色荷(しきか)は、強い相互作用を記述する量子色力学に関連するチャージである。 カラーチャージ(英: Color charge)、或いは単にカラー、色とも呼ばれる。 強い相互作用を受けるクォークと強い相互作用を媒介するグルーオンがカラーを持つ。1960年代にクォークの持つ自由度としてのカラーチャージの導入を同時期に(オスカー・W・グリーンバーグ)[1]、(韓茂栄)、南部陽一郎[2]、(宮本米二)、(堀尚一)が独立して提唱。
概要
クォーク間に働く強い相互作用を記述する量子色力学はゲージ群 SU(3)c に基づくヤン=ミルズ理論である。 このゲージ群の表現がカラーチャージである。
クォークは SU(3)c の3次元の基本表現であり、象徴的に光の三原色の赤、緑、青と対応付けられている。クォークの反粒子である反クォークはクォークと逆の性質をもち、それぞれの補色(反赤、反緑、反青)と対応付けられる。 もちろんこれを「カラー」と称するのは SU(3) の表現論の特徴と光の三原色の性質との連想による命名であり、現実に存在する色とは全く関係無い[3]。
電荷の場合は+と-が引き合って安定となるが、カラーは赤、緑、青の3色の混色、もしくは補色との混色で白色となったときに安定になる。クォークから構成されるハドロンは、色荷がかならず無色になっている。これをカラーの閉じ込めという。 クォーク3つで構成されるバリオンは赤、緑、青の3色の混色に、クォークと反クォークで構成されるメソンは色と補色の混色に対応している。
ハドロンの内部構造として1964年にゲルマンによってクォークモデルが提唱されたが、オメガ粒子は3つのストレンジクォークから構成され、パウリの排他原理からこの状態は存在しない。これを回避する為にクォークの新たな自由度としてカラーが導入された。 パイ中間子の崩壊の実験や、(ドレル比)を説明する為にはカラーの自由度は3となる。
脚注
- ^ O. W. Greenberg “Spin and Unitary-Spin Independence in a Paraquark Model of Baryons and Mesons” Physical Review Letters 13 (1964) 598-602
- ^ “Three-Triplet Model with Double SU(3) Symmetry”. Physical Review 139: B1006. (1965). doi:10.1103/PhysRev.139.B1006.
- ^ 現実に存在する色は、ヒトが目という器官で感知できる可視光線の波長に由来する。原色が3であるのは、ヒトの目の網膜の錐体細胞が3タイプ存在する事に由来するのであり、純粋な物理学上の法則に由来する訳ではない。なお、認識できる原色の数が3に満たない人も一定数いるほか、ヒト以外の動物に目を向けると原色の数は完全にまちまちである。
参考文献
外部リンク
- Color charge (英語) - スカラーペディア百科事典「色荷」の項目。