「にごりえ」は、樋口一葉の短編小説。1895年(明治28年)9月、博文館『文芸倶楽部』に発表される。
「にごりえ」が発表された明治28年は、1889年(明治22年)に死去した一葉の父・(則義)の七回忌にあたる[1]。一葉は法要のため博文館に(原稿料)の前借りを申し出ており、「にごりえ」の原稿はその引き換えとして執筆された[1]。山梨県立文学館所蔵の未定稿によれば、当初の草稿では「ものぐるひ」「親ゆずり」の仮題が付けられている。
銘酒屋の遊女お力が、落ちぶれて妻子とも別れた源七と情死するまでを描く。作者の住む丸山福山町(現文京区西片)を舞台に、ここに生きる住民を描写している。
あらすじ
丸山福山町の銘酒屋街に住むお力。お力は上客の結城朝之助に気に入られるが、それ以前に馴染みになった客源七がいた。源七は蒲団屋を営んでいたが、お力に入れ込んだことで没落し、今は妻子ともども長屋での苦しい生活をおくっている。しかし、それでもお力への未練を断ち切れずにいた。
ある日朝之助が店にやって来た。お力は酒に酔って身の上話を始めるが、朝之助はお力に出世を望むな(出世を望むのですね?の意味)と言う。
一方源七は仕事もままならなくなり、家計は妻の内職に頼るばかりになっていた。そんななか、子どもがお力から高価な菓子を貰ったことをきっかけに、それを嘆く妻と諍いになり、ついに源七は妻子とも別れてしまう。お力は源七の刃によって、無理とも合意とも知らない心中の片割れとなって死ぬ。
映像化作品
「にごりえ (映画)」を参照
- 1960年:百万人の劇場(フジテレビ) - 出演:高松英郎、日高澄子、(穂高のり子)
- 1961年:NECサンデー劇場(NET) - 脚本:水木洋子、演出:(山本隆則)、出演:山田五十鈴、北村和夫、織田政雄、赤木蘭子、藤田安男、鈴木光枝、(内田礼子)
- 1964年:シオノギテレビ劇場(フジテレビ) - 演出:森川時久、出演:山本富士子、田村高廣、山内明、山岡久乃、菅井きん、佐々木愛、大塚道子
- 1973年:女・その愛のシリーズ(NET) - 脚本:野上龍雄、監督:佐々木康、出演:真木洋子、緒形拳、山本学、悠木千帆、横山道代、原知佐子、(小塙謙士)、鮎川浩、(田中美津子)[2]
- 1993年:テレビドラマ『にごりえ』(テレビ東京) - 演出:久世光彦、出演:田中裕子、根岸季衣、柄本明、洞口依子、川越美和、三浦理恵子
- 2009年(平成21年)サタデーTVラボ『妄想姉妹 Paranoid Sisters 文學という名のもとに(第9話『にごりえ』)(NTV)
脚注
関連項目
外部リンク
- 『にごりえ』:旧字旧仮名 - 青空文庫
- 『にごりえ』:旧字旧仮名 - 青空文庫
- 『にごりえ』:新字旧仮名 - 青空文庫
- 『にごりえ』現代語訳 まちこの文机
- にごりえ(1960) - テレビドラマデータベース
- にごりえ(1961) - テレビドラマデータベース
- にごりえ(1964) - テレビドラマデータベース
- にごりえ(1973) - テレビドラマデータベース
- にごりえ(1993) - テレビドラマデータベース