アベマキ(棈、学名: Quercus variabilis)とは、ブナ科コナラ属の落葉高木。コルククヌギ、ワタクヌギともいう。中国地方では、良質の樹皮を持つものをアベ、樹皮が薄い悪質なものをミズアベとよんでいた。
分布・生育地
アジア東南部の日本、中華人民共和国、台湾、朝鮮半島に広く分布している[4]。日本では、山形県以西の本州・四国・九州に分布する[4]。山地に自生し[4]、西日本では雑木林に普通にみられる。日本では国の天然記念物として兵庫県養父市の口大屋の大アベマキが指定されている。
特徴
樹皮はコルク層が発達し、不規則に深い割れ目ができるが[4]、ヨーロッパ・北アフリカに分布するコルクガシほどではない。かつてはコルクの代用品がつくられたため、「コルククヌギ」の別名がある[4]。
葉はクヌギに似るが、裏には星状毛があり白っぽく見える[4]。
花期は春から晩春にかけて(4 - 5月ごろ)で、雌雄同株[4]、(雌雄異花)。雄花はタン黄色で新枝の葉の付け根から10㎝程の房になり下がる、雌花は新枝の上の方に1個ずつ付く。
果期は9 - 10月ごろで、堅果(ドングリ)が殻斗に包まれており、クヌギの堅果とよく似ているが、クヌギよりは若干の大きく[4]、殻斗は浅く楕円形のものが多い。
クヌギとの見分け方
- 樹皮のコルク質がより発達している。
- 葉がやや幅広であるものが多く、裏が白っぽい。
- 殻斗だけで見分けることは困難。
- クヌギ(Quercus acutissima )と交雑したものはアベクヌギと呼ばれ、両親の中間的な特徴をもつ。
利用
樹皮は、弾力があり軽くて強く、熱やガス、水を通さない。このためコルクの代用品[5]として栽培されていたこともある。戦時色が強くなった1941年6月以降には、産地であった広島県を皮切りに岡山県、島根県、兵庫県、京都府、石川県、鳥取県、徳島県で樹皮の県営検査が行われた[6]。
アベマキ(又は、クヌギ、コナラ、ミズナラ)の樹皮は、生薬「ボクソク」(第十七改正日本薬局方 収載)の原料となる。タンニン等を多く含むため、収れん作用があり、十味敗毒湯などに処方される[7]。
脚注
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Quercus variabilis Blume アベマキ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年12月10日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Quercus serrata auct. non Thunb. アベマキ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年12月10日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Quercus serrata Thunb. var. variabilis (Blume) Matsum. アベマキ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年12月10日閲覧。
- ^ a b c d e f g h 平野隆久監修 永岡書店編 1997, p. 231.
- ^ 小野陽太郎「アベマキ」『新版 林業百科事典』第2版第5刷 p15 日本林業技術協会 1984年(昭和59年)発行
- ^ 香田徹也「昭和18年(1943年)林政・民有林」『日本近代林政年表 1867-2009』p444 日本林業調査会 2011年 (全国書誌番号):(22018608)
- ^ 東京生薬協会. “ボクソク”. 新常用和漢薬集. 2020年11月6日閲覧。
参考文献
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関連項目
外部リンク
- "Quercus variabilis". National Center for Biotechnology Information (NCBI) (英語). (英語)
- "Quercus variabilis" - Encyclopedia of Life (英語)
- 波田善夫. “アベマキ”. 植物雑学事典. 岡山理科大学. 2011年12月2日閲覧。