青木 康晋（あおき やすゆき、1959年3月3日 - ）は、日本の経営者、ジャーナリスト。元朝日新聞出版代表取締役社長、会長。2023年現在、Gakken常勤顧問、東日本国際大学特任教授、BS朝日放送番組審議会委員、朝日カルチャーセンター講師。
経歴
愛知県豊橋市生まれ[1]。1977年愛知県立豊橋南高等学校卒業、1981年早稲田大学政治経済学部政治学科卒業[1]。
1981年朝日新聞社入社[1]。名古屋本社社会部記者[1]、東京本社政治部記者[1]、アエラ副編集長、政治部次長、アエラ編集長代理のあと、2004年週刊朝日編集長[1]、2006年土曜版be編集長[1]、2008年オピニオン編集長[1]。
仙台総局長・東北取材センター長だった2011年3月11日、東日本大震災が発生。現地責任者の東北復興取材センター長となり、災害報道を指揮[1]。2012年6月北海道支社長[2]。
週刊朝日による橋下徹特集記事問題で朝日新聞出版の神徳英雄代表取締役社長の引責辞任を受け、2012年12月に後継の代表取締役社長に就任した[1][3]。以来、9期連続黒字を達成し、過去最高益も更新して[4][5]、2021年6月取締役会長に[6]。2022年6月会長退任[7]。
計9年半に及ぶ社長、会長時代、日本出版クラブ理事、日本雑誌協会監事、全国出版協会評議員、司馬遼太郎記念財団理事を務めた[1]。
朝日新聞出版の退任翌月の2022年7月学研プラス顧問（常勤）[8]。同年10月学研プラスなど学研ホールディングス内の組織再編[9]により発足した株式会社Gakkenの顧問（常勤）となった。
2022年福島県いわき市の東日本国際大学経済経営学部非常勤講師、2023年から特任教授・デジタルコミュニケーションコース長[11]。
2022年から朝日カルチャーセンター横浜教室講師[12]。
人物・業績
アエラ副編集長のとき、電車の中吊り広告のダジャレ1行コピー作者だった[13]。コピーは「当局は、盗聴ちょっと許可局。[14]」（1999年の通信傍受法成立）など。
週刊朝日編集長の就任1週間後にイラク日本人人質事件が起き、同誌契約フォトジャーナリストらが拘束されたことが中東の衛星テレビ「アルジャジーラ」で報じられ、深夜、記者会見した。その後、人質は無事解放されたが、この事件で「自己責任」という言葉が広まり、2004年新語・流行語大賞のトップテン入りした[15][16]。
翌2005年、青木の3代前の週刊朝日編集長が消費者金融「武富士」から5000万円の「編集協力費」を提供されたことを週刊文春にスクープされた[17]。現職編集長として社内や「武富士」幹部に聴取し、誌面で読者に報告、謝罪した。
be編集長当時、BS朝日の番組「be on TV」「be ON AIR！」のレギュラーコメンテーターを務めた[18]。
同じころ（2007年度）1年間、学習院大学法学部の非常勤講師をしていた[19]。
朝日新聞出版社長としては、週刊朝日、アエラ、AERA dot.のニュース系3媒体の編集長や、書籍、生活文化の書籍系2編集部長にいずれも女性を起用したほか、他社からの移籍組を本部長や部長に就け、ダイバーシティと「脱朝日」の人事を行った[20]。
信賞必罰で知られ、2013年、「重大な就業規則違反」の週刊朝日編集長を解任して、自らも役員報酬減額[21]。一方で表彰規定も改定。それ以前の社長賞の副賞はボールペンだったが、ミリオンセラーや著名な賞、大スクープの担当者に100万円贈ると宣言し、下記の案件で実行した。
社長時代の2019年に刊行された今村夏子の『むらさきのスカートの女』が、朝日新聞グループ史上初の芥川賞を受賞[22]。『TOEIC L＆R TEST 出る単特急 金のフレーズ』と『本当の自由を手に入れる お金の大学』は100万部を突破[23][24]。『科学漫画サバイバルシリーズ』は2020年に累計1000万部を超えた[25][26]。
かつてセブン&アイ出版が出していた『ゲッターズ飯田の五星三心占い』シリーズを各社争奪戦の末に獲得した。同シリーズは2022年までに累計800万部[27]。
社長就任前年の2011年、朝日新聞出版は大手書店紀伊國屋書店の出版社別売上ランキングで17位[28]、ジュンク堂書店の同ランキングで19位だったが[29]、業績好調により年々順位を上げ、10年後の社長退任時の2021年、紀伊國屋書店で13位[30]、丸善ジュンク堂書店（合併後）で11位になった[31]。
会長退任後、週刊朝日の休刊発表を受けて、月刊誌「創」2023年3月号に「『週刊朝日』101年目の落日 国民的家庭雑誌の終わり」と題し、「休刊はもう何年も前、私が朝日新聞出版社長をしていたときに不可避だと考えていた」、後継社長への「引き継ぎのとき、いの一番に伝えたのがこの件だった」と書いた。併せて、18年前に週刊文春にすっぱ抜かれた「武富士」から週刊朝日への5000万円提供について、文春への情報提供者が当時の朝日新聞社幹部だった証拠をつかんだこと、その幹部の意趣返しにより、編集長在任1年7カ月で年度途中の11月に更迭され、事実上のヒラ社員に左遷されたことを明かした[32]。
脚注
- ^ a b c d e f g h i j k “不遇の時代、会社の机上で読破した司馬遼太郎 「へこたれない竜馬に励まされた」（朝日新聞出版 青木康晋社長）”. J-CAST 会社ウォッチ (2021年4月29日). 2021年12月20日閲覧。
- ^ “人事、朝日新聞社”. 日本経済新聞 (2012年5月31日). 2022年10月8日閲覧。
- ^ “朝日新聞出版社長が辞任”. 日本経済新聞 (2012年11月13日). 2023年1月3日閲覧。
- ^ “青木康晋・朝日新聞出版社長「ウェブ配信の強化で雑誌ビジネスを拡大」”. 経済界ウェブ. 2023年1月3日閲覧。
- ^ “【決算・人事】朝日新聞出版 新社長に市村友一氏を選任 売れ行き良好書で過去最高益に”. 文化通信デジタル (2021年6月18日). 2023年1月3日閲覧。
- ^ “朝日新聞出版人事（１７日付）：朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル (2021年6月18日). 2022年8月28日閲覧。
- ^ “朝日新聞出版人事（２９日付）：朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル (2022年6月30日). 2022年8月28日閲覧。
- ^ “【新文化】 - 人事ニュース”. www.shinbunka.co.jp. 2022年8月28日閲覧。
- ^ “学研グループの教育事業の組織再編と、統合会社の商号変更を実施。新社「株式会社Gakken」誕生。”. ㈱Gakken公式ブログ. 2022年10月24日閲覧。
- ^ “放送番組審議会 | BS朝日”. www.bs-asahi.co.jp. 2023年1月2日閲覧。
- ^ “【東日本国際大学】公式ウェブサイト。担当教員一覧 経済経営学部｜学部案内”. 【東日本国際大学】公式ウェブサイト。担当教員一覧 経済経営学部｜学部案内. 2023年4月14日閲覧。
- ^ “【オンライン受講】元週刊朝日編集長が教える 土曜日のエッセイ教室”. 朝日カルチャーセンター. 2022年10月24日閲覧。
- ^ “【オンライン受講】元週刊朝日編集長が教える 土曜日のエッセイ教室”. 朝日カルチャーセンター. 2022年11月3日閲覧。
- ^ “勝手にAERA応援団”. linsbar.com. 2022年10月8日閲覧。
- ^ プチ鹿島. “14年前、誰が「自己責任論」を言い始めたのか？”. 文春オンライン. 2022年11月3日閲覧。
- ^ “「現代用語の基礎知識」選 ユーキャン 新語・流行語大賞”. 「現代用語の基礎知識」選 ユーキャン 新語・流行語大賞. 2022年12月18日閲覧。
- ^ 「週刊文春」編集部 (2019年4月11日). “NHKより悪質！ 朝日新聞が武富士から受け取った「ウラ広告費」5000万円――「もう一度読みたい、あのスクープ」”. 週刊文春 電子版. 2023年3月24日閲覧。
- ^ “BS朝日 - be ON AIR!”. archives.bs-asahi.co.jp. 2022年10月20日閲覧。
- ^ “【東日本国際大学】公式ウェブサイト。担当教員一覧 経済経営学部｜学部案内”. 【東日本国際大学】公式ウェブサイト。担当教員一覧 経済経営学部｜学部案内. 2023年4月14日閲覧。
- ^ “新文化 - 出版業界紙 - 過去の人事ニュース”. www.shinbunka.co.jp. 2022年10月21日閲覧。
- ^ “週刊朝日の編集長解任 朝日新聞が懲戒解雇処分”. 日本経済新聞 (2013年10月9日). 2023年1月3日閲覧。
- ^ “芥川賞の今村夏子さん「一生取れないと…」 会見詳報：朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル (2019年7月18日). 2022年10月24日閲覧。
- ^ “累計100万部突破記念！『TOEIC L＆R TEST 出る単特急 金のフレーズ』の“裏音声”無料配信中”. プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1｜PR TIMES. 2022年11月3日閲覧。
- ^ “人気YouTuberが書いた『本当の自由を手に入れるお金の大学』が前代未聞のスピードで100万部突破！”. プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1｜PR TIMES. 2022年11月3日閲覧。
- ^ “「科学漫画サバイバル」シリーズ累計1000万部突破！シリーズ初のアニメ映画DVDの発売も発表”. プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1｜PR TIMES. 2022年12月18日閲覧。
- ^ “科学漫画サバイバルシリーズ 公式サイト｜シリーズ一覧”. publications.asahi.com. 2022年12月18日閲覧。
- ^ “ゲッターズ飯田の五星三心（ごせいさんしん）占い 2023”. ゲッターズ飯田の五星三心（ごせいさんしん）占い 2023. 2022年11月3日閲覧。
- ^ “紀伊國屋書店 出版社別 売上げベスト100 （2011年）”. www.1book.co.jp/. 2023年2月25日閲覧。
- ^ “ジュンク堂 出版社売上げベスト100 （2011年）”. www.1book.co.jp/. 2022年12月19日閲覧。
- ^ “紀伊國屋書店、「2021年出版社別売上げベスト300」を発表 - 新文化｜WEB本の雑誌”. WEB本の雑誌. 2023年2月25日閲覧。
- ^ “丸善ジュンク堂書店、2021年出版社別売上げベスト300を発表”. www.shinbunka.co.jp. 2022年12月19日閲覧。
- ^ “2023年3月号 新聞社の徹底研究／追悼!矢崎泰久さん - 月刊「創」のご案内”. www.tsukuru.co.jp. 2023年2月25日閲覧。