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色覚異常

色覚異常(しきかくいじょう)とは、ヒト色覚が正常色覚ではない事を示す診断名である。

概要

色盲」(しきもう)「色覚特性」(しきかくとくせい)などとも呼ばれる。2017年には日本遺伝学会が、ヒトが持つ多様な色覚に着目した「色覚多様性」という概念を提唱し、「色の見え方はひとによって多様であり、color blindnessは色覚多様性のひとつである」とした[1][2]。一方、正常色覚とされる範囲は、眼科学によって定義される。要因が先天性である場合を先天性色覚異常、後天性である場合を後天性色覚異常と分類する。先天性色覚異常を持つ人は、日本においては男性で約5%[3]、女性で約0.2%[4]の割合であるが[5]フランス北欧では男性で約10%、女性で約0.4%[4]であり、アフリカ系の人では2 - 4%程度である[6]

分類

先天色覚異常

 
人間の錐体細胞(S、M、L)と桿体細胞(R)が含む視物質の吸収スペクトル

1色覚

錐体細胞をまったく持たない場合、およびS・M・Lのいずれかひとつしか錐体細胞を持たない場合に発生する。発症は数万人に1人と少ない。

まったく錐体細胞を持たない場合は、本来暗い光を感知する桿体細胞にのみ視覚を頼る形になる。暗いところでは(正常色覚者)でも色がわからなくなるほか、細かい形状がわからなくなる(視力が低下する)が、錐体細胞がまったくない場合は、明るい環境でもこの状態になる。つまり、色がまったく識別できないほか、弱視などの症状がある。視力は0.1程度。近視などと違い網膜の問題であるため、眼鏡では色覚も視力も改善しない。また、明るすぎる環境では桿体細胞が正常に働かず、さらに視力が低下する。これに対してはサングラスや遮光眼鏡で対処する。

S錐体のみを持つ場合、もともとS錐体自体の数がM錐体・L錐体に比して非常に少ない(約10分の1)ため、まったく錐体を持たない場合とあまり変わらない症状になる。視力は0.3程度。

M錐体またはL錐体のみを持つ場合は色の識別はできなくとも視力はいいが、きわめてまれである。

ミクロネシア連邦ピンゲラップ島は、12人に1人を1色覚者(錐体を持たない)が占める島である。これは、1775年頃に島を襲ったレンキエキ台風によって人口が20数人にまで減ってしまい、その生き残りに1色覚者がいたため、孤立した環境で近親婚を繰り返した結果、1色覚者の割合が高くなったものである。1色覚者は暗い場所で微妙な明かりを見分けることができるとされている。このため、ピンゲラップ島において1色覚者の人々の多くは、(夜釣り)の漁師として働いている[7]

赤緑色覚異常

先天色覚異常の中でもっとも多く存在し、赤系統や緑系統の色の弁別に困難が生じる人が多いとされる。色の弁別に困難が生じるだけで、視力は正常である。日本人では男性の約5%、女性の0.2%が先天赤緑色覚異常で[8]、日本全体では約290万人が存在する。北欧にルーツを持つ男性では約8%、女性では約0.4%で先天赤緑色覚異常がみられる[9]

脊椎動物の色覚は、網膜の中にどのタイプの錐体細胞を持つかによって決まる。魚類両生類爬虫類鳥類には4タイプの錐体細胞(4色型色覚)を持つものが多い。よってこれらの生物は、長波長域から短波長域である近紫外線までを認識できるものと考えられている。一方、ほとんどの哺乳類は錐体細胞を2タイプ(2色型色覚)しか持たない。哺乳類の祖先である爬虫類は4タイプすべての錐体細胞を持っていたが、2億2500万年前には、最初の哺乳類と言われるアデロバシレウスが生息し始め、初期の哺乳類はおもに夜行性であったため、色覚は生存に必須ではなかった。結果、4タイプのうち2タイプの錐体細胞を失い、青を中心に感知するS錐体と赤を中心に感知するL錐体の2錐体のみを保有するに至った。これは赤と緑を十分に区別できない、いわゆる「赤緑色盲」の状態である。この色覚が哺乳類の子孫に遺伝的に受け継がれることとなった[10]

ヒトを含む旧世界の霊長類(狭鼻下目)の祖先は、約3000万年前、X染色体にL錐体から変異した緑を中心に感知する新たなタイプの錐体(M錐体)視物質の遺伝子が出現し、ヘテロ接合体の2本のX染色体を持つメスのみが3色型色覚を有するようになり、さらにヘテロ接合体のメスにおいて相同組換えによる遺伝子重複の変異が起こり、同一のX染色体上に2タイプの錐体視物質の遺伝子が保持されることとなり、X染色体を1本しか持たないオスも3色型色覚を有するようになった。これによって、第3の錐体細胞が「再生」された。3色型色覚は果実等の発見に有利だったと考えられる[10][11]

時代を下ってヒトの色覚の研究成果により、ヒトが属する狭鼻下目のマカクザルに色盲がヒトよりも非常に少ないことを考慮すると、ヒトの祖先が狩猟生活をするようになり3色型色覚の優位性が低くなり、2色型色覚の淘汰圧が下がったと考えられる[10]。色盲の出現頻度は狭鼻下目のカニクイザルで0.4%、チンパンジーで1.7%である[11]。新世界ザル(広鼻下目)はヘテロ接合体のX染色体を2本持つメスのみが3色型色覚を有し、オスはすべて色盲である。これは狭鼻下目のようなX染色体上での相同組換えによる遺伝子重複の変異を起こさなかったためである[11]。ヒトは上記のような霊長目狭鼻下目の祖先のX染色体の遺伝子変異を受け継いでいるため、M錐体を欠損したX染色体に関連する赤緑色盲が伴性劣性遺伝をする。男性ではX染色体の赤緑色盲の遺伝子を受け継いでいると色盲が発現し、女性では2本のX染色体とも赤緑色盲の遺伝子を受け継いでいる場合に色盲が発現する[12]

青黄色覚異常

錐体神経のうち、青錐体(S錐体)系の異常(第3色覚異常)により発生する。先天的な青黄色覚異常は非常にまれである。正常色覚者でも青錐体の数は少なく、そこからの情報は補助的にしか利用していない[注 1]ため、生活上の不便はまったくといっていいほどなく、本人も周囲の者も気づかないことがほとんどである。学校でかつて全員に行われていた色覚検査でも赤緑色覚異常の検出に主眼を置いていたため、発見される機会も少なかった。

強度の青黄色覚異常の場合、かすかに緑がかった黄色と青紫色が中性点(無彩色に見える点)となる。しかし、赤緑色覚異常での中性点[注 2]が、日常的に同明度で区別を要する状況が頻出するのに対し、黄色と青紫が同明度で使われることはまずあり得ない[注 3]。また、緑と青の区別も難しいが、正常者でも青と緑は区別しない傾向にあるため、周囲の者も気づかないというだけである。逆に赤緑色覚異常の者にとっては、青と緑はまったく違う色に見え、正常者が区別しない傾向にあることを不思議に感じることが多い。逆に言えば、「正常色覚」は青と緑の判別力が相対的に弱いといえる。また、青黄色覚異常の人は、赤から緑にかけての色の識別は問題ないものの、緑から青にかけての色の識別は正常色覚よりも劣る。「青」錐体が欠損しているため波長410nm前後の光を吸収できず、厳密には紫みを帯びた青は黒く見え、黄色は白く見えるようになる。

まとめ

 
正常色覚RGBW
 
1型2色覚RGBW
 
2型2色覚RGBW
 
3型2色覚RGBW

実際の患者によるヒアリングによると、3型は絵のように青がここまで黒くなくもう少し青く見えることが最近分かった。錐体細胞の異常の有無と現れる色覚異常の関係を表にまとめると下記のとおりである。

錐体細胞の異常の有無と現れる色覚異常の関係
錐体細胞 名称 症状 発生頻度
S M L
正常色覚 正常(症状なし) 人口の大多数
× 1型色覚 赤系統 - 緑系統の色弁別に困難が生じるが、
正常色覚とほぼ同程度の弁別能を持つ者も多い
日本では男性約20人に1人
女性約500人に1人
× 2型色覚
× 3型色覚 正常色覚とほとんど変わらないが、
正常色覚と比べて全体的に色がくすんで暗く見える
日本では数万人に1人[注 4]
× × 1色覚 色は識別できないが視力は正常 日本では数万人に1人
× ×
× × 色が識別できず視力も低い
× × ×
  • 日本眼科学会が2005年に更新した色覚関連用語は以下の通りである[13]
色覚に関する眼科用語(一部)
医学用語(現行) 医学用語(2004年以前)
1色覚 全色盲
2色覚 2色型色覚
3色覚・正常色覚 正常3色型色覚・正常色覚
異常3色覚 異常3色型色覚・色弱
1型色覚 第1色覚異常
1型2色覚 第1色盲・赤色盲
1型3色覚 第1色弱・赤色弱
2型色覚 第2色覚異常
2型2色覚 第2色盲・緑色盲
2型3色覚 第2色弱・緑色弱
3型色覚 第3色覚異常
3型2色覚 第3色盲・青色盲
3型3色覚 第3色弱・青色弱

後天色覚異常

本節は未記述。注を参照のこと[注 5]

検査・評価

仮性同色表

色覚異常があると数字などが読めない指標や、色覚異常がある場合とない場合で違うものが読める指標、色覚異常者には読め、正常色覚者には読めない指標を読ませることで色覚異常を検出する。感度が高くほとんど正常に近い色覚異常でも検出できる[15]。色覚特性に対する高い検出力、検査の簡便さや準備の手軽さ、低費用などの長所があるため、色覚検査でもっともよく使われる方法のひとつであり、精密検査でほかの色覚検査法に先だって行われることも多い。

石原表が有名で世界的に用いられているほか、標準色覚検査表、東京医大表などがある。カラーセロファンなどの一般的な色フィルターをかざすことで色覚検査表を判読することができる場合がある。

アノマロスコープ

赤緑異常の評価に頻用される。緑の光と赤の光を混合すると黄色く見えるが、これを黄色の波長の光を見ながら同じく見えるように混合比を調節させるものである。赤緑異常を持っている場合、正常人に比べて混合比がどちらかに大きく偏る傾向が見られる。

パネルD-15テスト

連続した色相の15個のチップを、色が連続的に変化するように並べるものである。ある2色の区別がつきにくい場合、それ以外の色の変化のみに着目した配列にしてしまうため、色覚異常の種類・程度を判別することができる。

航空業界や船舶業界では石原表と合わせて検査に使われている(後述)。

症状

かつて色盲(しきもう)と呼ばれた[注 6]ことから、「白黒に見える」ような誤解があるが、それはまれな全色盲の場合である。先天色覚異常の大多数を占める赤緑色覚異常の当事者は有彩色を感じ取っている。先天色覚異常者の色弁別能(2つ以上の色が同じか違うかを判別する能力)は、正常色覚者の色弁別能に劣る。しかし、軽度の先天色覚異常者の色弁別能は、日常生活で不便を感じる程度のものではない。

以下のような色の組み合わせの例は、正常色覚者と先天色覚異常者とで見分けやすさが異なる場合が多い。正常色覚者にとっては同系色でない色彩の組み合わせを、先天色覚異常者が同系色と認識する、あるいは色相を特定できないなどといったことが生じる場合がある。狭い面積に配色されたもの(細い線の文字など)はより判別しにくくなるなど、色彩以外の条件も影響する。なお、以下の色彩は、各々のコンピュータやディスプレイの設定・特性に影響されるため、参考程度にとらえるべきである。また、これらは先天色覚異常の説明のためのものであり、色覚異常の判定に用いることは不適切である。大雑把に言えば、明度が近い場合に、赤っぽさと緑っぽさを混同しているように見える。

淡赤と淡緑
淡赤と淡灰
淡緑と淡灰
淡青紫と淡青灰
淡青緑と淡青灰
淡青紫と淡青緑
赤味青と緑味青
青紫と暗青
赤味黄と緑味黄
黄赤と黄緑
暗黄と暗緑
暗赤と暗緑(重度の場合)
赤黒と黒(1型色覚の場合)
赤と暗橙(1型色覚の場合)
緑黒と黒(2型色覚の場合)
青緑と灰(2型色覚の場合)

社会生活

「一部の色が区別しづらいだけで日常生活にはほとんど影響がない」と言われるが、信号の色の判別が難しい、肉の焼け具合がわからない、顔色が分からない[注 7])など、非当事者に知られていない部分も多い。また、「色盲」「異常」などの言葉の語感ゆえ誤解・理解不足による偏見を招き、社会生活の多くの面で制限を受ける場合が多い。

強制検査

日本の小学校では、全児童を対象に石原表を用いた色盲検査が行われていた。1994年以降は4年次における1回だけになった。のちに文部科学省は「色覚異常についての知見の蓄積により、色覚検査において異常と判別される者であっても、大半は支障なく学校生活を送ることが可能であることが明らかになってきていること、これまで、色覚異常を有する児童生徒への配慮を指導してきていること」を理由として、2003年(平成15年)度より色覚検査を定期健康診断の必須項目から削除した[16]

学校内で必要に応じて色覚検査を行うことについては、日本学校保健会は「学習指導や進路指導に際して、色覚異常の児童生徒を配慮するために、検査の実施を必要とする考えから」、色覚検査の任意実施を認める姿勢にある。また日本眼科医会は、2013年の調査で色覚異常の子どもの半数が異常に気づかぬまま進学・就職時期を迎え、その6人に1人が進路の断念などのトラブルを経験していることが分かった[16][17]ことから、希望者には小学校低学年と中学1・2年で検査を実施するのが望ましいと訴えている[18]。平成26年、文部科学省は学校保健安全法施行規則を一部改正し、事前の同意を得たうえでの個別の検査・指導などの働きかけを適切に行い、保護者などに色覚に関する周知を積極的に行うように通知した[19]。この通知は「学校での色覚検査の取り組みを積極的に進めるように」との趣旨と解釈され、学校では平成28年度から児童生徒に「色覚希望調査票」を配布し、希望者に色覚検査を実施することになった[20]

雇用者については、労働安全衛生法で義務づけられた雇い入れ時健康診断の必須項目の中に色覚検査が加えられており、実際に行われることは少なかった[要出典]ものの、法的には新規採用社員は色覚検査を受ける必要があった。この義務は、採用を制限しないよう指導する目的で2001年に[17]廃止された。

大学への入学制限

以前は多くの大学が入学制限を課しており[21]、中には、医師免許の取得には昔から色覚による制限がなかったにもかかわらず、入学者選考時に色覚制限を課す大学が多く存在した。1993年以降、ほぼすべての国立大学で色覚による制限はなくなり、私立大学もそれに準じている。

会社への就職制限

上述のとおり、雇い入れ時健康診断における色覚検査は廃止されたが、これは雇用者が任意に検査を実施することを禁ずるものではなく、企業によっては制限を課しているところもある。

厚生労働省は、

  • 色覚検査は現場における職務遂行能力を反映するものではないことに十分注意すること。
  • 各事業場で用いられている色の判別が可能か否かを確認するだけで十分であること。
  • 「色覚異常は不可」などの求人条件をつけるのではなく、色を使う仕事の内容を詳細に記述すること。
  • 採用選考時の色覚検査を含む健康診断については、職務内容との関連でその必要性を慎重に検討し、就職差別につながらないよう注意すること。
  • 各事業場内において「色」の表示のみにより安全確保等を図っているものについては、文字との併用などにより、誰もが識別しやすい表示方法に配慮すること。

という指導を行っている。しかし実情としては、同じ業種であっても色覚制限の有無は企業によってまちまちである。

職種の制限

日本では偏見が薄れ、少しずつ改善傾向にある。学校の健康診断で色覚検査は2003年に行われなくなったが、これ以降の世代は自身の色覚について知る機会がなく、色覚に制限がある職種の採用試験で発覚するという事態も起きている[22]

日本眼科医会では、鉄道運転士(後述)、染色業、塗装業、滴定実験を伴う業務、色調整・色校正が伴う業務については異常3色覚であっても就業が困難とし、パイロットや鉄道・航空関係の整備士、商業デザイナー、警察官、看護師、獣医師、カメラマン、食品の鮮度を確認する作業が伴う業務、美容・服飾関係の業務については2色覚での就業が困難としている。また、医師や薬剤師、理容師、電気工事士、教師などについては本人の努力が必要としている。このため、日本眼科医会は進路選択前に色覚検査を受診することを推奨している[23]

絵画など色を使う芸術分野への就業は不可能ではないが色の判別ができないことは足かせとなるため、安藤正基のように白黒で済む漫画家を目指す者もいる[注 8]。また石ノ森章太郎は『マンガ家入門』において「色が判別できなければ(アシスタントなどの)他人に塗ってもらえばいい」としている。

運転免許については信号機の色が弁別しづらいために取得できないという誤解があるが、普通自動車免許については赤、黄、青の3色を弁別できれば取得できる[25]。運転免許が取得できるにもかかわらず、バスの運転手では採用をしないケースもあったが、色覚補正レンズの使用を認める例もある[26]

船舶は舷側灯として左舷側には紅灯、右舷側には緑灯の装備が法定(海上衝突予防法21条2項)されており「赤緑色盲」は致命的であるが、海技士パネルD15テストで正常とみなされれば受験可能である。また水先法施行規則によれば、水先人になるためには色盲または強度の色弱でないことが求められる。2004年からは、小型船舶操縦士は強度異常であっても夜間に舷側灯の色が識別できれば免許を取得できるようになった。

動力車操縦者(鉄道の運転士)免許試験では色覚に異常のある者の受験を認めていない。根拠法は、国土交通省が定める、『動力車操縦者運転免許に関する省令』による。また運転士以外の運転業務に就く際にも色覚が正常である必要がある。なお鉄道会社では、運転業務に就く可能性がない非常勤採用などの場合を除き、採用時に色覚検査を行っており、色覚に異常のある者は鉄道会社への就職はできない場合が多い[17]

航空機の位置灯は左翼端が赤灯、右翼端が緑灯、上下が赤色の閃光灯であるため、船舶と同じく「赤緑色盲」は致命的であり、操縦士は石原表で正常範囲と認められない場合は不適合となるが、パネルD15テストの検査と眼科の専門医の判断により適合となることもある[27]航空管制官採用試験では、色覚に異常のある者は不合格となる[28]。航空業界では法的に定めがなくとも航空整備士や地上支援業務を行うグランドハンドリングなど、航空機に接近する職種での採用は厳しくなっている。

自衛隊では航空機関係と潜水艦乗組員には特に厳しい色覚制限があるが、その他の職種についてはパネルD15テストの結果が正常であれば入隊可とされている。これは、防衛医科大学校の医官が実際に自衛官の各業務の内容を実地に精査し、色覚異常の隊員等の勤務成績も勘案した結果出された判断であって、その後10年間の追跡調査でも、色覚異常の有無による勤務成績の差は見られていない。

毒物及び劇物取締法によれば、色盲の者には特定毒物研究者の許可を与えないことができる。

警察官採用試験は自治体により異なっていたが、最後まで残っていた沖縄県が2011年6月に制限を廃した。

徴兵検査

徴兵検査では多くの国で詳細な色覚の検査が行われてきた歴史があり、日本では石原表が官民で広く用いられていた。男性約22人に1人いる2型色覚の場合には兵科色の中に区別できない物が何種類か存在することになり、軍務を行う上で重大な欠陥として扱われてきた。このため2型色覚は兵役免除の対象になった。たとえば、2型色覚の混同色である橙色と黄緑色はドイツ軍では前者が憲兵、後者が装甲擲弾兵部隊を表していた。

徴兵制が世界的に行われていた時代には身体的欠陥による徴兵不適格者は社会的にあらゆる場面で差別を受けたため、色覚異常は過剰に障害として問題視されたが、現代では兵科色自体があまり使われなくなったことや、誤認を防ぐ色分け方法の発達などによりそれほど問題とされなくなった。

対応

デザイン・ウェブサイト

デザインの分野では、色覚異常者に重要な表示が読みづらくなる可能性を考慮して、特定の色遣いを避けることが推奨されている。ウェブサイト設計においては、前景色と背景色の色差、明度差を一定以上にするようW3Cがガイドラインを示している。

  • 赤(R)、緑(G)、青(B)の明るさをそれぞれ0 - 255の256段階で表す
    明度差
    表示された際の明るさの差を表す
    • 明度差は(R×299 + G×587 + B×114 )/ 1000 で計算する
    • 明度差は125以上が望ましい
    色差
    表示された際の色相の差を表す
    • 色差は、RGBそれぞれの前景色と背景色の差を取り、合計したもの
    • 色差は500以上が望ましい

これらの対応を行うことにより、色覚異常があっても読みやすい表示ができるという説がある。加えて、白黒表示環境など多様な環境からのアクセシビリティを確保できることにもつながると考えられ、バリアフリーの範疇に含まれる手法とみなすことが可能となる場合がある。

交通信号機

 
2012年2月、東京都・芝郵便局前交差点に試験設置された信号機。赤信号にピンク色で×印を表示している。

交通信号機ではLED化の影響で色覚異常の人が以前より色の判別をしにくくなったとされるが、赤信号に特殊なLEDで×印を表示することで、色覚異常の人が赤と黄信号を判別しやすいように配慮されたユニバーサルデザインの信号機が開発されている[29][30]

電子機器

状態を表示するために2色LEDを使用している電子機器において、その多くが赤と緑の組み合わせであるため、色覚異常でもっとも多い赤緑色覚異常の人には状態を判別できない問題がある。その後、青色LEDの実用化に伴い、青とアンバーや青と赤の組み合わせの2色LEDも製品化されている[31][32]

治療

日本においては、鍼灸などの治療家や医療研究家による、先天色覚異常は治療可能であるという主張があり[33]、その主張を支持する医師、研究者、当事者らもごく一部に存在する。しかし、眼科学において先天色覚異常が治療されたとみなされる例は、現在のところ報告されていない。

一方で、対処療法ではあるがサングラス型の色覚補正メガネが2012年からEnChromaより販売された。アマゾンからも各種の色覚補正メガネが発売された。 だが、色覚補正メガネはあくまでも色のコントラストの認識が向上するのみであり原理的には狩猟用メガネと同等の働きしか持っておらず 健常者が認識している色を実際に見えるようになるわけではない。

脚注

[脚注の使い方]

注釈

  1. ^ 赤や緑に比べていい加減な再現でも、人間の眼には違いがわかりにくいため、画像圧縮でも青色情報には少ない情報量しか割り当てられない。
  2. ^ 大雑把に赤と緑だが、厳密には第1色覚と第2色覚で微妙に異なる。
  3. ^ 同明度の黄色と青紫は、一般的にいう黄土色と藤色の関係であり、普通の黄色と青紫では白と黒ほど明度が違って見えるため区別できないことは事実上ない。
  4. ^ ほとんどの場合、後天色覚異常が多い。
  5. ^ 事例として、第四次視覚野に銃弾を撃ち込まれてその部位だけ壊されてしまった人は、色の判別ができなくなり、視界が白黒に映るようになった(全色盲の例でもある)。銃弾が速く鋭利に発展したため、脳の一部のみを破壊する例が増え、こうした症例も確認されるようになったとされる[14]
  6. ^ 先述「医学用語(2004年以前)」表にもある通り。
  7. ^ すべての色覚異常者がこれらに該当するわけではない。
  8. ^ 実際には色塗り作業は多い[24]

出典

  1. ^ 日本遺伝学会 監修『改訂 遺伝単』、NTS、2021年3月15日 第1版 第1刷、P15
  2. ^ 森圭吾 (2017年11月16日). “色覚「異常」ではなく「多様性」である【時流◆遺伝学用語改訂】”. m3.com. エムスリー. 2021年10月20日閲覧。
  3. ^ 小澤瀞司・福田康一郎 監修『標準生理学 第8版』、医学書院、2015年8月1日 第8版 第2刷、P290
  4. ^ a b KIM E. BARRETT ほか原著改訂、岡田泰伸 監訳『ギャノング生理学 原著23版 』丸善株式会社、平成23年1月31日 発行、P233、節『クリニカルボックス 12-6 色覚異常』
  5. ^ “ゲーム「ぷよぷよ」も対応、「色弱」の人が抱える困難”. 日刊スポーツ (2022年2月17日). 2022年2月17日閲覧。
  6. ^ カラーバリアフリー「色使いのガイドライン」 (PDF) - 国立遺伝学研究所(平成17年4月)
  7. ^ オリヴァー・サックス『色のない島へ』,(The Island of the Colorblind 1996年、(ISBN 4-15-050237-4))早川書房,第1部「ピンゲラップ島」77頁
  8. ^ 日本眼科学会:目の病気 先天色覚異常
  9. ^ Chan, Xin; Goh, Shi; Tan, Ngiap (2014). “Subjects with colour vision deficiency in the community: what do primary care physicians need to know?”. Asia Pacific Family Medicine 13 (1): 10. doi:10.1186/s12930-014-0010-3. 
  10. ^ a b c 岡部正隆、伊藤啓「なぜ赤オプシン遺伝子と緑オプシン遺伝子が並んで配置しているのか」『細胞工学』第21巻第7号、2002年7月。 
  11. ^ a b c 三上章允 (2004年9月18日). “霊長類の色覚と進化” (PDF). 公開講座「遺伝子から社会まで」. 京都大学霊長類研究所. 2013年9月20日閲覧。
  12. ^ 岡部正隆、伊藤啓「女性で赤緑色盲が少ない理由」『細胞工学』第21巻第7号、2002年7月。 
  13. ^ 市川一夫 (2007年9月6日). “色覚関連用語について”. 日本医学会医学用語辞典. 日本医学会. 2013年9月20日閲覧。
  14. ^ 池谷裕二『進化しすぎた脳 中高生と語る[大脳生理学]の最前線』講談社、2007年、(ISBN 978-4-06-257538-6)、p.58より。
  15. ^ 田辺詔子、深見嘉一郎、市川一夫 ほか、眼科的検診のための仮性同色表 『臨床眼科』 47巻5号 (1993年5月), doi:10.11477/mf.1410908623
  16. ^ a b “色覚異常の中高生、半数気づかず進学・就職”. 読売新聞. (2012年9月19日). http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20130919-OYT1T01158.htm []
  17. ^ a b c “色覚異常、半数気づかず 検査中止10年、進路断念も”. 朝日新聞デジタル. (2013年9月19日). http://www.asahi.com/national/update/0919/TKY201309180649.html []
  18. ^ “小4での色覚検査、中止から10年 異常知らず進路選択、トラブルも”. MSN産経ニュース: p. 2. (2013年9月30日). http://sankei.jp.msn.com/life/news/130930/bdy13093008200000-n2.htm []
  19. ^ 学校保健安全法施行規則の一部改正等について(通知)[] 文部科学省 26文科ス第96号 平成26年4月30日
  20. ^ 学校における色覚検査に関する見解 日本眼科学会 平成27年9月11日 (PDF)
  21. ^ 高柳泰世, 宮尾克, 色覚異常者のよりよい色彩環境を考える」『人間工学』 1998年 34巻 Supplement号 p.256-257, 日本人間工学会, doi:10.5100/jje.34.Supplement_256。
  22. ^ News Up タヌキの色は緑色? 知っておきたい色の見え方の多様性 - NHK[]
  23. ^ “色覚検査のすすめ” (pdf). 日本眼科医会. 2016年9月22日閲覧。
  24. ^ マンガ家 安藤正基先生[] - 名古屋造形大学
  25. ^ “学校における色覚に関する資料 (10/17)”. 日本学校保健会. 2021年1月24日閲覧。
  26. ^ 色覚バリアフリー社会への一助でありたい - NPO法人True Colors
  27. ^ よくある質問 Q&A|航空身体検査|一般財団法人 航空医学研究センター
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  31. ^ “2色LEDは色覚異常者の敵”. U'eyes Design Inc 使いやすさ日記. 2015年5月31日閲覧。
  32. ^ “2色LED製品情報”. サンケン電気. 2015年5月31日閲覧。[]
  33. ^ 新屋太九郎、少陽経と陽明経の異常と色盲治験 『日本鍼灸良導絡医学会誌』 7巻 2号 1978年 p.4-6, doi:10.17119/ryodoraku1971.7.2_4

関連項目

外部リンク

  • 先天色覚異常(日本眼科学会)
  • 遺伝性の目の病気(日本眼科医会)
  • 色のバリアフリーを理解するためのQ&A(日本学校保健会)
  • 高柳泰世, 金子隆芳, 村上元彦, 宮尾克, 「配慮の必要な色覚異常とは」『人間工学』 38巻 Supplement号 2002年 p.450-451, doi:10.5100/jje.38.Supplement_450
  • 色覚異常といわれたら - 日本眼科医会
  • 色覚の異常 - 三和化学研究所
  • 色覚テスト
  • 色覚異常について - 神奈川県医師会
  • 色覚障害者の実態の把握
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