田
- 真の担任。30歳そこそこの独身男。担当は体育で真から「ゴリラみたいな体格」と言われている。
作品の舞台
明示はされていないが、真が父親と遠出した際に自動車が「県からも遠ざかり」とある一方、進学先として家族が紹介した芸術系の高校について「外れとはいっても東京だし、うちから通学可能かどうか確認したかった」という母親の台詞があり、東京の近県と考えられる。
真が自殺するきっかけとなったできごとは9月10日に起こり、物語の最後は12月15日である。何カ所か日付と曜日が明示される(「十二月六日。日曜日」)が、このカレンダーは作品が発表された1998年と同じである。ただし作中では年代には言及されていない。
映画化作品
実写映画(2000年)
2000年秋に公開された。以下のキャスト、スタッフなどはその時のものである。田中聖の映画初主演作でもある[2]。
キャスト
- 小林真:田中聖(当時ジャニーズJr.)(幼少期:田中彪)
- 母:阿川佐和子
- 父:滝田栄
- 満(兄):(景山悠希)(幼少期:(中村健伴))
- 進:(斉藤新之介)
- プラプラ:曽我廼家文童
- 佐野唱子:真柄佳奈子
- 桑原ひろか:(駒勇明日香)
- 沢田先生:柳葉敏郎
- 後藤:鈴木砂羽
- 医者:江藤潤
- 看護婦:梶原阿貴、春木みさよ
- 進の父:深水三章
- 援助交際の中年男:林家こぶ平
- フラメンコの先生:筧利夫
- 双眼鏡の女:畑知子
- ゲームセンターの少年:内野謙太、大里要二、三浦圭祐
スタッフ
- 原作:森絵都
- 監督:中原俊
- 助監督:武正晴、山下白、河合勇人
- 脚本:森田芳光
- 撮影:藤澤順一
- 美術:(稲垣尚夫)
- 編集:冨田功
- 音響効果:東洋音響カモメ(中村佳央)
- 音楽:池辺晋一郎
- 絵画制作:末永蒼生
- フラメンコ指導:鈴木敬子
- ロケ協力:埼玉県、行田市、行田市立忍中学校、行田商工会議所 ほか
- CG:NHKエンタープライズ21CGルーム
- タイトル:マリンポスト
- 現像:東京現像所
- スタジオ:日活撮影所
- 企画協力:笠浦友愛
- 製作者:(酒井治盛)
- エクゼクティブプロデューサー:齊藤曉
- プロデューサー:高橋康夫、萩原貫司
- アソシエイトプロデューサー:倉田喜久雄、伊藤浩之、吉岡和彦
- 製作:NHKエンタープライズ21、タイトル・プロデュース
- 配給:ムービーテレビジョン
劇場アニメ(2010年)
実写映画(2018年・タイ)
実写映画(2022年)
ラジオドラマ
1999年、NHK-FM内番組『青春アドベンチャー』において放送された。全10話。脚色は丸尾聡。主人公の小林真(ぼく)は多賀基史、プラプラは井上真樹夫が声を担当した。
舞台
2023年7・8月、「せたがやこどもプロジェクト 2023 アミューズ×世田谷パブリックシアター ミュージカル「カラフル」」上演予定
- キャスト
- スタッフ
- 原作:森絵都「カラフル」(文春文庫)
- 脚本・作詞・演出:小林香
- 作曲・編曲:(大嵜慶子)