組織球性壊死性リンパ節炎(そしききゅうせい・えしせい・リンパせつえん)とは、リンパ節の腫脹・疼痛を伴う良性疾患。亜急性壊死性リンパ節炎、また報告者の菊池昌弘にちなみ菊池病とも呼ばれる[1][2][3]。
原因
原因は未だ不明である。エプスタイン・バー・ウイルス(EBV), human herpes virus 6 (HHV-6),human herpes virus 8 (HHV-8),ヒト免疫不全ウイルス (HIV),parvovirus B19,Yersinia enterocolitica, toxoplasma などが関連するとする報告がある[4]、一方で否定的な報告もある[5]。菊池病で特異的な病原体が検出されるわけではない。
疫学
症状
扁桃腫大を伴う風邪症候群の様な症状で始まり、38℃程度の発熱(40%)、自発痛または圧痛を伴うリンパ節腫脹、白血球数減少を主要徴候とする[4]。リンパ節腫脹は後頸部に多いが、まれに腹腔内などの部位もみられる[7]。倦怠感(7%), 関節痛(7%), 皮疹(10%)[8]などを呈する。
検査
鑑別診断
伝染性単核球症、全身性エリテマトーデス、結核性リンパ節炎、悪性リンパ腫が鑑別診断にあげられる[4]。
治療
重症例ではステロイド剤の投与[10]。
- 本疾患は自然治癒する疾患であるが、場合によっては治癒までに数ヶ月かかることもある。根本的な治療法は乏しく、基本的に対症療法しかないが、症状が重篤な場合は副腎皮質ステロイドが有効である。再発を数%に認める[11]。
出典
脚注
- ^ 菊池昌弘、菊池病 日本内科学会雑誌 2002年 91巻 7号 p.2057-2058, doi:10.2169/naika.91.2057
- ^ 菊池昌弘:特異な組織像を呈するリンパ節炎について.日内学誌1972;35:379―80.,NAID 10004887229
- ^ 山口和克, 島峰徹郎「頸部の亜急性壊死性リンパ節炎」『日本網内系学会会誌』第20巻Supplement、日本リンパ網内系学会、1980年、1-9頁、doi:10.3960/jslrt1961.20.supplement_1、ISSN 0386-9725、NAID 130003641875。
- ^ a b c d e 壊死性リンパ節炎について(2015年10月20日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project 松山赤十字病院
- ^ 稲毛康司, 「組織球性壊死性リンパ節炎」『ドクターサロン』 65巻11月号 2021年, キョーリン製薬 医療関係者向け情報
- ^ J Richards MJ: Kikuchi's disease. UpToDate ver.18.2
- ^ 矢部博樹, 新里偉咲, 橋本公夫「腸間膜リンパ節に発症した壊死性リンパ節炎」『臨床血液』第40巻第8号、日本血液学会、1999年、658-662頁、doi:10.11406/rinketsu.40.658、ISSN 04851439、NAID 10006175086、PMID (10496041)。
- ^ 山口隆広, 大島孝一, 菊池昌弘, 吉田雄一, 古賀哲也「多発性リンパ節腫脹皮疹を呈した組織球性壊死性リンパ節炎(菊池病)の1例」『Skin Cancer』第18巻第1号、日本皮膚悪性腫瘍学会、2003年、13-16頁、doi:10.5227/skincancer.18.13、ISSN 09153535、NAID 10025717132。
- ^ Kwon SY, Kim TK, Kim YS, Lee KY, Lee NJ, Seol HY. CT findings in Kikuchi disease: analysis of 96 cases. AJNR Am J Neuroradiol. 2004;25(6):1099-1102.
- ^ a b 臼井真理子, 知念多恵子, 大橋則夫, 関東裕美, 伊藤正俊, 吉田正己「特異な臨床像を呈する組織球性壊死性リンパ節炎の1例」『皮膚の科学』第4巻第3号、日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会、2005年、254-258頁、doi:10.11340/skinresearch.4.3_254、ISSN 1347-1813、NAID 130005404837。
- ^ Bosch X, Guilabert A. Kikuchi-Fujimoto disease. Orphanet J Rare Dis. 2006;1:18. Published 2006 May 23. doi:10.1186/1750-1172-1-18.