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銃創

銃創(じゅうそう)とは、鋭器損傷の一種であり、銃弾が高速で人体侵襲するだけでなく火薬ガス等も関与し独特な成傷機転をもつ創傷である。医学用語では射創(しゃそう、gunshot wound, 略称: GSW)と呼ぶ。

銃創
銃創のある頭蓋骨
分類および外部参照情報
ICD-(10) T14.1, W34, X95
ICD-9-CM E922.9
DiseasesDB 5480
MeSH D014948
GeneReviews
(テンプレートを表示)
スウェーデン国王カール12世の遺体。頭蓋骨に銃創が見える。

人体内に入った銃弾は弾道上の組織を挫滅させながら運動エネルギーの減衰分を放射状に発散して周囲の組織を圧排することで銃弾の直径よりも大きな一過性空隙を形成して、周囲組織を傷害しながら運動エネルギーがなくなるか、人体を貫通するまで進む。特に、銃弾の運動速度が水中の音速(厳密には生体中の音速)を大きく超える場合には衝撃波が体内に投射され、周囲の組織の圧排が大きくなる。

銃弾の身体への侵入口を射入口 (entrance GSW)、体内の創洞を射創管 (wound track)、出口を射出口 (exit GSW) という。

種類

形態による分類

貫通射創 (perforating GSW)
銃弾が身体を貫通して生じた創
頭蓋胸腔腹腔などの体腔を貫通したものを穿透創という。射入口と射出口を有する。射入口は円く、創縁は挫滅され、大きさは銃丸直径より小さいことが多い。三八式歩兵銃の場合、直径3 - 4ミリメートルである。射出口は円く、あるいは楕円形で、射入口より大きく、不正変形しているのが常である。の損傷を伴う場合などでは射出口が著しく大きく、また不正裂創状であることがある。近距離銃創では射入口が比較的大きく、創付近が煙渣で黒くなるのが常であるので、射距離の判別ができることがある。
盲管射創 (penetrating GSW)
銃弾が人体内に留まっている創
散弾射創 (shotgun wound)
散弾によって多数の射創が同時に発生した創
擦過射創 (graze wound)
銃弾が人体表面を擦過して出来た創
いわゆる、弾がかすった状態である。

被弾時の距離による分類

銃口から人体の皮膚表面までの距離によって以下のように区別される。創の状態と弾丸の種類から撃たれた時の射撃距離を推測することができるため法医学においては重要な概念である。

接射創 (contact wounds)
銃口が皮膚に接している状態で撃たれた場合
皮膚表面に黒く焦げた挫滅輪が生ずる、未燃焼火薬が皮膚へ貫入していることが特徴である。
また、傷口が星形に見えることから星型裂創とも。
準接射創 (near-contact wounds)
銃口が皮膚に接触していないが皮膚表面に黒く焦げた挫滅輪が生じている場合
未燃焼火薬が皮膚へ貫入していることが特徴である。
近射創 (intermediate-range wounds)
未燃焼火薬が発射後放射状に広がる射撃距離での損傷である。
射入口周囲に煤暈と火薬輪が見られることが特徴である。
遠射創 (distant GSW)
創口周囲に挫滅輪があるが、火薬輪や刺青暈が無い。

ICD-10分類

疾病及び関連保健問題の国際統計分類(ICD)による分類ICD-10では((X85-Y09) 加害にもとづく傷害及び死亡)などの形で以下のように分類している。

加害にもとづく傷害及び死亡
  • X93 拳銃の発射による加害にもとづく傷害及び死亡
  • X94 ライフル,散弾銃及び大型銃器の発射による加害にもとづく傷害及び死亡
  • X95 その他及び詳細不明の銃器の発射による加害にもとづく傷害及び死亡
生物によらない機械的な力への曝露
  • W32 拳銃の発射
  • W33 ライフル,ショットガン及び大型銃器の発射
  • W34 その他及び詳細不明の銃器の発射
故意の自傷及び自殺
  • X72 拳銃の発射による故意の自傷及び自殺
  • X73 ライフル,散弾銃及び大型銃器の発射による故意の自傷及び自殺
  • X74 その他及び詳細不明の銃器の発射による故意の自傷及び自殺
不慮か故意か決定されない事件
  • Y22 拳銃の発射,不慮か故意か決定されないもの
  • Y23 ライフル,散弾銃及び大型銃器の発射,不慮か故意か決定されないもの
  • Y24 その他及び詳細不明の銃器の発射,不慮か故意か決定されないもの
法的介入及び戦争行為
  • Y35.0 銃器による法的介入
  • Y36.4 銃器及びその他の通常の戦闘を伴う戦争行為

統計

2016年、銃器による死者は世界全体で251,000人。そのうち161,000人(64%)が攻撃によるもの、67,500人(27%)が自殺、23,000 (9%) が事故によるものであった[1]

死因と治療

 
58口径(ミニエー弾)で撃たれた大腿骨
 
5.56 mm弾で撃たれた大腿骨

一般的な死因には、出血による循環血液量減少性ショック気胸による窒息、心臓や重要な血管、脳や中枢神経系の損傷などによるものである。 骨が破砕された場合、骨片が他の臓器などに被害を与え別の合併症を引き起こす[2]

応急処置
止血が重要である。重要な血管が傷ついて噴き出すように血が出る(動脈性出血)(英語版)の場合、1分で死亡率が50%となり、それ以外でも死因として出血が多い。そのため、医療関係者が到着するまで現場にいる人間が止血して延命する必要性があった。こういった事情から、ホワイトハウスでは一般市民に止血方法を教育する Stop the Bleed キャンペーンを2015年10月に開始した[3]
ガーゼを傷口に押し込むくらいでないと効果がない[4]。生理用品のタンポンは銃創にフィットするサイズなので、銃創の止血に用いられる[5]
感染症
兵士の場合は、Combat Wound Medication Pack[6]、もしくは、combat pill pack と呼ばれる鎮痛剤・抗菌剤・止血剤などがひとまとめになった錠剤が渡され、負傷後に飲むようにしている[7]。傷口は、感染症とならないよう清潔なガーゼなどで抑えて止血する[7]。こういった抗菌剤などがなかった時代では、傷口から細菌が侵入し感染症となったあと細胞の壊死が広がり四肢切断で食い止めることが行われた[8]
感染は1-5%と高くはないが、傷口に毛髪・皮膚・骨片が残されていると、創感染、髄膜炎、脳室炎、脳膿瘍などを引きおこす可能性がある[9]
鉛中毒(鉛毒、鉛銃弾遺残症)
体の中に残ると中毒症状を起こすため、弾を摘出することが求められる[10]。19世紀まで消毒の概念がなく素手で取り出していたため、敗血症の死者・被害の拡大を出していた。
骨折
(Gustilo分類)(英語版)という開放骨折の段階と治療方針を考えるときの指標を使用する。小口径拳銃の場合I・IIのような傷となる。可能な限り骨の破片は取り除く。
防弾ベスト外傷
防弾ベストを着こんでいても、着弾の運動エネルギーは防弾ベストを変形させ防弾ベスト外傷を起こす[11]。内容は、鈍的損傷・骨折などである[12][9]
長期的な症状
鉛中毒。銃創を受けた患者の半数は心的外傷後ストレス障害(PTSD)やうつ病に悩まされる[13][14]
医療従事者にもたらす影響
銃乱射事件などで銃創を負った被害者が手術室に次々と運び込まれる局面は、医療従事者のメンタル面にも大きな影響を与える。銃創を手当てした外科医が発症する心的外傷後ストレス障害は、イラクアフガニスタン戦争に従事した兵士と同レベルとされる[15]

ゴム弾の負傷

ゴム弾を至近距離から銃撃した場合、脳損傷、気管や動脈などへの致命傷、脊椎骨折などにより死亡する場合があるため低致死性兵器として扱われる[16][17]

1990年-2017年の27年間のイスラエル、パレスチナ自治区、アメリカ、インド、北アイルランド、スイス、トルコ、ネパールなどの報告を調査し、負傷者1984人のうち53人(全体の3%)が死亡し、全生存者のうち約300人(15.5%)に失明や臓器摘出を行う必要のある傷など身体障害が残ることが判明している[18][17]

それ以外でも、骨や筋肉に重傷を与えることがある[19]

治療の歴史

日本の戦国時代には、金創医という医者が従軍して弾を抉り出していた。また、民間療法での()から作られた馬糞汁を飲むのが良いとされた[20]

1497年に、ドイツ人外科医(傷治療者:Wundarzt )(Hieronymus Brunschwig)(ドイツ語版)は、世界で初めて銃創の治療(火薬の毒 Pfolspeundt、焼灼止血法)について記述した『Das buch der cirurgia: hantwirckung der wundarztny.』を執筆した[21]

フランス王室公式外科医アンブロワーズ・パレは、焼灼止血法を止め、軟膏(卵黄・バラ油・松脂から作られた軟膏)による止血を導入し、1545年に銃創に関する論文を執筆した[21]

1596年に、イギリス人外科医(William Clowes)(英語版)は、創傷清拭、異物の摘出、創傷治療で焼灼止血をやめること、もともと弾丸は無毒だが発射前に弾丸に塗られた毒についての教科書を作成した[21]

1880年代まで、銃創を治療するための一般的な方法は、医師が殺菌されていない指などを傷に入れて弾丸をほじくり返すことであった。1881年に暗殺された第20代アメリカ大統領ジェームズ・ガーフィールドは弾丸が見つからず、16人の医師が殺菌していない器具や手で弾丸を探し回ったため感染症となり死亡した[22][23]

大統領の暗殺から二日後に、銃創治療の第一人者として知られるようになる医師(George E. Goodfellow)(英語版)は、石鹸で手を洗い、銃で撃たれた患者の傷をウイスキーで消毒して、開腹術を行い命を救っている。

1895年に、レントゲンが発明され、体内に残った銃弾の位置が特定できるようになった[24]

アメリカでは、1979年に(Advanced trauma life support)(英語版)という二次救命処置(設備の整った病院での救命措置)を開発した[25]

日本においては、2018年3月に2020年のオリンピックに向け、一般社団法人 日本外傷学会 東京オリンピック・パラリンピック特別委員会は『銃創・爆傷患者診療指針〔 Ver.1 〕』を作成した[26]

脚注

[脚注の使い方]
  1. ^ Global Burden of Disease 2016 Injury, Collaborators.; Naghavi, M; Marczak, LB (28 August 2018). “Global Mortality From Firearms, 1990-2016”. JAMA 320 (8): 792-814. doi:10.1001/jama.2018.10060. PMC 6143020. PMID (30167700). https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6143020/. 
  2. ^ Rhee, Peter M. (2016年6月). “Gunshot wounds: A review of ballistics, bullets, weapons, and myths” (英語). Journal of Trauma and Acute Care Surgery. pp. 853-867. doi:10.1097/TA.0000000000001037. 2022年5月9日閲覧。
  3. ^ Stop the Bleed サイト:EMS.gov
  4. ^ イラストでまなぶ!戦闘外傷救護 著:照井資規 p92
  5. ^ Nast, Condé (2008年1月15日). “銃創にはタンポン、寝床には粘着テープ――兵士たちの知恵”. WIRED.jp. 2022年7月11日閲覧。
  6. ^ Schauer, Steven G (2020年). “Prehospital Combat Wound Medication Pack Administration in Iraq and Afghanistan: A Department of Defense Trauma Registry Analysis” (英語). Journal of Special Operations Medicine. pp. 76. doi:10.55460/X4E8-NNXE. 2022年7月31日閲覧。
  7. ^ a b イラストでまなぶ!戦闘外傷救護 著:照井資規 p36
  8. ^ イラストでまなぶ!戦闘外傷救護 著:照井資規 p34
  9. ^ a b 銃創・爆傷患者診療指針〔 Ver.1 〕
  10. ^ “銃弾破片の体内残留による血中鉛濃度の上昇 ― アメリカ、2003年~2012年”. IMICライブラリ. 2022年5月6日閲覧。
  11. ^ イラストでまなぶ!戦闘外傷救護 著:照井資規 p40
  12. ^ Zuev, V. K. (2004年). “[Gunshot trauma in persons wearing a bullet-proof vest]”. Khirurgiia. pp. 56–60. 2022年7月10日閲覧。
  13. ^ Aaron, DL; Fadale, PD; Harrington, CJ; Born, CT (May 2011). “Posttraumatic stress disorders in civilian orthopaedics”. The Journal of the American Academy of Orthopaedic Surgeons 19 (5): 245-250. doi:10.5435/00124635-201105000-00001. PMID (21536623). 
  14. ^ “「銃暴力」で人生一変 生存者、抱え続ける苦しみ 米”. www.afpbb.com. 2023年5月1日閲覧。
  15. ^ “銃創治療で心を病む米医師たち、反対運動が救いに”. ロイター (2019年5月18日). 2019年5月18日閲覧。
  16. ^ News, A. B. C.. “Rubber bullets can be deadly, experts say, as George Floyd protests put spotlight on police use of the projectiles” (英語). ABC News. 2022年5月16日閲覧。
  17. ^ a b Haar, Rohini J (2017年12月). “Death, injury and disability from kinetic impact projectiles in crowd-control settings: a systematic review” (英語). BMJ Open. pp. e018154. doi:10.1136/bmjopen-2017-018154. 2022年5月16日閲覧。
  18. ^ “ゴム弾は安全ではない、死に至るケースも 米研究”. www.afpbb.com. 2022年5月15日閲覧。
  19. ^ “「非致死性」の模造銃で治安悪化のコロンビア 内戦終了でも無法状態”. 時事通信ニュース. 2022年5月15日閲覧。
  20. ^ ざんねんな日本史 ~武田騎馬軍団はポニーに乗ってやってきた~ 著:島崎晋 p.72
  21. ^ a b c Pruitt, Basil A. (2006年6月). “Combat Casualty Care and Surgical Progress:” (英語). Annals of Surgery. pp. 715-729. doi:10.1097/01.sla.0000220038.66466.b5. 2022年5月6日閲覧。
  22. ^ Rutkow, Ira (2006). James A. Garfield. New York: Macmillan Publishers. ISBN (978-0-8050-6950-1). OCLC 255885600 
  23. ^ Schaffer, Amanda (2006年7月25日). . New York Times (New York City). オリジナルの2012年4月26日時点におけるアーカイブ。. 2011年4月8日閲覧。 
  24. ^ Manring, M. M. (2009年8月). “Treatment of War Wounds: A Historical Review” (英語). Clinical Orthopaedics & Related Research. pp. 2168-2191. doi:10.1007/s11999-009-0738-5. 2022年5月9日閲覧。
  25. ^ 武田裕子, 武田多一, 田中秀治, 松田岳人「米国の病院前外傷救急に関する生涯教育プログラム」『医学教育』第34巻第2号、日本医学教育学会、2003年、101-106頁、doi:10.11307/mededjapan1970.34.101、2022年5月19日閲覧 
  26. ^ 一般社団法人 日本外傷学会 東京オリンピック・パラリンピック特別委員会「銃創・爆傷患者診療指針〔 Ver.1 〕」『日本外傷学会雑誌』第32巻第3号、日本外傷学会、2018年、Ver1-1-Ver1-63、doi:10.11382/jjast.32.Ver1-1、2022年5月19日閲覧 

参考文献

  • Mannion SJ, Chaloner E. "Principles of war surgery." BMJ 2005 Jun 25;330(7506):1498-500. Review. No abstract available. (PMID 15976425)
  • Hollerman JJ, Fackler ML, Coldwell DM, Ben-Menachem Y. "Gunshot wounds: 1. Bullets, ballistics, and mechanisms of injury." AJR Am J Roentgenol. 1990 Oct;155(4):685-90. Review. (PMID 2119095)

関連項目

  • 外傷
  • 創傷被覆材 - 胸部を覆う大きい絆創膏や、すぐに出血を止める軍用の包帯などが開発されている。
  • 防弾 - 本文にある近代の医師 Goodfellowは、射殺された賭博ブローカーが身に着けていたハンカチが弾を止めていたことから、絹織物の防弾性についての論文も書いている。
  • (法医学銃器鑑定)(英語版) - 線条痕による銃器の特定や死因特定などが行われる。
  • (弾道ゼラチン)(英語版) - 人体に命中した際の挙動を再現するために制作される。
  • (戦術的戦傷救護)(英語版)
  • ジビエ - 鉛中毒、腹部に銃創がある場合は食中毒汚染が問題になる。

外部リンク

  • WAR WOUNDS:BASIC SURGICAL MANAGEMENT - 著:Robin Gray 赤十字国際委員会監修。公開サイト:赤十字国際委員会
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