『HERO -逆境の闘牌-』(ひろ ぎゃっきょうのとうはい)は、協力:福本伸行・漫画:前田治郎による日本の漫画作品。後にサブタイトルは『-アカギの遺志を継ぐ男-』に変更。『近代麻雀』(竹書房)にて2009年11月1日号から2021年8月号まで連載[1]。前作『天 天和通りの快男児』の続編となるスピンオフ作品で、アカギの死に様をみて再び麻雀の世界に挑戦する井川ひろゆきを主人公として物語が進む。
あらすじ
アカギの死から3年。アカギを慕い、共に戦った井川ひろゆきは、その遺志を継いで雀士としての人生を歩む。しかし勝利を重ねるたびに湧き上がるアカギに近づけたのかという悩みの答えを求め、天に勝負を挑む。一進一退の攻防の末、決着が着こうとしたその時、電話の着信により卓を離れた天はそのまま戻らず行方不明になる[3]。天の行方を捜すうちに第二次東西戦の予選会場へたどり着いたひろゆきはそこで天失踪の理由と天の意思を聞き、カジノ利権を賭けた香港マフィアとの第二次東西戦への参加を決める。
登場人物
主要キャラクター
- 井川ひろゆき(いがわ ひろゆき)
- 前作『天』に引き続き、本編では主人公を務める。相手の手や卓上の謎を見抜く「神眼」と天すら出し抜く「心眼」の持ち主。一方で甘さが弱点で、天や健に指摘されている。
- 対局中に失踪した天を探す中で市川と対局、彼の残したライターから第二次東西戦にたどり着く。合格直前で岸辺の裏切りにあい予選落ちの危機を迎えるものの命を賭けた敗者復活戦をクリアし予選を突破。一度はメンバーになることを拒否するも、健から携帯電話に残ってた留守番電話の天からのメッセージを聞き、一連の出来事や試練や裏切りなどの罠は全て天がひろゆきを試すため仕組んだことであると聞かされ、メッセージを聴き終えると、東のメンバーとなることを了承した。
- 天貴史(てん たかし)
- 前作『天』に引き続き、本編のもう1人の主人公。ひろゆきとの一徹麻雀の対局中に失踪し、天の捜索が本作におけるひろゆきの目的となっている。
- 第二次東西戦では交渉役を務めており、自身が人質となることで日本式ルールを承諾させた。一徹麻雀に突如失踪したのは、交渉が大詰めを迎えたため急遽向かったとのこと。命の危険もある第二次東西戦にひろゆきを巻き込むか悩んでいたが、自身の張った罠を乗り越えてたどり着いた場合は力を貸してくれるようひろゆきにメッセージを残す。第二次東西戦の交渉後は薬で眠らされ、見知らぬ海外に置きざりにされて目を覚ます。現地の博打で金を稼いで携帯を手に入れるとひろゆきに電話をかけてひろゆきから一徹麻雀の答えを聞くと、ひろゆきの心眼がアカギの領域に達していると実感し、第二次東西戦が東の勝利で終わったと悟ると、一徹麻雀の続きを頼むひろゆきにその必要は無いと言い、ひろゆきにアカギと同じ「熱い三流」だと言った。
- 沢田(さわだ)
- 前作『天』の序盤に登場する主要人物の1人。本編では一貫して主要人物として描かれる。天を探す柳生に一時人質に取られるが、後に開放され第二次東西戦の立会人となる。
- 岸辺忍(きしべ しのぶ)
- 沢田が連れてきた若手代打ちの1人。本編ではひろゆきの相棒役を務める。第二次東西戦予選ではひろゆきの甘さを克服させる仕掛けとして、健からの指令によりひろゆきを裏切る。
東の一般予選参加者
- 西方京介
- 予選通過者。予選では唯一1回戦で10万点を突破し、敗者復活戦の問題も即座に正解するなど高い能力を持つ。東軍の主力として活躍しておりその非凡な判断力や分析力もさることながら、ひろゆきから往年のアカギに匹敵する切れ味やそれ以上の冷酷な抜き身の刃を想像させる、相手のイカサマを逆に利用する強引な荒技を使う打ち筋もする。その正体は第1次東西戦の西の大将だった原田克美の息子であり、沈没する九龍城から血判状を持ち出しており、東西戦終了後に原田に渡した。
- 平良学
- 予選通過者。タイラー2号と名付けた携帯端末で確率を計算しながら麻雀を打つ超デジタル派。麻雀を打つときはヘッドホンでアニソンを聴きながら打つ。タイラー2号を駆使した様々なデータを使っての活躍で東軍をサポートしている。東西戦終了後は念願だったアメリカ留学に向かった。
- 角田
- 東北出身の打ち手。予選1回戦でひろゆきと同卓。ひろゆきを倒して名を上げることを目論むが、特殊ルールが災いして役満をあがることができず、流れを失い敗北する。
- 中田翔平・大柳
- 北海道出身のコンビ。前作『天』でひろゆきの策によって脱落した鷲尾の弟子。
- 元高校球児で、かつては道大会決勝まで勝ち進んだ黄金バッテリー。その技術を利用し、卓下で牌を投げて交換するイカサマフライング・パイを駆使する。
- 一時はひろゆき・岸辺を圧倒するも、僅かなミスからひろゆきにイカサマを見破られる。しかしひろゆきが岸辺の敗退を防ぐために告発しなかったため、大柳が押し上げた中田は予選を突破する。東西戦終了後は狩野に弟子入りしており狩野の元でマグロ漁に励んでいる。
東軍メンバー
ひろゆき・岸辺は詳細は主要キャラクターを、西方・平良・中田は東の一般予選参加者を参照。
- 健(けん)
- 前作『天』に引き続き、東軍のスカウトを務める大阪の悪鬼。
- 狩野龍二(かのう りゅうじ)
- かつて天に次ぐ東のナンバー2と評され、「東北の昇り龍」の異名を取った元代打ち。
- 4年前に誰にも連絡先を告げずに引退し、故郷青森で漁師をしていたが、かつて代打ちの頃にふいに漏らした一言から天が居場所を掴み東軍へスカウト。代打ちの時に自身の役満を阻止した佐伯が西に加わったことを知り、代打ちへと復帰し東軍に加わる。代打ちとして活動してた理由は、娘の病気のアメリカでの生体肝移植のために必要な莫大な治療費を稼ぐためであり、自身がドナーとして生体肝移植を行ったため、現在は後遺症を防ぐために定期的に薬を飲まなければいけない、危険な状態である。
- 東西戦の2回戦の手役取り蟻地獄の途中で薬を西側に奪われ、徐々に体調が悪くなっていき、予備の薬も取りにいけない危険な状態となるが、リバースサイドの最中に佐伯の「鷹の目」のカラクリを解くとともに、ひろゆきの手役のサポートに回ることで、清老頭、四槓子のW役満による、自身を含めた3人を飛ばすことに成功した。その後意識不明の非常に危険な状態となり東側のヘリコプターもこない状況の中、佐伯から西側のヘリコプターに乗るよう提案される。その後緊急入院して、息を吹き返し以前のマグロ漁の漁師としての生活に戻った。
- 柳生清麿(やぎゅう キヨマロ)
- 暴力団組織・関西王嵐会、会長補佐。褐色肌と強面が特徴のハーフ。巨大なハンマーを常に携帯している。
- 母親が名付けた自分の名前にプライドがあり、それを笑った者には「ハンマーチャンス!」と言ってハンマーで制裁を加える。
- 関西を無視したまま、東京カジノ利権をかけて第二次東西戦が進むことを阻止するために天を探し出そうとし、一時沢田を拉致するが、猪原都知事の相談し用意した裏社会のルートが西日本を代表する大物であり、清麿曰くさすがに自分でもその人物には逆らえないと、ひろゆき達に言っている。だがその人物が、関西を無視したままという状況に納得の行かない清麿の気持ちも汲み、その人物の尽力によって東軍メンバーに加わることで沢田も解放し、東軍の一員となる。後にその大物が原田であることが明らかになった。
- かつてはプロからも視察が来た高校球児で、中田と組みフライング・パイを復活させる。
西軍メンバー
- 大湾(ダーワン)
- 本作の黒幕。マカオのカジノ「湾グループ」の総帥。その正体は、かつてアカギに敗北した藤沢組の代打ち・浦部。
- アカギに敗北後、藤沢組を追放されて香港に渡り、(九龍城)における闇賭博・ロシアンルーレットで敗北するも、奇跡的に復活する。その後、あらゆるギャンブルで無敗を誇り、その資金を元手に「湾グループ」を設立。アカギとの再戦を望むも、アカギが故人となっていることを知り絶望し、アカギの意思を継ぐひろゆきに標的を変えて彼と対局する。
- 湾凰(ワンフェン)
- カジノ王。西軍の中心的人物。
- 佐伯(さえき)
- 現役最強と言われる横浜出身の新四天王の1人。狩野の引退試合で狩野の役満を阻止して和がったことで名を上げた。人間の無意識に起こる僅かな"挙動"である"癖"を読むことで相手の聴牌を読み、更に心理学や医学を徹底して研究することで読みの精度を更に上げることで、百発百中の聴牌読みである「鷹の目」『レーザービーム』を可能としている。
- 四宮(しのみや)
- 京都出身の新四天王の1人。ブー麻雀仕込みのスピード・戦略重視の打ち手。相手の打牌と進行具合を把握し、その一手先を行く間合いの取り方は居合い抜きの達人に例えられ、「ソードマスター」の異名を持つ。
- 麻熊(あさぐま)
- 博多出身の新四天王の1人。「マグマ」の異名を持ち、徐々に打点が上がるその和了は噴火に例えられる。
- 張(チャン)
- 事故の後遺症で目覚めぬ西軍大将、王湾の代打ち。
- 陳(チン)
- 風水盤を持ち、戦況を見極め卓上の点棒をコントロールする男。
- 李(リー)
- 元雑技団員。異様な手の長さとしなやかな関節、抜群の素早さと正確さに加え、吸着性を帯びた手指を持つことからキリーク(千の手を持つ男)と呼ばれており、頭にはキリークの梵字を入れている。
- その手を生かしたすり替えを得意とするが、その正確性と自分自身にさえ死角となる巨大な手を逆に突かれてひろゆきに敗北する。
- 黄(コウ)
- 西軍の一員。
その他の人物
- 荒木(あらき)
- 沢田が連れてきた若手代打ちの1人。柳生清麿の名前を笑ったことで清麿から「ハンマーチャンス」の制裁を受け、右手に重傷を負う。
- 市川(いちかわ)
- 『アカギ』の登場人物の1人。沢田を探すひろゆきを情報をエサに誘き寄せ、一時的に盲目になる薬を使用させて対等な条件での闘牌を強要する。当初はひろゆきを圧倒し、点棒の山を築くが、最終的には敗れる。アカギと戦ったのが1958年、それから44年後のことでもあり、偽者である可能性が言及される。しかし、持病の発作で倒れる瞬間の発言から、ひろゆきは本物の市川であると推測している。第二次東西戦、東の一般予選へ繋がるライターを残す。
- 川尻(かわじり)
- 御曹司。典型的な「金持ちのボンボン」であり、それゆえ「貧乏人」と「オヤジ」を見下す傲慢な性格。麻雀ではその性格が災いしてひろゆきに敗北。
- 猪原慎ノ介(いのはら しんのすけ)
- 東京都知事。公営カジノ構想を進める。
- 設立した銀行の損失を補填するために不正融資を受けたことで香港マフィアから強請られ、カジノ利権を奪われそうになるが、裏ルートを使った交渉でマカオと東京のカジノ利権同士を賭けた第二次麻雀東西対決に持ち込んだ。
特殊麻雀
- 24時間耐久麻雀
- 盲目麻雀
- 追い剥ぎ麻雀
- オーバー・ザ・999(スリーナイン)
- 第二次東西戦、東の予選種目。
- 1人25000点持ちで、半荘終了時に99900点超え(10万点以上)の点棒を持っていれば予選通過。通過は先着4名まで。
- オカウマなし、ノーテン罰符なしで、半荘終了時に25000点の原点を下回っていた場合は足切りとなる。
- 持ち点は純粋に点棒のみを指し、相手を飛ばしても自身の点は相手の持ち点までしか増えない。
- トップ取り蟻地獄
- 東8人西8人で合計16人の選手が、一回戦では4つの卓に別れてそれぞれ半荘を進める。
- 半荘終了後、16人中得点上位4人が勝ち抜け。
- 残った12人は二回戦に進み3つの卓に別れてそれぞれ半荘を進める。
- 半荘終了後、12人中得点上位4人が勝ち抜け。
- 残った8人は最終三回戦に進み2つの卓に別れてそれぞれ半荘を進める。
- 半荘終了後、8人中得点上位4人が勝ち抜け。
- 最後まで負け残った4人が脱落。
書誌情報
- 協力:福本伸行・漫画:前田治郎 『HERO』[注釈 1] 竹書房〈近代麻雀コミックス〉、全18巻
- 2010年6月11日発売[4][5]、6月25日初版発行 ISBN (978-4-8124-7288-0)
- 2011年2月26日発売[6]、3月12日初版発行 ISBN (978-4-8124-7516-4)
- 2011年7月27日発売[7][8]、8月10日初版発行 ISBN (978-4-8124-7643-7)
- 2012年6月27日発売[9]、7月11日初版発行 ISBN (978-4-8124-7916-2)
- 2013年1月26日発売[10]、2月9日初版発行 ISBN (978-4-8124-8093-9)
- 2013年12月10日発売[11][12]、ISBN (978-4-8124-8471-5)
- 2014年7月28日発売[13]、ISBN (978-4-8124-8745-7)
- 2015年7月31日発売[14]、ISBN (978-4-8019-5319-2)
- 2016年5月16日発売[15]、ISBN (978-4-8019-5520-2)
- 2016年12月15日発売[16]、ISBN (978-4-8019-5705-3)
- 2017年11月1日発売[17]、ISBN (978-4-8019-6095-4)
- 2018年6月27日発売[18]、ISBN (978-4-8019-6309-2)
- 2018年10月15日発売[19]、ISBN (978-4-8019-6408-2)
- 2019年5月1日発売[20]、ISBN (978-4-8019-6602-4)
- 2019年12月6日発売[21]、ISBN (978-4-8019-6823-3)
- 2020年7月1日発売[2][22]、ISBN (978-4-8019-7028-1)
- 2021年4月1日発売[23]、ISBN (978-4-8019-7265-0)
- 2021年11月1日発売[24]、ISBN (978-4-8019-7481-4)
脚注
注釈
- ^ 単行本1巻のサブタイトルは「-逆境の闘牌-」で、2巻以降は「-アカギの遺志を継ぐ男-」となっている。
出典
- ^ “福本伸行協力の「天」スピンオフ、近代麻雀で連載開始”. コミックナタリー (ナターシャ). (2009年10月1日)2021年4月1日閲覧。
- ^ a b “福本伸行の新刊に霜降り明星・粗品がツッコミ?「マミヤ」プレゼント企画も”. コミックナタリー (ナターシャ). (2020年7月1日)2021年4月1日閲覧。
- ^ 『HERO -逆境の闘牌-』3巻、4頁
- ^ “福本伸行が「アカギ」執筆に使用したお宝ペンを手に入れろ”. コミックナタリー (ナターシャ). (2010年6月11日)2021年4月1日閲覧。
- ^ “HERO(1)”. 竹書房. 2021年4月1日閲覧。
- ^ “HERO(2)”. 竹書房. 2021年4月1日閲覧。
- ^ “福本の生「ざわ‥」も聞ける! アカギざわ‥ざわ‥フェア”. コミックナタリー (ナターシャ). (2011年7月26日)2021年4月1日閲覧。
- ^ “HERO(3)”. 竹書房. 2021年4月1日閲覧。
- ^ “HERO(4)”. 竹書房. 2021年4月1日閲覧。
- ^ “HERO(5)”. 竹書房. 2021年4月1日閲覧。
- ^ “本日バースデーの福本伸行祭り、「アカギ」金の原画当たる”. コミックナタリー (ナターシャ). (2013年12月10日)2021年4月1日閲覧。
- ^ “HERO(6)”. 竹書房. 2021年4月1日閲覧。
- ^ “HERO(7)”. 竹書房. 2021年4月1日閲覧。
- ^ “HERO(8)”. 竹書房. 2021年4月1日閲覧。
- ^ “HERO(9)”. 竹書房. 2021年4月1日閲覧。
- ^ “HERO(10)”. 竹書房. 2021年4月1日閲覧。
- ^ “HERO(11)”. 竹書房. 2021年4月1日閲覧。
- ^ “HERO(12)”. 竹書房. 2021年4月1日閲覧。
- ^ “HERO(13)”. 竹書房. 2021年4月1日閲覧。
- ^ “HERO(14)”. 竹書房. 2021年4月1日閲覧。
- ^ “HERO(15)”. 竹書房. 2021年4月1日閲覧。
- ^ “HERO(16)”. 竹書房. 2021年4月1日閲覧。
- ^ “HERO(17)”. 竹書房. 2021年4月1日閲覧。
- ^ “HERO(18)”. 竹書房. 2021年11月1日閲覧。