辻野久憲

辻野 久憲（つじの ひさのり、1909年5月28日 - 1937年9月9日）は、日本の翻訳家、評論家。

京都府舞鶴市生まれ。第三高等学校から(東京帝国大学)仏蘭西文学科卒。『詩・現実』に参加し、1930－1931年に伊藤整・永松定とジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』を翻訳、第一書房『セルパン』編集長、第二次『四季』同人。その他、『詩と詩論』、『コギト』、『創造』などの雑誌に小論や随筆を寄稿する。出生後の実家のある兵庫県川辺郡伊丹町（現・伊丹市）に滞在していた最中に胸膜炎を発症し、緊急入院となったが、何度か転院した後病状が悪化し、死去した。28歳没。生前に交流のあった学者や文人から、その早すぎる死を悔やむ文章が多数発表された^[1][2]。

生涯

1909年、舞鶴憲兵分隊内の官舎で誕生。1916年、台湾の台中尋常高等小学校尋常科入学。基隆小学校、神戸小学校、伊丹小学校、伊丹中学校を経て、1929年、第三高等学校文科丙類を卒業。1932年、東京帝国大学仏蘭西文学科卒業。同年、書肆第一書房に就職。1934年、同社を退職。1937年、カトリックの洗礼を受ける。洗礼名はヨハネ^[3]。

翻訳

• ジョイス著 『ユリシイズ』 伊藤整・永松定共訳、第一書房、1931年 - 1934年
• 「アミンタス」（『ジイド全集 第2巻』）山崎栄治共訳、金星堂、1934年
• 「地の糧ひ」（『ジイド全集 第3巻』）金星堂、1934年
• ポール・ヴァレリー著『詩の本質』椎の木社、1934年
• モオリアック著 『ペルエイル家の人々』作品社、1935年
• 「背徳者」（『ジイド全集 第4巻』）金星堂、1935年
• ジアツク・リヴイエール著 『ランボオ』 山本書店、1936年
• モオリアック著 『イエス伝』 野田書房、1937年 のち角川文庫
• モーリアック著 『癩者への接吻・母』角川文庫、1953年

参考文献

• 『日本近代文学大事典』
• 『伊藤整年譜』（全集24巻）

関連項目

• 堀辰雄 - 辻野の死後、「辻野久憲君」という文を『四季』に寄せている^[4]

脚注

1. ^ 堀辰雄 辻野久憲君
2. ^ 神西清 きれぎれの追憶 - どちらも青空文庫より。
3. ^ 三好達治「故辻野久憲君略歴」『四季』1937年11月号所収
4. ^ 堀辰雄 辻野久憲君（青空文庫）2013年8月24日閲覧。