柴田氏庭園(しばたしていえん)は、福井県敦賀市にある江戸時代前期の庭園である。国の名勝に指定[1]されている。別名「
概要
柴田氏庭園は、庭園と書院などを含む屋敷区画全体が、敦賀市の史跡、および国の名勝に指定[1]されている。若狭国小浜藩の豪農であった柴田権右衛門が、新田開発を始めた時期に屋敷を建て、その後、
もともと柴田氏の屋敷は、周囲に5~6m幅の濠を巡らせた60mの方形の区画であった。その後、作庭に伴い、濠の一部を池として取り込み、土塁を築山とした。このように濠を利用しているため、池は細長く、また深く、書院前の玉石張りの岸辺は勾配がきつくなっている。築山には滝石組があり、中島には土橋が架けられている。また、書院側から池を望むと、築山のやや右手の奥にどっしりとした野坂岳の姿が遠望できるように設計されている。一説には、狩野探幽が地割設計し、探幽死後の1688年(元禄元年)頃に小堀遠州が作庭したというが、史料的な裏付けはない。
池に面して建つ書院は、小浜藩主酒井氏の休憩所としても利用された記録がある。欄間にも酒井氏家紋の
書院以外の建物として、書院に接した居宅、通路塀、土蔵、中門、通用門、冠木門が残る。特に黒く塗られた冠木門は、この庭園のシンボルとなっている。また、建物の変遷が、礎石として残っており、米蔵、母屋、道場、稲荷社がかつてあったようである。
「甘棠園」の由来
柴田氏庭園は「甘棠園」、「甘棠館」と呼ばれるが、これは、小浜藩6代藩主の酒井忠存が、休憩した際に「詩経」の「甘棠の愛」の故事にちなんで命名したと伝えられる。甘棠とは、りんご、やまなし、やまもも、やまぶどうの類といわれている。屋敷の西側にはヤマモモの巨木があり、「甘棠園のヤマモモ」として、敦賀市の天然記念物に指定されている。また、クスノキの巨木もあるが、これは柴田氏が楠木正成の子孫を名乗ったことに由来するといわれ、こちらも市の天然記念物となっている。
歴史
- 1627年(寛永4年) - 柴田権右衛門、小浜藩から逃散田の復旧を命ぜられ、
櫛林 ()に屋敷を構える。 - 1658年(万治元年) - 権右衛門、洪水により荒れ地となっていた
市野々 ()の開墾を始める。 - 1661年(寛文元年) - 権右衛門、市野々の新田開発の願書を奉行所に提出。
- 1662年(寛文2年) - 権右衛門、市野々に屋敷を移し、開墾を本格化する。
- 1667年(寛文7年) - 権右衛門が死去し、嫡男の権七郎清信が、市野々の新田と屋敷を相続。
- 1684年(貞享元年) - 市野々の新田開発が完了し、検地を受ける。
- 1686年(貞享4年) - 屋敷の周囲に濠をめぐらせる。この周濠の一部が、のちに庭園の池として利用される。
- 貞享年間(1684年 - 1688年)に、「市野々新田絵図」が描かれる(この時点の絵図には書院庭園の記載なし)
- この間に庭園・書院が作られたとみられている。
- 1736年(元文2年) - 小浜藩主の休憩所としての利用記録の初見。
- 1795年(寛政7年) - 書院の屋根を葺き替え。
- 1805年(文化2年) - 書院の建て替え。
- 1932年(昭和7年) - 庭園と書院が国の名勝に指定[1]される。
- 1939年(昭和14年) - 国道27号(現在の福井県道225号敦賀美浜線)が開通。敷地が分断され、入口部が現在の姿となった。
- 1999年(平成11年) - 屋敷地が敦賀市の史跡に指定される。
- 2007年(平成19年) - 屋敷地全体が国の名勝に追加指定[1]される。
- 2008年(平成20年) - 柴田氏から敦賀市へ屋敷地が寄贈される。
アクセス
- 交通機関
- JR北陸本線・小浜線 敦賀駅
- (福鉄バス)
- 若狭線、菅浜線
- 敦賀市コミュニティバス
- 金山線、山・公文名線
- 「市野々」停留所下車、徒歩約3分。
- 金山線、山・公文名線
- (福鉄バス)
- 自動車
- 北陸自動車道
- 敦賀ICから約10分。
- 舞鶴若狭自動車道
- 国道8号
- 国道27号(金山バイパス)
- 福井県道142号松島若葉線
- 福井県道210号余座若葉線
- 若葉交差点(金山バイパスと福井県道142号線・福井県道210号線の交点)から約2分。
- タクシー
- 敦賀駅から約10分。
ギャラリー
冠木門
甘棠園
池と書院
ヤマモモ
参考資料
- 敦賀市史編さん委員会『敦賀の歴史』敦賀市、1989年、106-107頁。
- 福井県の歴史散歩編集委員会『福井県の歴史散歩』山川出版社、2012年、215-216頁。
- 「柴田氏庭園保存管理計画書」敦賀市
脚注
関連項目
- 養浩館庭園―福井市にある庭園。松平家の別宅である。
- 日本国指定名勝の一覧
外部リンク
- 柴田氏庭園(甘棠園) - 敦賀観光協会
- 柴田氏庭園(甘棠園) - 福井県「若狭湾観光連盟」
座標: 北緯35度37分44.4秒 東経136度2分59.6秒 / 北緯35.629000度 東経136.049889度