『大尉の娘』(たいいのむすめ)は、中内蝶二による日本の戯曲、または同作を原作とした1917年(大正6年)製作・公開、井上正夫監督による日本のサイレント映画、および1924年(大正13年)製作・公開の野村芳亭監督、1927年(昭和2年)製作・公開の井上金太郎監督、1929年(昭和4年)製作・公開の(落合浪雄)監督、1936年(昭和11年)製作・公開の野淵昶監督による日本のリメイク映画である。
戯曲の初演は1922年(大正11年)、東京・明治座での公演であった[1]。翌1923年(大正12年)、初代水谷八重子が初演して以来、水谷の露子役は当たり役となり、本作は「八重子十種」の演目のひとつに数えられる[1]。
略歴・概要
ドイツ映画『憲兵モエビウス』を元に、中内蝶二が戯曲化。初演の時期は不明である。
井上正夫一座による1922年(大正11年)6月、明治座での初演は、井上正夫の元大尉、女形の花柳章太郎の露子で好評を得た[1]。初代水谷八重子は翌年には浅草の(御国座)で初演しており、父親役は井上正夫であった。
1917年(大正6年)には、小林喜三郎の小林商会が映画化している。その後、リメイクが重ねられたが、1929年(昭和4年)の映画化の際に、映画において初めて八重子自身が露子を演じた。1936年(昭和11年)の映画化の際には、八重子の初演時の父親役であった井上正夫が登板している。
映画『大尉の娘』は、最後の映画化である新興キネマ版のみ、東京国立近代美術館フィルムセンターに所蔵。近年も上映されている。ただし、同センターホームページの検索ではヒットしない。それ以外のバージョンは散逸したと思われる[2]。
ストーリー
大正時代中期の長野県、木曾に近く奥深い村の教師・森田慎蔵は、退役軍人である。その娘・露子は、その村の村長の甥・六松と恋愛関係にあったが結婚することができなかった。ふたりの間には子どもが生まれ、子は里子に出し、露子は東京に出ていた。
奉公先から里帰りしていた露子は、偶然、六松の結婚を知る。その婚礼の夜、露子は嫉妬のあまりに放火、花嫁は焼死する。六松の婚礼に参加していた慎蔵は、火事の現場に露子の草鞋を発見してしまう。露子が犯人であると悟った慎蔵は、娘の露子に死を諭す。ついに覚悟した露子を慎蔵は絞殺し、自らも自害する。
映画
1917年版
『大尉の娘』(たいいのむすめ)は、1917年(大正6年)製作・公開、小林商会製作・配給による日本のサイレント映画である。女形の(木下吉之助)が露子を演じた。
スタッフ・作品データ
- 監督 : 井上正夫
- 脚本 : (篠山吟葉)
- 原作 : 中内蝶二
- 撮影 : (長井信一)
- 製作 : 小林商会
- 上映時間(巻数) : 4巻
- フォーマット : 白黒映画 - (スタンダードサイズ)(1.33:1) - サイレント映画
- 初回興行 : 浅草・三友館
キャスト
1924年版
『大尉の娘』(たいいのむすめ)は、1924年(大正13年)製作・公開、松竹蒲田撮影所製作、松竹キネマ配給による日本のサイレント映画である。柳さく子が露子を演じた。
スタッフ・作品データ
- 監督 : 野村芳亭
- 脚本 : 武田晃
- 原作 : 中内蝶二 - 舞台劇『大尉の娘』より
- 撮影 : (小田浜太郎)
- 製作 : 松竹蒲田撮影所
- 上映時間(巻数) : 7巻
- フォーマット : 白黒映画 - (スタンダードサイズ)(1.33:1) - サイレント映画
- 初回興行 : 浅草・帝国館
キャスト
1927年版
大尉の娘 | |
---|---|
監督 | 井上金太郎 |
脚本 | 秋篠珊次郎 |
原作 | 中内蝶二 |
出演者 | 関根達発 マキノ輝子 |
撮影 | 松浦しげる |
製作会社 | マキノ・プロダクション御室撮影所 |
配給 | マキノ・プロダクション |
公開 | 1927年1月10日 |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
『大尉の娘』(たいいのむすめ)は、1927年(昭和2年)製作・公開、マキノ・プロダクション製作・配給による日本のサイレント映画である。マキノ輝子が露子を演じた。
スタッフ・作品データ
- 監督 : 井上金太郎
- 脚色 : 秋篠珊次郎
- 原作 : 中内蝶二
- 撮影 : 松浦しげる
- 製作 : マキノ・プロダクション御室撮影所
- 上映時間(巻数) : 6巻
- フォーマット : 白黒映画 - (スタンダードサイズ)(1.33:1) - サイレント映画
- 初回興行 : 浅草・千代田館
キャスト
1929年版
『大尉の娘』(たいいのむすめ)は、1929年(昭和4年)製作・公開、(発声映画社)製作・配給による日本のトーキーの劇映画である。水谷八重子が露子を演じた。
スタッフ・作品データ
- 監督・脚色 : (落合浪雄)
- 原作 : (中内諜二)
- 撮影・技術監督 : 峰尾芳男
- 音響効果 : (成生利男)
- 製作 : (発声映画社)大森撮影所
- 上映時間 (巻数) : 不明
- フォーマット : 白黒映画 - スタンダード・サイズ(1.37:1) - (モノラル録音)
- 初回興行 : 浅草・日本館 / 神田・麻布 (日活館)
キャスト
- 加藤精一 - 森田慎蔵(退役陸軍大尉)
- 水谷八重子 - 娘露子
- 田辺若男 - 川本久五郎(村長の兄)
- (根本淳) - 斉藤嘉平(助役)
- 宮島啓夫 - 百姓乙吉
- (市川啓夫) - 川本六松(村長の伜)
- (西条静子) - その花嫁春子
1936年版
大尉の娘 | |
---|---|
監督 | 野淵昶 |
脚本 | 森田信義 原作 中内蝶二 劇化 (落合浪雄) |
出演者 | 井上正夫 水谷八重子 |
撮影 | (青島順一郎) |
製作会社 | (松竹興行)現代劇部 芸術座 新興キネマ東京撮影所 |
配給 | 松竹 |
公開 | 1936年1月30日 |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
『大尉の娘』(たいいのむすめ)は、1936年(昭和11年)製作・公開、(松竹興行)現代劇部・芸術座・新興キネマ東京撮影所製作、松竹配給による日本のトーキーの劇映画である。水谷八重子が露子を演じた。
スタッフ・作品データ
- 監督 : 野淵昶
- 助監督 : (白石精二)、(落合吉人)、加戸敏、(鈴木千恵)
- 原作 : 中内蝶二
- 劇化 : (落合浪雄)
- 脚色 : 森田信義
- 撮影 : (青島順一郎)
- 照明 : (門田昌夫)、吉田茂
- 撮影助手 : (山上潔)、中川浩一
- 作曲・指揮 : 深井史郎
- 演奏 : 新興キネマ管弦楽団
- 楽長 : (遠藤三郎)
- 合唱 : (ポリドール・リズム・ボーイズ)
- 主題歌 :
- 舞台設計 : 水谷浩
- 舞台装置 : (関斧太郎)、(中野正延)、(岩瀬菊松)
- 舞台装飾 : (大林喜万太)、(清水竹次郎)
- 録音 : (野村穣)
- 録音助手 : (清水三平)、(安藤彰)、池田実、(高松良昭)
- モニター : (高松良昭)
- 音響処理 : (森布沙路)、(香川昌平)
- 衣裳 : (内田良太郎)
- 結髪 : 新興キネマ結髪部
- 扮装用化粧調整 : ウテナ本舗久保政吉商店
- 字幕 : (奥野坦)
- 字幕撮影 : (大久保辰)
- 現像 : (林竜次)、(市川光)
- 製作 : (松竹興行)現代劇部・芸術座・新興キネマ東京撮影所
- 上映時間 (巻数 / メートル) : 9巻 / 2,086メートル
- フォーマット : 白黒映画 - スタンダード・サイズ(1.37:1) - (モノラル録音)
- 初回興行 : 浅草・電気館 / 新宿・(大東京)
キャスト
- (福地初雄) - 婚礼の客
- (今井録郎) - 常吉
- (此村咲子) - 村の娘お咲
- (川瀬静子) - 村の娘お静
- (谷照子) - 村の娘
- (山路晴子) - 村の娘
- (堺寿美子) - 村の娘
- (若水公子) - 村の娘
- (速水稔) - 仲人
- (池田園子) - 仲人
- 上田寛 - 茂作
- (松平竜子) - 白石家の客
- (高倉恵美子) - 白石家の客
- (御影公子) - 松雄の花嫁鈴子
註
外部リンク
- 大尉の娘 - 日本映画データベース
- 大尉の娘 - 日本映画データベース
- 大尉の娘 - 日本映画データベース
- 大尉の娘 - 日本映画データベース
- 大尉の娘 - 日本映画データベース