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由利麟太郎

由利 麟太郎(ゆり りんたろう)は、横溝正史推理小説に登場する架空の私立探偵

由利 麟太郎
初登場 『獣人』(1935年)
最後の登場 『カルメンの死』(1950年)
作者 横溝正史
詳細情報
性別 男性
職業 私立探偵
国籍 日本
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概要

由利麟太郎の初登場[注 1]について、角川文庫の『花髑髏』の解説に「昭和八年来、三津木俊助とのコンビで親しまれた由利先生」「由利先生と三津木とのコンビは(中略)八年の「憑かれた女」に登場して」とある[1]が、これは解説者・中島河太郎の錯誤である。『憑かれた女』は1946年ごろに由利麟太郎が登場する形に改稿され、1948年に発表されたものであり、1933年(昭和8年)の段階では由利麟太郎は登場しない[2][注 2]。改稿版の『憑かれた女』「由利先生登場」の章で「(由利の活躍を)読んだことがある人は」「(三津木を)知っているだろうが」と既知のキャラクターとして説明しているのはこのためである。

後年の改稿ではない由利麟太郎の初登場作品は1935年の『獣人』であるが、この作品では「由利太郎」と表記されており[注 3]、まだキャラクターが固まっていなかったものと考えられている。この作品では由利は「学生上りのまだ年若い青年」であるが、後に私立探偵になったとの記述もあり、由利が若いころに遭遇した古い事件と考えられることが多い[3][1]

キャラクター設定が固まった由利麟太郎は、1936年に『白蝋変化』と『石膏美人』(初題『妖魂』)にほぼ同時に登場しており、どちらが初出か決めがたいが[注 4]、作者自身は『石膏美人』を第1作としている[4]。『石膏美人』では由利の人物像を事件の3年前に遡って詳しく紹介しており、その意味でも初登場にふさわしい内容になっている。また、『石膏美人』では三津木俊助が由利麟太郎に3年ぶりに再会する設定となっており、『白蝋変化』で三津木が由利を訪ねる場面はそれ以降としないと辻褄が合わない。

戦前には横溝正史の捕物帖でない同時代作品における代表的な探偵役であった。戦時中に探偵小説が弾圧され、戦後に創作を再開するに際して、由利麟太郎の過去の事件という形をとった『蝶々殺人事件』と、新たな探偵役として金田一耕助を登場させた『本陣殺人事件』の2つの長編の連載を1946年に開始した[5]。そのあと金田一が探偵役として定着する結果となり、1950年の作品を最後に由利は登場しない。戦後に全く新たに執筆されて完結した由利登場作品は、『蝶々殺人事件』とその続編という性格もある『カルメンの死』、およびジュヴナイル作品『夜光怪人』の3作品のみである。

なお、同じ作者の金田一耕助シリーズは基本的に「書き手のY先生(S・Y[注 5]、成城の先生)が金田一耕助から聞かされた話」という形で書かれているが、由利・三津木ものではこの記録者がはっきりしているものが少なく、『白蝋変化』は途中で「こんな風[注 6]に書いていては際限がないから」という理由でここから三津木の口を借りて事件の顛末を語るという説明が入り[6]、『蝶々殺人事件』は「三津木が昔の事件を由利からもらった資料と自分の記憶を頼りに探偵小説の体裁でまとめた」という形になっている[7]

人物

外見は基本的に「40歳程度から50歳未満(話によって若干違う)の顔つきなのに髪だけ(60から70歳以上のように)真っ白だ」という主旨の説明がされている。

生年は『薔薇と鬱金香』の冒頭で「まだ四十五歳になったばかり」と地の文にあり、この話が1937年(昭和12年)の話であることが少し後でわかる[注 7]ので、逆算すると1892年(明治25年)生まれになる。

嗜好などについては、初期作品では葉巻を吸う場面が何度かあったが、『蝶々殺人事件』以後はパイプたばこを愛用していることになり、『仮面劇場』など後で再編されたものではこの関係で葉巻がパイプに差し替えられている[8]。ジュヴナイルものでも最初の『幽霊鉄仮面』(1937)と最後の『夜光怪人』(1949)ではいずれも登場直後に喫煙場面があるが、前者は葉巻、後者はパイプである[注 8]

戦前は麹町三丁目の外濠に面した所に探偵事務所を構えていたが、戦争中はこれを人に預けて自身は戦火を逃れるため国立に引っ越し、戦後焼け出された三津木俊助に事務所を貸していた[9]。その後(戦後復興が進んだ頃[注 9])、事務所を閉鎖してすっかり探偵業から手を引いてしまっている[10]

過去の経緯については、初期の『白蝋変化』と『石膏美人』で以下のように説明されている。

もし諸君の中に記憶のいい人があったら、数年前警視庁の捜査課に、同じ名前の課長がいて、縦横の腕を振るったことを覚えているだろう。この白髪の由利先生こそ、即ち往年の名捜査課長由利麟太郎なのである。今では野にあって、警察方面とは一切関係をたっている(『白蝋変化』の「由利先生登場」の章)。
警視庁にその人ありと知られた捜査課長であったが、突如その輝かしい地位から失脚した。庁内にわだかまっている政治的な軋轢の犠牲になったのであろうと言われている。一時は憂悶の揚句発狂したとまでいわれ、3年間行方不明になっていた。この間に「実に恐ろしい、思いもよらぬ事」を経験して見事な白髪になり、顔を見ると40歳前後の壮者に見えるのに、頭を見ると60歳以上である(『石膏美人』)。

またジュヴナイルの『幽霊鉄仮面』では『石膏美人』とはパラレル的な引退と再会を三津木としており、引退後外国に旅行に行って三津木とこれまで会ってなかったことにされている。

かつて警視庁の捜査課長として、有名なそして大探偵と言われた人だった。その後深いわけがあって、捜査課長をやめ、外国に旅行に行ったのである(『幽霊鉄仮面』の「貝殻通信」の章[注 10])。

三津木俊助

由利麟太郎の(ワトスン役)である三津木俊助(みつぎ しゅんすけ)は、由利が登場する26作(ジュヴナイル作品や未完作品を除く)のうち20作に登場する。また、由利が登場することなく三津木が単独で事件を解決するものがジュヴナイル作品以外に5作[注 11]ある。

ジュヴナイルの三津木登場作品では由利が登場しないものが圧倒的に多い。これは、1951年ごろから作風に関わらず専ら金田一耕助を探偵役とするようになったものの、ジュヴナイルに関しては1953年ごろから金田一も由利も登場させずに三津木と御子柴を中心に展開するように変わったことによる[注 12]。怪人を相手に闘うストーリー上、天才探偵の金田一より敏腕記者の三津木の方が向いているためと考えられている[11]

三津木は新日報社(『石膏美人(妖魂)』の当初版では「新報知」[12]、『深夜の魔術師』と『三行広告事件』では「東都新聞」[13]、『蜘蛛と百合』では「S新聞社」)の記者である。新聞記者という立場から事件に遭遇したり事件関係者から調査を依頼されたりすることが多く、その解決のために由利を訪ねて協力を依頼するというストーリーになっている作品も多い。一方で、まず由利が事件に遭遇し、関連する調査を三津木に依頼するという展開の作品もある(『仮面劇場』など)。

大まかな経歴は1909年(明治42年)ごろ生まれ[注 13]、その後K大学に進学し(『ビーナスの星』)、上記の新聞社に勤めるが、戦争中は空襲で家を3回も焼かれる被害に遭い、由利の麹町の事務所に身を寄せたり、由利の昔の事件を元に本を書いて生活費を稼いだりもしていた(『蝶々殺人事件』の「序曲」より)。

三津木自身の生活環境が判る記述は少ないが、戦災に遭う以前の居住地に関する情報としては、『悪魔の家』で西荻窪駅から帰宅する途中で善福寺の近くに住む事件関係者に遭遇し、『血蝙蝠』では西荻窪で降りる予定であったところを事件関係者に遭遇して吉祥寺まで乗り越していることがある。なお、K大学時代の『ビーナスの星』でも事件関係者に遭遇して吉祥寺まで乗り越しているが、降りる予定だったのは荻窪である。

『石膏美人』には三津木の婚約者・一柳瞳(いちやなぎ ひとみ)が登場するが、事件を通じて親子関係や夫婦関係に深い疑問を感じた瞳は、三津木の手を振り切って修道院に入ってしまう。また、『猫と蝋人形』には三津木の妹・矢田貝通子(やたがい みちこ)が登場する。その後の作品で三津木の家族が語られることは無かった[注 14]

なお、作者が同じ金田一耕助とは『夜光怪人』の探偵役を金田一に変更した改稿版で共演しているのみだが、三津木と同じ新日報社の「宇津木慎介」という似た名前の記者が、金田一の同郷の後輩として『女王蜂』に登場する。

御子柴進

御子柴進(みこしば すすむ)は三津木俊助が登場するジュヴナイル作品の多くに登場する少年探偵である。『夜光怪人』以降の作品は主として御子柴の視点で物語が記述されており、三津木に対する(ワトスン役)の役割も担っている。

初登場は1937年の『幽霊鉄仮面』で、最初の被害者である唐沢雷太が邸内に住まわせていた遠縁にあたる少年である。登場当初から行動的で、怪しい奴を見かけて庭に潜んでいるところを三津木に捕まり、三津木のせいで逃がしてしまったと文句を言っている。唐沢の死後は三津木と行動を共にしているが居住地は明らかでない。後半では助手として由利宅に住み込んでおり、最後には由利や三津木と共に中国の奥地へ行っている。

1949年の『夜光怪人』では、15歳の中学3年生で柔道3段の棒高跳選手として登場するが、どのような日常生活環境であったかは明らかでなく、鶯谷の先輩宅から帰宅するために上野公園を通過したと記述されているのみである。この作品では引退したつもりであった由利を熱心に説得して事件解決に乗り出させている。

1953年からの由利が登場しない作品群では、中学を卒業したあと三津木が勤める新日報社で給仕として勤務しており、「探偵小僧」という仇名で呼ばれている。『深夜の魔術師』を改稿した『真珠塔』でも、元の由利と三津木の役割を各々三津木と御子柴に置き換えたり、元の作品限りで登場した古館譲(ふるだて ゆずる)を御子柴に置き換えたりするなどの形で登場する。日常生活環境に関する描写は少ないが、『獣人魔島』では以前に芝公園近くに住んでいたと語られる。なお、『怪盗X・Y・Z』第2話「なぞの十円玉」に同居している姉が登場するが、『青髪鬼』では「きょうだいのない進」とあり、整合していない。

登場作品リスト

三津木俊助が登場するが由利麟太郎は登場しない作品も併せて列挙する。

長編

  • 白蝋変化(『講談雑誌』1936年4月号 - 12月号、1946年11月に『白蝋怪』に改題、1975年6月に元通りに再改題)
  • 真珠郎(『新青年』1936年10月号 - 1937年2月号、三津木俊助は登場せず)
  • (夜光虫)(『日の出』1936年11月号 - 1937年6月号)
  • 幻の女(『富士』1937年1月号 - 4月号)
  • 双仮面(『キング』1938年7月号 - 12月号、三津木俊助は登場せず)
  • 仮面劇場(『サンデー毎日』1938年10月 - 11月、1942年7月に『旋風劇場』に改題、1947年8月に長編化して『暗闇劇場』に改題、1970年10月に元の『仮面劇場』に改題)
  • 蝶々殺人事件(『ロック』1946年5月号 - 1947年4月号)

中短編

  • 憑かれた女(『大衆倶楽部』1933年10月号 - 12月号、1948年1月に由利麟太郎が登場する形に改稿出版)
  • 獣人(『講談雑誌』1935年9月号、三津木俊助は登場せず)
  • 石膏美人(『講談倶楽部』1936年5月増刊号 - 6月号、原題『妖魂』を1936年12月に『呪いの痣』に改題、1953年2月に再改題)
  • 蜘蛛と百合(『モダン日本』1936年7月号 - 8月号)
  • 猫と蝋人形(『キング』1936年8月号、由利麟太郎は登場せず)
  • 首吊船[注 15](『富士』1936年10月増刊号 - 11月号)
  • 薔薇と鬱金香(『週刊朝日』1936年11月)
  • 焙烙の刑(『サンデー毎日』1937年1月号[注 16]
  • 鸚鵡を飼う女(『キング』1937年4月増刊号)
  • 花髑髏(『富士』1937年6月号 - 7月号)
  • 迷路の三人(『キング』1937年8月増刊号、三津木俊助は登場せず)
  • 猿と死美人(『キング』1938年2月号、由利麟太郎は登場せず)
  • 木乃伊の花嫁(『富士』1938年2月増刊号、三津木俊助は登場せず)
  • 白蝋少年(『キング』1938年4月号、由利麟太郎は登場せず)
  • 悪魔の家(『富士』1938年5月号、由利麟太郎は登場せず)
  • 悪魔の設計図(『富士』1938年6月増刊号 - 7月号)
  • 銀色の舞踏靴(『日の出』1939年3月号)
  • 黒衣の人(『婦人倶楽部』1939年4月号)
  • 盲目の犬(『キング』1939年4月号)
  • 血蝙蝠(『現代』1939年10月号)
  • 嵐の道化師(『富士』1939年10月号)
  • 菊花大会事件(『譚海』1942年1月号、三津木俊助とほぼ同一キャラクター[注 17]の「宇津木俊介」という人物が登場、由利麟太郎は登場せず)
  • 三行広告事件(『満州良男』1943年8月号)
  • カルメンの死[注 18](『講談倶楽部』1950年1月号 - 3月号、三津木俊助は登場せず)

未完作品

  • 神の矢(『ロック』1949年2月号 - 5月号)[注 19]
  • 模造殺人事件(『スタイル読物版』1950年5月号)

由利麟太郎が登場する未発表作品

  • 死仮面された女(由利が女性よりデスマスクについて質問を受ける冒頭部のみ原稿現存[注 20]

ジュヴナイル作品

上述したように、ジュヴナイル作品には主として三津木俊助と御子柴進が登場し、由利麟太郎登場作品は少ない。

江戸川乱歩の怪人二十面相のようなレギュラー的なヴィランはいないが、白蝋仮面[注 21]のみ、三津木・御子柴のコンビと対決する作品が1952年から53年にかけて3作品(『探偵小僧』『青髪鬼』『白蝋仮面』)書かれている[15]

一般にジュヴナイル作品は掲載誌が散逸しやすい傾向があり、三津木登場作品もその例に漏れない。朝日ソノラマ版や角川文庫版でリライトの監修をしている山村正夫でさえ、1979年時点でジュヴナイル作品についての紹介で「掲載誌や発表年代に不明(?)のものがある」として、タイトルを列挙しながらもほとんどの作品の初出を確認できていない他、『幽霊鉄仮面』(1937 - 1938年連載)にいたっては1949年(昭和24年)発表の作品と誤解(1949年は初単行本化の年[16])していたほどである[17]

角川文庫収録作品

  • ビーナスの星(『少女倶楽部』1936年11月号、三津木俊助が記者ではなくK大学生として登場)
  • 幽霊鉄仮面(『新少年』1937年4月号 - 1938年3月号、由利麟太郎登場)
  • 真珠塔(『新少年』1938年8月号 - 1939年1月号、原題『深夜の魔術師』(由利麟太郎登場)[注 22]、改稿後作品(由利麟太郎は登場せず御子柴進が登場)の初出は『少年画報』1953年1月号 - 1953年12月号[18][注 23]
  • 怪盗どくろ指紋(『譚海』1940年1月号、由利麟太郎登場、原題『幽霊花火』[19]
  • 夜光怪人(『譚海』1949年5月号 - 1950年5月号、由利麟太郎登場、角川文庫などでは金田一耕助登場作品に改稿[注 24][注 25]
  • 白蝋仮面(『野球少年』1953年2月号 - 12月号[15]
  • 青髪鬼(『少年倶楽部』1953年1月号 - 12月号、原題『大宝窟』[15]
  • 獣人魔島(『冒険王』1954年9月号 - 1955年6月号)
  • 蝋面博士(『おもしろブック』1954年1月号 - 12月号、角川文庫などでは金田一耕助登場作品に改稿[注 24][注 26][20]
  • 風船魔人(『小学五年生』1956年4月号 - 1957年3月号)[注 27]
  • 黄金魔人(『おもしろブック』1957年1月号 - 8月号)[注 27]
  • まぼろしの怪人(『中一コース』1958年1月号 - 1959年3月号)
  • 姿なき怪人(『中一コース』1959年4月号 - 1960年4月号)[注 27]
  • 怪盗X・Y・Z(『中二コース』1960年5月号 - 1961年4月号)[注 27]

横溝正史探偵小説選収録作品

論創社『横溝正史探偵小説選2』 (ISBN 978-4-8460-0733-1) 『横溝正史探偵小説選3』 (ISBN 978-4-8460-0734-8) 『横溝正史探偵小説選5』 (ISBN 978-4-8460-1545-9) 所収作品

  • 孔雀扇の秘密(『少年倶楽部』1950年12月号)
  • 探偵小僧(『読売新聞』1952年12月9日 - 1953年4月24日付)小説ではなく絵物語[15]
  • 赤いチューリップ(『太陽少年』1953年2月号)
  • 魔人都市(『少年倶楽部』1954年8月号、1955年『鋼鉄魔人』に改稿)
  • 鉄仮面王(『おもしろブック』1955年1月号)
  • まほうの金貨(『幼年ブック』1956年1月号 - 12月号)
  • のろいの王冠(『幼年クラブ』1957年1月号 - 12月号)

御子柴進が登場する未完作品

  • 皇帝の燭台(『少年世界』1950年1月号 - 6月号中断、未完作品で執筆分では御子柴進のみ登場。その後複雑な経緯をたどり[注 28]金田一物の『黄金の指紋』になる。)[21]

全集などへの収録

2018 - 2019年に刊行された「(由利・三津木探偵小説集成)」(柏書房)には33作(併せて収録されている原型作品などを除く)が収録されており、これに『仮面劇場』を長編化する前の原型作品を併せると、ジュヴナイル作品以外で確認されている全作品となる。1971年から1984年にかけて横溝正史作品を網羅しようとした(角川文庫)には、この33作のうち翻案作品(『迷路の三人』[注 29])と未完作品を除く30作が収録された。由利麟太郎登場作品の集成としては、他に1956 - 1961年に刊行された「(由利・三津木探偵小説選)」(東方社)があり、22作[注 30]が収録されている。

他に、1970年に刊行された「(横溝正史全集)」(講談社)には6作、1974 - 1975年に刊行された「(新版横溝正史全集)」(講談社)には12作が収録されている。また、『蝶々殺人事件』は「(横溝正史傑作選集)」(東都書房、1965年)、「(横溝正史自選集)」(出版芸術社、2006 - 2007年)に、『カルメンの死』は「(金田一耕助探偵小説選第2期)」(東京文芸社、1955年)、「(金田一耕助推理全集)」(東京文芸社、1958 - 1961年)、「(金田一耕助探偵小説選)」(東京文芸社、1975年)に、各々金田一耕助登場作品に並んで収録されており、この両作品は(春陽文庫)にも収録されている。

ジュヴナイル作品については、上述の通り、多くの作品が角川文庫に収録されている。角川文庫には横溝正史のジュヴナイル作品を集成した全16編のシリーズがあり、初期には一部併録作品を除いて由利&三津木登場作品も金田一ものに改稿していたが、後半の8編は1編(『大迷宮』)を除いて三津木登場作品を中心に編集されている。なお、2021年には金田一耕助登場作品など由利&三津木が登場しない作品も含めて広くジュヴナイル作品を集成した「(横溝正史少年小説コレクション)」(柏書房)が刊行された。

映像化

劇場映画

  • 『(蝶々失踪事件)』(1947年)主演:岡譲二(原作:『蝶々殺人事件』)

テレビドラマ

  • 『(名探偵由利麟太郎 蝶々殺人事件)』(1998年)主演:石坂浩二
  • 探偵・由利麟太郎』(2020年)主演:吉川晃司
    • 『花髑髏』
    • 『憑かれた女』
    • 『殺しのピンヒール』(原作:『銀色の舞踏靴』)
    • 『マーダー・バタフライ』(原作:『蝶々殺人事件』)

由利麟太郎を金田一耕助に置き換えたもの

  • 『(横溝正史の真珠郎 金田一耕助の愛した女)』(1983年)主演:小野寺昭
  • 古谷一行の金田一耕助シリーズ』主演:古谷一行
    • 『(横溝正史シリーズII 真珠郎)』(1978年)
    • 『(横溝正史シリーズII 仮面劇場)』(1978年)
    • 『名探偵・金田一耕助シリーズ2 ミイラの花嫁』(1983年)(原作:『木乃伊の花嫁』)
    • 『名探偵・金田一耕助シリーズ21 悪魔の花嫁』(1994年)(原作:『悪魔の家』)[注 31]
    • 『(名探偵・金田一耕助シリーズ32 神隠し真珠郎)』(2005年)(原作:『真珠郎』)

このほか、『横溝正史シリーズI・獄門島』では金田一が「蝶々殺人事件を解決した」と語られている(詳細は(蝶々殺人事件#他作品からの言及)を参照)。

漫画化

  • 『蜘蛛と百合』 - 玄太郎画、『週刊漫画サンデー』(実業之日本社)1976年5月4日号から1976年5月25日号に連載。
  • 『カルメンの死』 - 玄太郎画、『週刊漫画サンデー』(実業之日本社)1976年6月22日号から1976年7月13日号に連載。
  • 『週刊漫画サンデー別冊 蔵の中/カルメンの死/蜘蛛と百合 横溝正史傑作画特集』(実業之日本社) - 玄太郎画、1977年
    上述の『週刊漫画サンデー』に連載された漫画をまとめた雑誌。由利物ではない「蔵の中」は1976年11月9日号から1976年11月30日号に連載。
  • 『真珠郎 名探偵・由利麟太郎』 - JET画、あすかコミックスDX角川書店)、2004年、(ISBN 9784048537360)

これ以外に『夜光虫』と『仮面劇場』は、1975年に講談社から高階良子によるコミカライズ作品(『血まみれ観音』と『真珠色の仮面』[22])が出されているが、双方とも由利麟太郎の出番がカットされている。

脚注

[脚注の使い方]

注釈

  1. ^ 作品の発表年についてであり、劇中の設定年代では内容的にシリーズがある程度進んだ後の『仮面劇場』で「昭和八年」が舞台と冒頭で明記されており、これ以前から活躍していたことになっている。
  2. ^ この誤解は角川文庫の巻末解説では定説状態になっており、『蝶々殺人事件』の大坪直行なども『憑かれた女』を由利のデビュー作として解説している。
  3. ^ 角川文庫などでは「麟太郎」に修正されている。
  4. ^ 連載開始は『白蝋変化』の方が先だが『石膏美人』の方が早く終わっており、いずれの作品でも半分程度進んでから由利麟太郎が登場している。
  5. ^ 同一人物かは未言及だが、三津木俊助の友人にも「探偵小説を書くS・Yという男」がいるとされている(『蝶々殺人事件』の第二十章「パイプの曲芸」より)。
  6. ^ ここまでは一応六条月代が主人公だが、どちらかというと群像劇のような構図になっている。
  7. ^ 昔の殺人事件に触れた際「昭和七年頃の出来事でしたから、(注:今は)もうかれこれ五年になりますね」という発言がある(歌時計なり終わるとき・一)。
  8. ^ 角川文庫版などのリライトされた版では前者は未修正、後者は由利自体が出てこない。
  9. ^ 『夜光怪人』の舞台年は明記がないが、「仮装舞踏会」の章に章題の舞踏会について「(終戦後しばらくできなかったが)今年はだいぶ世のなかも立ちなおったので、久しぶりに開こうということになり、」とある。
  10. ^ 角川文庫などのリライトされた版では「ふたり鉄仮面」という章題だが、記述はほぼ同じ。
  11. ^ 三津木俊助に替えて、ほぼ同一キャラクタの「宇津木俊介」が登場する『菊花大会事件』を含む。
  12. ^ 1953年後半以降でも、中学生向けの作品には金田一が登場するものがある。
  13. ^ 本編中明治42年生まれの女性を「俺と同い年」と言っている場面がある(『蜘蛛と百合』「俊助約束を守って由利先生を訪う事 並びに君島百合枝の恐ろしき過去の事」)。三津木自身の誕生日などは不明。
  14. ^ 三津木俊助が登場する未完作品の『神の矢』を原型の1つとする金田一耕助ものの『毒の矢[14]に、同姓の「三津木節子」という女性が登場するが、俊助との関係には特に言及が無い。
  15. ^ 表題は「首吊り船」のバージョンもある(角川文庫版など)。
  16. ^ 一応由利・三津木は双方登場するが、最後の最後で語り手の男を助けに来る場面のみ。
  17. ^ 柏書房『由利・三津木探偵小説集成4 蝶々殺人事件』((ISBN 978-4-7601-5054-0))のあとがきでは宇津木俊介を表記ゆれとして三津木俊助と同一人物とされることが多いのでこの話も収録とされている。
  18. ^ 原題「迷路の花嫁」。春陽文庫『蝶々殺人事件』には表題を『カルメン殺人事件』に変更して収録されている。『蝶々殺人事件』最後の相良千恵子の科白「カルメン殺人事件なんか起りゃしないから」に呼応している。
  19. ^ 既発表部分に由利麟太郎は登場しないが、三津木俊助が登場する場面で由利のことを詳しく紹介している。
  20. ^ 内容は金田一耕助物の『死仮面』(1949年)の冒頭部と同一なので、それ以前に書かれ、現存原稿の後半に赤い斜線があるので作者自身が由利版を没にしたものと推測されている(日下三蔵 編『横溝正史少年小説コレクション3 夜光怪人』柏書房、2021年、(ISBN 978-4-7601-5386-2)、p.508「編者解説」)。
  21. ^ 「仮面をかぶっているわけではないが、蝋のように顔を変える変装の名人」という怪盗。『白蝋変化』の白蝋三郎とは別人。
  22. ^ 出版芸術社『横溝正史探偵小説コレクション2』 (ISBN 978-4-88293-259-8) に所収。
  23. ^ 『深夜の魔術師』のリライトは『真珠塔』以外にも複数あり、『少年少女王冠』1950年5月号から7・8月合併号まで3回連載され中断したもの(あらすじは『新少年』版とほぼ同じだが、狙われるものが「宇宙の宝冠」という宝物に変更、柚木子爵の夜会で金蝙蝠の格好をした3人が鉢合わせする場面で断絶)と、未発表のため執筆時期は不明だが、主人公の少年が「新制中学の一年生」という記述がある『横溝正史少年小説コレクション3 夜光怪人』で初収録された、やはり冒頭部のみだがかなり筋が異なるもの(『深夜の魔術師』が10年前に活躍した義賊の怪盗とされる)などが存在する。なお、判明している分では『少年少女王冠』版は『新少年』版と同様に由利・三津木・等々力が登場、未発表版は等々力のみ登場でどちらも御子柴進は出てこない(日下三蔵 編『横溝正史少年小説コレクション3 夜光怪人』柏書房、2021年、(ISBN 978-4-7601-5386-2)、p.506-507「編者解説」)。
  24. ^ a b 詳細は(金田一耕助#ジュヴナイル作品)を参照。
  25. ^ 由利麟太郎登場版は偕成社(1950年から1972年まで表紙などを変更し断続的に刊行)、河出書房(1955)、柏書房(2021)が該当。
  26. ^ 三津木俊助登場版は偕成社(1954年から71年まで表紙などを変更し断続的に刊行)、柏書房(2021)が該当。
  27. ^ a b c d これらは作者である横溝正史自身の手元にも原稿が完全な形で残っていないものだったため、長らく未単行本化だった作品群で、連載からかなり経ってから正史の長男・亮一の協力で角川が欠落部分の写しを入手し、1984年から1985年にかけて角川文庫で初単行本化された(角川文庫版『怪盗X・Y・Z』の山本正夫による「解説」より)。このような経緯だったため『怪盗X・Y・Z』は第4話「おりの中の男」が見逃され、角川文庫でも未収録となっている。この第4話は論創社『横溝正史探偵小説選2』((ISBN 978-4-8460-0733-1))で初めて収録(第4話のみ)されている(『怪盗X・Y・Z』全話収録は柏書房の『横溝正史少年小説コレクション6 姿なき怪人』((ISBN 978-4-7601-5389-3))が初)。
  28. ^ 主人公を御子柴進から「野々村邦雄」に変更され(序盤に出てくる野々村邦雄のおじさんの姓が「御子柴」なのはこの名残)、『少年少女譚海』に同タイトルで連載を仕切り直し、金田一耕助と怪獣男爵(ジュヴナイル作品『怪獣男爵』に登場したヴィラン)を加えて完結。その後1953年に単行本化された際『黄金の指紋』にタイトルを変更。なお完成作品で金田一耕助の名前が出てくる「燭台を渡す相手」と「大道易者の天運堂の正体」は未完版では前者がジミー松田というサーカス団の人間になっており、後者は天運堂(白髪の老人で金田一の変装とは大きく容姿が異なる)の正体が判明する前に未完となっている。
  29. ^ 角川文庫では翻案作品全般を締め出しているわけではなく、由利&三津木登場作品以外については、ホームズシリーズの『まだらの紐』の翻案である『真夜中の口笛』が『青髪鬼』(緑 304-92)に収録されているなどの例がある。
  30. ^ 他に由利麟太郎も三津木俊助も登場しない『幽霊騎手』が収録されている。
  31. ^ 由利麟太郎ではなく三津木俊助を金田一耕助に置き換えている。

出典

  1. ^ a b 角川文庫、緑 304-32『花髑髏』、1976年、p.360-361(2020年の再版では (ISBN 978-4-04-109613-0))
  2. ^ 山前譲「解説」『喘ぎ泣く死美人』角川書店、2006年12月25日、304 - 305頁。ISBN (978-4-04-355505-5)。 
  3. ^ 日下三蔵「編者解説」『由利・三津木探偵小説集成1 真珠郎』柏書房、2018年12月5日、476頁。ISBN (978-4-7601-5051-9)。 
  4. ^ 「横溝正史の生んだ二大名探偵」『別冊宝島 僕たちの好きな金田一耕助』宝島社、2007年1月5日、118頁。ISBN (978-4-7966-5572-9)。 
  5. ^ 横溝正史「探偵小説を二本平行に書くということ 鬼と化して田圃の畦道を彷徨すること」『金田一耕助のモノローグ』角川書店、1993年11月10日、73 - 86頁。ISBN (4-04-130496-2)。 
  6. ^ 『白蝋変化』「由利先生登場」
  7. ^ 『蝶々殺人事件』「序曲」。
  8. ^ 浜田知明、横溝正史探偵小説コレクション4『迷路荘の怪人』(ISBN 978-4-88293-423-3)(出版芸術社・2012年)p.227解説文
  9. ^ 『蝶々殺人事件』の「序曲」の章
  10. ^ 『夜光怪人』(由利版)「怪少年」の章
  11. ^ 日下三蔵 編『横溝正史少年小説コレクション2 迷宮の扉』柏書房、2021年、(ISBN 978-4-7601-5385-5)、p.432-438 山本正夫「横溝正史のジュヴナイルと金田一耕助」(初出:『名探偵読本8 金田一耕助』1979年)
  12. ^ 日下三蔵「編者解説」『由利・三津木探偵小説集成1 真珠郎』柏書房、2018年12月5日、480頁。ISBN (978-4-7601-5051-9)。 
  13. ^ 出版芸術社『深夜の魔術師』2004年、(ISBN 4-88293-259-8)、p.251。
  14. ^ 浜田知明「作品解説」『金田一耕助の帰還』出版芸術社、1996年、(ISBN 4-88293-117-6)
  15. ^ a b c d 日下三蔵 編『横溝正史少年小説コレクション5 白蝋仮面』柏書房、2021年、(ISBN 978-4-7601-5388-6)、p.449-450「編者解説」
  16. ^ 日下三蔵 編『横溝正史少年小説コレクション3 夜光怪人』柏書房、2021年、(ISBN 978-4-7601-5386-2)、p.499「編者解説」
  17. ^ 日下三蔵 編『横溝正史少年小説コレクション2 迷宮の扉』柏書房、2021年、(ISBN 978-4-7601-5385-5)、p.433-434。
  18. ^ 日下三蔵 編『横溝正史少年小説コレクション4 青髪鬼』柏書房、2021年、(ISBN 978-4-7601-5387-9)、p.476「編者解説」
  19. ^ 日下三蔵 編『横溝正史少年小説コレクション3 夜光怪人』柏書房、2021年、(ISBN 978-4-7601-5386-2)、p.506「編者解説」
  20. ^ 日下三蔵 編『横溝正史少年小説コレクション5 白蝋仮面』柏書房、2021年、(ISBN 978-4-7601-5388-6)、p.451-452「編者解説」
  21. ^ 日下三蔵 編『横溝正史少年小説コレクション4 青髪鬼』柏書房、2021年、(ISBN 978-4-7601-5387-9)。収録
  22. ^ 双方収録の文庫版『血まみれ観音(講談社漫画文庫―高階良子傑作選)』高階良子、講談社、1999年、(ISBN 4-06-260613-5)。
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