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金世鎬

金 世鎬(キム・セホ、1929年 - )は、北朝鮮工作員。朝鮮労働党対外情報調査部所属上級幹部と推定されている。1977年9月19日に発生した宇出津事件の主犯格であり、日本における拉致・工作活動の指揮役であったものと見られる。

キム・セホ
金 世鎬
生誕김세호(金 世鎬)
1929年????
別名吉田 某、宮本 明
金世鎬
各種表記
チョソングル 김세호
漢字 金世鎬
発音 キム・セホ
英語表記: Kim Se-ho
(テンプレートを表示)

宇出津事件

この事件で、金世鎬は「吉田」の偽名を用いた[1]。金世鎬は、別の北朝鮮工作員(「吉岡」)に脅迫され、「包摂」されたうえで「土台人」にされた在日朝鮮人の(李秋吉)に対し、1977年(昭和52年)8月10日、「日本人で独身の45歳から50歳くらいの男性を送り込め」という指令をあたえた[1][2][注釈 1]

東京都内で金融業を営んでいた李秋吉は顧客の一人であった久米裕密貿易の話を持ちかけ、戸籍謄本をとらせたうえで能登半島に誘い出し、1977年9月19日、石川県宇出津海岸に連れ出して工作船(「不審船」)で迎えに来た別の北朝鮮工作員に引き渡した[1][2][3][注釈 2]。李秋吉は逮捕され、「日本人を北朝鮮に送りだすと言う大きな事件を起こしてしまいました。妻や親戚に迷惑をかけるかと思うと、生きていけない気持ちです。北朝鮮に渡った久米さんは簡単に日本へ戻れない事はわかっています。それを思うとたまらない気持です。自分は北朝鮮の指示通りやっただけです。今となっては責任の重大さを思います。金世鎬が心から憎い。彼は私に『緊急に日本の戸籍が必要なのだ。あとのことは我々を信じなさい』と言った」と犯行を自供した[1]

2003年平成15年)1月9日警視庁公安部石川県警察は(国外移送目的略取)と(国外移送)の容疑で金世鎬の逮捕状をとり、国際刑事警察機構(ICPO)を通して国際指名手配を行った[1]。日本政府も北朝鮮に対し所在の確認と身柄の引き渡しを要求している[1]2006年(平成18年)の日朝包括並行協議では、北朝鮮は、金世鎬について「かかる人物は承知していない」としつつ、日本側からの関連情報提供を前提に、同人特定のための調査を行う旨を回答している[1]

金世鎬は「宮本明」(みやもとあきら)の偽名を用い、北朝鮮の貿易会社員の肩書を名乗って日本に潜入、一連の犯行に及んだ疑いがもたれている[注釈 3]

脚注

[脚注の使い方]

注釈

  1. ^ 「45歳から50歳くらい」という年齢の指定は原敕晁のケース(辛光洙事件)と同じである。このことについて西岡力は、朝鮮人が日本人を拉致してその当人になりすますという手口を用いるには、植民地時代の日本語教育を受けた世代の工作員でなければ困難であり、だから、1980年の時点で45歳から50歳くらいの人間を拉致せよという指令が出されるのだと推定している(1959年以降に帰国事業で北朝鮮に帰国した在日朝鮮人は日本で逃亡する危険があるので、不適格であるという)[3]。若い工作員に持たせるパスポートは、偽造パスポートを用いるが、これにはかなりの資金と技術が必要であり、大韓航空機爆破事件の実行犯金賢姫が持っていたような精巧な偽造パスポートをつくるには多額の資金が必要で、国家ぐるみでなければ難しいという[3]
  2. ^ 新潟市で当時中学1年生だった横田めぐみが拉致された約2カ月前である。
  3. ^ 同じく「宮本明」の偽名を使った人物に、工作員の(李京雨)(リ・ギンウ)がいる。

出典

  1. ^ a b c d e f g “久米裕さん拉致実行犯に対する刑事告発”. 救う会・福岡. 2021年9月5日閲覧。
  2. ^ a b 荒木(2005)pp.182-183
  3. ^ a b c 西岡(1997)pp.12-13

参考文献 

  • 荒木和博『拉致 異常な国家の本質』勉誠出版、2005年2月。ISBN (4-585-05322-0)。 
  • 西岡力『コリア・タブーを解く』亜紀書房、1997年2月。ISBN (4-7505-9703-1)。 

関連項目

外部リンク

  • 北朝鮮による拉致容疑事案について - 国際手配被疑者一覧(警察庁)
  • 北朝鮮による拉致容疑事案:警視庁
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