『野のなななのか』(ののなななのか)は、2014年の日本のドラマ映画である。監督は大林宣彦、主演は品川徹と常盤貴子が務めている[1]。『この空の花 長岡花火物語』の姉妹編にあたる[2]。タイトルの「なななのか」は四十九日を指す[2]。舞台は北海道芦別市。
あらすじ
北海道芦別市、95歳で亡くなった一人の男。葬儀のため、久しぶりに親族たちが芦別に集まる。なななのか=四十九日までの間、中原中也の詩を織り交ぜながら、過去と現在、生者と死者とが複雑に入り混じる中、男の青春時代と初恋、そして敗戦後の樺太での凄絶な体験が浮かび上がる。
キャスト
鈴木家とその関係者
- 鈴木冬樹
- 演 - 村田雄浩
- 光男の孫。光男の長男(故人)の長男。札幌在住。
- 冬樹の妻
- 演 - 宗方美樹
- 鈴木春彦
- 演 - 松重豊
- 光男の孫で冬樹の弟。泊原発に関わる仕事をしている。
- 鈴木節子
- 演 - 柴山智加
- 春彦の妻。清水信子の秘密に気づく。
- 田中英子
- 演 - 左時枝
- 光男の妹。稚内在住。通夜にガタタンを作る。
- 英子の少女時代
- 演 - 猪股南
- 鈴木カンナ
- 演 - 寺島咲
- 光男と同居していた光男の孫。光男の次男(故人)の長女。芦別総合病院の看護師。
- カンナの少女時代
- 演 - 野口愛里彩・斎藤朋香
光男の関係者
- 清水信子
- 演 - 常盤貴子
- 光男の葬儀に現れる謎の女。
- 若杉稔
- 演 - 相澤一成
- 芦別総合病院の内科医。光男と交流があった。
- 中西安志
- 演 - 小磯勝弥
- 芦別総合病院の勤務医。光男と交流があった。「ヤックン」と呼ばれている。
- 大野國朗
- 演 - 伊藤孝雄
- 光男の盟友。絵画に傾倒していた。
- 大野の青年時代
- 演 - 細山田隆人
芦別の人々
- 井上弘樹
- 演 - 大久保運
- 冬樹の高校の同級生で寺の住職。
- 井上百合子
- 演 - 斉藤とも子
- 弘樹の妻。冬樹の高校の同窓生。
- 井上靖子
- 演 - 野口実結希
- 弘樹と百合子の娘。
- どりこの饅頭のおばさん
- 演 - 根岸季衣
- 芦別駅で土産菓子の立ち売りをしている。相馬市出身。
- 芦別駅の駅員
- 演 - 大西俊夫
- 患者
- 演 - 大丘稔
- 光男と節煙について話す。
- 喫茶店店主
- 演 - 西正伸之
- 初七日法要の老婆
- 演 - 斉藤和子
- 初七日法要の老人
- 演 - 滝沢修、長谷川等、木村功、上野正志、畠山直隆、中鉢明
- いたずら小僧
- 演 - 宗像輝嗣、中居圭威、藤岡大地、蝦名真也、平島怜樹、後藤美琴、宮越優衣、竹内渉
そのほか
製作経緯
製作費のうちおよそ8割が芦別市民の寄付による、いわば市民自主制作映画。原作もこの企画のための書き下ろしである。1993年から20年にわたって開催された「芦別映画学校」の集大成として製作された。これは、芦別市民有志主催の年一回の映画イベントで、大林宣彦が「校長」をつとめていた。作品の冒頭で、このイベントの発案者であり、大林宣彦を招聘した人物でもある芦別市職員・鈴木評詞(1997年没)への献辞がある。
上映
2014年1月31日、本作の完成披露試写会が行われた[3]。3月2日、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭のクロージング作品として上映された[4]。5月10日に北海道で先行公開[5]、5月17日に全国公開された[6]。
評価
中山治美は、「日本に不穏な空気が流れる今、大林監督はあえて自主映画でメッセージ性の強い作品を世に放つ。その覚悟と迷いのなさが力強い映像と言葉になって、観る者を圧倒する」と述べて、本作に5点満点の5点を与えた[7]。古賀重樹は、「戦争体験の風化が進む現代の日本人に対する危機意識」が本作の根底にある、と指摘した[8]。佐野亨は「近年の日本映画のなかでも最も独創的かつ刺激的な傑作」と評した[9]。五十嵐太郎は、本作での常盤貴子と安達祐実を評価した[10]。
第6回TAMA映画賞にて、最優秀作品賞を受賞した[11]。第29回高崎映画祭では、最優秀作品賞と特別大賞を受賞したほか[12]、常盤貴子が最優秀主演女優賞を受賞した[12]。第88回キネマ旬報ベストテンにて、日本映画の第4位に選ばれた[13]。第24回日本映画プロフェッショナル大賞では、ベストテンの第5位に選ばれたほか[14]、品川徹が本作での演技および長年の俳優活動により特別賞を受賞した[14]。
脚注
- ^ “32歳・安達祐実が16歳の少女役!”. シネマトゥデイ (2014年1月31日). 2016年10月6日閲覧。
- ^ a b “大林宣彦監督、生まれ変わっても「映画を撮りたい」”. 映画.com (2016年2月13日). 2016年10月6日閲覧。
- ^ “常盤貴子、念願の大林宣彦組初参加に「夢がかないました!」”. 映画.com (2014年1月31日). 2016年10月6日閲覧。
- ^ “常盤貴子、市民参加の映画作りに感謝! ゆうばり映画祭に初登場!”. シネマトゥデイ (2014年3月3日). 2016年10月6日閲覧。
- ^ “大林宣彦の新作は『この空の花』の姉妹編『野のなななのか』、パスカルズが音楽&出演”. CINRA.NET (2014年4月15日). 2016年10月6日閲覧。
- ^ “大林宣彦監督「野のなななのか」 舞台は北海道、配給は大分の会社 (1/2)”. 産経ニュース (2014年5月16日). 2016年10月6日閲覧。
- ^ 中山治美 (2014年5月13日). “『野のなななのか』反戦の覚悟が力強い映像に”. 福井新聞. 2016年10月6日閲覧。
- ^ 古賀重樹 (2014年12月26日). “映画回顧2014 “炭鉱のカナリア”の監督たち 危うい時代の空気を察知 (1/3)”. NIKKEI STYLE. 2017年6月15日閲覧。
- ^ 佐野亨 (2014年5月13日). “野のなななのか”. 映画.com. 2017年6月15日閲覧。
- ^ 五十嵐太郎 (2014年6月14日). “野のなななのか”. artscape. 2016年10月6日閲覧。
- ^ “能年玲奈、妻夫木聡、菅田将暉ら豪華俳優陣が受賞「TAMA映画賞」”. モデルプレス (2014年11月22日). 2016年10月6日閲覧。
- ^ a b “『野のなななのか・大林監督』が抜き出た力作 - 第29回高崎映画祭受賞者を発表”. 高崎新聞 (2015年1月20日). 2016年10月6日閲覧。
- ^ “「そこのみにて光輝く」が邦画1位 キネマ旬報ベストテン”. 日本経済新聞 (2015年1月8日). 2016年10月6日閲覧。
- ^ a b “日プロ大賞授賞式、邦画を盛り上げる豪華な顔ぶれが続々登壇で大盛況”. 映画ナタリー (2015年5月10日). 2016年10月6日閲覧。