沢田 誠一（澤田 誠一、さわだ せいいち、1920年9月18日 - 2007年6月5日）は、日本の小説家。北海道を代表する文芸同人誌『(札幌文学)』『(北方文芸)』の編集人・発行人としても活躍。元・(財団法人北海道文学館)理事長。
来歴
1920年（大正9年）、北海道札幌市平岸生まれ[1]。札幌商業学校（現・北海学園札幌高等学校）第16期卒[2]。札商卒業の頃から作歌を開始し、1941年に陸軍高射砲学校入学。高射砲学校卒業後は小樽、北千島などに赴任、敗戦時は埼玉県栗橋町の高射砲陣地の中隊長。1947年に西尾廣子と結婚[3]。1948年ごろから小説の試作を始めたが、翌1949年の父の死去にともない家業のリンゴ園を継ぐ[3]。
1951年（昭和26年）、「蠅のたかった歴史」を西田喜代司らが創刊した同人雑誌『(札幌文学)』第9号に発表。翌1952年からは野間美英らの打診を受け[3]、同『札幌文学』第10号（1952年12月）以降の編集責任者を務めながら[4][5]、同誌を中心に小説作品を発表する[6]。1965年（昭和40年）の「北海道文学展」[7]開催に尽力、さらに1966年の北海道文学館の設立に参加[3]。
1967年、第5回有島青少年文芸賞[8]の選考委員の一人として当時高校生だった佐藤泰志の「市街戦の中のジャズメン」を優秀賞に選ぶが[9]、その内容から通常は入賞作が掲載される北海道新聞に掲載を拒否されたため[10]、翌年、澤田が仲間とともに創刊した同人誌『北方文芸』第3号に「市街戦のジャズメン」と改題・加筆して掲載させた[11][9]。
1968年（昭和43年）、小笠原克らとともに月刊の同人文芸誌『(北方文芸)』の創刊に参画[12]。同誌1968年9月号に発表した「斧と楡のひつぎ」で第2回北海道新聞文学賞を受賞、また第60回直木三十五賞候補[13]となる。小笠原克が『北方文芸』1979年12月号（第143号）をもって編集長の座を退くと、1980年（第144号）より編集発行人を担当[14][12]。1985年に病を得て同誌の編集人から退いたのちは川辺為三・(森山軍治郎)・鷲田小彌太の三人が編集を担当し、澤田は1997年（平成9年）に通巻350号をもって同誌が終刊[15][16]するまで発行人を務め[17]、多くの後進を育てた。1986年、第38回北海道文化賞（芸術）受賞[18]。
1995年から2002年まで、北海道立文学館を運営する財団法人北海道文学館の第3代理事長を務めた（後任は神谷忠孝。北海道文学館は2011年に公益財団法人化）[19]。2005年、故郷の札幌市平岸を父祖三代にわたって描く『平岸村』を北海道新聞社より上梓[20]。
2007年（平成19年）、死去。
息子の澤田展人も小説家で、北海道立文学館の理事を務めている[要出典]。
著書
脚注
- ^ “澤田邸 - 北海道”. 朝日新聞デジタル (2018年8月10日). 2023年3月20日閲覧。
- ^ 「北海中学の青春群像 : 北中・札商著名卒業生14人にみる北中精神の研究 (図書展示会No.27)」（pdf）『北海学園大学附属図書館報 図書館だより』第19巻第3号、北海学園大学附属図書館、1997年11月1日、10頁。 ※澤田の略歴記述はほぼ『北海道文学大事典』に拠っている。
- ^ a b c d 北海道文学館 編 1985, pp. 177–178, 「澤田誠一」.
- ^ 田中和夫. “同人雑誌紹介 : 札幌文学(北海道)” (pdf). 全国同人雑誌協会 : 全国同人雑誌協会会員などの同人誌の紹介. 全国同人雑誌協会. 2023年3月20日閲覧。
- ^ 田中和夫. “北海道の同人雑誌の灯りを守る” (pdf). 株式会社イベント工学研究所. 2023年3月20日閲覧。
- ^ 札幌市教育委員会: “新札幌市史 第5巻 通史5(上) : 第九編 大都市への成長 : 第九章 市民の文化と活動 : 第一節 文学 : 一 散文、総合誌、職場文芸 : 『札幌文学』登場”. 札幌市中央図書館 - 新札幌市史デジタルアーカイブ. 札幌市 (2002年3月31日). 2023年4月4日閲覧。
- ^ 出村文理 (2010年9月4日). “北の資料No.128 : 講演録「北海道の出版文化史 : 昭和時代を中心にして」”. 北方資料デジタルライブラリー. 北海道立図書館. 2023年3月20日閲覧。「メディア」欄からPDF提供あり。
- ^ “有島青少年文芸賞”. 北海道新聞社. 2023年3月20日閲覧。賞名の「有島」は有島武郎を指す。1963年スタート。
- ^ a b 西堀滋樹, 田沢義公 (1999年9月). “佐藤泰志年譜”. 函館文学散歩 : 佐藤泰志コーナー. 函館文学散歩. 2023年3月20日閲覧。福間健二作成の年譜を改訂したもの。
- ^ “ストーリー”. 映画『書くことの重さ〜作家 佐藤泰志』公式サイト (2013年). 2023年3月20日閲覧。 “この頃は「政治の季節」。ベトナム反戦に加え、防衛大学校入試説明会阻止闘争が勃発。その渦中「市街戦の中のジャズメン」（後に「市街戦のジャズメン」と改題）を書き、第5回有島青少年文芸賞優秀賞を受賞。しかし内容が高校生にふさわしくないという理由から、新聞掲載はならなかった。”
- ^ 田沢義公, 西堀滋樹 (1999年9月). “佐藤泰志作品書誌 : 佐藤泰志作品一覧及び関連書誌”. 函館文学散歩 : 佐藤泰志コーナー. 函館文学散歩. 2023年4月4日閲覧。
- ^ a b “月刊文芸誌『北方文芸』（『カムイミンタラ』1991年05月号／第44号）”. ウェブマガジン カムイミンタラ〜北海道の風土・文化誌 (1991年5月). 2023年3月19日閲覧。
- ^ P.L.B.. “沢田誠一（さわだ せいいち）- 直木賞候補作家”. 直木賞のすべて. 2023年3月20日閲覧。
- ^ 札幌市教育委員会: “新札幌市史 第5巻 通史5(上) : 第九編 大都市への成長 : 第九章 市民の文化と活動 : 第一節 文学 : 一 散文、総合誌、職場文芸 : 『北方文芸』”. 札幌市中央図書館 - 新札幌市史デジタルアーカイブ. 札幌市 (2002年3月31日). 2023年4月4日閲覧。
- ^ 札幌市教育委員会: “新札幌市史 第5巻 通史5(下) : 第十編 現代の札幌 : 第九章 芸術・文化の拡がり : 第一節 芸術文化 : 一 文学 : 『北方文芸』の終刊”. 札幌市中央図書館 - 新札幌市史デジタルアーカイブ. 札幌市 (2005年3月31日). 2023年4月4日閲覧。鷲田小彌太による「『北方文芸』創作ベスト20」(北海学園『北海道から』7号、1990年)の転記あり。
- ^ 北海道立文学館 2017年6月30日の投稿 - Facebook “〔『図録・作品集 北方文芸2017』には〕展示などの紹介などのほか、「北方文芸」全364号の総目次を作成しました。記録的な試みです。”
- ^ P.L.B. (2017年7月9日). “『北方文芸』…同人誌とも商業誌ともちがう茨の道を歩んだ志、あるいは執心。”. 直木賞のすべて 余聞と余分. 2023年3月19日閲覧。
- ^ 環境生活部文化局文化振興課: “北海道文化賞及び北海道文化奨励賞について”. 北海道. 北海道庁 (2023年1月31日). 2023年4月4日閲覧。 ※pdf「北海道文化賞・北海道文化奨励賞 歴代受賞者」一覧あり。
- ^ “概要 : 沿革”. 北海道立文学館. 2023年3月20日閲覧。 “1995(平成7)年／道立施設、北海道立文学館が開館。北海道教育委員会が北海道立文学館の管理運営を財団法人北海道文学館に委託する。第3代理事長に澤田誠一が就任。初代館長は(木原直彦)。”
- ^ “平岸村 の通販/澤田 誠一 - 小説”. honto 本の通販ストア. 大日本印刷株式会社 (2005年10月). 2023年4月4日閲覧。 “札幌創世期を背景に、岩手・水沢移住者の苦闘と、著者の父祖3代の家族史を重ね合わせて描く平岸村物語。時を操り往還自在、村の生い立ち、林檎栽培の盛衰を、家族の日常と消長に巧みに溶かし込む。【「TRC MARC」の商品解説】”
参考文献
- 北海道文学館 編『北海道文学大事典』北海道新聞社、1985年。 ※項目「澤田誠一」は(木原直彦)の担当執筆。