『大つごもり』(おおつごもり)は、樋口一葉の短編小説。1894年(明治27年)12月、「文學界」第24号に発表した。1896年(明治29年)には「太陽」(博文館)に再掲載されている。貧乏のもとに生まれた人たちが背負っていかなければならない人生を描いており、一葉の貧困生活の体験から生まれた作品[1]。「大つごもり」は大晦日の意味。
概要
明治27年は一葉が下谷龍泉寺町(東京都台東区竜泉)から本郷区丸山福山町(文京区西片)へ転居し、荒物雑貨・駄菓子店を営みつつ執筆に専念している時期の作品で、「暗夜」に続いて発表。翌年には後に代表作を評される文学界へ「たけくらべ」を発表している。
山村家に奉公に出るお峰の大晦日近辺を描き、お峰と作者自身を重ね合わせて(石之助は次兄の虎之助と重ねて)明治期の女性の悲哀を浮かび上がらせている。
あらすじ
18歳のお峰が山村家の奉公人となってしばらくした後、お暇がもらえたため、初音町にある伯父の家へ帰宅する。そこで病気の伯父から、高利貸しから借りた10円の期限が迫っているのでおどり(期間延長のための金銭)を払うことを頼まれ、山村家から借りる約束をする。
総領である石之助が帰ってくるが、石之助とご新造は仲が悪いため、機嫌が悪くなり、お峰はお金を借りる事ができなかった。そのため、大晦日に仕方なく引き出しから1円札2枚を盗んでしまう。
その後、大勘定(大晦日の有り金を全て封印すること)のために、お峰が2円を盗んだことが露見しそうになる。お峰は伯父に罪をかぶせないがために、もし伯父の罪にとなったら自殺をする決心をした。ところが、残った札束ごと石之助が盗っていたのであった。
映像化作品
「にごりえ (映画)」を参照