阿部 泰隆(あべ やすたか、1942年3月30日 - )は、日本の(法学者)。専門は行政法。学位は、法学博士(東京大学・(論文博士)・1972年)。神戸大学名誉教授。元中央大学教授。弁護士(兵庫県弁護士会所属)。
研究概要
(学士助手)時代は田中二郎、雄川一郎に師事。環境法、地方自治法、都市計画法など広い範囲にわたって研究している。助手時代はフランス行政法を主に研究していたが、そこから学ぶことは少ないとして、後にドイツおよびアメリカの行政法も含めて研究するようになった。日本の行政システムの問題点を実例を踏まえて鋭く分析し、その具体的な改善案を積極的に発信している。
「猫に鰹節の番をさせるシステム」、「ネズミがライオンに挑む」、「六法の半分分捕る行政法」、「犬も歩けば行政法に当たる」、「鬼面人を驚かす新(珍)理論」など現代の行政法システムの本質を表す格言を多く生み出した。内閣法制局が戦後60年ほとんど進化していないことを指して、「内閣法制局はシーラカンス」との発言もある。これは、合併処理浄化槽の設置義務づけは違憲と言っていること、水質汚濁防止法で「有害物質に該当する物質」などと不明確な用語を使っていること[1]、戦後の条例制定権を軽視した時代の行政実例をそのまま残していること、国民にわかりやすい法律を作る気がないことなどと主張するものである[2]。
なお、本人は、2012年3月に中央大学を定年退職後、2012年4月より、これまでの行政法(環境法・租税法・社会保障法 ・まちづくり法・地方自治法・独禁法などを含む)の長年の研究と、7年間の弁護士経験を生かして、弁護士業に専念すると宣言している。
略歴
職歴・受賞
日本不動産学会学会賞著作賞(1997年度)、都市住宅学会賞(1999年度)、日本不動産学会著作賞(2001年)、地域政策学会賞(2002年)、都市住宅学会賞著作賞(2003年)、日本地域学会賞・著作賞(2003年)を受賞。日本公法学会、租税法学会、環境法政策学会、自治学会、日本環境会議、法と経済学会の各理事。
主著
- 『フランス行政訴訟論』(有斐閣、1971年)
- 『行政救済の実効性』(弘文堂、1985年)
- 『事例解説行政法』(日本評論社、1987年)
- 『行政裁量と行政救済』(三省堂、1987年)
- 『国家補償法』(有斐閣、1988年)
- 『国土開発と環境保全』(日本評論社、1989年)
- 『行政法の解釈』(信山社、1990年)
- 『行政訴訟改革論』(有斐閣、1993年)
- 『政策法務からの提言』(日本評論社、1993年)
- 『大震災の法と政策』(日本評論社、1995年)
- 『政策法学の基本指針』(弘文堂、1996年)
- 『行政の法システム上・下[新版]』(有斐閣、1997年:初版は1992年)
- 『〈論争・提案〉情報公開』(日本評論社、1997年)
- 『政策法学と自治条例』(信山社、1999年)
- 『定期借家のかしこい貸し方・借り方』(信山社、2000年)
- 『こんな法律はいらない』(東洋経済新報社、2000年)
- 『内部告発(ホイッスルブロウワァー)の法的設計』(信山社、2003年)
- 『政策法学講座』(第一法規、2003年)
- 『行政訴訟要件論』(弘文堂、2003年)
- 『行政法の解釈(2)』(信山社、2005年)
- 『やわらか頭の法戦略』(第一法規、2006年)
- 『対行政の企業法務戦略』(中央経済社、2007年)
- 『行政法解釈学I-実質的法治国家を創造する変革の法理論』(有斐閣、2008年)
脚注
外部リンク
- 阿部 泰隆 ホームページ\