本多 静雄(ほんだ しずお、1898年(明治31年)1月5日 - 1999年(平成11年)5月6日[1])は、日本の実業家、陶芸研究家。
衆議院議員の本多鋼治は兄。文芸評論家の本多秋五は弟。元東北大学電気通信研究所教授・名古屋大学工学部教授・名古屋商科大学教授・豊橋技術科学大学長の本多波雄(1922年 - 2016年)は、実子。
経歴
- 1898年 - 愛知県西加茂郡上郷村花本(現・豊田市花本町)に生まれる[1]。
- 1916年 - 愛知県立工業学校卒業。
- 1924年 - 京都帝国大学工学部電気工学科を卒業し逓信省に入省[1]。興亜院技術部長、技術院第一部長を歴任。
- 1954年 - 日本電話施設を創業。猿投古窯跡発見。
- 1964年 - (紺綬褒章)。
- 1965年 - (藍綬褒章)。
- 1969年 - 愛知音楽エフエム放送初代社長に就任。
- 1977年 - 豊田市名誉市民。
- 1987年 - 杉本美術館初代館長に就任。
- 1988年 - 中日文化賞(「日本の陶芸、とくに鎌倉期以前のものの保存と研究に貢献」)[2][3]。
- 1999年 - 死去。享年101[1][4]。
その他
出身地である豊田市に、本多秋五と共に資料を寄贈した。これは豊田市中央図書館の一角に『本多兄弟文庫』として展示してある。
同じく豊田市に収集した『猿投古窯』『古瀬戸』などを寄贈している。これは、豊田市民芸館内の陶芸資料館に展示してある。
愛知県瀬戸市にある愛知県陶磁資料館(現・愛知県陶磁美術館)及び豊田市の豊田市民芸館設立に尽力し、これらの資料館に自身が収集した狛犬を寄贈している。
洋画家の杉本健吉と交流があり、杉本に特に請われ杉本美術館の開館と共に初代館長に就任した[5]。当時、本田の屋敷があった民芸の森にて毎年、桜の時期に花見会が開催されていたが、杉本は毎年招待されており、専用の特別席があった。
陶芸研究家を本業とする一方で陶器の狛犬の熱烈なコレクターとしても知られ、その為、自宅を豊田市の猿投古窯跡に構えた。自らが収集した狛犬の一部は豊田市挙母町の挙母神社を始めとして市内各地に奉納されている。
2016年4月に一般公開された愛知県豊田市平戸橋町の民芸の森の敷地内にある田舎家「青隹居」は、戦後、本田がアトリエとして使用しており、生前の研究拠点であった。
1950年、陶芸家で古瀬戸研究家の加藤唐九郎から、加藤が発掘した陶片をつなぎ合わせて復元したという「陽刻蓮弁文花瓶」を10万円で購入した。この花瓶の制作年代に疑問を持った本多は、周囲に「これと類似の陶片があっら知らせてほしい」と呼びかけ、これが猿投窯の発見につながることになった。その後、1960年、永仁の壺事件の表面化に際して、陽刻蓮弁文花瓶も「永仁の壺」同様、加藤による贋作であったことが判明したが、本多は「わしはだまされた。古瀬戸の逸品かと思った」としながらも、「この花瓶は唐九郎窯の作品として後世に伝えたい」として所持し続けた[6]。
永仁の壺事件が表面化した際に、丸栄百貨店社長の川崎音三とともに、永仁の壺を当時の所有者であった深田雄一郎から買い取っている。文部省が永仁の壺の重要文化財指定を取り消さなかった場合には、陶磁史を正すために自分たちで打ち砕いてしまうつもりであったという[7]。壺は川崎が所有、川崎の没後は本多の手に移り、加藤唐九郎没後の1987年、唐九郎旧宅に置かれた財団法人翠松園陶芸記念館(本多が理事長をつとめていた)に寄贈された[8]。
著書
単著
- 『愛知県猿投山西南麓古窯址群』日本陶磁協会 1957
- 『シカン坊物語』電経新聞社 1968
- 『幻の壷 古窯百話』淡交社 1969
- 『陶磁のこま犬』求竜堂 1976
- 『青隹愛蔵帳 本多静雄対談集』創樹社美術出版 1983
- 『青隹自伝』全3巻 通信評論社 1984‐91
- 『青隹選外集』電気通信協会東海支部 1985
- 『青隹選集』電気通信協会東海支部 1985
- 『本多静雄新作狂言集』日本陶磁協会 1989
- 『民芸彷徨』矢作新報社 1990
- 『白寿棋譜』電気通信協会東海支部 1996
- 『愛陶百寿』里文出版 1997
- 『百寿棋譜』電気通信協会東海支部 1998
共編著
- 『担当区評判記』上野鷹之助共著 陸奥 1974
- 『繪入狂言記図説 嘉永元年版』堀江勤之助共編 名古屋民芸協会 1989
- 『男の生き方 田淵寿郎伝』編著 風媒社 1990
翻訳
- サー・ローランド・ヒル; ジョージ・バークベック・ヒル『サー・ローランド・ヒルの生涯とペニー郵便の歴史』逓信協会 1988
脚注
- ^ a b c d 名誉市民 本多静雄 - 豊田市近代の産業とくらし発見館
- ^ “中日文化賞:第41回-第50回受賞者”. 中日新聞. 2009年10月26日閲覧。[]
- ^ “中日文化賞 受賞者一覧”. 中日新聞. 2022年6月2日閲覧。
- ^ “第73回企画展 平戸橋の陶芸家たち -古志戸窯-|豊田市民芸館”. www.mingeikan.toyota.aichi.jp. 豊田市民芸館. 2021年12月9日閲覧。
- ^ “洛友会会報 第142号” (PDF). 京都大学電気系同窓会 洛友会 (1988年1月1日). 2013年7月31日閲覧。
- ^ 松井 1995, p. 94-99.
- ^ 松井 1995, pp. 211–214.
- ^ 松井 1995, pp. 269–270.
参考文献
関連項目
外部リンク
- 日本電話施設
- 豊田市中央図書館
- 豊田市民芸館
- 愛知県陶磁資料館